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江戸時代。彼らと共に歩む捜査道
河童5
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「ううむ……ただの川だ。河童のようなものは見えぬし…やはりなにか見間違えたのだろう。」
「おい、犬。私がおかしいのか?それとも江戸がおかしいのか?」
私の姿をみて、玉藻前は珍しく狼狽える。そしてすぐに羽織を着せてくれた。
それはそうよ。渡された着物は、濡れて透けている。店で着替える際に、薄いとは思ったのだけれど特にきにせずあわてて着替えてしまい、移動も特に目立たなかったため、そのまま川にはいってしまったのだ。
(ほんと……白い下着でよかったわ。)
黒い下着も持っていたが、それを今日は着なくてよかった。時代的な問題もあるし、そもそも羞恥心が死ぬ。
「ん…?……!?すまない、透けていたのか!」
「だよな?なぜこんなものを用意した?」
「いや、これは近年人気となった絽という織物技法でな……薄手で、夏にちょうどよく、新しくできたということでおなごに人気だと聞いたのだが……すまない。」
私の体を見ないよう勢いよく頭を下げる一郎さん。
「その……私のことを思ってくれたのはわかりましたから、頭を上げて……。」
「それはしかねる、嫁入り前の女の体を見ることはできん!嫁入りしたならまた別だが……。」
「えっ?」
「ほう、邪な心を持っているようだな?
そもそも、調査にいくのに薄手な、流行りの女の着物などと……普通は履き物だろう。
……どうせ見たかっただとかそういう理由だろうが。」
どうやら、図星だったようで、顔を赤らめた。
「いや、それは……そうだな。だが、わしは玉のようにいかがわしい気持ちからではなく……。」
「いまさりげなくわたしを貶したな??というか女に着物を送ったというのにいかがわしい気持ちがないなどとのたまうのか?」
さすがに言い返せなくなったみたい。顔はもう茹で蛸のようだ。
「はぁ……。素足で深いところに行かせるのは危ないからな。わかっているだろう?」
「ああ。反省した。すまなかったな店主殿。深いのほうの調査は任せてくれ。浅瀬を頼んでもよいか。」
「任せてください、それくらいしかできませんものね……。」
二人は、川の中心部へと向かっていく。流れが速いが、万が一のときは玉藻前が妖術かなにかでと何とかしてくれるはずだ。
「さぁて、私はこの辺りを……あら?」
とても澄んでいるというのに、魚が一匹浮かんでいる。どうやら外傷はないようだ。
「どうしてかしら……いえ、こういうときはこうよね。」
しゃがみ、手を合わせる。いかんせん、私は釣りなどの命を消す行為が苦手なのだ。
手を合わせながら可哀想に、と思っていると、その魚が跳ねた。生きていたようで、顔に思いっきり水がかかってしまう。
「あらまぁ!生きてたのね!」
元気だわ、と思ってみていたそのとき。
ぐらぐらと視界が揺れ始める。
足元がおぼつかない。
目の前が白くなっていく。
からだ全体が水の冷たさを感じた。
耳に届くのは、玉藻前と一郎さんの焦った声だけだ。
目蓋が重い。
ゆっくりと意識が遠退きはじめ……ざばっ、という音と共に私は一郎さんに自ら抱え上げられた。
「大事なく……ないな!?おい、玉!店主殿が倒れた!」
「わかっている!様子をみせろ……!
これは……毒か……!」
「まて、しかし俺達はなんともないだろう!?」
「なにか条件があるのだろう……浅瀬と淵か?店主は浅瀬を調べていた。洗濯も、浅瀬でしかできぬな?中心部は川の流れが速いが、岸に近い両端は遅いだろう…。」
「ふむ、たしかにな…。淵は岸辺や川底で擦られないから、流れの邪魔が入らないということか。」
「そうだ。江戸の人間にしてはできのいい頭だな。それで、比較的毒が溜まりやすいのだろう。淵の場合、すぐに流れてしまうから、タイミングが悪ければ毒にあたるということだろう。」
「たい……??よくわからんが、誰かが毒を流していると?」
「ああ……まてまてまて、そんな話をしてる場合ではない!手元を見ろ犬!」
「ん……?」
そう、ぐったりとし顔の青い私がいます。
「!?!?話し込んでしまった!!速く店に行かなければ!!」
「だからお前に店主を持たせたくなかったのだ!!なぜお前のほうが店主のいた位置から近かった!?」
(いいから争いよりも速く助けて……。)
「おい、犬。私がおかしいのか?それとも江戸がおかしいのか?」
私の姿をみて、玉藻前は珍しく狼狽える。そしてすぐに羽織を着せてくれた。
それはそうよ。渡された着物は、濡れて透けている。店で着替える際に、薄いとは思ったのだけれど特にきにせずあわてて着替えてしまい、移動も特に目立たなかったため、そのまま川にはいってしまったのだ。
(ほんと……白い下着でよかったわ。)
黒い下着も持っていたが、それを今日は着なくてよかった。時代的な問題もあるし、そもそも羞恥心が死ぬ。
「ん…?……!?すまない、透けていたのか!」
「だよな?なぜこんなものを用意した?」
「いや、これは近年人気となった絽という織物技法でな……薄手で、夏にちょうどよく、新しくできたということでおなごに人気だと聞いたのだが……すまない。」
私の体を見ないよう勢いよく頭を下げる一郎さん。
「その……私のことを思ってくれたのはわかりましたから、頭を上げて……。」
「それはしかねる、嫁入り前の女の体を見ることはできん!嫁入りしたならまた別だが……。」
「えっ?」
「ほう、邪な心を持っているようだな?
そもそも、調査にいくのに薄手な、流行りの女の着物などと……普通は履き物だろう。
……どうせ見たかっただとかそういう理由だろうが。」
どうやら、図星だったようで、顔を赤らめた。
「いや、それは……そうだな。だが、わしは玉のようにいかがわしい気持ちからではなく……。」
「いまさりげなくわたしを貶したな??というか女に着物を送ったというのにいかがわしい気持ちがないなどとのたまうのか?」
さすがに言い返せなくなったみたい。顔はもう茹で蛸のようだ。
「はぁ……。素足で深いところに行かせるのは危ないからな。わかっているだろう?」
「ああ。反省した。すまなかったな店主殿。深いのほうの調査は任せてくれ。浅瀬を頼んでもよいか。」
「任せてください、それくらいしかできませんものね……。」
二人は、川の中心部へと向かっていく。流れが速いが、万が一のときは玉藻前が妖術かなにかでと何とかしてくれるはずだ。
「さぁて、私はこの辺りを……あら?」
とても澄んでいるというのに、魚が一匹浮かんでいる。どうやら外傷はないようだ。
「どうしてかしら……いえ、こういうときはこうよね。」
しゃがみ、手を合わせる。いかんせん、私は釣りなどの命を消す行為が苦手なのだ。
手を合わせながら可哀想に、と思っていると、その魚が跳ねた。生きていたようで、顔に思いっきり水がかかってしまう。
「あらまぁ!生きてたのね!」
元気だわ、と思ってみていたそのとき。
ぐらぐらと視界が揺れ始める。
足元がおぼつかない。
目の前が白くなっていく。
からだ全体が水の冷たさを感じた。
耳に届くのは、玉藻前と一郎さんの焦った声だけだ。
目蓋が重い。
ゆっくりと意識が遠退きはじめ……ざばっ、という音と共に私は一郎さんに自ら抱え上げられた。
「大事なく……ないな!?おい、玉!店主殿が倒れた!」
「わかっている!様子をみせろ……!
これは……毒か……!」
「まて、しかし俺達はなんともないだろう!?」
「なにか条件があるのだろう……浅瀬と淵か?店主は浅瀬を調べていた。洗濯も、浅瀬でしかできぬな?中心部は川の流れが速いが、岸に近い両端は遅いだろう…。」
「ふむ、たしかにな…。淵は岸辺や川底で擦られないから、流れの邪魔が入らないということか。」
「そうだ。江戸の人間にしてはできのいい頭だな。それで、比較的毒が溜まりやすいのだろう。淵の場合、すぐに流れてしまうから、タイミングが悪ければ毒にあたるということだろう。」
「たい……??よくわからんが、誰かが毒を流していると?」
「ああ……まてまてまて、そんな話をしてる場合ではない!手元を見ろ犬!」
「ん……?」
そう、ぐったりとし顔の青い私がいます。
「!?!?話し込んでしまった!!速く店に行かなければ!!」
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(いいから争いよりも速く助けて……。)
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