魔王の右腕、何本までなら許される?

おとのり

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第5章 切り株の村

Ver.1/第33話

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 トワネを新たな仲間に加えた翌日から、本格的に村の復興に向けて動き出すために各地を回ることにしていた。
「おや? この方もマリーさんと同じ、なつかしい匂いがしますね」
 まずはカフェに顔を出し、移住しないかの打診である。
 トワネを肩に乗せたまま歩き回るのは目立つかとも思ったが、サービスが始まってまだ10日と経っていないにもかかわらず、町を行き交うプレイヤーの見た目は多種多様になってきており、飛び抜けて異質というほどでもなくなっていた。
 これには、サービス開始を大きなトラブルなく乗り越えられたことで、課金アイテムの販売も始まったことの影響が大きい。
 今のところ課金アイテムとして販売されているのは、強さに反映されるものではなく、見た目を変えるオシャレ装備がメインであり、ゲーム内の無骨なデザインよりも普段着感覚のデザインは人気が高いようだ。ただ、武器と盾はそのまま見た目に反映されるため、清楚なワンピースに大楯とハンマーという狂気を感じさせる組み合わせの者も見かけることも多々あった。
「いらっしゃいませ。……その蜘蛛のぬいぐるみは?」
 異質ではなくなってきたとはいえ、面と向かって視界に入ると疑問に思うのも当然だろう。ただ、NPCが相手の場合は、そういうプログラムであると認識しておかないと、自分が何を相手にしているのかわからなくなりそうだ。
「あ、あはははは……。例の、ご神木を追われちゃった森の神様ですよ。あそこの村を復興できそうな目途が立ったので、移住してくれないかなー? と、思いまして」
「え!? それは本当なんですか!?」
 蜘蛛の正体についてなのか、村が復興できそうなことに対してなのか、どっちについての驚きなのかはっきりしなかったが、反応は上々に思えた。
「えーと、まだ開拓の途中なので、村と呼べるものではないんですけどね」
「そうなんですね。少し待っていてください。今、両親を呼んできますので」
 マスターのウィリアムはそう告げると、奥へと消えたかと思ったらすぐに戻ってきた。続いて、老齢と呼ぶにはまだ若々しさの残る男女が顔を出す。
「やあ、その匂いはベンジャミンとアンだね。久しぶりじゃないか」
「おお、そのお声はトワネ様ではないですか!? おなつかしゅうございます。ご無事だったのですね」
 それからはとんとん拍子で話が進み移住が決まった。ただ、マスターはこの店があるので残るのだそうだ。
 移住にかんしては、要望された家を作り、所有者にベンジャミンを登録すれば勝手に越してきて生活を始めるらしい。NPCは誰でも好きに登録できるわけではなく、ちゃんと許可を得なければできないようだ。

 その後、ベンジャミンとアンの紹介で他に移住してくれそうなNPCを5人紹介され、順に声をかけにいく。
 2人はウィンドレッドの町の住人だったが、あとの3人は光の大陸のライトライムと、土の大陸のアースガンドへと移動しなければならなかった。
 ただ、どのNPCもトワネを仲介にして、すぐに話はまとまった。ハルマは気づいていないようだが、通常の段取りでは、こんなに上手くいかないことになっている。
「よし。ひとまず村民はこのくらいにして、商業組合と教会に行くか」
 何となく同じエリアの方がよかろうと、ウィンドレッドに戻り、転移先の近くにある大きな建物に向かう。

 商業組合でも教会でも村を作りたいと告げたところ、必要なものは結局のところ家だった。
 商業組合の場合は、取引所の運営のために行商人が往来できる環境。取引所の建物があれば尚良し。
 教会の場合は、派遣する神父とシスターの住める場所。教会もあれば尚良し。ということだった。
「つまるところ、がんばって家づくりしろってことだな」
 シンプルでいいとハルマは思い、森の中へと向かうのだった。
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