魔王の右腕、何本までなら許される?

おとのり

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第10章 からまった糸

Ver.1/第76話

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「なんてことだ……。カラス天狗ともあろうものが、人間風情に負けてしまうとは」
 敗北の後、地べたに両手をつきながら項垂れる。
 ハルマも、その反応には同情してしまう。正直、自分でやったのは最後の最後にダメージドレインを解放しただけだからだ。
 本来であれば、高いAGIを活かした多段攻撃の嵐に、勝機を見出すのは困難な相手だったことだろう。
 完全に、相性が良かっただけである。
「これに懲りたら、大人しくパパのもとで修業し直してください」
 ズキンは大きな胸を張りながら、兄達を見下ろす。
「いや、しかし……。今さら親父殿の所に戻るのは……」
「困りましたねえ。ユララとしては、穏便に済むのなら、それが一番なのですが」
 それぞれの立場で意見が対立する。
 そんな中、ハルマがひとつの提案を思いついた。
「だったら、この大陸に残って、ユララの手伝いをしてあげるってのはどうだ? ユララもその体だと、トワネと一緒で神の力は封印されちゃってるんだろ? 半人前のカラス天狗でも、いないよりは役に立つんじゃないか?」

「「「「「おおー!」」」」」

 ハルマの提案で、話は一気にまとまった。とはいっても、綿密に話し合いがもたれるわけでもなく、すでにこの後の展開が決められていたようである。
「では。お願いします」
 ユララがぺこりと頭を下げると、カラス天狗達は自信を取り戻したように「お任せください! 兄貴もお達者で!」と、胸を張ると、方々に飛び立っていった。
 何をするのかはわからないが、役目を与えられたのだろう。そして、どういうわけだか、兄貴に認定されてしまったらしい。
「やれやれ。あんなにかわいくない弟分はいらんぞ? あれでも、アヤネだったらカワイイと飛びつくんだろうか? まあ、いいや。帰るか」
 ハルマは一件落着と、その場を後にしようとしたが、ユララに呼び止められる。
「お待ちください。ハルマ殿のおかげで、問題がひとつ解決できました。感謝の言葉もございません。しかも、この大陸の森にも良き風が吹き始めました。さすがは半人前とはいえ、カラス天狗様です。それで、お礼というのもおこがましいのですが、ひとつお願いがあるのです」
「?」
 ハルマは首を傾げるだけで返答とする。
「この大陸の森のことは、ひとまずカラス天狗様にお任せして、ユララは元の体に戻れる方法を探しに行きたいと考えております。そこで、どうでしょう? ユララもハルマ殿のお供に加えてはいただけないでしょうか? これでも神の端くれ。何かお役に立てると思うのです」
 予想はしていた。このイベントがトワネやズキンと同じ類のものであることは。しかし、こうも都合よく自分にばかり起こるものだろうか? という、思いもあったのだ。
 とはいえ、断る理由もない。
「あー、うん。いいですよ」
 あっさり了承を告げるとともに、アナウンスが表示された。

『クエスト/からまった糸をクリアしました』
『クリア報酬として、水の大陸の森の守り神ユララとの盟約が結ばれました。これにより、定期的に水の大陸で取れる素材がランダムにカラス天狗から届けられるようになります』
『詳細はなかまメニューから確認できますが、テイムモンスターと同じ扱いになります』
『特定の条件を満たすと、能力が解放されていきます』
 
「ここまできたら、全大陸の森の守り神と盟約結びたいなー」
 半分本気、半分冗談で、そんなことをつぶやくのだった。
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