魔王の右腕、何本までなら許される?

おとのり

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第1章 虚ろの体

Ver.2/第3話

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「えーと?」
 取得した〈贋作〉の説明を読みながら確認していく。
「さすがに素材は無理なのか。そりゃそうか……。まあ、材料に使えるだけでも上等かな?」
 続いて、職人にかかわる部分の説明が連なる。
「同じアイテムを複数回コピーすることは不可で、再現率はDEXによって変化する。DEXが必要値に足らなくてもコピーはできるが、劣化版になる。ランクによって必要DEXは異なる。で、コピーのコピーも不可、と。あー、なんだ。コピーするのにも素材や材料は消費するのか」
 どんな使い方ができるのかイメージしてみるが、劣化版ができてしまうとなるとレア素材を使った装備類は割に合わない。
 ランクの低いアイテム類であれば、自分のDEXであればそうそう劣化版になるとも思えないが、時間短縮以外のメリットはさほどなさそうに感じた。
 レア素材を使った装備類に、低確率で発生する〈精霊の気まぐれ〉で特殊効果が付いたものであればコピーしてみる価値はあるかもしれないが、それ以外はあまり気軽に使えなさそうである。
「あれ? もしかして、ハズレ引いちゃったか?」
 そうやってスキルの説明を読んでいくと、まだ続きがあることに気づいた。
「んあ? んんんんん? テイムモンスターの複製について? テイムモンスターを複製した場合、自立タイプのAIを使って戦闘に参加しますが、3分半で自動消滅します。リキャストタイムは15分で、再び複製することが可能?」
 ハルマにテイムモンスターはいないが、同類の仲間がいる。生産職で使えると思っていたスキルは、ちゃんと魔王らしさを持ったスキルであることに、思わず苦笑いを浮かべてしまうのだった。 

「ギャーッ!! ズキンがふたりいるー!?」
 森の中、いたずら天使マリーの声が響き渡った。
 言葉とは裏腹に、驚いているというよりは楽しんでいる様子だ。
「旦那様、これは、また面妖な。カラス天狗の秘術で、似たようなものがありますが、普通は自分自身の分身しか生み出せないもの……。他者を生み出すとは、聞いたことがありませんよ?」
 コピーされた本人も、興味深げに自分の分身を眺めている。
 けだるそうな表情も、今にも服から零れ落ちそうな大きな胸も、忠実に再現されているのだ。ただ、その戦闘能力にはだいぶ乖離があった。
「おおむね40%くらいの能力しかなさそうだな」
 3分半戦わせ、15分のインターバルを空けて、同じことを数回くり返して検証してみた結果の結論である。素材や材料を消費しない代わりに、MPをごっそり消費することだけがネックだった。とはいっても、リキャストタイムが15分もあるので、連続して使用することはできないため、ハルマの少ないMPでも問題はなさそうである。そもそも、戦闘でMPを使うこともあまりない。
「俺のDEXでも40%くらいとなると、完全コピーになるのはDEX2000以上は最低でも必要そうだな? まあ、ズキンの元の能力が高いから、これで適正レベルって感じだけど……」
 この後も〈贋作〉で作られるコピーの癖を確かめると、この日はログアウトするのだった。
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