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第11章 魔王城への挑戦 前編

Ver.1/第86話

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「この後は、どうするの? 魔王城の改築?」
 チップが生産職プレイヤーを探しに行くため村を離れると、モカに尋ねられた。
「改築はまだできないですよ。でも、城のコンセプトはもう決まってるので、それに合わせたスキルをちょっと成長させたいなと思ってます。そうだ! モカさん、どっかにそんなにモンスターは強くないけど、次から次にポップする場所知りませんか? 〈ゴブリン軍の進撃〉で戦った感じの、もう少しユルイ場所があるといいんですけど」
 すでに現状の能力でも対応できそうな気はしていたが、念には念を入れたかったのである。
「そうだなー。あそこまでウジャウジャとは出てこなくて、わりと低ランクのモンスターばかり頻繁に出てくる、打ってつけのダンジョン知ってるよ?」
「どこですか? 俺でも行ける場所だといいんですけど」
「たぶん行けるんじゃないかな? 水の大陸のマァグラセ地方にある、なんだったかな? 知恵と力が封じられし遺跡? だっけ? なんか、そんな名前のダンジョン。ちょっと前までは狩場として有名だったみたいだけど、今はそんなに人いないんじゃないかな? 新しい狩場にみんな移ってるって聞いてるから」
「知恵と力が封じられし遺跡ですか……。名前からしてお宝が眠ってそうですけど、聞いたことないな」
「いや、それが、宝箱があるにはあるんだけど、なんだったかな? そんなに珍しいものじゃなかったと思うよ? 杖か本の装備品だった気がする。やけに入り組んだダンジョンだから、うちの性格に合わなくて、最初にちょっと観光しただけであんまり探索はしてないけど」
「あー。魔法職用のダンジョンなんですかね? わかりました。行ってみます」
「ほーい。うちは何だか一安心したらお腹空いてきたから、落ちるわ。魔王城が改築できるようになるのって、いつから?」
「確か、明日の昼からのはずです」
「おっけー。じゃあね」
 モカはそう告げると、この場でログアウトしていった。

 教えてもらったマァグラセ地方に飛ぶと、徒歩で目的地へと向かう。
 知恵と力が封じられし遺跡は、山の上にあるのだそうだ。
 素材を採取しながらふらふらと向かう道すがら、モンスターは極力回避する。戦闘に明け暮れることもないので、〈ゴブリン軍の進撃〉が終わってからはレベルも2つしか上がっていない。ただ、トッププレイヤー達もこのひと月ほどで、2つくらいしか上げられないほど、必要経験値は膨大になっているようである。
「ここか……。けっこう遠かったな」
 森を抜けなければならなかったが、森の中の方が安全に進めるという妙なプレースタイルもあり、ズキンやマリーも生き生きとしていた。
 森を抜け、山岳地帯に入ってからも人気はなく、レベリングに訪れる者もいなくなってしまったらしい。
「ハルマ! つらら!」
 マリーは山の中腹から積もり始めた雪に興奮し、ずっとはしゃいでいる。対して、ズキンとユララは寒さに身を震わせていた。
「マリーは寒さ、感じるのか?」
「ん? ぜんぜん」
「だろうね」
 ハルマも寒さは感じていなかった。どうやら、プレイヤーに暑さ寒さは関係ないらしく、一部のNPCだけが影響を受けるようだ。トワネもぬいぐるみのため、その辺の感覚はないようである。
「とりあえず入るか。ズキンとユララが凍えちゃう」
「はーい」
 奇妙な一行は、寒さから逃れるように遺跡の中へと入っていくのだった。
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