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江戸時代。彼らと共に歩む捜査道
河童6.5
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「さて、状況を整理するぞ。」
「ああ……店主殿はどうするんだ?毒を食らって、弱っているだろう。」
「そうだな。どうやら、わたしの……陰陽術が効かない毒のようだ。つまり…………魔物だ。」
おもいっきりためて答えてやれば、苦虫を潰したような顔をされる。スルーか。
「……何度聞いても慣れんな。ほとほと信じられん。魔物や神など、俺には見えんからな。」
俺、という一人称に嘲りの笑みがこぼれる。
猫被りはやめたのか、といえば、店主殿がいないのだから良いだろうと犬は吐き捨てたように答えた。
「どうせ、俺の正体が瓦版などではないと気づいているんだろう。」
「あれで気づかないやつは阿呆だ。」
「店主殿は騙されてくれたが?」
「あれは平和ボケした愚かな一般人だ。」
「ボケ……?お前もよくわからん言い方をする。それに、愚かとは……お前の雇い主にずいぶんないいようをするな。彼女が愚かではなく、玉が鋭すぎるのだ。」
ため息をつき額に手をやる犬を鼻で嗤ってやれば、本当に敵にまわしたくない男だといわれる。
「お褒めいただき光栄だな。さて、まずは予測からだ。……というより、お前がわたしに依頼したのは正解だな。」
「どちらかというと、玉が首を突っ込んできたんだが。魔物というならば、心当たりはあるのだろう。」
「ああ。だが、心当たりがありすぎて特定ができない。ならばどうする?現場に行くんだ。」
どこぞの刑事ドラマの台詞を拝借し、頭にてをやりポーズをつける。あの時代はとても面白いからはまるのも無理はない。わたしもできることならあの時代に生まれたかったが、それでは幼すぎてただの狐。妖術を使えないし、そもそもあの女に出会うことなどできぬだろう。
「特定できないのか!?だが、現場とは……
また川にいくのか?」
犬がわかってか知らずか、とんちんかんなことをいう。呆れた目をむけ、川の流れはじめの山のほうだといえば、そうかという。なんだ貴様。ジョークにしてはつまらなすぎる。
「だが玉、魔物ならば、どう太刀打ちする。刀で切ればいいのか?」
「ああ。」
頷けば信じられないものを見るような目で見られる。冗談を肯定されるとは思わなかったのだろう。
「はっ!?普通、魔物といったら……こう、札や術とかそういうものを使うので滅っせるんじゃないのか!?」
「ああ、いやだ。これだから江戸の人間は。頭が固くて困る。ふつう生き物は急所を切ったら死ぬだろう。」
「魔物は……生き物なのか?」
「黄泉の国にいないでこちらに存在する限り生き物のくくりでいいのではないか?復活するやつも一度死んでからだしな。」
「そう……なのか?いや、陰陽師の玉がいうならばそうなのだろうな……。」
ちなみにわたしはなかなか死なない。寿命ならあと千年くらいは生きるだろう。怪我もなかなかしない。してもすぐ治癒される。これでも力ある九尾の狐であるためだ。
(……あの女が先に死ぬのか。)
それは、寂しいな……。
そう浮かんだ言葉に、わたしは気づく。そして、あの女に惚れているということも再確認する。
「不甲斐ないな。わたしがいまさら寂しいなどと。」
世の理に抗うことなど許されない。だから寂しいと思ったのだろう。
言葉を溢せば、犬は反応し声をかけてきた。それはどうやら勘違いしているらしくこちらはわらってしまう。
「どうした?店主殿がいなくて寂しいのは俺も同じだ。だが、それ以上に店主殿のからだの毒の持ち主が憎い。」
「はっ!どうやら珍しく気が合うようだな。」
こいつやあの女といると、どうしてもしんみりとした空気を続けられない。あの女に向ける気持ちが愛ならば。
(こいつへの気持ちは……ライバル心なのだろうな。)
どうせこいつもあの女を愛している。負ける気はない。だが、どうしてもというならば……
これからも店にいれてやってもいい。
あの女を譲る気はないが。
「こうしてもたついてる暇はないぞ、犬!山を捜査し黒幕を倒し、店主に料理を作って貰わねばな!」
「そうだな……待て玉!!お前店主殿の手料理を食べているのか!?俺の気持ちを知っていて
それは男としてどうなんだ!」
先に店からでたわたしを追いかけるように出てきた犬に狡いと言われ舌を出す。
(……ライバルや友達というのは……初めてかも、知れんな。)
恋も。友情も。なにもかも。
(あの女のお陰か。)
あの日、安倍晴明から逃がし時代を移動したあの女。あいつの隣にいたくて、一通り本を読み勉強した。ときにはドラマやバラエティーを共に楽しんだ。あいつの料理はうまいし、いつしか他人を騙す以外の楽しみを見つけてしまった。
(あの女は……わたしにとっての女神だな。)
果たして、あの女は誰に微笑むのだろうか。
(それは、神のみぞ知る……か。)
「ああ……店主殿はどうするんだ?毒を食らって、弱っているだろう。」
「そうだな。どうやら、わたしの……陰陽術が効かない毒のようだ。つまり…………魔物だ。」
おもいっきりためて答えてやれば、苦虫を潰したような顔をされる。スルーか。
「……何度聞いても慣れんな。ほとほと信じられん。魔物や神など、俺には見えんからな。」
俺、という一人称に嘲りの笑みがこぼれる。
猫被りはやめたのか、といえば、店主殿がいないのだから良いだろうと犬は吐き捨てたように答えた。
「どうせ、俺の正体が瓦版などではないと気づいているんだろう。」
「あれで気づかないやつは阿呆だ。」
「店主殿は騙されてくれたが?」
「あれは平和ボケした愚かな一般人だ。」
「ボケ……?お前もよくわからん言い方をする。それに、愚かとは……お前の雇い主にずいぶんないいようをするな。彼女が愚かではなく、玉が鋭すぎるのだ。」
ため息をつき額に手をやる犬を鼻で嗤ってやれば、本当に敵にまわしたくない男だといわれる。
「お褒めいただき光栄だな。さて、まずは予測からだ。……というより、お前がわたしに依頼したのは正解だな。」
「どちらかというと、玉が首を突っ込んできたんだが。魔物というならば、心当たりはあるのだろう。」
「ああ。だが、心当たりがありすぎて特定ができない。ならばどうする?現場に行くんだ。」
どこぞの刑事ドラマの台詞を拝借し、頭にてをやりポーズをつける。あの時代はとても面白いからはまるのも無理はない。わたしもできることならあの時代に生まれたかったが、それでは幼すぎてただの狐。妖術を使えないし、そもそもあの女に出会うことなどできぬだろう。
「特定できないのか!?だが、現場とは……
また川にいくのか?」
犬がわかってか知らずか、とんちんかんなことをいう。呆れた目をむけ、川の流れはじめの山のほうだといえば、そうかという。なんだ貴様。ジョークにしてはつまらなすぎる。
「だが玉、魔物ならば、どう太刀打ちする。刀で切ればいいのか?」
「ああ。」
頷けば信じられないものを見るような目で見られる。冗談を肯定されるとは思わなかったのだろう。
「はっ!?普通、魔物といったら……こう、札や術とかそういうものを使うので滅っせるんじゃないのか!?」
「ああ、いやだ。これだから江戸の人間は。頭が固くて困る。ふつう生き物は急所を切ったら死ぬだろう。」
「魔物は……生き物なのか?」
「黄泉の国にいないでこちらに存在する限り生き物のくくりでいいのではないか?復活するやつも一度死んでからだしな。」
「そう……なのか?いや、陰陽師の玉がいうならばそうなのだろうな……。」
ちなみにわたしはなかなか死なない。寿命ならあと千年くらいは生きるだろう。怪我もなかなかしない。してもすぐ治癒される。これでも力ある九尾の狐であるためだ。
(……あの女が先に死ぬのか。)
それは、寂しいな……。
そう浮かんだ言葉に、わたしは気づく。そして、あの女に惚れているということも再確認する。
「不甲斐ないな。わたしがいまさら寂しいなどと。」
世の理に抗うことなど許されない。だから寂しいと思ったのだろう。
言葉を溢せば、犬は反応し声をかけてきた。それはどうやら勘違いしているらしくこちらはわらってしまう。
「どうした?店主殿がいなくて寂しいのは俺も同じだ。だが、それ以上に店主殿のからだの毒の持ち主が憎い。」
「はっ!どうやら珍しく気が合うようだな。」
こいつやあの女といると、どうしてもしんみりとした空気を続けられない。あの女に向ける気持ちが愛ならば。
(こいつへの気持ちは……ライバル心なのだろうな。)
どうせこいつもあの女を愛している。負ける気はない。だが、どうしてもというならば……
これからも店にいれてやってもいい。
あの女を譲る気はないが。
「こうしてもたついてる暇はないぞ、犬!山を捜査し黒幕を倒し、店主に料理を作って貰わねばな!」
「そうだな……待て玉!!お前店主殿の手料理を食べているのか!?俺の気持ちを知っていて
それは男としてどうなんだ!」
先に店からでたわたしを追いかけるように出てきた犬に狡いと言われ舌を出す。
(……ライバルや友達というのは……初めてかも、知れんな。)
恋も。友情も。なにもかも。
(あの女のお陰か。)
あの日、安倍晴明から逃がし時代を移動したあの女。あいつの隣にいたくて、一通り本を読み勉強した。ときにはドラマやバラエティーを共に楽しんだ。あいつの料理はうまいし、いつしか他人を騙す以外の楽しみを見つけてしまった。
(あの女は……わたしにとっての女神だな。)
果たして、あの女は誰に微笑むのだろうか。
(それは、神のみぞ知る……か。)
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