妖怪と武士との異変日記帳!

マカロン

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平安時代、彼と最初の捜査

邂逅

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「・・・?」
て洗い場の鏡に触れてみる。何をしてるのか、と言われればわからない。なんだか、吸い込まれるような魅力を感じたのだ。
「冷た・・・くないわね!?なにこれ、なによこれ!?」
そして、私は本当に鏡に吸い込まれたのである。

「ここどこよ!?」
私は、広い畳の部屋にいた。真後ろには大きな鏡。焦り、戻れないものか、と鏡に手を伸ばす。
「・・・あ、戻れるのね!?てっきり、戻れなくて、どうにかやりきりする主人公みたいになるんじゃないかと思ったのだけれど!?」
とりあえず何度か鏡に手を伸ばし、確実に帰ることができることを確認し、畳の部屋に行く。部屋から出てみると、ガラスのショーケースに入った、ケーキなどの洋菓子や団子などの和菓子などのスイーツが見えた。
「え、どちら様のでしょうか??」
ぐるりと辺りを見渡してみるが、案の定誰もいない。
「・・・見なかったことにしましょ。さーて、帰ってご飯作らなくちゃ~。」
ただ、チョコレートタルトだけは持ち帰って食べた。

「嘘でしょ・・・。」
また、私は畳の部屋に行った。ケーキのショーケースを見ると、チョコレートタルトが補充されている。また、明らかに新作であろういちごタルトや、マカロンなども増えていた。しかし、人影はなく、気配もしない。そんなことが、何日か続き、私は変だと認めた。玄関を見に行く。
「・・・close?って、まだ開いてないの、このお店!?もしかして、私、勝手に使ってもいいの・・・?」
表に出て、見上げると、あら不思議。見た目はとっても古い、まるで平安時代のお屋敷のようだ。ケーキの甘い匂いも、なぜだかわからないが香らない。
「・・・誰かはわからないけど、しばらく滞在させてもらいまーす。」
誰もいないなか、私はそう呟いた。


不思議な女がいるらしい。どこからきたのかはわからないが、上質だろう、変な形の着物を着ているという。最近は、なにかに気づいたような女は、派手だが、見たこともない柄の着物を着ていて、不思議な香りがするそうだ。しかも、誰も嗅いだことのない香りだという。現れた当初は、今はいつか、あれはなにか、と通りすがりのものに切羽詰まった様子で変なことを聞いてたそうだが、いまじゃただの美人な女だ。噂では、あの髪の艶といい、苦労したことの無さそうな肌といい、どこかの姫じゃあないかという。
「ということじゃが、知っておるか、玉藻前。」
「そうなのですね、御前さま。」
「ほう、そうか。玉藻前、お主でも知らぬことがあるのじゃなぁ。そうじゃ、なんなら、ワシがもっとよいことを教えてやる・・・。」
「ああ、そろそろ琴をしなければ。また今度、聞かせてくださいませ。」
肩に手を乗せようとする鳥羽上皇の手を払い、立ち上がる。
(無礼な。・・・人間は愚かじゃのう。)
口許に寄せた着物の裾の下で、口を歪める。なんと無様だと嘲笑っているのだ。玉藻前、と呼ぶ彼の寵姫は、美しい女に化けた怪物だとも気づかずに、顔を赤くし、酒に酔う鳥羽上皇。
やつを部屋に残し、わたしは襖を閉じる。それと同時に、麗しい黒き髪は人ならざる忌々しい金の髪へと変わり、真珠のような漆黒の瞳は呪われた紅へと変わる。背は高くなり、肩幅の広くなる。小さくなるかと思われた着物は、わたしの身体の一部であるからか、女の身体の時よりもはるかに大きくなっている。愛らしい女の着物だったが、すっかり白く染まり、まるで陰陽師の真似事をしているようだ。
人間を騙すのが好きな、美しい風貌をした狐は思う。騙すことこそが生き甲斐なのだと。
変な女の話など、魔の物の類だろう。妖の類かも知れないが、そんなことはどうでもいい。わたしに害のあるものでなければ、なんでもよいのだ。きっと、関わることはないだろう。


「それ、フラグって知ってます?」
「フラ・・・なんだ、それは?」
先程、知らない黒髪の男がわたしにぶつかってきた。注意不足だったのは悪いが、わたしは突っ立っていただけであるため、ふらふら歩いていた男の方が悪い。しかし顔がいいので許す。なんだか甘い匂いがするといわれ、ドーナツをあげたら、なんだそれはと眼を剥かれ、美味すぎると喜ばれた。そして、もしやうわさの小娘かと聞いてきた。会うことはないと思ったばかりだと笑われ、まさか人間とは思わなかったと見下ろしてきた。そして、あのフラグって知ってます?発言に繋がるのだ。
「不思議なことをいう娘だ。わたしの知らない言葉ばかりだな。」
まぁ、生きる時代が違うので!とは言えず、ははは、と笑っておく。
「ああ、そうだ。菓子の礼だ。大変美味であった。これをやろう。」
どこから取り出したのか、いつの間にか小さな袋を持った彼は、私にその袋を渡した。
「香り袋だ。何かあったときに、助けてくれるだろう。また菓子を頼むことがあるかもしれんからな、死なせるのは惜しい。」
彼は、右手をあげ、どこからかふく風に髪をそよがせながら、去って行った。

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