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江戸時代。彼らと共に歩む捜査道
河童の噂 正体1
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「……。」
ドタバタ、と言うにふさわしい現状。わたしが連れてきたいえ、可哀想な状況だ。
「玉!?これはなんだ!?」
「……一応謝っておこう。すまん。」
「一応とはなんだ!?これは予想外すぎるんだがっっ!?」
哀れみを込めた目で、木の上から犬を見れば、犬は地面を駆け巡っている。化け物に追いかけられているからだ。
「なんだこいつは……!?牛みたいな顔に、蜘蛛の手足……身体がおかしいぞ!?この大きさの化け物がいるなら先に言え!!」
「まさか牛鬼とはおもわなんだー。どうにかそやつの気をそらしておいてくれー。」
聞こえるよう大きな声で言えば、この薄情ものめ!!!となじられる。
(仕方ない、わたしがいては妖力を察しとられ逃げられてしまうからな。)
「なんとか生き延びろよーー。」
「玉は本当に人の心がないのだなっっ!!」
まぁ大丈夫だろう、牛鬼の吐く毒を本能で避け、よい瞬発能力を発揮し近づく牛鬼の手足から刀で対抗し斬りつけているのだから。
(死ぬことはないだろう。)
遠目に見ながら、あの女に思い馳せる。……馳せていたかったが、犬の声が煩わしく集中できない。あきらめて牛鬼がなぜいるのか考える。
(変だな……牛鬼は地獄に1000年ほど囚われている重罪人と聞いた。なぜ現し世に……?)
手引きしたものがいるとしか考えられない。が、ここは江戸時代。現代で黄泉平坂へひとり旅に行った際に地獄を見てきたが、確かに牛鬼はいた。千年いるのなら、江戸には既に牛鬼は地獄にいるはずなのだが。
(どうやら手引きしたものがいるようだな。)
牛鬼を見れば、犬の刀で所々傷つけられイラついているようだ。なぜ首を切り落とさないのか。
いや、牛鬼が大きくて首を取れないのか。人間は飛べないしな。まぁそもそも殺しては困るのだが。地獄の獄卒に引き渡さなくては。獄卒の知り合いがキレ続けて部下から苦情があったしな。それにしても。
(飛べないのか……飛ばないとは不便だな。)
もう一度憐れんでみる。
「おい!!玉!!こいつを俺はどうすればいいんだっっ!?気をそらせと言われてもっ、くっ!!俺が喰われそうなのだがっっ!!」
「大丈夫だーー、犬は死なないぞーーたぶん。」
「最後の言葉が聞き取れなかったが不吉そうだなっっ!?」
刀の当たる音が聞こえる。およそ普段は聞こえないだろう金属のようなものを斬るような音だ。
「ふむ……牛鬼の足は甲羅に包まれていて、固いのか。しらなかったな。だが……。」
犬も気づいたようだ。間接の部分のみ、甲羅がないことに。牛鬼がイラつくのは、必ずといって関節を斬りつけられたあとだ。そう、関節を曲げるため甲羅がないのだろう。犬も関節に狙いを定める。……が、それは届かない。
突如、狙いを定めたような素振りをみせ牛鬼は後退する。そしてやつの目線の先には……着物を着た女……産女。そしてその女に腕を掴まれている、顔を苦痛に歪めたあの店主がいた。
ドタバタ、と言うにふさわしい現状。わたしが連れてきたいえ、可哀想な状況だ。
「玉!?これはなんだ!?」
「……一応謝っておこう。すまん。」
「一応とはなんだ!?これは予想外すぎるんだがっっ!?」
哀れみを込めた目で、木の上から犬を見れば、犬は地面を駆け巡っている。化け物に追いかけられているからだ。
「なんだこいつは……!?牛みたいな顔に、蜘蛛の手足……身体がおかしいぞ!?この大きさの化け物がいるなら先に言え!!」
「まさか牛鬼とはおもわなんだー。どうにかそやつの気をそらしておいてくれー。」
聞こえるよう大きな声で言えば、この薄情ものめ!!!となじられる。
(仕方ない、わたしがいては妖力を察しとられ逃げられてしまうからな。)
「なんとか生き延びろよーー。」
「玉は本当に人の心がないのだなっっ!!」
まぁ大丈夫だろう、牛鬼の吐く毒を本能で避け、よい瞬発能力を発揮し近づく牛鬼の手足から刀で対抗し斬りつけているのだから。
(死ぬことはないだろう。)
遠目に見ながら、あの女に思い馳せる。……馳せていたかったが、犬の声が煩わしく集中できない。あきらめて牛鬼がなぜいるのか考える。
(変だな……牛鬼は地獄に1000年ほど囚われている重罪人と聞いた。なぜ現し世に……?)
手引きしたものがいるとしか考えられない。が、ここは江戸時代。現代で黄泉平坂へひとり旅に行った際に地獄を見てきたが、確かに牛鬼はいた。千年いるのなら、江戸には既に牛鬼は地獄にいるはずなのだが。
(どうやら手引きしたものがいるようだな。)
牛鬼を見れば、犬の刀で所々傷つけられイラついているようだ。なぜ首を切り落とさないのか。
いや、牛鬼が大きくて首を取れないのか。人間は飛べないしな。まぁそもそも殺しては困るのだが。地獄の獄卒に引き渡さなくては。獄卒の知り合いがキレ続けて部下から苦情があったしな。それにしても。
(飛べないのか……飛ばないとは不便だな。)
もう一度憐れんでみる。
「おい!!玉!!こいつを俺はどうすればいいんだっっ!?気をそらせと言われてもっ、くっ!!俺が喰われそうなのだがっっ!!」
「大丈夫だーー、犬は死なないぞーーたぶん。」
「最後の言葉が聞き取れなかったが不吉そうだなっっ!?」
刀の当たる音が聞こえる。およそ普段は聞こえないだろう金属のようなものを斬るような音だ。
「ふむ……牛鬼の足は甲羅に包まれていて、固いのか。しらなかったな。だが……。」
犬も気づいたようだ。間接の部分のみ、甲羅がないことに。牛鬼がイラつくのは、必ずといって関節を斬りつけられたあとだ。そう、関節を曲げるため甲羅がないのだろう。犬も関節に狙いを定める。……が、それは届かない。
突如、狙いを定めたような素振りをみせ牛鬼は後退する。そしてやつの目線の先には……着物を着た女……産女。そしてその女に腕を掴まれている、顔を苦痛に歪めたあの店主がいた。
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