魔法の華～転移した魔女は勘違いされていても気づかないわよ？～

短編 師匠は狙われている！～イスハーク少年、がんばれ！～

4.

「俺の予想やと、ロープであのこを拘束してヤるつもりや。道具使って二人がかりとは卑怯やんな……！」
「アンタも道具使ってただろ。」
「……てへ？」

可愛くねぇ。つかキモい。どうせなら、師匠のてへ、がみたかったと思いつつ、アーサーたちが用意したロープのありかがどこか考える。

「まぁ、剥き出しでは置いとらんだろうな。」
「なぁ、ちょくちょく思うんだけどよ。アンタ心読めんのかよ？」
「読心術は心得とるよ～。人間社会にゃ必要やからな！」
「人間社会をなんだと思ってんの？？」
「泥沼。」

間違ってはいない。しかし、それは王族貴族の話だ。城下の民はもっとほのぼのしてるだろうし、関わらなければ別に、と言おうとしたところで口を閉じる。そういや師匠に近い男ってほとんど貴族王族だな。僕も含めて。


「でも、どうやってロープのありか探すんだよ？」
「うーん、手っ取り早いんは自白剤よな。」
「そんなもん持ってるやつがいるわけ……。」

はた、とそこで気がつく。身近にマッドサイエンティストがいるではないかと。
ファントムも思い当たったのか、悪い笑顔をしている。

「自白剤がなければ盗めばいいやないの。」
「……僕犯罪に手を染めたくねぇな。」
「あの子を守るためや、腹をくくりぃ！！」

そういわれてしまえば、ぐうの音もでない。



と、いうことで。ファントムお決まりの手、つまりみんなの食事(自分達を除いて)に睡眠薬を混入した。見事、皆が眠り、案外簡単にダニエルの部屋に侵入できた。

「以外と簡単やったな。そんで、どこやろ～っと。」

机の上、棚の中、床、天井。
隅々まで探すが、自白剤どころか、薬らしきものひとつ見当たらない。
どうなっているんだ、としかめっ面を晒せば、性格のひねくれたファントムの笑い声と、男のクスクス笑いが聞こえる。
もう一度いうが、ファントム以外の笑い声が聞こえる。

すぐさま振り返り声の主を目で捕らえた。

「あほ面をしないでクダサイ、笑ってしまうデショウ……。」

驚きすぎて声がでない。そこにいたのは、白衣で身をくるめ、まるで春の変質者のような格好をした……もとい、ダニエルがいた。無言で指を指し、なんでここにと訴えると、薬にはある程度抵抗があるといわれた。そりゃマッドサイエンティストだもんな、抵抗力あるよな。

「さて、お探しものはこれですカ？」

やつは目を輝かせ、そして白衣の前を勢いよく開く。

「おい、やめろ！早まるな！」
「そうや、お粗末なもんみせんでええ！！」
「なにを想像してるのでスカ？？というかずいぶん失礼デスネ!?」

予想に反して、コートのなかにはしっかり服を着ていた。しかし、白衣の内側にはびっしり何かの薬品が吊るされている。そのなかのひとつを手に取り、自白剤デスとダニエルは告げた。

「アーサーとヴィンスが企んでいるのは知ってイマス。ワタシも当初は誘われマシタ。一緒に彼女を○○しに行かないか、ト。」
「なんて最低なこと誘ってんだよあいつら……。」
「しかし、思いとどまりました。彼らと共にそんなことをしても、虚しいだけです。彼女と○○○○するなら、やはり一対一でないと！ということで、アナタ方に協力シマス。」
「そんな屑な理由で協力するんかこいつ……！！？しかもその口ぶり、最終的にはあの子を○○するつもりやな！？」

なにを当たり前なことを、とキョトンと見つめられる。欲望に馬鹿正直すぎである。
だが、自白剤を手に入れられたのは喜ばしいことであり、ダニエルの脳天に一発食らわせたあと、軽やかな足取りで僕たちはダニエルの部屋をあとにしたのだった。