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三章 魔神の過去世界『傲慢』

蜊∽コ悟?狗岼縺ョ迚ゥ隱(十二個目の物語)

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「私、なにを間違えたのかしら……ちゃんとカーミルくん連れ出したのに……。」

絶賛囚われの姫(Take2)である私。前回は雑魚寝できるほどの広さの牢屋だったが、今は私専用とでも言うような大きさの、ピンクのクッションが置かれている鳥籠に捕らわれていた。
しかも、鳥籠の外には見知った後ろ姿が四名ほど見える。彼らはみな背中を向けており、後ろに手を組んでいるようだった。

「あのー……アーサーさん?」
「どうしたの?暇かな?お姫様。」
「姫???貴女そんなホストみたいなこと言ってました?あ、違うわ聞くことこれじゃない……えーっと、この状況は……?」
「神様にね、君を護るよう仰せつかったんだ。」
「……そうなんですね……?
お仕事中お邪魔しました……。あの、ちなみにダニエルさんとヴィンスさんは……。」
「俺も同じく、神様から仰せつかった。貴女を御守りするようにと。」
「以下同文デス。」
「ヴィンスさんはともかく、ダニエルさんは王さまなんじゃ……?」
「王とイエドモ、神様には従うものデス。」
「そのー……ちなみにファルークさんも同じ感じですかね?」
「ああ、私も神様からそのような命令を戴いている。察しがいいな。」
「天才って呼んでちょうだいな!まぁ察しがよくても、何一つ理解してないけどね!」

どんな仕組みかは分からないが、いつの間にかダニエルさんはカタコトに戻っていた。アーサーさんやヴィンスさん、ファルークさんも、なんだか元の世界と雰囲気や性格は大差ないように見える。違うことと言えば、彼らの行動の原理、つまり中心人物が、“神様”なことくらいだろうか。もはや混乱して私は変なノリとなっている。
そんなこんなしていると、いつのまにか彼らは一点を見つめるようになった。カタン、と物音がする。普段の彼らなら、武器を抜くなりしそうなものだが、不思議とその視線に警戒が加わることはなかった。

「はずしていいよ。」
「御意。」

短く答えたのは、ヴィンスさんだった。彼らが部屋を出ていき、一人残った私に近づく男性。それは、虎さんだった。

「ご機嫌いかがかな~?」
「最高の気分よ!ビバニート!」
「にー……??」

分かってます、ポジティブに考えすぎなのだと。でも普通にここにいたら、頼めばご飯もなにもかも出てきそうな気がしたの。女の勘よ。

(あ、でも私屋敷でも同じような生活してるわ……。)

あまり大差ないことに気がついてしまった。もっと言うなら、ここより屋敷の方が行動範囲が広いだろうと言うことにも気がついてしまったわ。当たり前である。

「最高かぁ……皮肉を言うほど余裕があるんだねぇ。」

しかし男とは正直ではないもので。間違って打った釘を引き抜こうとして変な方向に曲がってしまったときくらい思考が歪んでいる方向に受け取ってしまったようだ。皮肉と取られてしまった。

「こんなこと、どうして?」

心の中では、このまま養ってくれるのかしら、という気持ちである。さすがに押し止めた。まぁ、現在でも執事であるジェイさんに養われているようなものだけども。いつのまにかお金持ってくるのよねあの人。

「そんなあからさまに考えるような顔をしてぇ~!案外分かりやすいのかな~?それとも、わざと?」

目を細め、探るような、凍てつく視線が私に突き刺さる。男性に睨まれるという経験がない私は……正直言って、びびって固まった。

「なにも言わないんだ?まぁ、当たり前だよね。」

体が震えて、声が出せない。超絶美形というわけではあるが、その美貌に震えているのではない。ジェイさんやシアンさんたちで美形は慣れている。目の保養よほんと。
 なぜそこまで震えているのか。それは、虎さんの声が、無機質に冷たいからだ。あのおちゃらけた雰囲気はない。それは私の知らない彼で。

「どうして、だっけ?……昔話をしようか。

むかしむかし、あるところに。

双子の兄弟がいました。」

目をつぶり、まるで吟遊詩人のように紡ぐ彼の隣には、空中に浮かぶ絵が。紙芝居のように、言葉を紡ぐごとに場面は、絵は切り替わっていく。そこに描かれているのは、二人の兄弟。心なしか、ナーくんとカーミルくんに似ている。

「一人は完璧だ、神の贈り物だと持て囃され、もう一方はそれを遠くから眺めていました。誰もがもう一方を必要とせず、見向きもしませんでした。そう、もう一方は使えない部品のように、いないもののように扱われていたのです。しかし、もう一方もやっと必要とされる時が来ました……生け贄として。

ラーム族が支配する国の兵に、何人かのシルトの民が囚われ、死人も出ました。シルトの民の長は、交渉に出ました。話し合いの間に長は気づいたのです。王は長寿を求めているのだと。王に、自分達の民のなかにいる「神の子」がそれを知っている、長寿が手に入ると嘘をついたのです。実際、そんなことを知る者などいません。しかし、その者を差し出し、時間稼ぎをさせ逃げることは出来るだろうと考えたのです。

「神の子」として真っ先に名を挙げられたのは、使えない部品のように扱われていた彼でした。

元来、双子は不吉といわれており、なおかつ、一方より狩りなどが劣っている出来損ないを消すには、丁度いい機会だったのです。

皆が生け贄が決まったことに喜び、祭りを開き、出来損ないを持て囃しました。

突然皆の態度が変わり、優しくなり、話をしてくれるようになり、とても大喜びでした。

神の子として、自分は選ばれたのだと。自分は分からないけれど、特別な才能を周りの大人は見いだしてくれたのだと。自分は完璧になれたのだと。

生け贄だとは思いもしませんでした。

いくら彼が傲慢になろうとも、完璧な子は許しました。

そして、完璧な子は、泣きわめき助けてと繰り返す出来損ないを助けられませんでした。

どうやら、そのあと王の前につれられ長寿の方法を聞かれたが答えなかったようで、たとえ拷問されようとも、知らないと言い続けたんだって。それはそうだ、だって本当に知らないんだから。

完璧な子は、その噂を聞いて、思いもよらない言葉が出ました。
『あぁ、俺じゃなくてよかった』…………って。」

目を開ける虎さん。こちらをその冷たい目で、しかし切なげに瞳を揺らす。

「ねぇ……どうして、俺がナーだと分かったの?」

虎さんは腕を伸ばし、私の頬を撫でながらそう訊いた。

(……えっ、てっきりカーミルくんかと……虎さんナーくんなの!?!?)

ひとつ分かることは、私はなにも分かっていなかったということだった。
そして、いつのまにか紙芝居は消えている。ビックリ。
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