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江戸時代。彼らと共に歩む捜査道
人魚の出現
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玉藻前が、先月の河童の噂についてどうなったか教えてくれた。どうやら、山で何人か行方不明になっていたらしいが、滝の近くで気絶して発見されたそうで。
しかし、なにも覚えてないらしく、野生動物に襲われたのだろう、ということになっていたと一郎さんが言っていたらしい。
一郎さんと玉藻前が実は先に発見していたらしいが、どうやら毒に何人かは当たっていた。
それを玉藻前は陰陽術という名目で毒を抜いたらしく、記憶もついでに封じたそうだ。
一郎さんには一応言いふらすなと言ったらしいが、そんな摩訶不思議なことは瓦版に書けないと返されたらしく、私は安心した。
そして、今日。美しい桜の髪飾りを市場で買い、身につけて受付をすれば、一郎さんは綺麗だと言ってくれた。しかし、ここがケーキ屋さんだからか、花より団子というべきか、微笑んだまま一郎さんの視線はすぐにケーキケースへと移る。
「うーむ……このマロンというのはなんだ?」
「ああ、それは……。」
【期間限定!マロンパフェ!】と書かれた看板を見て、一郎さんは即座に注文してくれたわ。
江戸言葉の上に小さく現代語訳が書かれているありがたい看板を見ながら、栗のことですよと伝える。
「栗……ぱふぇとやらも色々な種類があるのだな。この前はめろんとやらで、その前は苺で……様々な果物が食べられる贅沢な店など、二つとないのだろうな。」
(それは私も不思議に思ってるわ。大丈夫??この店、時代的に色々アウトな気がするのだけれど……。)
「玉はいないのか?」
思考していたら、突如そんなことを言われて、返事の声がひっくり返った。
「あっ、ええ、玉藻前は……。」
現代にて、どうしても食べるのだ、とこれまた期間限定のマロンタルトを食べに行ったの。
「……買い出しに。」
(私も食べたいのに……。)
末代まで呪ってやる、と思いながら、土曜である今日はこの店の営業のため来たのだ。
「どうして休みに仕事してるのかしら私。」
今思えば変である。
「?どうしたんだ?」
首をかしげるイケメン(一郎さん)を見れば、やる気は起きるのだが。イケメンって目の保養よね。ほんと。
「しかし、玉はいないのか。それならば、この後時間があれば、共に美しい花でも観に……。」
「一郎殿!!事件です!!」
「……沖田。」
だん、と大きな音を立てドアを開く男性。
それは瓦版を売る一郎さんの依頼主(情報元)である、新撰組の沖田総司その人である。
一郎さんはなにかを言いかけていたようだが、
焦った様子の沖田さんの声で掻き消され、げんなりとしながら睨んでいる。
「もう少し後にこれなかったのか?」
「いや、本当に急ぎなんですよ!!協力してくだせぇ!!」
「……沖田さん、店主殿がいるんだが?」
沖田さんは、私のほうを見たあと、一郎さんを見た。
「……もしかして、いい雰囲気でした?」
「もしかしなくとも、来なければそうだったな。」
さっと青ざめながら、沖田さんはヘラヘラと笑う。器用だわ。
「えーっと……簡単に言いますね、人魚が出ましたぜ!!
河童やら鬼火やらの以来来てたけど、
解決したって聞きまして、こういうのお得意でしょ!?
あとはお二人でゆっくりどうぞ!!」
「は?……いやまて簡単すぎないか!?」
そんな叫びは届かず、もう沖田さんはドアから出ていっている。
一郎さんは眉をピクピクとさせながら、出ていったドアを眺めている。
「……すまない、用事ができたようだ。人魚について、沖田さんを捕まえ詳しく聞いてくる。また助力を頼むかもしれない。」
「え、ああ……大丈夫ですよ?」
いってらっしゃい、と言えば、ありがとうと返された。
一郎さんは、結構近くで沖田さんを捕まえたみたいで、ぎゃぁぁ!という声が聞こえた。
しかし、なにも覚えてないらしく、野生動物に襲われたのだろう、ということになっていたと一郎さんが言っていたらしい。
一郎さんと玉藻前が実は先に発見していたらしいが、どうやら毒に何人かは当たっていた。
それを玉藻前は陰陽術という名目で毒を抜いたらしく、記憶もついでに封じたそうだ。
一郎さんには一応言いふらすなと言ったらしいが、そんな摩訶不思議なことは瓦版に書けないと返されたらしく、私は安心した。
そして、今日。美しい桜の髪飾りを市場で買い、身につけて受付をすれば、一郎さんは綺麗だと言ってくれた。しかし、ここがケーキ屋さんだからか、花より団子というべきか、微笑んだまま一郎さんの視線はすぐにケーキケースへと移る。
「うーむ……このマロンというのはなんだ?」
「ああ、それは……。」
【期間限定!マロンパフェ!】と書かれた看板を見て、一郎さんは即座に注文してくれたわ。
江戸言葉の上に小さく現代語訳が書かれているありがたい看板を見ながら、栗のことですよと伝える。
「栗……ぱふぇとやらも色々な種類があるのだな。この前はめろんとやらで、その前は苺で……様々な果物が食べられる贅沢な店など、二つとないのだろうな。」
(それは私も不思議に思ってるわ。大丈夫??この店、時代的に色々アウトな気がするのだけれど……。)
「玉はいないのか?」
思考していたら、突如そんなことを言われて、返事の声がひっくり返った。
「あっ、ええ、玉藻前は……。」
現代にて、どうしても食べるのだ、とこれまた期間限定のマロンタルトを食べに行ったの。
「……買い出しに。」
(私も食べたいのに……。)
末代まで呪ってやる、と思いながら、土曜である今日はこの店の営業のため来たのだ。
「どうして休みに仕事してるのかしら私。」
今思えば変である。
「?どうしたんだ?」
首をかしげるイケメン(一郎さん)を見れば、やる気は起きるのだが。イケメンって目の保養よね。ほんと。
「しかし、玉はいないのか。それならば、この後時間があれば、共に美しい花でも観に……。」
「一郎殿!!事件です!!」
「……沖田。」
だん、と大きな音を立てドアを開く男性。
それは瓦版を売る一郎さんの依頼主(情報元)である、新撰組の沖田総司その人である。
一郎さんはなにかを言いかけていたようだが、
焦った様子の沖田さんの声で掻き消され、げんなりとしながら睨んでいる。
「もう少し後にこれなかったのか?」
「いや、本当に急ぎなんですよ!!協力してくだせぇ!!」
「……沖田さん、店主殿がいるんだが?」
沖田さんは、私のほうを見たあと、一郎さんを見た。
「……もしかして、いい雰囲気でした?」
「もしかしなくとも、来なければそうだったな。」
さっと青ざめながら、沖田さんはヘラヘラと笑う。器用だわ。
「えーっと……簡単に言いますね、人魚が出ましたぜ!!
河童やら鬼火やらの以来来てたけど、
解決したって聞きまして、こういうのお得意でしょ!?
あとはお二人でゆっくりどうぞ!!」
「は?……いやまて簡単すぎないか!?」
そんな叫びは届かず、もう沖田さんはドアから出ていっている。
一郎さんは眉をピクピクとさせながら、出ていったドアを眺めている。
「……すまない、用事ができたようだ。人魚について、沖田さんを捕まえ詳しく聞いてくる。また助力を頼むかもしれない。」
「え、ああ……大丈夫ですよ?」
いってらっしゃい、と言えば、ありがとうと返された。
一郎さんは、結構近くで沖田さんを捕まえたみたいで、ぎゃぁぁ!という声が聞こえた。
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