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江戸時代。彼らと共に歩む捜査道
河童の噂 正体2
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「おい、その手を離せ。」
木から飛び降り、妖力を押さえずに解放する。産女は、わたしの妖力に気がついたように目を向けた。そして、変なものをみるような目をする。人間からなぜこのような気配が、とでも思っているのだろう。なぜなら、犬がいるため人間の姿だからだ。
犬はわたしの力にあてられたのか、ふらりとよろけた。
……すまん。
「殺気……っ!?玉は本当に有能(密偵とおもってるため)なのだな……っ!」
人間には殺気に感じるのか。……いや阿保なのか?
……なんてことを思ってる暇もない。産女は、ききき、とおよそ人間でない音をだし嗤う。それと同時に掴む力を強めたのか、あの女の顔が険しくなった。
「すぐに助けてやるからな。」
「ああ!!そんな背中から羽が生えてる異形の女など、すぐに切り捨ててやる!」
「えっ、殺傷はちょっと……まってあなた腕離して斬られるわよいいのっ!?まってまってまだ死にたくないわマカロン食べきってないのよ!?というかあのこどこよ……っ!!おのれ私の方向音痴呪うわよ……っ!!」
やはり利口でないらしいあの女は、あろうことか産女を叩こうとする。しかしもう片方のても掴まれ万事休すと呟いた。
「……助けてやるからおとなしくしていろ。」
「はは、店主殿はお転婆なのだな。……あのこ、とは男か?花には煩わしい羽虫が寄ってくるものだな。」
「ごもっとも!と言いたいところだが、よくこの状況でそう言えるな??犬は能天気なのか?」
なんだ、ただの冗談じゃないか、と言われても、そんなこと言ってる状況ではない。
「まぁ、そんな戯れはそろそろ暇を取らせよう。玉、あの異形の女を誘導してくれ。俺……わしが先ほど囮となったからな。救出する役目はわしにさせろ。」
「それが本音だな??」
建前と言うものがうまく機能していない説得をされ、ツッコミをいれる。が、それがまるで聞こえていないように頼んだぞ、と言われて気づくと目の前から掻き消えている。
(……はて、犬の先祖に忍者などいたか?)
人間業じゃない。
喰われたかと牛鬼の方を見ても、血溜まりなどなく、やはり忍者かと首をかしげた。
「えっ、一郎さん…!?嘘っ、食べられちゃったの……!?」
焦った顔の店主は、滑稽で可愛らしい。が、同時に犬が哀れでならん。……わたしも犬が食べられたと一瞬おもった?まぁ、目の前に大きな怪物がいたらそう考えるのも必然であろうて。
キキキキキーーーーー。
産女は、またもや鳴きはじめた。それと共に牛鬼の口が開く。毒を店主に吐こうとしているのだ。
「っ!待て……っ!こちらをみろ!牛鬼!!」
目は、店主に釘付けのまま。産女を見れば、いつの間にか店主の身体を、帯のようなもので巻き、口もそれで塞いでいる。
青ざめ、ひたすら首を降る店主。
(…っ仕方ない、妖術を使って、幻覚を見せ崖に呼び込むしかないか……!)
こんな大きさのを殺すのはなかなか面倒だ。ならば、崖から落としてしまえばいい。
狙いを定め、牛鬼に集中する。
犬の気配は完全になく、どこで見られているかわからない。本当に人間かと疑うほど完全に気配はつかめない。
だがやつも人間だ、あの怪物の動きを見破るのはなかなか難しいことなのだろう。様子見をしているのか。
(店主を助けるなど言っておいて、腑抜けめ……っ!)
なんにせよ、まずは牛鬼を誘導してからだ。
牛鬼に手を向ける。
(妖怪相手に幻術を使いつづけるのは、なかなか骨が折れるが……やるしかない。)
三、二……。
「!」
風が舞う。辺りの葉が牛鬼の視界を遮るように飛び始め、紅く染まっていく。時期はずれの紅葉となっていっているのだ。
その瞬間、視界の端でなにかが動き、ものすごい速さでこちらに向かってくる。
「……っ!」
構えて見ていれば、だんだんとそれがなにかを抱えているのだとわかった。そして、砂を舞わせ、わたしの後ろで、わたしを壁にするように止まった。
「……っ、すまん、隙が見つからなくてな……っ!だが、無事奪取したぞ!!」
「犬の阿呆者め、もう少しで毒をかけられるところだったんだぞ……!だが、よくやった。風を舞わせるとはな。」
「……?玉がしたんじゃないのか?」
「!?なんだと……!まて、こんなことを言っている場合ではない!」
葉が落ち、風が止み視界がクリアとなった牛鬼は、まさに鬼の形相でこちらに向かってくる。
「犬!」
「ああ!」
わたしは赤く大きな布をとりだし、犬と共に崖のそばまで行く。そして、布をヒラヒラとさせ……犬はその瞬間飛び上がり木の上へ、わたしは向かってきた牛鬼を交わした。
……闘牛の方法が通じるのか。一応牛だしな、と崖から落ちていく潮煮を見つめ思う。
「……キィ、キィ…。」
「おまえの敗けだ、異形の女。」
犬はいつの間にか店主の布をほどきおえていた。
恨めしそうにこちらを睨んでいた産女は、ふとなにかを思い出したかのように不気味な微笑みを浮かべた。……自ら、崖に向かいながら。
「キキキキキ、キィーー。」
両手を広げ、微笑む女は。
「……!?え、まってちょっと命大事に……火曜サスペンスーーー!?」
暗い谷底へと沈んでいった。
静かなはずの山のなか。崖から女が落ちたという。しかし、その後異形の者をその山で見ることはなかったそうだ。
ただ、二人。
ショックを受けた、店主と呼び慕われる女を担いでいた者たちは、帰り際、妙な視線を感じ振り返れば……。
木の上でこちらの様子をうかがう、山伏のような格好の少年がいたと言う。
木から飛び降り、妖力を押さえずに解放する。産女は、わたしの妖力に気がついたように目を向けた。そして、変なものをみるような目をする。人間からなぜこのような気配が、とでも思っているのだろう。なぜなら、犬がいるため人間の姿だからだ。
犬はわたしの力にあてられたのか、ふらりとよろけた。
……すまん。
「殺気……っ!?玉は本当に有能(密偵とおもってるため)なのだな……っ!」
人間には殺気に感じるのか。……いや阿保なのか?
……なんてことを思ってる暇もない。産女は、ききき、とおよそ人間でない音をだし嗤う。それと同時に掴む力を強めたのか、あの女の顔が険しくなった。
「すぐに助けてやるからな。」
「ああ!!そんな背中から羽が生えてる異形の女など、すぐに切り捨ててやる!」
「えっ、殺傷はちょっと……まってあなた腕離して斬られるわよいいのっ!?まってまってまだ死にたくないわマカロン食べきってないのよ!?というかあのこどこよ……っ!!おのれ私の方向音痴呪うわよ……っ!!」
やはり利口でないらしいあの女は、あろうことか産女を叩こうとする。しかしもう片方のても掴まれ万事休すと呟いた。
「……助けてやるからおとなしくしていろ。」
「はは、店主殿はお転婆なのだな。……あのこ、とは男か?花には煩わしい羽虫が寄ってくるものだな。」
「ごもっとも!と言いたいところだが、よくこの状況でそう言えるな??犬は能天気なのか?」
なんだ、ただの冗談じゃないか、と言われても、そんなこと言ってる状況ではない。
「まぁ、そんな戯れはそろそろ暇を取らせよう。玉、あの異形の女を誘導してくれ。俺……わしが先ほど囮となったからな。救出する役目はわしにさせろ。」
「それが本音だな??」
建前と言うものがうまく機能していない説得をされ、ツッコミをいれる。が、それがまるで聞こえていないように頼んだぞ、と言われて気づくと目の前から掻き消えている。
(……はて、犬の先祖に忍者などいたか?)
人間業じゃない。
喰われたかと牛鬼の方を見ても、血溜まりなどなく、やはり忍者かと首をかしげた。
「えっ、一郎さん…!?嘘っ、食べられちゃったの……!?」
焦った顔の店主は、滑稽で可愛らしい。が、同時に犬が哀れでならん。……わたしも犬が食べられたと一瞬おもった?まぁ、目の前に大きな怪物がいたらそう考えるのも必然であろうて。
キキキキキーーーーー。
産女は、またもや鳴きはじめた。それと共に牛鬼の口が開く。毒を店主に吐こうとしているのだ。
「っ!待て……っ!こちらをみろ!牛鬼!!」
目は、店主に釘付けのまま。産女を見れば、いつの間にか店主の身体を、帯のようなもので巻き、口もそれで塞いでいる。
青ざめ、ひたすら首を降る店主。
(…っ仕方ない、妖術を使って、幻覚を見せ崖に呼び込むしかないか……!)
こんな大きさのを殺すのはなかなか面倒だ。ならば、崖から落としてしまえばいい。
狙いを定め、牛鬼に集中する。
犬の気配は完全になく、どこで見られているかわからない。本当に人間かと疑うほど完全に気配はつかめない。
だがやつも人間だ、あの怪物の動きを見破るのはなかなか難しいことなのだろう。様子見をしているのか。
(店主を助けるなど言っておいて、腑抜けめ……っ!)
なんにせよ、まずは牛鬼を誘導してからだ。
牛鬼に手を向ける。
(妖怪相手に幻術を使いつづけるのは、なかなか骨が折れるが……やるしかない。)
三、二……。
「!」
風が舞う。辺りの葉が牛鬼の視界を遮るように飛び始め、紅く染まっていく。時期はずれの紅葉となっていっているのだ。
その瞬間、視界の端でなにかが動き、ものすごい速さでこちらに向かってくる。
「……っ!」
構えて見ていれば、だんだんとそれがなにかを抱えているのだとわかった。そして、砂を舞わせ、わたしの後ろで、わたしを壁にするように止まった。
「……っ、すまん、隙が見つからなくてな……っ!だが、無事奪取したぞ!!」
「犬の阿呆者め、もう少しで毒をかけられるところだったんだぞ……!だが、よくやった。風を舞わせるとはな。」
「……?玉がしたんじゃないのか?」
「!?なんだと……!まて、こんなことを言っている場合ではない!」
葉が落ち、風が止み視界がクリアとなった牛鬼は、まさに鬼の形相でこちらに向かってくる。
「犬!」
「ああ!」
わたしは赤く大きな布をとりだし、犬と共に崖のそばまで行く。そして、布をヒラヒラとさせ……犬はその瞬間飛び上がり木の上へ、わたしは向かってきた牛鬼を交わした。
……闘牛の方法が通じるのか。一応牛だしな、と崖から落ちていく潮煮を見つめ思う。
「……キィ、キィ…。」
「おまえの敗けだ、異形の女。」
犬はいつの間にか店主の布をほどきおえていた。
恨めしそうにこちらを睨んでいた産女は、ふとなにかを思い出したかのように不気味な微笑みを浮かべた。……自ら、崖に向かいながら。
「キキキキキ、キィーー。」
両手を広げ、微笑む女は。
「……!?え、まってちょっと命大事に……火曜サスペンスーーー!?」
暗い谷底へと沈んでいった。
静かなはずの山のなか。崖から女が落ちたという。しかし、その後異形の者をその山で見ることはなかったそうだ。
ただ、二人。
ショックを受けた、店主と呼び慕われる女を担いでいた者たちは、帰り際、妙な視線を感じ振り返れば……。
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