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第一章:深い闇からも必ず。
14.ちょっと待て、先に証明しやがれ!!
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桂さんに言われてから確かに数日後。
用事らしい場所へ私も一緒に藩邸から出て向かうが。
すぐ気付いた。
「んん?
どったの、桂さん?
普段は私の前で歩くが?」
そう、桂さんは私の横を。
一緒に歩くのも初めてだった。
そんな桂さんは少し笑うと…
「いや、春香も言ってただろう?
慣れないから歩き難いのも判ってる。
そして一緒にと、その意味もか?
『男女平等』だろう?
言ってたからな。
それでも、まぁ、やはり…
私なりに考えた答えか。
だが、どうしても春香?
慣れない履物ならば仕方がない事。
だから今の春香がだ。
気にする事でもない筈、だろう?」
私は驚いたけど、意味も判って嬉しくなる。
だから、そのまま笑って言う。
「マジで桂さんはスゲェな!!
んだな、今日だって一緒だろ?
あははははっ!!
こん靴じゃなきゃなぁ…
私も全く問題ねぇんだが。
それすらかよ!!
やっぱ違うな、おい!!
いつも桂さんは、そうだぞぉ!!
他のクズ共と比較すら出来ねぇっぽい?
今までに居ねぇ!!
ハンパねぇなぁ!!」
横に居るから、すぐ桂さんの顔が私にも見える。
少し笑ってるのも判るが、嬉しくて笑うと…
「それは…
春香から私も学んだ事だよ。
だが、今日は春香が、だろう?
私の為とも判ってる。
それに私も…
春香が笑う姿を良く見える。
何も問題ないだろう?」
こん下駄っぽいのじゃなぁ…
私も合わせられんだが。
んでも桂さんは…
この時代でもかぁ!!
もう力とか関係ねぇでかよ?
全く私じゃ敵わねぇな!!
そうして一緒に桂さんと目的地へ向かった。
**************************
そのまま私も笑いながら桂さんと話してたが。
僅かに桂さんが目を変えたのに気付く。
んん?
どった?
私も不思議に思いながら視線の先を。
見れば納得した。
藩邸にも似てたが、建物の前に三人。
あれは坂本さん!!
しかも武市さんだろ!?
んん、でも…
もう一人は岡田さんでもねぇし?
まぁ、知らねぇから、どうでも良いかぁ。
そう思ってると、すぐだった。
「春香さんちや!!
桂さんも居るが。
やけんど…
今日もやな!!
まっこと可愛い姿をしちゅう!!
しかも一緒に歩きゆうと!?
いや、多分、これは…
春香さんは知らんやろう。
じゃが…
それも、やろう!?
もう桂さんが羨ましいだけか!?
げに可愛い女子やし!!
ワシすら思うのにか!?
やはり、狡いろう…
桂さんは…」
めっちゃ大きな坂本さんの声も私は聞いたが。
いや、だから…
坂本さん?
マジで先になぁ!?
標準語だっつうの!!
でも最初から桂さんから聞いてたのもある。
それに武市さんも変わってなかった。
少し笑ってるが普段通りなのも判る。
私は面白い上に嬉しくなる。
だから笑って、すぐ二人に言う。
「あははは!!
また初っ端からかよ!!
いつも坂本さんはオモロイからなぁ?
それに私も桂さんから聞いてたが。
何だぁ?
武市さんも、だったのか!!
でも武市さんも全く変わってねぇし?
それだけでも、めっちゃ嬉しいぞぉ!!」
私も桂さんと一緒に歩くが。
真っ先に坂本さんが私にと近付くのも判った。
でも笑って言ってきた事に…
「そうちや、春香さん?
武市はな?
来る予定ではなかったけどな?
もう春香さんに会いたいき?
油断したら、いかん!!
ありゃ、春香さんは可愛いきなぁ…
武市もや、きっと惚れてもうたんやろう…
判るが。」
んん?
惚れただぁ?
あの武市さんが?
絶対ねぇよ、それ…
また思わず私も笑いそうになるが。
すぐ更に気配のみなら私でも気付いた時。
武市さんが、坂本さんへ、だった。
すぐ投げ付けた上に…
坂本さんも慌てながら動き驚いた顔のまま無言になったが。
でも複雑な顔で武市さんが言うのも充分…
私にも聞こえた。
「龍馬、相変わらず…
その馬鹿な言動を止めろ。
私が春香さんに惚れたとかでも、ないだろうが。
そして春香さんへ嘘など私も言わん。
しかも龍馬の馬鹿でか?
私まで誤解されたくもない。」
それを私も聞いて、見てた事にもだが。
嘘を言わないからと!?
誤解もと!!
だが…
今だぞ!?
何、投げやがったぁ!?
めっちゃ早かったがなぁ!?
僅かに見えたが…
あんなん刺さったらヤベェだろ!?
「た、武市さん?
いや、うん、誤解も?
しねぇがなぁ?
それって、あれかぁ?
暗器っての?
ちっとしか見えなかったが…」
動揺しながらも聞く私にと…
ゆっくりと武市さんは近付きながら普通に…
しかも頷きながら言ってきた。
「春香さん。
馬鹿な龍馬ならば全く心配ない。
だが、なるほど…
あの速度でも見えたか。
確かに暗器の一つ、ただの仕込み針だが。
急所すら外してるから一本程度。
龍馬ならば刺さっても全く問題ない。」
仕込み針だと!?
やっぱかぁ!?
んでも…
あの速度だぞ!?
しかも、一本程度だぁ?
「ちっと待ってくれるか、武市さん?
そりゃ…
一応なぁ?
一本でも、すぐだったろ!?
坂本さんにかぁ!?」
もう完全に驚く私にも武市さんは全く普段通り…
「なるほど、素晴らしい。
すぐ春香さんは判った様子だ。
それに、あの速度ならば龍馬は避けれる。
だから大丈夫なのだが…
才能すらも春香さんは優れてそうだな。
弟子にしたい程だろう。」
いやいや…
弟子って岡田さんも居るし?
どんだけだってぇの!!
「武市ぃ!!
ワシにかや!?
あんなもん投げちょいてかぁ!?
避けれるがの?
やけんど…
危ないだけやろうが!!
春香さんだって驚くろう!!」
大きく坂本さんが言いながら戻ってくるが。
正直に思うだけ。
そりゃ、そうだな…
避けられる坂本さんも?
スゲェがなぁ…
「坂本君、それに武市君。
一応、私も全て見てたのもある。
だが、武市君の同席は知らなかった。
急にか?」
ようやく桂さんの声が聞こえて私も見れば…
複雑な顔で判らないが?
声が少し呆れてる感じにも思えた。
んん?
桂さんも知らねぇと?
だったら武市さんは急にかぁ?
一応、また私も武市さんを見ると。
すぐ武市さんも気付いた様子で言ってきた。
「あぁ、確かに。
最初は同席するつもりはなかったが。
私の場合…
簡単に言えば皆の護衛か?
言い方も難しいが。
龍馬も含め、何かあった時。
その場程度ならば問題ないからな。」
んん?
護衛だとぉ?
少し考えながら普通に言う。
「武市さんが護衛…
坂本さんに関してか?
具体的に今日の事は聞いてねぇが。
んな危ねぇのかぁ?
だったら私も特殊警棒ぐれぇ…
持って来た方が良かったっぽい?」
三人共が驚いた顔になったが、私は不思議なだけ…
そのまま言う。
「三人共、どったぁ?
まぁ、暗器でもねぇが。
護身用の武器程度、常に普通、持ってんだろ?
一応、素手でも武術関係は多く知ってるがなぁ。
私の場合は多過ぎて我流っぽく?
なっちまったし?
私の時代、えっと未来でもかぁ?
んな自己防衛ぐれぇ当たり前だぞ。
皆に判り易く簡単に言えば…
敵と遭遇してから?
んな増援みてぇなの呼んでもかぁ?
既に遅いっつうの。」
そう言うと三人共が複雑な顔になったのも…
私は見たが、すぐ気配で気付いて警戒度を一気に上げた。
何も言わず立ってただけの知らない男性がだった。
明らかに私の方へ近付いて来た事。
三人共が僅かに反応したのも気付くが。
私の警戒対象は、知らない男性のみ。
そのまま見てると…
私から僅かな距離で止まった。
「貴方の事は既に龍馬達。
また桂さんからも聞いてる。
俺の名は『中岡慎太郎』です。
未来から来た、春香さんですよね?
危害など、俺もしないので…
一応、警戒しないでくれませんか?」
んん?
『中岡慎太郎』だぁ?
どっかで聞いたような…
でも最初から一応かぁ?
確かに坂本さんと一緒だったが…
しかも既に?
桂さんや坂本さん達からと?
だが、あの目…
私は何も言わず警戒度すら下げなかった。
気配にも気付くが、桂さんが動いたのに気付く。
「春香、確かに私からもだ。
中岡君には言ってあるよ。
坂本君達から聞いてるのも事実だが…」
桂さんが言うなら聞いてると?
それなら嘘じゃねぇ…
でも私は中岡って人から視線を外さず。
桂さんに言う。
「桂さんが言うなら聞いてるのも判った…
それに桂さんは嘘も言わねぇ。
更に坂本さんも、武市さんも、か。
だったら…
尚更、あの人は駄目だろ?」
中岡って人も明らかに驚いた顔になったが。
そのまま睨んだ。
すぐ坂本さんを私も察した。
「春香さんや?
尚更じゃと?
武市の時とも似ちゅうが…
それは中岡が、信じちょらん言うが?」
坂本さんにも私は何も言わず。
中岡って男のみ警戒する。
そこで武市さんも僅かに動いた気配は察するが…
「中岡…
春香さんは嘘を言わない。
更に私でも簡単だったと。
既に言ってた筈だぞ?」
冷静に言葉だけは私は聞いてた。
武市さんも言った…
だったら尚更、嘘でもねぇ…
「春香…
無警戒は無理でも少しで良い。
僅か程度、警戒は下げてくれないか?
もし中岡君が居ても、私が必ず居るだろう?
そして春香には私が一切…
傷付けさせない。
それに今ならば武市君も居るのだよ?
だから問題すらないだろう?」
桂さんの声を聞いて少し考える。
確かに…
桂さんが居る上にだ。
武市さんも強い。
恐らく、あの中岡って人…
一応、私は警戒度を下げるが。
そのまま桂さんの側へ行って言う。
「んだなぁ、桂さん。
あの中岡って人も弱くねぇが。
この場でなら…
桂さんと武市さんの方が、実力も上だぁ。
同時だったら、確実に負けるのも明確。
多分、桂さんもだが。
武市さん相手でも、だろ?
あの中岡って人は、二人には勝てねぇ…
坂本さんの力量、正確じゃねぇが。
さっきの坂本さんは、武市さんの針も余裕。
だが、あの中岡って人は複数ならギリギリ…
そんぐらい判る。」
桂さんが驚いた顔もしたが、すぐ複雑な顔になった。
私も見ながら気配だけで中岡には警戒を。
そんな中でも聞いてきた。
「だが、春香?
まだ中岡君の動きも見てないだろう?
それに警戒も…
ならば今すらもか?」
私は気配だけ常に警戒はするが、桂さんに頷く。
武市さんと、坂本さんも私を見てたが。
中岡って人だけ無視して三人へ言う。
「あの目、だぞ?
確かに、私の事を三人…
いや、これは違うだろ?
三人に限らず、聞いてるっぽいが。
今すらなぁ…
私に攻撃しねぇのも、そう。
単純に言えば、頭では理解してる。
だが、私の事に関しては信じれてねぇぞ?
単純に坂本さん達へ関してを!!
信じてるだけ、だろ?
だから、私には危害しねぇとも違う。
ただ、出来ねぇんだよ…
多分、あの目なら、この場で私に関してだ。
邪魔者ってかぁ?
んな人、信じられる訳もねぇだろ?」
三人共が僅かに驚いた顔にはなったが。
すぐ桂さんが目を変えたのを私も見た。
そのまま中岡って人に向いて言ったのも聞いた。
「なるほど…
春香は嘘を決して言わない。
そして見抜くと…
私も事前には言ってたが。
確かに中岡君の場合。
今が、春香とも初対面な上に、まだと…
だが、坂本君とは懇意だからこそか。
一応、理解のみ。
更に春香の分析も的確だろう。
私や武市君には単独でも勝てない…
同時では確実、だろう?」
「確かに間違ってない。
中岡、恐らくな。
私の分析として補足するが…
春香さんには武術を、我流にする程。
さっきの私がした動きすら見抜けるのだぞ?
数回、中岡の動きを見れば春香さんならば…
実力でも負けるだろう。」
私も武市さんの言葉は聞いてたが。
的を得てるのも判る。
「な…
確かに俺は皆から話だけを。
それしか聞いてなかったが。
だが、実際に、まだ会ってから…
俺すら名乗ったのみ!!
不可思議な現象も一応、理解してる。
それでも想像してた春香さんの印象が…
余りにも異なって…
更に、だぞ!?」
んん?
印象だぁ?
まぁ、話しか聞いてねぇなら?
そうなる?
私は僅かに疑問で中岡って人を。
再度、見るが。
この目は!?
またかぁ!!
すぐ睨んでから僅かに桂さんの方へ。
三人の側で、もう目すら閉じた。
気配のみ、警戒だけは続ける。
「は、春香?
今、また動きだけでも、ないが…
中岡君を?
睨んだ上に、その反応…
どうしたのだ?」
桂さんの声に、溜息を出してから答える。
「あぁ…
桂さんには判んねぇと思うなぁ。
最初から桂さんとも全く違うし?
更に言うなら坂本さんも。
武市さんともだ…
あの目を私も充分、知ってるが…
三人とは全く違うんだよ!!
私にと、かぁ?
一度も話した事すらねぇで…
外見のみ!!
近付いて来る男の目だ!!
しかも…
私程度に負ける雑魚共!!
それと同じだろうがぁ!!
一切、私からは近付かねぇ…
前にも桂さん、言っただろ?
私より弱い男は眼中にねぇ…
んで何も知らねぇくせにかぁ?
勝手に決め付けてくる雑魚共がぁ!!
確かに話のみ聞いてるならと確認した。
だが…
私に近付くんじゃねぇ!!
私に触れんじゃねぇ!!
私は絶対、あの人だけは信じねぇ…」
「春香、まずは落ち着きなさい。
既に理由も私は理解した。
そして常に、私も春香の側に居る。」
どうにか目を開けて桂さんを私は見た。
少し笑って桂さんが…
「春香?
落ち着いて聞きなさい。
この場では、私だけでもない。
今ならば武市君。
更に坂本君も居るのだよ?
私が何度も言ってるだろう?
春香は大丈夫だと。
私は傷付けない。
私は痛くしない。
私が守ると。
私が助けると。
そして私が必ずだともね?
誰にも春香を。
私は傷付けさせたり、しないと。」
そんな桂さんを見ながら私も考える。
今まで桂さんは…
嘘もねぇ…
でも…
優し過ぎるから余計。
私は下を向いて一応、考えながら言う。
「なぁ、桂さん?
やっぱ私は…
邪魔だろ?
この時代だったら余計。
皆が困るだろ?
でも桂さん達は違うだろ?
私も探すって言ったし?
嘘は言わねぇが。
皆が頑張ってる邪魔も…
私は、したくねぇ…
それを。」
どうにか考えて言っても私は…
言葉も浮かばなくなる。
「春香?
更に私との約束も覚えてるだろう?」
また桂さんも私は見るが。
少し笑って言ってくる。
「春香は何も悪くないと。
そして私は一人にはしたくないと。
それに今の理由ならば…
もう私すら完全に理解してる事だ。
だから一切、中岡に関して春香へ。
私が近付かせない。
私が触れさせない。
逆に春香が一人の方が、だよ?
私は心配なのだ。」
桂さんが言うならと私も一応、頷く。
「春香さん?
今日は私も来て良かったと思ってる。」
武市さんの声で…
私も見ると少し笑って言ってきた。
「そんな顔を春香さんには、して欲しくないと。
私でも思うのだよ?
桂さんは尚更だろう?
そして、これは桂さんだけではない。
春香さんならば判るだろうが。
この場では、私も居るのだ。
一切、私も春香さんへ、中岡は近付けさせん。」
少し私は考える。
桂さんも?
武市さんも?
いつも…
「あぁ、そうだよなぁ!!
二人は嘘も言わねぇし?
充分、強いのも知ってるぞ!!
それだけじゃねぇってのもだぁ?
私みてぇなのもかぁ!?
助けてくれっし?
痛くされた事もねぇ。
二人が言うなら、多分?
正しい方っぽい?」
私は思い出しながら少し笑って言うと。
二人共が笑うのも見れた。
「中岡ぁ!!
判っちゅうやろうなぁ?
僅かで、こがな痛々しい女子に…
既に、もう!!
どれだけやか判るろうがぁ!!
春香さんに近付いた時点でや!!
絶対にワシすら本気で許さん!!」
いきなり怒鳴った坂本さんに私は驚くが。
「龍馬ぁ!!
俺すら充分、もう聞いてれば…
だからこそ余計に、もう…
判った事だぁ!!
そして春香さんにもだぁ!!
今更でも…
せめて俺は言わせて欲しい!!
全部、俺が悪かったと!!
だから俺は絶対、近付かない!!
こんなにも、あの僅かでなら…
そんな先、俺だって望まないんだぁ!!」
大きな声で私は中岡って人を少しだけ見ると…
目も閉じて首を横に振ってた、でも一歩も動かず。
そのまま地面に殴り付けるのを見た。
少しだけ私は考えるが、やっぱ近付きたくない。
だから…
持ってた巾着から手拭いを。
丸めてから中岡って人へ投げた。
「春香?
今のは…
中岡へ、か?」
側に居る桂さんを。
私も見て少し視線だけ逸らして言う。
「私は近付きたくねぇ…
でも傷なら痛えまま…
んなの治るまでは仕方ねぇ…」
そう言うと、そのまま抱き締められたが。
桂さんなのも判って一応、動かず?
でも声は聞こえた。
「また春香は…
己よりも、いつも…」
んん?
いつも?
いや、中岡って人は違うが?
「中岡…
もう充分か?
私は絶対に春香を。
その意味にもな…
だが、今から一切!!
私は絶対に許さないぞ…」
「桂さん…
あぁ、もう充分、見てれば判る事を。
今までも全て、俺が悪かった…
そして絶対に、俺からも近付かない。
これ以上、見れん。」
んん?
桂さん?
私は普段と明らかに違う桂さんの声に気付いたが。
すぐ、そのまま抱き上げられて驚く。
でも…
「さて、春香?
このまま移動しようか。
予定時刻も、そろそろだからね。」
桂さんは少しだけ笑って言ってくるが。
周りに居る坂本さんと、武市さんを向いた。
「坂本君、一応、先に聞いておくが。
どんな反応を。」
少し坂本さんが驚きながら…
「おぉ!?
ワシも意外やったんだけど…
こりゃ、馬鹿な中岡よりもかの?
しっかりと説明したらやった。
やったら、もう逆に会いたいって言うてきたぞ?
もう、それなら会えば判るろうってな。
言うちょった程?」
「なるほど。
ならば私次第だろうな。」
んん?
誰の話だぁ?
何が判るって?
サッパリ判らない私へ桂さんは笑って言ってきた。
「春香は心配なさそうだ。
武市君も、坂本君も居る。
安心してて良い。」
そして私は抱き上げられたまま移動を。
藩邸とも違う、かなり大きな門から入るが。
もう私には何も判らないにも関わらず。
勝手に桂さんも含めた皆が動き出して、また思う。
大きく、そのまま言った。
「だから…
いつも勝手に決めんじゃねぇよ!!」
それでも大きな屋敷っぽい場所で降ろされるまで…
やっぱ桂さんは全く変わらなかった。
**************************
もう私はサッパリ判らない中でもある。
めっちゃ…
また無駄にかぁ?
何だって、んな広い部屋へ?
んで?
しかも誰も居ねぇし?
そう、通ってきた時すら誰も遭遇しない。
広い部屋に私を含めて五人のみ状態だが。
不思議に思ってた時。
急に襖が開いて二人の男性、すぐ私も気付いた。
だから私が見てると部屋に入って来た事にも判るが。
真っ先に、なぜか私を見て驚いた様子も見えた。
んん?
今、見たよな?
私を、かぁ?
何だぁ?
でも二人は無言のまま部屋の中央へ向かうが。
その一人がだった。
「坂本。
予定時刻でもあるが先に確認するぞ?
散々、忙しい私にも付き纏って言ってきたが。
確かに見目が良くても、それを私にとか?
どう証明すると言うのだ?」
んん?
何だぁ?
スゲェ横柄って奴かよ?
しかも証明?
それなのに坂本さんが普通に笑いながら…
その男性へ言うのも私は見てたが。
「わはははっ!!
もう簡単ぞ!!
見ちょったら判るきな?」
不思議に思うだけでしかない。
でも坂本さんが私を向いた。
「春香さんや?
ちっくと動かずだぞぉ?」
そう言うと坂本さんが急にだった。
私のウィッグっぽい黒髮を素早く取った。
「えぇっ!?
坂本さん?
何すんだっつの!?」
すぐ坂本さんは笑って頷きながら…
「すまんの、春香さん?
今は黒髮やない方がええぜよ!!」
そう言いながら私へと、返す上に…
さっき部屋へ入ってきた二人組を向いた。
「ほら見れば判るろ?
春香さんは未来からきた女子ぞ!!
やけんど…
余り言わん方がええ言葉はあるぞ。
気を付けんと…
いかんぞ?」
そう言ったのも私は見てたが。
二人組の方がだった。
凄い驚いた顔のまま止まったのも判る。
しかも明らかに私ばっかり見てるのみ。
さっきから…
ずっと感じ悪りぃぞ?
何なんだぁ?
この二人は…
また、さっきの男がだった。
横柄な態度のまま…
「確かに、その髪色など。
坂本?
つまり、それが?
珍妙な女と?」
それを聞いて私は、もう…
でも先にと思う。
だから私は桂さんへ向いた。
私に気付いた事も充分、判った。
だから…
「悪りぃな、桂さん?
私は先に謝っておく。
どうしても言いたい事が、ある。
後で困った時かぁ?
もう煮るなり焼くなり好きにしてくれ。」
そう私が言うと桂さんもだった。
凄く驚いた顔もしたが。
そっから私は、すぐ!!
さっきから横柄な男二人を!!
睨み付けてから怒鳴った。
「誰が珍妙だと、こらぁ!!
良い加減にしやがれ!!
どんだけ横柄で?
印象すら最悪な、そこの男二人!!
今すら名乗りもしねぇでかぁ!!
何様だっつうんだぁ!!
私からしたら、お前ら二人がだぞ!?
この時代で一番!!
最悪に、印象悪い上に?
一切、関わりたかねぇぞ!!
ふざけんじゃねぇ!!」
凄く二人共に驚いた事は判ったが。
私は大きく息を吐き出して、再度と。
改めて桂さんを見る。
やっぱ驚いてたが、そのまま言う。
「うん!!
もう私の言いたい事も言えた!!
だから桂さん?
悪りぃがな?
後は知らん。
好きにしてくれ…」
「あ、えっ…
は、春香?
いや、ある意味…
私からすれば?
清々しい程、凄い事を。
言ってくれたか?」
んん?
清々しいだぁ?
一応、桂さんの隣に居た武市さんも見るが。
武市さんすら完全に驚いた顔のまま…
んん?
どうも雰囲気が…
一応、坂本さんを見れば必死で笑いを?
耐えてる様子にも?
「くっ…
確かに坂本から聞いてた通り…
珍妙と、その言葉でか…
しかも何様かだと、あんな…
はははは…
私すら我慢が…」
「笑わんと…
我慢してん…」
その微妙な笑い声で、また二人を私は見るが。
明らかに笑いを耐えてるのも判る。
怒鳴られて笑うって…
何じゃ、そりゃ?
そう思いながら男二人を見てると。
最初から横柄な態度の男が、また先にだった。
私へと少し笑いながら…
「事前に坂本からな。
未来から来た女の事も聞いてたのだ。
髪の色も含め、わざと確認の為。
珍妙、と言ったが…
確かに失礼な言動だった事は私も認めよう。
改めて名乗らせて貰う。
私は薩摩藩の『大久保利通』だ。
さて、私も名乗ったのだぞ?
ならば未来からの女も、だろう?」
すぐに私は驚いて見るが。
な…
何だとぉ!!
『大久保利通』だとぉ!?
いや…
まっ、んん?
私もか?
本物かも判んねぇだろ!?
写真すら覚えてねぇぞ!!
だが、まさか…
どうにか私は言われた事も含めて確認の為と。
必死に言葉を探すが…
「ちょっ…
いや、待ったぁ!!
んん?
えっと、薩摩だと!?
いや、先に私の名前か?
名前は『藤野春香』だけどな?
名乗れる程じゃねぇよ!?
ちっと待ってくれ?
本物かぁ!?
本物の『大久保利通』かぁ!?
薩摩の…
って事は、もう一人は…
まさかの『西郷隆盛』とか?
じゃねぇだろうなぁ!?」
大久保と名乗った男も驚いてたが。
もう一人は笑いながら言ってきた。
「おいん名前を知っちょるんか?
いかにも『西郷隆盛』じゃ。
むぜ女子じゃな!!」
そこで私は桂さんを再度、見るが。
少し笑ってるのも判るが、無言だった。
また大久保と名乗った方も見れば少し笑ってた。
だが、どうにか必死に言う。
「待ったぁ!!
先にだな!?
そっちの一応、名乗った薩摩側!!
再度、確認すっぞぉ?
いや…
そもそも?
私が写真を?
忘れてんし…
もう私には判んねぇから?
同じ方法をするぞ?
さっき名乗った大久保利通だ!!
あっ、一応、これも先に言うが。
私は嘘が嫌いだ。
だから、まんま聞くぞ?
私の事ですら証明とか言ってたなぁ?
だったら、まんま!!
薩摩の大久保利通へ問う!!
己が薩摩の大久保利通である事を証明せよ。
数学っぽいが確認の為、証明してくれ?」
「なん…
己自身を?
証明しろだと!?
薩摩の大久保利通であるかを、か!?
しばし待て。」
そう驚いて言うと大久保らしい男が考える様子を。
した姿も含めて私は見てたが。
「ならば…
春香と言う名だったな。
春香自身が知ってる記録と照合のみ!!
それ以外に不可能だろう?」
んん?
今度は照合だぁ?
いや?
判んねぇぞ?
更に大久保らしい男に複雑な顔でだった。
「確かに判り易いが。
私が言う事のみ!!
それだけでは証明にと。
ならんだろうが!!
ならば未来でだぞ?
記録に残ってる史実でも良いが。
未来への内容ではなく、過去の記録であれば…
問題ないだろう?
こんな質問は初めてだがな。
全く、未来では常に身分を?
証明する物でもあるのか!?」
んん?
身分証かぁ?
「いや、あるよ、普通…
当たり前だろ?
誰だって持ってるぞ?」
「何だと!?
未来では誰でも持ってると!?
だから春香が私に聞いたのか?」
大久保らしい男に言われて失言だと気付く。
すぐ、また私は自分の口を両手で塞いだ。
でも大久保らしい男は、すぐ笑って言った。
「くっ…
確かに聞いてた通りか。
そして未来には、ある!!
そうだな、春香?」
すぐ私は目を閉じたが声は聞こえてた。
「なるほど。
坂本の言ってた通りだが。
それでは、私を証明する為。
照合すら出来ないぞ?
とは言え、私が薩摩藩。
大久保利通なのも事実。
春香の言う答え合わせも出来ないが?」
それは…
目を開けると大久保らしい男が笑ってたが。
私は冷静に考える為、目を閉じた。
どうにか思い出す。
大久保利通の記録だぁ?
んなの…
詳しかねぇぞぉ!?
目を閉じたまま私は言う。
「大久保利通…
だったら…
幼名は?」
「最初は正袈裟だが。
既に改名はしてる。」
「正解かよ!?
次かぁ?
もう歴史が嫌いな私へかぁ?
既に嫌がらせだぞ?
有名なら…
趣味かぁ?」
「私の趣味が記録に残るのか?
まぁ、囲碁だが?」
私は頷きながら言う。
「正解だ…
趣味、囲碁。
そう残ってるぞぉ?
もうキリがねぇし?
んだったら好物は何だぁ?」
「何だと、私の好物が…
そう、だな…
恐らく漬物は欠かさないが?」
「うん、そうらしい…
正解。
んな漬物ぐれぇでかぁ?
機嫌が悪くなるなよ?
もう、ただの我儘かぁ!?」
「何だと!?
どんな記録だ、それは!!
既に質問でもないだろう!?」
「そうだな、質問を間違えた…
性格までは私も知らねぇし?
でも、まぁ…
漬物の事は?
マジで残ってたぞぉ?
どんだけって思ったから?
覚えてるが…
他だと茶か?」
「今度は茶だと?
濃いのを好むが…
玉露を、か?
だが…」
もう確信にも近い私は頷きながら言う。
「正解、スゲェな、おい!?
全く歴史に関係ねぇが…
もう良いかぁ?
私の中にある大久保利通!!
何だぁ?
勝手に火口に石を投げるだの?
子供の頃は好き勝手な我儘放題?
更に漬物程度で不機嫌?
茶すら煩いだぁ?
もう、めっちゃ我儘な印象だったが…
でも、そうだな。
確かに記録通りか、凄く納得したぞ。
さっきすら横柄な態度だし?
今でも傲慢そう…
まだ薩摩なら西郷隆盛の方が好印象だ!!」
「さっきから聞いてれば…
そんな印象で私を、ずっとか!?
春香すら怒鳴っただろう!!」
そこで私は目を開けた。
怒ってる様子の大久保さんを改めて見るが。
もう溜息を出してから私も大きく言う。
「私が怒鳴る原因…
それすらも全て大久保利通だろうがぁ!!」
「それは…
未来の女だと!?
坂本からの証明の為に、だ!!
普段ならば女子相手には…
無礼な振る舞いもしない!!」
確信した事よりも私は…
大久保利通の我儘に納得した。
ふと、でも思い出した事に、私は笑いながら言う。
「あんなぁ?
そんな風にかぁ?
既にムキになる時点で駄目。
ちっとは桂さんを見習え?
流石に歳までは判らんが。
大久保利通のだ!!
そう、今、私は思い出したぞぉ!!
最大の秘密かぁ?
これは…
個人情報と言うより恥ずかしい?
だから敢えて、この場では言わん。
記録を読んで歴史よりだったな、おい!!
そっちの方に私はマジで笑ったぞぉ!!」
大久保さんは怒ってた様子でもあったが。
今度は明らかに驚くのも私は見てた。
「な、何の記録だ!?
嘘の記録まで残っても私は迷惑だぞ!?」
んん?
嘘だぁ?
そりゃ、確かに…
嘘の記録が残るのは…
私は頷きながら最終確認の為に言う。
「大久保さんの言う通りだな!!
嘘の記録?
んなの残ってるなら…
一応、いつか全く判んねぇが。
未来に戻って修正してやっけど?
私は既に言ったぞ!!
嘘が嫌いだとなぁ…
だから最大の秘密が本当か…
薩摩の大久保利通に質問する!!」
驚いたままの大久保さんにと…
私は大きく言った。
「頭頂部に!?」
「まさか…
それを!?
この場での質問か!?」
その様子で私は確信した。
こりゃ…
マジっぽいなぁ…
そのまま頷きながら、私も言う。
「はい、もう充分、判ったぁ!!
私は薩摩の大久保利通と認めます。
これは…
言えん。
そして記録は正しい!!
だとしたら…」
そこで私は桂さんを見ると笑いに耐えてたが。
更に坂本さんも同じ様子だった…
**************************
目を閉じて私は、そのまま大きく言う。
「ちょっと待ったぁ!!
薩摩の大久保利通、西郷隆盛!!
長州の桂小五郎!!
更に土佐の坂本龍馬!!
もう私は一人でも帰る!!」
言い終わると同時。
素早く動くが、真っ先に桂さん。
更に武市さんが動いたのにも気付く。
「駄目だっつうの!!
これだと完全に、じゃねぇかぁ!!」
言いながら察して動くが。
「待つんだ、春香!!
何も言わなくて充分だと…」
桂さんの動きも、どうにか避けても…
武市さんにも気付く。
「駄目っぽいぞ?
悪りぃが、帰るからな、桂さん!!
ヤベェ!?」
「春香さん。
何も言わなければ同じ事だ!!
既に薩摩は知ってるのだぞ?」
どうにか二人を。
ふと私は武市さんの投げを真似て…
簪を瞬時、逆に居た桂さんへ投げながら言う。
「武市さんもっぽい。
駄目だろ?
薩摩と長州だぞ!?
んなの嫌いな私でもか?
知ってるぞ、おい!?」
だが、投げて避ける際にと二人同時では…
もう私では明らかだった。
私は捕まる瞬間。
更に身体を掴まれた事で…
ふと思い出す…
「やぁっ!?
嫌だぁっ!!
誰も来るなぁ!!
私に触れんじゃねぇ!!
もう、やめっ!!
やっ、いやだぁ、ごめ…
出し、もう逃げ、違う!?
言わない、しない!!
だから、やめっ!?
私じゃない!!
言ってないのに!?
だから私じゃ…
してない!!
もう、しない!!
どうして、ちがっ!?
やぁ、うっ、痛いのは…
何も言わない!!
何も、だから、やめっ!?
もう許し…
うぁあっ、やだ、首だけは…
はなしっ!?
何もしないから!!
何も言わな…」
「春香ぁ!!
思い出すなぁ!!
誰も傷付けない!!
誰も痛くしない!!
誰も何もしない!!
だから先に落ち着くんだぁ!!」
大きな声が桂さんと気付いて私も止まる。
掴まれてるのも桂さんだと判るが。
すぐ…
「春香は何も悪くない!!
もう傷付かない。
もう痛くもない。
もう苦しくない。
もう暗くもない。
もう寒くもない。
もう二度と…
そんな事は、私がだ!!
一切、させない。
春香は思い出す事もない!!
今でも同じなのだ。
私が必ず、させないのみ!!
落ち着くんだ。」
目の前に居る…
桂さんの言葉を私が聞いてだった。
驚きながら考える。
もう二度と?
桂さんが?
必ず…
それを?
どうにか私も考える。
でも何かが、判らない。
言葉も判らない。
それなのに桂さんが複雑な顔で…
私へ言ってくる。
「まだ春香。
判らないのだろう?
言葉が浮かばないのだろう?
だが…
それすら春香は何も悪くないのだ。
だから私が、何度も言ってる事。
徐々にだと…
そして、それは春香だけではないのだ。」
僅かに浮かんだ事だけを私は言う。
「徐々に…
でも…
桂さんの言う…
判らない、か?
それは?
何に、なる?」
桂さんは複雑な顔のまま、私へ…
「その答えが『春香の幸福』なのだ。
春香は螺子ではない。
この場でも、生きて居る人間なのだと。
私は何度も言ってるだろう?
まだ春香が判らない理由は…
今まで、ずっと春香自身が、だろう?
己の『幸福』を、考えた事も…
また願った事すらない。
だから、今の春香は判らないのだよ。
でも今は違うだろう?
既に目的も、更に私とも約束してる事。
そして『春香の幸福』は逃げる事もない。
だからこそ徐々にで春香は良いのだよ?」
桂さんを見ながら驚くが。
私は確認の為だけ…
どうにか言う。
「私の、幸福、が?
それは、でも…
逃げないと?
徐々にでも、か?
桂さんは…
嘘は、そう…
言わねぇし?
判んねぇのに、か?」
それを言うと桂さんは少し笑って言ってきた。
「あぁ、そうだよ。
春香の『幸福』は、決して逃げない。
私ならば知ってる事。
だから春香?
徐々にで大丈夫なのだよ?
安心して探せば良い。」
それも聞いて私は少し嬉しくなる。
抱き付きたくなったが、前に言われた事も…
「桂さんが言うなら嘘じゃねぇよな!!
今まで、ずっとだし?
マジでか!!
そしたら…
あの、お婆ちゃんもか?
笑うんだよな!?
私が頑張れば良いのも、だろ!!
今まで間違ってたが。
それを最初に桂さんが、だぞ!!
教えてくれたろ?
本当の意味だってなぁ!!
今は人が居るから出来ねぇが。
多分、そう、嬉しいってのかぁ!!
まだ慣れねぇ感覚だが、徐々にだろ?」
私が笑って言うと…
僅かに桂さんは複雑な顔もしたが。
すぐ普段と同じで少し笑うのも見れた。
「そう、ただ…
春香が安心して愛する者と笑って…
暮らせる事を、優しい祖母もだよ。
ただ、願ってるだけの事なのになぁ…
春香が頑張るのは武力ではない。
そして『春香の幸福』も、逃げない。
だから徐々にで、良いのだよ。」
私が納得もした時。
「僅かで、これ程か…
もう決まりだ…
ならば坂本!!
また、長州の桂小五郎!!」
大久保さんが大声でだった。
私も驚いて見てると目を閉じてたが。
「坂本から聞いてたがな。
私を含めた薩摩側でも未来を。
そして春香の事も聞いてた事。
だが、全てを信じられなくても…
私は見れば判るともだ。
判断してた事もあった。
既に、もう春香を見れば明確!!
そんな先へなど…
私達、薩摩も一切、望んでない!!
まだ多くの決め事は、これからだが…
少なくとも薩摩は春香へだ!!
一切、危害など許さない。」
私の名前が出て驚くが、桂さんも見ると…
同じで凄く驚いた顔のままだった。
「薩摩が、春香を。
ならば…」
「そうだ。
勿論、長州の言い分もあるだろうが。
だがな…
こんな事は薩摩だの、もう関係ない!!
誰もが望まない当然の答えだ。
あの僅か、そして言動で充分!!
私達、薩摩もだ。
長州へと全て。
非礼を詫びよう。
その為、私達からもだ。
話し合いを申し出たい。」
そこで大久保さんが目を開けると。
少し笑って私を見た事にも気付く。
んん?
どった、急にだが?
何じゃ?
「くっ…
判り易いから余計にな。
だが、春香?
誰が我儘だ!!
散々、私へ言ってきたが…
もし私が我儘でもな?
それでもだ!!
愚か者になる気は全くない!!
まして…
私の秘密すら脅す春香が、か?
そっちの方が、とんでもないぞ!?
もし未来へ戻ったら修正しておけ!!
薩摩の大久保利通、その記録をな。」
私は大久保さんを見て思わず笑った。
「あはははははははっ!!
めっちゃ…
気にしてんのかぁ?
んなの…
あははははははっ!!
気にすんなよ。
マジで…
誰も気にしねぇぞ!!
それにかぁ?
悪りぃが。
大久保さん?
間違ってんなら修正すっけどなぁ?
本当の事なら修正…
出来ねぇぞ!!
あはははははははっ!!」
笑って言うと大久保さんは微妙な顔で…
更に私に言ってきた。
「こんの…
どれだけ無礼なのだ!!
長州からだ!!
春香は、しっかり学べ。
見目が良いのすら台無しだ!!
もう最初からだが。
己を証明しろだと?
そんな問題を出されるとは…
全く想定外だったぞ。」
また急に坂本さんが。
「何じゃとぉ!!
大久保さんが先に!?
こがな事は考えてもなかったぜよ!!
もう春香さんはじゃよ!?
未来の希望どころやないろう!?
なぁ、桂さんも、やろう?
長州よりも先に言うてきたんちや。
ワシは、げに信じられんだけ!?」
いきなり叫んだが、私にはサッパリ判らない。
んん?
いや、坂本さん?
だから標準語!!
マジで翻訳してくれって!?
「春香!!
私もだよ、こんな事が!?
それに春香も、また!!」
桂さんまで凄く嬉しそうに私を抱き上げて…
もう驚きながら言う。
「か、桂さん?
いや、私だけかぁ?
もうサッパリ判んねぇんだが?」
「はははっ…
春香は、春香のまま、だろう!!
私も春香を。
もっと守り易くなるだけなのだよ!!
ははは…」
私でも気付く。
本当に嬉しそうに笑う桂さんの顔に…
だから…
「あはははははっ!!
良く判んねぇが。
やっぱ桂さんも笑ってんのがだぞぉ!!
一番、良いって思えんなぁ!!」
私が笑って言うと桂さんは僅かに驚いた様子もしたが。
でも、すぐ普段と同じ優しい口調でだった。
「これがなぁ。
もう本当に…
春香が笑うならば、私も嬉しいのだよ。
それでも私が、だろうが…
だが、春香も徐々に判るのだからね。
大丈夫だ。」
「こんなのを。
本当に私は今日、来て良かった。
これを見れた事に…
春香さん?
桂さんも本当に嬉しいのだよ。
そして私もだ。」
武市さんも少し笑って言ってくるのも見たが。
私も笑って言う。
「そだなぁ!!
皆が頑張ってんのぐれぇ?
私も一応、知ってんし?
きっと良い事だろ!!
武市さんもだぞ!!
いつも頑張ってんだろ?
きっと大丈夫だなぁ!!」
武市さんも少し驚いた様子もしたが。
また、すぐ少し笑って言ってきた。
「くっ…
ははは…
これなら確かに…
桂さんの気分も判る感覚だろうか?
だが、そうだな。
春香さんの言う通りだ。
私でも充分、既にか。
嬉しいと思えるのだから。」
それから部屋の中央へと。
皆が集まり出して話を。
進めてる様子も見てたが…
私には内容が全く判らない。
多分?
一応、薩長同盟かぁ?
私も全く言わなかったし?
でも、まぁ?
何とか?
日本の歴史には影響ねぇよなぁ?
確認したくても、その方法さえ判らない私は…
話し合いでは無言を。
ずっと続けるのみだった。
**************************
※素敵なイラストはXeriel〈@Xeri_la〉様に作成して頂いたものです。
※著作権はXeriel様にあり、無断使用・無断転載はお控えください。
用事らしい場所へ私も一緒に藩邸から出て向かうが。
すぐ気付いた。
「んん?
どったの、桂さん?
普段は私の前で歩くが?」
そう、桂さんは私の横を。
一緒に歩くのも初めてだった。
そんな桂さんは少し笑うと…
「いや、春香も言ってただろう?
慣れないから歩き難いのも判ってる。
そして一緒にと、その意味もか?
『男女平等』だろう?
言ってたからな。
それでも、まぁ、やはり…
私なりに考えた答えか。
だが、どうしても春香?
慣れない履物ならば仕方がない事。
だから今の春香がだ。
気にする事でもない筈、だろう?」
私は驚いたけど、意味も判って嬉しくなる。
だから、そのまま笑って言う。
「マジで桂さんはスゲェな!!
んだな、今日だって一緒だろ?
あははははっ!!
こん靴じゃなきゃなぁ…
私も全く問題ねぇんだが。
それすらかよ!!
やっぱ違うな、おい!!
いつも桂さんは、そうだぞぉ!!
他のクズ共と比較すら出来ねぇっぽい?
今までに居ねぇ!!
ハンパねぇなぁ!!」
横に居るから、すぐ桂さんの顔が私にも見える。
少し笑ってるのも判るが、嬉しくて笑うと…
「それは…
春香から私も学んだ事だよ。
だが、今日は春香が、だろう?
私の為とも判ってる。
それに私も…
春香が笑う姿を良く見える。
何も問題ないだろう?」
こん下駄っぽいのじゃなぁ…
私も合わせられんだが。
んでも桂さんは…
この時代でもかぁ!!
もう力とか関係ねぇでかよ?
全く私じゃ敵わねぇな!!
そうして一緒に桂さんと目的地へ向かった。
**************************
そのまま私も笑いながら桂さんと話してたが。
僅かに桂さんが目を変えたのに気付く。
んん?
どった?
私も不思議に思いながら視線の先を。
見れば納得した。
藩邸にも似てたが、建物の前に三人。
あれは坂本さん!!
しかも武市さんだろ!?
んん、でも…
もう一人は岡田さんでもねぇし?
まぁ、知らねぇから、どうでも良いかぁ。
そう思ってると、すぐだった。
「春香さんちや!!
桂さんも居るが。
やけんど…
今日もやな!!
まっこと可愛い姿をしちゅう!!
しかも一緒に歩きゆうと!?
いや、多分、これは…
春香さんは知らんやろう。
じゃが…
それも、やろう!?
もう桂さんが羨ましいだけか!?
げに可愛い女子やし!!
ワシすら思うのにか!?
やはり、狡いろう…
桂さんは…」
めっちゃ大きな坂本さんの声も私は聞いたが。
いや、だから…
坂本さん?
マジで先になぁ!?
標準語だっつうの!!
でも最初から桂さんから聞いてたのもある。
それに武市さんも変わってなかった。
少し笑ってるが普段通りなのも判る。
私は面白い上に嬉しくなる。
だから笑って、すぐ二人に言う。
「あははは!!
また初っ端からかよ!!
いつも坂本さんはオモロイからなぁ?
それに私も桂さんから聞いてたが。
何だぁ?
武市さんも、だったのか!!
でも武市さんも全く変わってねぇし?
それだけでも、めっちゃ嬉しいぞぉ!!」
私も桂さんと一緒に歩くが。
真っ先に坂本さんが私にと近付くのも判った。
でも笑って言ってきた事に…
「そうちや、春香さん?
武市はな?
来る予定ではなかったけどな?
もう春香さんに会いたいき?
油断したら、いかん!!
ありゃ、春香さんは可愛いきなぁ…
武市もや、きっと惚れてもうたんやろう…
判るが。」
んん?
惚れただぁ?
あの武市さんが?
絶対ねぇよ、それ…
また思わず私も笑いそうになるが。
すぐ更に気配のみなら私でも気付いた時。
武市さんが、坂本さんへ、だった。
すぐ投げ付けた上に…
坂本さんも慌てながら動き驚いた顔のまま無言になったが。
でも複雑な顔で武市さんが言うのも充分…
私にも聞こえた。
「龍馬、相変わらず…
その馬鹿な言動を止めろ。
私が春香さんに惚れたとかでも、ないだろうが。
そして春香さんへ嘘など私も言わん。
しかも龍馬の馬鹿でか?
私まで誤解されたくもない。」
それを私も聞いて、見てた事にもだが。
嘘を言わないからと!?
誤解もと!!
だが…
今だぞ!?
何、投げやがったぁ!?
めっちゃ早かったがなぁ!?
僅かに見えたが…
あんなん刺さったらヤベェだろ!?
「た、武市さん?
いや、うん、誤解も?
しねぇがなぁ?
それって、あれかぁ?
暗器っての?
ちっとしか見えなかったが…」
動揺しながらも聞く私にと…
ゆっくりと武市さんは近付きながら普通に…
しかも頷きながら言ってきた。
「春香さん。
馬鹿な龍馬ならば全く心配ない。
だが、なるほど…
あの速度でも見えたか。
確かに暗器の一つ、ただの仕込み針だが。
急所すら外してるから一本程度。
龍馬ならば刺さっても全く問題ない。」
仕込み針だと!?
やっぱかぁ!?
んでも…
あの速度だぞ!?
しかも、一本程度だぁ?
「ちっと待ってくれるか、武市さん?
そりゃ…
一応なぁ?
一本でも、すぐだったろ!?
坂本さんにかぁ!?」
もう完全に驚く私にも武市さんは全く普段通り…
「なるほど、素晴らしい。
すぐ春香さんは判った様子だ。
それに、あの速度ならば龍馬は避けれる。
だから大丈夫なのだが…
才能すらも春香さんは優れてそうだな。
弟子にしたい程だろう。」
いやいや…
弟子って岡田さんも居るし?
どんだけだってぇの!!
「武市ぃ!!
ワシにかや!?
あんなもん投げちょいてかぁ!?
避けれるがの?
やけんど…
危ないだけやろうが!!
春香さんだって驚くろう!!」
大きく坂本さんが言いながら戻ってくるが。
正直に思うだけ。
そりゃ、そうだな…
避けられる坂本さんも?
スゲェがなぁ…
「坂本君、それに武市君。
一応、私も全て見てたのもある。
だが、武市君の同席は知らなかった。
急にか?」
ようやく桂さんの声が聞こえて私も見れば…
複雑な顔で判らないが?
声が少し呆れてる感じにも思えた。
んん?
桂さんも知らねぇと?
だったら武市さんは急にかぁ?
一応、また私も武市さんを見ると。
すぐ武市さんも気付いた様子で言ってきた。
「あぁ、確かに。
最初は同席するつもりはなかったが。
私の場合…
簡単に言えば皆の護衛か?
言い方も難しいが。
龍馬も含め、何かあった時。
その場程度ならば問題ないからな。」
んん?
護衛だとぉ?
少し考えながら普通に言う。
「武市さんが護衛…
坂本さんに関してか?
具体的に今日の事は聞いてねぇが。
んな危ねぇのかぁ?
だったら私も特殊警棒ぐれぇ…
持って来た方が良かったっぽい?」
三人共が驚いた顔になったが、私は不思議なだけ…
そのまま言う。
「三人共、どったぁ?
まぁ、暗器でもねぇが。
護身用の武器程度、常に普通、持ってんだろ?
一応、素手でも武術関係は多く知ってるがなぁ。
私の場合は多過ぎて我流っぽく?
なっちまったし?
私の時代、えっと未来でもかぁ?
んな自己防衛ぐれぇ当たり前だぞ。
皆に判り易く簡単に言えば…
敵と遭遇してから?
んな増援みてぇなの呼んでもかぁ?
既に遅いっつうの。」
そう言うと三人共が複雑な顔になったのも…
私は見たが、すぐ気配で気付いて警戒度を一気に上げた。
何も言わず立ってただけの知らない男性がだった。
明らかに私の方へ近付いて来た事。
三人共が僅かに反応したのも気付くが。
私の警戒対象は、知らない男性のみ。
そのまま見てると…
私から僅かな距離で止まった。
「貴方の事は既に龍馬達。
また桂さんからも聞いてる。
俺の名は『中岡慎太郎』です。
未来から来た、春香さんですよね?
危害など、俺もしないので…
一応、警戒しないでくれませんか?」
んん?
『中岡慎太郎』だぁ?
どっかで聞いたような…
でも最初から一応かぁ?
確かに坂本さんと一緒だったが…
しかも既に?
桂さんや坂本さん達からと?
だが、あの目…
私は何も言わず警戒度すら下げなかった。
気配にも気付くが、桂さんが動いたのに気付く。
「春香、確かに私からもだ。
中岡君には言ってあるよ。
坂本君達から聞いてるのも事実だが…」
桂さんが言うなら聞いてると?
それなら嘘じゃねぇ…
でも私は中岡って人から視線を外さず。
桂さんに言う。
「桂さんが言うなら聞いてるのも判った…
それに桂さんは嘘も言わねぇ。
更に坂本さんも、武市さんも、か。
だったら…
尚更、あの人は駄目だろ?」
中岡って人も明らかに驚いた顔になったが。
そのまま睨んだ。
すぐ坂本さんを私も察した。
「春香さんや?
尚更じゃと?
武市の時とも似ちゅうが…
それは中岡が、信じちょらん言うが?」
坂本さんにも私は何も言わず。
中岡って男のみ警戒する。
そこで武市さんも僅かに動いた気配は察するが…
「中岡…
春香さんは嘘を言わない。
更に私でも簡単だったと。
既に言ってた筈だぞ?」
冷静に言葉だけは私は聞いてた。
武市さんも言った…
だったら尚更、嘘でもねぇ…
「春香…
無警戒は無理でも少しで良い。
僅か程度、警戒は下げてくれないか?
もし中岡君が居ても、私が必ず居るだろう?
そして春香には私が一切…
傷付けさせない。
それに今ならば武市君も居るのだよ?
だから問題すらないだろう?」
桂さんの声を聞いて少し考える。
確かに…
桂さんが居る上にだ。
武市さんも強い。
恐らく、あの中岡って人…
一応、私は警戒度を下げるが。
そのまま桂さんの側へ行って言う。
「んだなぁ、桂さん。
あの中岡って人も弱くねぇが。
この場でなら…
桂さんと武市さんの方が、実力も上だぁ。
同時だったら、確実に負けるのも明確。
多分、桂さんもだが。
武市さん相手でも、だろ?
あの中岡って人は、二人には勝てねぇ…
坂本さんの力量、正確じゃねぇが。
さっきの坂本さんは、武市さんの針も余裕。
だが、あの中岡って人は複数ならギリギリ…
そんぐらい判る。」
桂さんが驚いた顔もしたが、すぐ複雑な顔になった。
私も見ながら気配だけで中岡には警戒を。
そんな中でも聞いてきた。
「だが、春香?
まだ中岡君の動きも見てないだろう?
それに警戒も…
ならば今すらもか?」
私は気配だけ常に警戒はするが、桂さんに頷く。
武市さんと、坂本さんも私を見てたが。
中岡って人だけ無視して三人へ言う。
「あの目、だぞ?
確かに、私の事を三人…
いや、これは違うだろ?
三人に限らず、聞いてるっぽいが。
今すらなぁ…
私に攻撃しねぇのも、そう。
単純に言えば、頭では理解してる。
だが、私の事に関しては信じれてねぇぞ?
単純に坂本さん達へ関してを!!
信じてるだけ、だろ?
だから、私には危害しねぇとも違う。
ただ、出来ねぇんだよ…
多分、あの目なら、この場で私に関してだ。
邪魔者ってかぁ?
んな人、信じられる訳もねぇだろ?」
三人共が僅かに驚いた顔にはなったが。
すぐ桂さんが目を変えたのを私も見た。
そのまま中岡って人に向いて言ったのも聞いた。
「なるほど…
春香は嘘を決して言わない。
そして見抜くと…
私も事前には言ってたが。
確かに中岡君の場合。
今が、春香とも初対面な上に、まだと…
だが、坂本君とは懇意だからこそか。
一応、理解のみ。
更に春香の分析も的確だろう。
私や武市君には単独でも勝てない…
同時では確実、だろう?」
「確かに間違ってない。
中岡、恐らくな。
私の分析として補足するが…
春香さんには武術を、我流にする程。
さっきの私がした動きすら見抜けるのだぞ?
数回、中岡の動きを見れば春香さんならば…
実力でも負けるだろう。」
私も武市さんの言葉は聞いてたが。
的を得てるのも判る。
「な…
確かに俺は皆から話だけを。
それしか聞いてなかったが。
だが、実際に、まだ会ってから…
俺すら名乗ったのみ!!
不可思議な現象も一応、理解してる。
それでも想像してた春香さんの印象が…
余りにも異なって…
更に、だぞ!?」
んん?
印象だぁ?
まぁ、話しか聞いてねぇなら?
そうなる?
私は僅かに疑問で中岡って人を。
再度、見るが。
この目は!?
またかぁ!!
すぐ睨んでから僅かに桂さんの方へ。
三人の側で、もう目すら閉じた。
気配のみ、警戒だけは続ける。
「は、春香?
今、また動きだけでも、ないが…
中岡君を?
睨んだ上に、その反応…
どうしたのだ?」
桂さんの声に、溜息を出してから答える。
「あぁ…
桂さんには判んねぇと思うなぁ。
最初から桂さんとも全く違うし?
更に言うなら坂本さんも。
武市さんともだ…
あの目を私も充分、知ってるが…
三人とは全く違うんだよ!!
私にと、かぁ?
一度も話した事すらねぇで…
外見のみ!!
近付いて来る男の目だ!!
しかも…
私程度に負ける雑魚共!!
それと同じだろうがぁ!!
一切、私からは近付かねぇ…
前にも桂さん、言っただろ?
私より弱い男は眼中にねぇ…
んで何も知らねぇくせにかぁ?
勝手に決め付けてくる雑魚共がぁ!!
確かに話のみ聞いてるならと確認した。
だが…
私に近付くんじゃねぇ!!
私に触れんじゃねぇ!!
私は絶対、あの人だけは信じねぇ…」
「春香、まずは落ち着きなさい。
既に理由も私は理解した。
そして常に、私も春香の側に居る。」
どうにか目を開けて桂さんを私は見た。
少し笑って桂さんが…
「春香?
落ち着いて聞きなさい。
この場では、私だけでもない。
今ならば武市君。
更に坂本君も居るのだよ?
私が何度も言ってるだろう?
春香は大丈夫だと。
私は傷付けない。
私は痛くしない。
私が守ると。
私が助けると。
そして私が必ずだともね?
誰にも春香を。
私は傷付けさせたり、しないと。」
そんな桂さんを見ながら私も考える。
今まで桂さんは…
嘘もねぇ…
でも…
優し過ぎるから余計。
私は下を向いて一応、考えながら言う。
「なぁ、桂さん?
やっぱ私は…
邪魔だろ?
この時代だったら余計。
皆が困るだろ?
でも桂さん達は違うだろ?
私も探すって言ったし?
嘘は言わねぇが。
皆が頑張ってる邪魔も…
私は、したくねぇ…
それを。」
どうにか考えて言っても私は…
言葉も浮かばなくなる。
「春香?
更に私との約束も覚えてるだろう?」
また桂さんも私は見るが。
少し笑って言ってくる。
「春香は何も悪くないと。
そして私は一人にはしたくないと。
それに今の理由ならば…
もう私すら完全に理解してる事だ。
だから一切、中岡に関して春香へ。
私が近付かせない。
私が触れさせない。
逆に春香が一人の方が、だよ?
私は心配なのだ。」
桂さんが言うならと私も一応、頷く。
「春香さん?
今日は私も来て良かったと思ってる。」
武市さんの声で…
私も見ると少し笑って言ってきた。
「そんな顔を春香さんには、して欲しくないと。
私でも思うのだよ?
桂さんは尚更だろう?
そして、これは桂さんだけではない。
春香さんならば判るだろうが。
この場では、私も居るのだ。
一切、私も春香さんへ、中岡は近付けさせん。」
少し私は考える。
桂さんも?
武市さんも?
いつも…
「あぁ、そうだよなぁ!!
二人は嘘も言わねぇし?
充分、強いのも知ってるぞ!!
それだけじゃねぇってのもだぁ?
私みてぇなのもかぁ!?
助けてくれっし?
痛くされた事もねぇ。
二人が言うなら、多分?
正しい方っぽい?」
私は思い出しながら少し笑って言うと。
二人共が笑うのも見れた。
「中岡ぁ!!
判っちゅうやろうなぁ?
僅かで、こがな痛々しい女子に…
既に、もう!!
どれだけやか判るろうがぁ!!
春香さんに近付いた時点でや!!
絶対にワシすら本気で許さん!!」
いきなり怒鳴った坂本さんに私は驚くが。
「龍馬ぁ!!
俺すら充分、もう聞いてれば…
だからこそ余計に、もう…
判った事だぁ!!
そして春香さんにもだぁ!!
今更でも…
せめて俺は言わせて欲しい!!
全部、俺が悪かったと!!
だから俺は絶対、近付かない!!
こんなにも、あの僅かでなら…
そんな先、俺だって望まないんだぁ!!」
大きな声で私は中岡って人を少しだけ見ると…
目も閉じて首を横に振ってた、でも一歩も動かず。
そのまま地面に殴り付けるのを見た。
少しだけ私は考えるが、やっぱ近付きたくない。
だから…
持ってた巾着から手拭いを。
丸めてから中岡って人へ投げた。
「春香?
今のは…
中岡へ、か?」
側に居る桂さんを。
私も見て少し視線だけ逸らして言う。
「私は近付きたくねぇ…
でも傷なら痛えまま…
んなの治るまでは仕方ねぇ…」
そう言うと、そのまま抱き締められたが。
桂さんなのも判って一応、動かず?
でも声は聞こえた。
「また春香は…
己よりも、いつも…」
んん?
いつも?
いや、中岡って人は違うが?
「中岡…
もう充分か?
私は絶対に春香を。
その意味にもな…
だが、今から一切!!
私は絶対に許さないぞ…」
「桂さん…
あぁ、もう充分、見てれば判る事を。
今までも全て、俺が悪かった…
そして絶対に、俺からも近付かない。
これ以上、見れん。」
んん?
桂さん?
私は普段と明らかに違う桂さんの声に気付いたが。
すぐ、そのまま抱き上げられて驚く。
でも…
「さて、春香?
このまま移動しようか。
予定時刻も、そろそろだからね。」
桂さんは少しだけ笑って言ってくるが。
周りに居る坂本さんと、武市さんを向いた。
「坂本君、一応、先に聞いておくが。
どんな反応を。」
少し坂本さんが驚きながら…
「おぉ!?
ワシも意外やったんだけど…
こりゃ、馬鹿な中岡よりもかの?
しっかりと説明したらやった。
やったら、もう逆に会いたいって言うてきたぞ?
もう、それなら会えば判るろうってな。
言うちょった程?」
「なるほど。
ならば私次第だろうな。」
んん?
誰の話だぁ?
何が判るって?
サッパリ判らない私へ桂さんは笑って言ってきた。
「春香は心配なさそうだ。
武市君も、坂本君も居る。
安心してて良い。」
そして私は抱き上げられたまま移動を。
藩邸とも違う、かなり大きな門から入るが。
もう私には何も判らないにも関わらず。
勝手に桂さんも含めた皆が動き出して、また思う。
大きく、そのまま言った。
「だから…
いつも勝手に決めんじゃねぇよ!!」
それでも大きな屋敷っぽい場所で降ろされるまで…
やっぱ桂さんは全く変わらなかった。
**************************
もう私はサッパリ判らない中でもある。
めっちゃ…
また無駄にかぁ?
何だって、んな広い部屋へ?
んで?
しかも誰も居ねぇし?
そう、通ってきた時すら誰も遭遇しない。
広い部屋に私を含めて五人のみ状態だが。
不思議に思ってた時。
急に襖が開いて二人の男性、すぐ私も気付いた。
だから私が見てると部屋に入って来た事にも判るが。
真っ先に、なぜか私を見て驚いた様子も見えた。
んん?
今、見たよな?
私を、かぁ?
何だぁ?
でも二人は無言のまま部屋の中央へ向かうが。
その一人がだった。
「坂本。
予定時刻でもあるが先に確認するぞ?
散々、忙しい私にも付き纏って言ってきたが。
確かに見目が良くても、それを私にとか?
どう証明すると言うのだ?」
んん?
何だぁ?
スゲェ横柄って奴かよ?
しかも証明?
それなのに坂本さんが普通に笑いながら…
その男性へ言うのも私は見てたが。
「わはははっ!!
もう簡単ぞ!!
見ちょったら判るきな?」
不思議に思うだけでしかない。
でも坂本さんが私を向いた。
「春香さんや?
ちっくと動かずだぞぉ?」
そう言うと坂本さんが急にだった。
私のウィッグっぽい黒髮を素早く取った。
「えぇっ!?
坂本さん?
何すんだっつの!?」
すぐ坂本さんは笑って頷きながら…
「すまんの、春香さん?
今は黒髮やない方がええぜよ!!」
そう言いながら私へと、返す上に…
さっき部屋へ入ってきた二人組を向いた。
「ほら見れば判るろ?
春香さんは未来からきた女子ぞ!!
やけんど…
余り言わん方がええ言葉はあるぞ。
気を付けんと…
いかんぞ?」
そう言ったのも私は見てたが。
二人組の方がだった。
凄い驚いた顔のまま止まったのも判る。
しかも明らかに私ばっかり見てるのみ。
さっきから…
ずっと感じ悪りぃぞ?
何なんだぁ?
この二人は…
また、さっきの男がだった。
横柄な態度のまま…
「確かに、その髪色など。
坂本?
つまり、それが?
珍妙な女と?」
それを聞いて私は、もう…
でも先にと思う。
だから私は桂さんへ向いた。
私に気付いた事も充分、判った。
だから…
「悪りぃな、桂さん?
私は先に謝っておく。
どうしても言いたい事が、ある。
後で困った時かぁ?
もう煮るなり焼くなり好きにしてくれ。」
そう私が言うと桂さんもだった。
凄く驚いた顔もしたが。
そっから私は、すぐ!!
さっきから横柄な男二人を!!
睨み付けてから怒鳴った。
「誰が珍妙だと、こらぁ!!
良い加減にしやがれ!!
どんだけ横柄で?
印象すら最悪な、そこの男二人!!
今すら名乗りもしねぇでかぁ!!
何様だっつうんだぁ!!
私からしたら、お前ら二人がだぞ!?
この時代で一番!!
最悪に、印象悪い上に?
一切、関わりたかねぇぞ!!
ふざけんじゃねぇ!!」
凄く二人共に驚いた事は判ったが。
私は大きく息を吐き出して、再度と。
改めて桂さんを見る。
やっぱ驚いてたが、そのまま言う。
「うん!!
もう私の言いたい事も言えた!!
だから桂さん?
悪りぃがな?
後は知らん。
好きにしてくれ…」
「あ、えっ…
は、春香?
いや、ある意味…
私からすれば?
清々しい程、凄い事を。
言ってくれたか?」
んん?
清々しいだぁ?
一応、桂さんの隣に居た武市さんも見るが。
武市さんすら完全に驚いた顔のまま…
んん?
どうも雰囲気が…
一応、坂本さんを見れば必死で笑いを?
耐えてる様子にも?
「くっ…
確かに坂本から聞いてた通り…
珍妙と、その言葉でか…
しかも何様かだと、あんな…
はははは…
私すら我慢が…」
「笑わんと…
我慢してん…」
その微妙な笑い声で、また二人を私は見るが。
明らかに笑いを耐えてるのも判る。
怒鳴られて笑うって…
何じゃ、そりゃ?
そう思いながら男二人を見てると。
最初から横柄な態度の男が、また先にだった。
私へと少し笑いながら…
「事前に坂本からな。
未来から来た女の事も聞いてたのだ。
髪の色も含め、わざと確認の為。
珍妙、と言ったが…
確かに失礼な言動だった事は私も認めよう。
改めて名乗らせて貰う。
私は薩摩藩の『大久保利通』だ。
さて、私も名乗ったのだぞ?
ならば未来からの女も、だろう?」
すぐに私は驚いて見るが。
な…
何だとぉ!!
『大久保利通』だとぉ!?
いや…
まっ、んん?
私もか?
本物かも判んねぇだろ!?
写真すら覚えてねぇぞ!!
だが、まさか…
どうにか私は言われた事も含めて確認の為と。
必死に言葉を探すが…
「ちょっ…
いや、待ったぁ!!
んん?
えっと、薩摩だと!?
いや、先に私の名前か?
名前は『藤野春香』だけどな?
名乗れる程じゃねぇよ!?
ちっと待ってくれ?
本物かぁ!?
本物の『大久保利通』かぁ!?
薩摩の…
って事は、もう一人は…
まさかの『西郷隆盛』とか?
じゃねぇだろうなぁ!?」
大久保と名乗った男も驚いてたが。
もう一人は笑いながら言ってきた。
「おいん名前を知っちょるんか?
いかにも『西郷隆盛』じゃ。
むぜ女子じゃな!!」
そこで私は桂さんを再度、見るが。
少し笑ってるのも判るが、無言だった。
また大久保と名乗った方も見れば少し笑ってた。
だが、どうにか必死に言う。
「待ったぁ!!
先にだな!?
そっちの一応、名乗った薩摩側!!
再度、確認すっぞぉ?
いや…
そもそも?
私が写真を?
忘れてんし…
もう私には判んねぇから?
同じ方法をするぞ?
さっき名乗った大久保利通だ!!
あっ、一応、これも先に言うが。
私は嘘が嫌いだ。
だから、まんま聞くぞ?
私の事ですら証明とか言ってたなぁ?
だったら、まんま!!
薩摩の大久保利通へ問う!!
己が薩摩の大久保利通である事を証明せよ。
数学っぽいが確認の為、証明してくれ?」
「なん…
己自身を?
証明しろだと!?
薩摩の大久保利通であるかを、か!?
しばし待て。」
そう驚いて言うと大久保らしい男が考える様子を。
した姿も含めて私は見てたが。
「ならば…
春香と言う名だったな。
春香自身が知ってる記録と照合のみ!!
それ以外に不可能だろう?」
んん?
今度は照合だぁ?
いや?
判んねぇぞ?
更に大久保らしい男に複雑な顔でだった。
「確かに判り易いが。
私が言う事のみ!!
それだけでは証明にと。
ならんだろうが!!
ならば未来でだぞ?
記録に残ってる史実でも良いが。
未来への内容ではなく、過去の記録であれば…
問題ないだろう?
こんな質問は初めてだがな。
全く、未来では常に身分を?
証明する物でもあるのか!?」
んん?
身分証かぁ?
「いや、あるよ、普通…
当たり前だろ?
誰だって持ってるぞ?」
「何だと!?
未来では誰でも持ってると!?
だから春香が私に聞いたのか?」
大久保らしい男に言われて失言だと気付く。
すぐ、また私は自分の口を両手で塞いだ。
でも大久保らしい男は、すぐ笑って言った。
「くっ…
確かに聞いてた通りか。
そして未来には、ある!!
そうだな、春香?」
すぐ私は目を閉じたが声は聞こえてた。
「なるほど。
坂本の言ってた通りだが。
それでは、私を証明する為。
照合すら出来ないぞ?
とは言え、私が薩摩藩。
大久保利通なのも事実。
春香の言う答え合わせも出来ないが?」
それは…
目を開けると大久保らしい男が笑ってたが。
私は冷静に考える為、目を閉じた。
どうにか思い出す。
大久保利通の記録だぁ?
んなの…
詳しかねぇぞぉ!?
目を閉じたまま私は言う。
「大久保利通…
だったら…
幼名は?」
「最初は正袈裟だが。
既に改名はしてる。」
「正解かよ!?
次かぁ?
もう歴史が嫌いな私へかぁ?
既に嫌がらせだぞ?
有名なら…
趣味かぁ?」
「私の趣味が記録に残るのか?
まぁ、囲碁だが?」
私は頷きながら言う。
「正解だ…
趣味、囲碁。
そう残ってるぞぉ?
もうキリがねぇし?
んだったら好物は何だぁ?」
「何だと、私の好物が…
そう、だな…
恐らく漬物は欠かさないが?」
「うん、そうらしい…
正解。
んな漬物ぐれぇでかぁ?
機嫌が悪くなるなよ?
もう、ただの我儘かぁ!?」
「何だと!?
どんな記録だ、それは!!
既に質問でもないだろう!?」
「そうだな、質問を間違えた…
性格までは私も知らねぇし?
でも、まぁ…
漬物の事は?
マジで残ってたぞぉ?
どんだけって思ったから?
覚えてるが…
他だと茶か?」
「今度は茶だと?
濃いのを好むが…
玉露を、か?
だが…」
もう確信にも近い私は頷きながら言う。
「正解、スゲェな、おい!?
全く歴史に関係ねぇが…
もう良いかぁ?
私の中にある大久保利通!!
何だぁ?
勝手に火口に石を投げるだの?
子供の頃は好き勝手な我儘放題?
更に漬物程度で不機嫌?
茶すら煩いだぁ?
もう、めっちゃ我儘な印象だったが…
でも、そうだな。
確かに記録通りか、凄く納得したぞ。
さっきすら横柄な態度だし?
今でも傲慢そう…
まだ薩摩なら西郷隆盛の方が好印象だ!!」
「さっきから聞いてれば…
そんな印象で私を、ずっとか!?
春香すら怒鳴っただろう!!」
そこで私は目を開けた。
怒ってる様子の大久保さんを改めて見るが。
もう溜息を出してから私も大きく言う。
「私が怒鳴る原因…
それすらも全て大久保利通だろうがぁ!!」
「それは…
未来の女だと!?
坂本からの証明の為に、だ!!
普段ならば女子相手には…
無礼な振る舞いもしない!!」
確信した事よりも私は…
大久保利通の我儘に納得した。
ふと、でも思い出した事に、私は笑いながら言う。
「あんなぁ?
そんな風にかぁ?
既にムキになる時点で駄目。
ちっとは桂さんを見習え?
流石に歳までは判らんが。
大久保利通のだ!!
そう、今、私は思い出したぞぉ!!
最大の秘密かぁ?
これは…
個人情報と言うより恥ずかしい?
だから敢えて、この場では言わん。
記録を読んで歴史よりだったな、おい!!
そっちの方に私はマジで笑ったぞぉ!!」
大久保さんは怒ってた様子でもあったが。
今度は明らかに驚くのも私は見てた。
「な、何の記録だ!?
嘘の記録まで残っても私は迷惑だぞ!?」
んん?
嘘だぁ?
そりゃ、確かに…
嘘の記録が残るのは…
私は頷きながら最終確認の為に言う。
「大久保さんの言う通りだな!!
嘘の記録?
んなの残ってるなら…
一応、いつか全く判んねぇが。
未来に戻って修正してやっけど?
私は既に言ったぞ!!
嘘が嫌いだとなぁ…
だから最大の秘密が本当か…
薩摩の大久保利通に質問する!!」
驚いたままの大久保さんにと…
私は大きく言った。
「頭頂部に!?」
「まさか…
それを!?
この場での質問か!?」
その様子で私は確信した。
こりゃ…
マジっぽいなぁ…
そのまま頷きながら、私も言う。
「はい、もう充分、判ったぁ!!
私は薩摩の大久保利通と認めます。
これは…
言えん。
そして記録は正しい!!
だとしたら…」
そこで私は桂さんを見ると笑いに耐えてたが。
更に坂本さんも同じ様子だった…
**************************
目を閉じて私は、そのまま大きく言う。
「ちょっと待ったぁ!!
薩摩の大久保利通、西郷隆盛!!
長州の桂小五郎!!
更に土佐の坂本龍馬!!
もう私は一人でも帰る!!」
言い終わると同時。
素早く動くが、真っ先に桂さん。
更に武市さんが動いたのにも気付く。
「駄目だっつうの!!
これだと完全に、じゃねぇかぁ!!」
言いながら察して動くが。
「待つんだ、春香!!
何も言わなくて充分だと…」
桂さんの動きも、どうにか避けても…
武市さんにも気付く。
「駄目っぽいぞ?
悪りぃが、帰るからな、桂さん!!
ヤベェ!?」
「春香さん。
何も言わなければ同じ事だ!!
既に薩摩は知ってるのだぞ?」
どうにか二人を。
ふと私は武市さんの投げを真似て…
簪を瞬時、逆に居た桂さんへ投げながら言う。
「武市さんもっぽい。
駄目だろ?
薩摩と長州だぞ!?
んなの嫌いな私でもか?
知ってるぞ、おい!?」
だが、投げて避ける際にと二人同時では…
もう私では明らかだった。
私は捕まる瞬間。
更に身体を掴まれた事で…
ふと思い出す…
「やぁっ!?
嫌だぁっ!!
誰も来るなぁ!!
私に触れんじゃねぇ!!
もう、やめっ!!
やっ、いやだぁ、ごめ…
出し、もう逃げ、違う!?
言わない、しない!!
だから、やめっ!?
私じゃない!!
言ってないのに!?
だから私じゃ…
してない!!
もう、しない!!
どうして、ちがっ!?
やぁ、うっ、痛いのは…
何も言わない!!
何も、だから、やめっ!?
もう許し…
うぁあっ、やだ、首だけは…
はなしっ!?
何もしないから!!
何も言わな…」
「春香ぁ!!
思い出すなぁ!!
誰も傷付けない!!
誰も痛くしない!!
誰も何もしない!!
だから先に落ち着くんだぁ!!」
大きな声が桂さんと気付いて私も止まる。
掴まれてるのも桂さんだと判るが。
すぐ…
「春香は何も悪くない!!
もう傷付かない。
もう痛くもない。
もう苦しくない。
もう暗くもない。
もう寒くもない。
もう二度と…
そんな事は、私がだ!!
一切、させない。
春香は思い出す事もない!!
今でも同じなのだ。
私が必ず、させないのみ!!
落ち着くんだ。」
目の前に居る…
桂さんの言葉を私が聞いてだった。
驚きながら考える。
もう二度と?
桂さんが?
必ず…
それを?
どうにか私も考える。
でも何かが、判らない。
言葉も判らない。
それなのに桂さんが複雑な顔で…
私へ言ってくる。
「まだ春香。
判らないのだろう?
言葉が浮かばないのだろう?
だが…
それすら春香は何も悪くないのだ。
だから私が、何度も言ってる事。
徐々にだと…
そして、それは春香だけではないのだ。」
僅かに浮かんだ事だけを私は言う。
「徐々に…
でも…
桂さんの言う…
判らない、か?
それは?
何に、なる?」
桂さんは複雑な顔のまま、私へ…
「その答えが『春香の幸福』なのだ。
春香は螺子ではない。
この場でも、生きて居る人間なのだと。
私は何度も言ってるだろう?
まだ春香が判らない理由は…
今まで、ずっと春香自身が、だろう?
己の『幸福』を、考えた事も…
また願った事すらない。
だから、今の春香は判らないのだよ。
でも今は違うだろう?
既に目的も、更に私とも約束してる事。
そして『春香の幸福』は逃げる事もない。
だからこそ徐々にで春香は良いのだよ?」
桂さんを見ながら驚くが。
私は確認の為だけ…
どうにか言う。
「私の、幸福、が?
それは、でも…
逃げないと?
徐々にでも、か?
桂さんは…
嘘は、そう…
言わねぇし?
判んねぇのに、か?」
それを言うと桂さんは少し笑って言ってきた。
「あぁ、そうだよ。
春香の『幸福』は、決して逃げない。
私ならば知ってる事。
だから春香?
徐々にで大丈夫なのだよ?
安心して探せば良い。」
それも聞いて私は少し嬉しくなる。
抱き付きたくなったが、前に言われた事も…
「桂さんが言うなら嘘じゃねぇよな!!
今まで、ずっとだし?
マジでか!!
そしたら…
あの、お婆ちゃんもか?
笑うんだよな!?
私が頑張れば良いのも、だろ!!
今まで間違ってたが。
それを最初に桂さんが、だぞ!!
教えてくれたろ?
本当の意味だってなぁ!!
今は人が居るから出来ねぇが。
多分、そう、嬉しいってのかぁ!!
まだ慣れねぇ感覚だが、徐々にだろ?」
私が笑って言うと…
僅かに桂さんは複雑な顔もしたが。
すぐ普段と同じで少し笑うのも見れた。
「そう、ただ…
春香が安心して愛する者と笑って…
暮らせる事を、優しい祖母もだよ。
ただ、願ってるだけの事なのになぁ…
春香が頑張るのは武力ではない。
そして『春香の幸福』も、逃げない。
だから徐々にで、良いのだよ。」
私が納得もした時。
「僅かで、これ程か…
もう決まりだ…
ならば坂本!!
また、長州の桂小五郎!!」
大久保さんが大声でだった。
私も驚いて見てると目を閉じてたが。
「坂本から聞いてたがな。
私を含めた薩摩側でも未来を。
そして春香の事も聞いてた事。
だが、全てを信じられなくても…
私は見れば判るともだ。
判断してた事もあった。
既に、もう春香を見れば明確!!
そんな先へなど…
私達、薩摩も一切、望んでない!!
まだ多くの決め事は、これからだが…
少なくとも薩摩は春香へだ!!
一切、危害など許さない。」
私の名前が出て驚くが、桂さんも見ると…
同じで凄く驚いた顔のままだった。
「薩摩が、春香を。
ならば…」
「そうだ。
勿論、長州の言い分もあるだろうが。
だがな…
こんな事は薩摩だの、もう関係ない!!
誰もが望まない当然の答えだ。
あの僅か、そして言動で充分!!
私達、薩摩もだ。
長州へと全て。
非礼を詫びよう。
その為、私達からもだ。
話し合いを申し出たい。」
そこで大久保さんが目を開けると。
少し笑って私を見た事にも気付く。
んん?
どった、急にだが?
何じゃ?
「くっ…
判り易いから余計にな。
だが、春香?
誰が我儘だ!!
散々、私へ言ってきたが…
もし私が我儘でもな?
それでもだ!!
愚か者になる気は全くない!!
まして…
私の秘密すら脅す春香が、か?
そっちの方が、とんでもないぞ!?
もし未来へ戻ったら修正しておけ!!
薩摩の大久保利通、その記録をな。」
私は大久保さんを見て思わず笑った。
「あはははははははっ!!
めっちゃ…
気にしてんのかぁ?
んなの…
あははははははっ!!
気にすんなよ。
マジで…
誰も気にしねぇぞ!!
それにかぁ?
悪りぃが。
大久保さん?
間違ってんなら修正すっけどなぁ?
本当の事なら修正…
出来ねぇぞ!!
あはははははははっ!!」
笑って言うと大久保さんは微妙な顔で…
更に私に言ってきた。
「こんの…
どれだけ無礼なのだ!!
長州からだ!!
春香は、しっかり学べ。
見目が良いのすら台無しだ!!
もう最初からだが。
己を証明しろだと?
そんな問題を出されるとは…
全く想定外だったぞ。」
また急に坂本さんが。
「何じゃとぉ!!
大久保さんが先に!?
こがな事は考えてもなかったぜよ!!
もう春香さんはじゃよ!?
未来の希望どころやないろう!?
なぁ、桂さんも、やろう?
長州よりも先に言うてきたんちや。
ワシは、げに信じられんだけ!?」
いきなり叫んだが、私にはサッパリ判らない。
んん?
いや、坂本さん?
だから標準語!!
マジで翻訳してくれって!?
「春香!!
私もだよ、こんな事が!?
それに春香も、また!!」
桂さんまで凄く嬉しそうに私を抱き上げて…
もう驚きながら言う。
「か、桂さん?
いや、私だけかぁ?
もうサッパリ判んねぇんだが?」
「はははっ…
春香は、春香のまま、だろう!!
私も春香を。
もっと守り易くなるだけなのだよ!!
ははは…」
私でも気付く。
本当に嬉しそうに笑う桂さんの顔に…
だから…
「あはははははっ!!
良く判んねぇが。
やっぱ桂さんも笑ってんのがだぞぉ!!
一番、良いって思えんなぁ!!」
私が笑って言うと桂さんは僅かに驚いた様子もしたが。
でも、すぐ普段と同じ優しい口調でだった。
「これがなぁ。
もう本当に…
春香が笑うならば、私も嬉しいのだよ。
それでも私が、だろうが…
だが、春香も徐々に判るのだからね。
大丈夫だ。」
「こんなのを。
本当に私は今日、来て良かった。
これを見れた事に…
春香さん?
桂さんも本当に嬉しいのだよ。
そして私もだ。」
武市さんも少し笑って言ってくるのも見たが。
私も笑って言う。
「そだなぁ!!
皆が頑張ってんのぐれぇ?
私も一応、知ってんし?
きっと良い事だろ!!
武市さんもだぞ!!
いつも頑張ってんだろ?
きっと大丈夫だなぁ!!」
武市さんも少し驚いた様子もしたが。
また、すぐ少し笑って言ってきた。
「くっ…
ははは…
これなら確かに…
桂さんの気分も判る感覚だろうか?
だが、そうだな。
春香さんの言う通りだ。
私でも充分、既にか。
嬉しいと思えるのだから。」
それから部屋の中央へと。
皆が集まり出して話を。
進めてる様子も見てたが…
私には内容が全く判らない。
多分?
一応、薩長同盟かぁ?
私も全く言わなかったし?
でも、まぁ?
何とか?
日本の歴史には影響ねぇよなぁ?
確認したくても、その方法さえ判らない私は…
話し合いでは無言を。
ずっと続けるのみだった。
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※素敵なイラストはXeriel〈@Xeri_la〉様に作成して頂いたものです。
※著作権はXeriel様にあり、無断使用・無断転載はお控えください。
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