妖怪と武士との異変日記帳!

マカロン

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平安時代、彼と最初の捜査

純白の花嫁と飴屋

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「え?」
ヨウコさんと別れたあと、飴屋を見に行くと、とても繁盛していた。
「何かあったんですか?」
「ん?ああ、ここの飴屋、嫁さんが帰ってきたらしいよ。しかも、飴をくわえた赤ん坊を連れて。そんで、最近でてた女の霊は、もしかしたら飴をやることで赤ん坊と嫁さんを連れてきてくれた、女神様じゃあないかって話なんだよ。」
「そうそう、そんで、新婚の私たちが来たって訳さ。元気でかわいい赤ん坊を授けてほしいからねぇ。しかも、その飴を子供にやると、いいことが起こるそうじゃないか。」
「え、え??そうなんですか??」
イチャイチャしてる夫婦は、幸せそうに飴を買って帰っていった。
「あれは、霊じゃなくて女神様なの?」
なぜそんなことになっているかわからず、家へと帰り、パソコンを開く。
「京都の六道辻・・・飴屋、と。」

検索すると、歴史ある飴屋の記事がでてきた。
《みな◯や幽霊子育飴本舗

霊が、赤ん坊を育てるために飴を貰いに行くという伝説がある。女が飴屋に毎夜来るという。それが続いた飴屋の主人は、寝込んでしまった。それを聞き付けた近所の若者たちが飴屋で女を待ち、あとをつけると、女は墓場へと向かい、ふっと姿を消した。》

「え、これって・・・。」
間違いない、近所の若者とは、私とヨウコさんのことだ。ふっと姿を消したのも本当で、霊は墓に向かっていた。
「でも、どうしてその事が・・・。」
もしかして、と今朝のわたしの行動を思い出す。
「私が、広めたから?」
でも、広めろと言ったのはヨウコさんである。いや、そもそもなぜわざわざ広めろと言ったのか。そういえば、近所の人たちは六道辻のことをなにも知らなかった。毎夜飴屋に霊が来ていたら、騒ぎになるというのに。いや、ならば孝太さんは、なぜ知っていた?あまり焦りのないようにも見えた。
「・・・んー、もう!わからないわよ、なんにも!」
夜には聞けるだろうから、ベットにはいって寝た。

「それでは、行くぞ。」
店の前に、ヨウコさんは、夜の11時ごろに来た。彼は、六道辻を通りすぎ、飴屋へとはいる。
「え、ちょっと。幽霊を見に行くんじゃないんですか?」
「なぜわざわざだれも来ない六道辻を見ていなきゃならんのだ。もう霊はここにいる。」
「は?なにを・・・。」
「おい、ここの主人はいるか!」
声を張り上げたヨウコさんに、きれいな女の人が、主人は今は寝込んでいて、かわりにわたしが受け付けるという。
「やはりな。さて、答え合わせとしよう。女、だれかに似ていないか?」
「え」
じっと奥さんを見ると、たしかにだれかににている気がする。そう、つい昨日見かけたばかりの・・・。
「飴を貰いに来る幽霊!?」
「!!」
奥さんは、どうして、と呟いた。
「やはりな。この女はあの幽霊で間違いない。いや、生きているのだから幽霊ではないな。」
「ど、どどど、どうしてここに・・・!」
「それは、ここの主人の妻だからだ。聞くところによると、主人は寝込んでいるらしいな。それは、霊が妻だと気づき、昼に仕事をしていながら、夜も眠らず妻をまっていたからだ。」
「待ってください、でも、どうしてヨウコさんは妻だと思ったんですか!?」
「思い出せ。子供を望まない男がいた、女房に逃げられた、女房が子供を抱いて帰ってきた・・・そういう噂は聞いたな?すべて、この飴屋での出来事ということだ。まず、こんな噂は聞いたとお前が話したときから気づいていた。これはすべて、飴屋の主人の話ではないかと。お前に広めろと言ったのは、そのような情報を得るためだ。そして、妻は思うだろう。騒ぎになっては、帰るしかない。主人は寝込んでいるらしいから、商売ができず食べるものがなくなってしまう。私のせいで、と。」
「でも、どうしてお墓に・・・。」
「簡単だ。墓を通りすぎたところに嫁の実家があるからだ。墓を通った方が、近道なのだろう。」
「でも、消えたじゃないですか!?」
「それは、嫁は、墓で転んだからだ。それをちょうど、わたしたちは目撃した。まぁ、いい時だったな。転んだのだとわかっていたから、お前に話に集中させ、さも霊がでたかのように思わせ噂を広めたのだ。そうすれば、情報源が来ると思ったからな。」
「情報源・・・?いや、そもそも、生きてるなら、どうしてやつれて、顔色悪く、しかも白無垢着てたんですか!?」
知らないのか、とめんどくさそうな目を向けられる。
「やつれて顔色が悪かったのは、食べ物が少なかったからだ。女が働ける訳がない。しかも、嫁入りをした娘だ。どうにか両親の稼ぎで食べていたのだろうが、子供もいる。食事はすべて赤ん坊に流れたのだろう。飴は重要な栄養源だ。食事を少しでも多く確保したかったのだろう。子を孕んでしまった自分は会わせる顔はないが、白無垢を着て、貰いに行くときだけ嫁として貰いにいったのだろう。まあ、婚儀をあげた白無垢を、どうしても売ることができなかったこともあるだろうが。」
「どうして、白無垢が関係するんですか?」
「白とは、"死"を意味する。つまり、生家の娘としては死に、嫁入りをした家の女に生まれ変わるという意味があるんだ。だから、そのときだけは白無垢を来たことによって、嫁だと言いたかったのだろう。愚かだな。だが、主人はもっと愚かだ。身体を壊すとはな。」
「え!?そういうことなんですか!?え、じゃあ情報源って・・・?」
「老いぼれのことだ。孝太、と言ったか?そやつは、主人の父親だな。主人から、嫁が毎夜飴を貰いに来ることを聞いたのだ。どうにか嫁に戻ってきてほしかったから、悩んでいたのだろう。」
「でも、誰も幽霊のこと知りませんでしたよ?」
「言いたくなかったのだろうな。」
でも、ならばなぜ私には話したのかがわからない。孝太さんの知り合いというほどで、そこまで親しいほどではない。
「あの、しょこらけえきとやらは、どうやら酒が入っているようだな?」
「は、はい、たしかに・・・。チョコレートですし、入ってますけど。」
「孝太はきっと、酒に弱かったのだろう。だから、うっかり口が滑ってしまった。」
そういうこと!?と口をあんぐり空けると、阿呆めがと笑われた。
「さて、間違いはないな?幽霊の女。」
奥さんのほうをむき、確信に満ち溢れたかおで見つめる。奥さんは、少し目線をうろつかせたあと、頷いた。
「はい、そうです。彼は、子を望んでいませんでした。だから、子を孕んでしまった私は、この家にいられないと思ったんです。でも、家に帰っても、家計は苦しくて・・・。夜中にこっそりと飴を盗めば、子供も食べれて、彼も幻滅して、新しい人を見つけてくれる。ひどいことをしたとは思っています。」
「だが、主人は待っていたんだな。嫁が帰ってきてくれることを。子を抱いて戻ったときは、喜ばれたのだろう?」
「・・・はい。私は、馬鹿でした。彼は、私の身体を思い、子を急かさなかったそうです。私は、彼のことを勘違いしていました。政略、結婚でしたので・・・。」
泣きそうな顔で、ひたすら頷く奥さん。それを見て、帰るぞ、とヨウコさんは私に言った。

帰り道、私は、きづいた。
「そういうことなら、言ってくれればよかったのに。」
「お前は、演技が下手そうだからな。」
「騙したんですか!?」
「言っただろう?私は、騙すのが好きなんだ。」
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