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第9章 ゴブリン軍の進撃
Ver.1/第61話
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次々とプレイヤーが去っていく中、チップ達は残っていた。
「残るの?」
「ああ。防衛は失敗したけど、まだ結界残ってるから討伐は出来るっぽいんだよ。個人報酬用の金貨の数が中途半端だから、もう少し狩っていこうと思ってる。それまで結界装置の死守だな。そうだ、ハルマ。リタイアするんだったら、残って防衛の手伝いしてくれないか? ゴブリンとホブゴブリン相手なら大丈夫だとは思うけど、オレたちまだHPもMPも全然回復してないから、心許ないんだわ」
他の拠点が無事であれば、そちらに移動するのだろうが、どのサーバーも絶望的な状況のためチップ達と似たような考えの者も少なくなかった。
ハルマもそれならと気持ちを切り替えていると、近くから声が上がった。
「あれっ!? もしかして終わっちゃってる?」
どうやら、ハルマと似たような状況のプレイヤーが他にもいたようだ。
見てみると、ズキンと良い勝負の豊満な胸をした女性プレイヤーだ。
「あれ? モカちゃんだ。モカちゃんも一緒のサーバーだったんだね」
「あー! スズコにミコトちゃん。久しぶり! ちょうど良かった。どーいう状況?」
「あっちゃー! 一番面白そうな時に離席してたかあ。残念!」
「ホントだよ。モカちゃんがいたんなら堪え切れたかもしれなかったのに」
「いやー、ごめん、ごめん。どーしてもビール飲みたくなっちゃって」
「もう、こんな昼間から」
「こんな昼間から、だからいいんじゃない。んで、みんなは何で残ってるの?」
「個人報酬目当てにゴブリン狩りの続きっす」
「あー、そういうことね。じゃ、うちも時間過ぎちゃって移れないから、残って狩ろうかな。まだちょっと暴れ足りないし」
スズコとミコトはモカと親し気に話し込んでいた。
「あの人いたら耐えられたかもしれないの? そんなに強いの?」
「ハルマは知らないのか。かなり有名な人だぜ? たぶん、ソロプレイヤーの中じゃ最強。今のところ大魔王の最有力候補って言われてる」
「へぇ、見かけによらないんだな。じゃあ、ここの守りは問題ないか。俺はEポーション作ってくるよ。回復したら外に出るんだろ?」
「助かる。たぶん外に出ると思うけど、ここの防衛もあるから遠くまでは行けないんじゃないかな?」
「おっけー。じゃあ、そんなに数は要らなさそうか」
防衛に失敗してからというもの、まったりとした時間が過ぎていた。
残っていたプレイヤーは回復したMPも使い果たすとどんどん減っていき、それに合わせて襲撃してくるゴブリンの数も減っていく。ハルマはEポーション作りも必要なくなり、討伐報酬は最低限の枚数で満足していたので、結界装置の近くでたまに他のメンバーが狩り逃したゴブリンを仕留めるだけとなっていた。
正直、暇だった。
持て余した時間はイベントサイトを眺めて過ごすか、メニューを操作してステータスや所持品を意味もなく眺めるばかりだった。
そうやってぼんやり過ごしていたのだが、ふと、妙なことを思いつく。
「……あれ? もしかして?」
ハルマが自分の考えに気を取られていると、モカが急に叫び声を上げた。
「あー! 最後の砦が落ちた!」
イベント終了時間まで残り1時間を切ったところで、最後まで耐えていた拠点の城門も全て突破されてしまったようだ。
これをキッカケに、全員が結界装置のある場所に集まってきた。
「テスタプラスさん達がいてもダメだったかー」
ゴリはいかにも残念そうに天を仰いでいる。
「あの人らは組織力はあるけど、個人になるとそうでもないからね。一度崩れたら、立て直すのは難しいんじゃない? あの軍勢を今まで耐えられてただけでも賞賛ものだよ」
スズコとゴリのやり取りを耳にして、近くに来ていたチップに尋ねる。
「テスタプラスさん?」
「モカさんがソロプレイヤーの最強なら、パーティプレー最強って言われてる人たちのリーダーだよ。パーティプレーを突き詰めるために可能な限り8人で行動してる珍しい人たち。だから、ねーちゃんも言ってたけど、個人のスキルやレベルは普通よりちょい下くらいなんじゃないかな?」
「ふーん。色んな人がいるんだな」
「そうだなー。まー、お前が言うな、だけどな。それにしても、くっそ、初イベントなのに失敗で終わりかよー」
チップは素直に悔しさを口にすると、呼応するように他の面々も悔しがる。
「まあ、まあ。このゲームが一筋縄じゃいかないのは、今に始まったことじゃないですから。だからみんな、このゲームやってるんでしょ?」
ミコトだけはどことなく穏やかな表情である。
「あはっ。違いない。じゃあ、いつまでも残っていても仕方ないから、お腹も空いたし、日常に戻りますか」
「そうしますか」
さすがに最後まで居座る気はないらしく、スズコ達パーティが去っていくと、チップ達もサーバーを出ることに決めたようだ。
「ハルマはまだ出ないのか?」
何やら考え事をして上の空だった親友に、問いかける。
「ん? ああ、もうちょっと残るよ。Eポーションの素材が少し残ってるから、最後に納品して報酬の足しにする」
Eポーションの納品は、ホブゴブリン討伐と同じ価値の報酬が出るのだ。
「そっか。じゃあ、またな。モカさんも、またです」
「ほーい! スズコ達にもよろしくねー」
そうして、このままイベントは静かに終わるかと思われた。
「残るの?」
「ああ。防衛は失敗したけど、まだ結界残ってるから討伐は出来るっぽいんだよ。個人報酬用の金貨の数が中途半端だから、もう少し狩っていこうと思ってる。それまで結界装置の死守だな。そうだ、ハルマ。リタイアするんだったら、残って防衛の手伝いしてくれないか? ゴブリンとホブゴブリン相手なら大丈夫だとは思うけど、オレたちまだHPもMPも全然回復してないから、心許ないんだわ」
他の拠点が無事であれば、そちらに移動するのだろうが、どのサーバーも絶望的な状況のためチップ達と似たような考えの者も少なくなかった。
ハルマもそれならと気持ちを切り替えていると、近くから声が上がった。
「あれっ!? もしかして終わっちゃってる?」
どうやら、ハルマと似たような状況のプレイヤーが他にもいたようだ。
見てみると、ズキンと良い勝負の豊満な胸をした女性プレイヤーだ。
「あれ? モカちゃんだ。モカちゃんも一緒のサーバーだったんだね」
「あー! スズコにミコトちゃん。久しぶり! ちょうど良かった。どーいう状況?」
「あっちゃー! 一番面白そうな時に離席してたかあ。残念!」
「ホントだよ。モカちゃんがいたんなら堪え切れたかもしれなかったのに」
「いやー、ごめん、ごめん。どーしてもビール飲みたくなっちゃって」
「もう、こんな昼間から」
「こんな昼間から、だからいいんじゃない。んで、みんなは何で残ってるの?」
「個人報酬目当てにゴブリン狩りの続きっす」
「あー、そういうことね。じゃ、うちも時間過ぎちゃって移れないから、残って狩ろうかな。まだちょっと暴れ足りないし」
スズコとミコトはモカと親し気に話し込んでいた。
「あの人いたら耐えられたかもしれないの? そんなに強いの?」
「ハルマは知らないのか。かなり有名な人だぜ? たぶん、ソロプレイヤーの中じゃ最強。今のところ大魔王の最有力候補って言われてる」
「へぇ、見かけによらないんだな。じゃあ、ここの守りは問題ないか。俺はEポーション作ってくるよ。回復したら外に出るんだろ?」
「助かる。たぶん外に出ると思うけど、ここの防衛もあるから遠くまでは行けないんじゃないかな?」
「おっけー。じゃあ、そんなに数は要らなさそうか」
防衛に失敗してからというもの、まったりとした時間が過ぎていた。
残っていたプレイヤーは回復したMPも使い果たすとどんどん減っていき、それに合わせて襲撃してくるゴブリンの数も減っていく。ハルマはEポーション作りも必要なくなり、討伐報酬は最低限の枚数で満足していたので、結界装置の近くでたまに他のメンバーが狩り逃したゴブリンを仕留めるだけとなっていた。
正直、暇だった。
持て余した時間はイベントサイトを眺めて過ごすか、メニューを操作してステータスや所持品を意味もなく眺めるばかりだった。
そうやってぼんやり過ごしていたのだが、ふと、妙なことを思いつく。
「……あれ? もしかして?」
ハルマが自分の考えに気を取られていると、モカが急に叫び声を上げた。
「あー! 最後の砦が落ちた!」
イベント終了時間まで残り1時間を切ったところで、最後まで耐えていた拠点の城門も全て突破されてしまったようだ。
これをキッカケに、全員が結界装置のある場所に集まってきた。
「テスタプラスさん達がいてもダメだったかー」
ゴリはいかにも残念そうに天を仰いでいる。
「あの人らは組織力はあるけど、個人になるとそうでもないからね。一度崩れたら、立て直すのは難しいんじゃない? あの軍勢を今まで耐えられてただけでも賞賛ものだよ」
スズコとゴリのやり取りを耳にして、近くに来ていたチップに尋ねる。
「テスタプラスさん?」
「モカさんがソロプレイヤーの最強なら、パーティプレー最強って言われてる人たちのリーダーだよ。パーティプレーを突き詰めるために可能な限り8人で行動してる珍しい人たち。だから、ねーちゃんも言ってたけど、個人のスキルやレベルは普通よりちょい下くらいなんじゃないかな?」
「ふーん。色んな人がいるんだな」
「そうだなー。まー、お前が言うな、だけどな。それにしても、くっそ、初イベントなのに失敗で終わりかよー」
チップは素直に悔しさを口にすると、呼応するように他の面々も悔しがる。
「まあ、まあ。このゲームが一筋縄じゃいかないのは、今に始まったことじゃないですから。だからみんな、このゲームやってるんでしょ?」
ミコトだけはどことなく穏やかな表情である。
「あはっ。違いない。じゃあ、いつまでも残っていても仕方ないから、お腹も空いたし、日常に戻りますか」
「そうしますか」
さすがに最後まで居座る気はないらしく、スズコ達パーティが去っていくと、チップ達もサーバーを出ることに決めたようだ。
「ハルマはまだ出ないのか?」
何やら考え事をして上の空だった親友に、問いかける。
「ん? ああ、もうちょっと残るよ。Eポーションの素材が少し残ってるから、最後に納品して報酬の足しにする」
Eポーションの納品は、ホブゴブリン討伐と同じ価値の報酬が出るのだ。
「そっか。じゃあ、またな。モカさんも、またです」
「ほーい! スズコ達にもよろしくねー」
そうして、このままイベントは静かに終わるかと思われた。
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