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第一章:禁術で出会う二人

深まる謎と初めての名前

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魔王は強奪した荷馬車から食材を探す。
果物なども含まれる食材が多数あり、また悩む。

(人間の荷馬車にあるのだから。
人間が食べられる果実だろう。
これならば普通に森でもあるな。
簡単に手に入るが…
流石に他はミユキに聞いた方が早いか?)

人間観察する中でも疑惑すらだった。
魔王は『ミユキにある違和感』が強くなっても必ず側に居た。

**************************

私は目が見えない。
だけど馬の鳴き声も聞こえた。
音だけしか私には判らないのもある。

普通に『旅人』なのかなと?
感じてるけど、どんなに考えても…
私も旅人って『職業』も知らない。

詳しくもないしなぁ。

極力、その旅人さんとは会話でと…
やり取りしか出来ないけど。

でも、旅人さんは…
ちょっと口は悪いけど?
私の面倒まで見てくれる様子だし?

逆に見えないからかもだけど…

凄く『親切』にして貰えてる感じはする。

それでも私の『答え』に…
いつも疑問もしてる感じかなぁ?

そりゃ、そうだよねぇ…

私の場合。
『この世界の人間』でもないし…
でも『普通の人』に言っても…

もう、そうなると頭まで?
おかしくなった子って見られるよね?

更に私も、旅人さんも?
困る気もする?

そこは、やっぱり話さないようにしないと…

だから目が見えない事は不安ばかりだけど。
どうにか耳だけは気を付けて聞いてた。

そんな風に私も過ごしていた。

**************************

「おい。
ミユキは普段から果実以外、何を食べてた?」

旅人さんは良く私に聞いてくる事もある。

でも、判らない…
それでも、こんな私の面倒すらも?
親切に見てくれてる人へと、せめて正直に答える事。
それしか私には出来なかった。

「前は普通に、ご飯だったけど。
最近はパンみたいなものが多かったかな?
でも良く判らないかも。」

(ゴハン?
しかも良く判らないだと?
ミユキは人間の中でも、名家…
身分が高かったのか?)

この世界では各国、人間の場合。
普通に『身分制度』が、かなり大きく出るのもある。
その身分が高い階級の人間は殆ど、自ら動かず…
位の低い人間が全て動く、それが『常識』でもある事だった。

だから魔王も深くは考えない。

「ミユキ。
お前の国は、どこだ?」

若干、迷う仕草もするミユキを俺は『観察し続けて』居た。

「えっと、日本だよ。」

(ニホン?
聞いた事もないが…
新しい国か?)

「なぁ?
それは、どこにあるんだ?」

そう言うと、なぜか…
ミユキは若干、複雑な顔をする様子を見せた。

寧ろ、泣きそうな顔でもある様子をした。
魔王からしたら常に『ミユキの観察』をして居るのだ。

だが、ミユキは『普通の人間』にしか見えない…
それだけは明確に判る、にも関わらず。
寧ろ、『全てを知らない様子』すら見せる。

(今の俺は、ずっと人間と…
もう関わっては居ないが。
ミユキは変だな?
そもそも『身分が高い』ならだ。
『魔の森』に居る筈も考えられん。
それなのに、なぜ…)

「ミユキ。
なぜ、そんな顔をする?」

「いや、何でもないよ。」

一応、魔王も様々、考える。

(どう見ても、何でもないよう…
見えないのだが?
なぜだ?)

取り敢えず、側に行ってミユキの手元に果実を渡す。

「うん?」

(目が見えないなら、これは仕方がないか。)

「これなら別に洗ってある。
そのまま食べれる果実だ。
もう少し、ミユキは食べるべきだろう。」

「ありがとう、たび…」

ピタリと止まって、ミユキの瞳が揺れる。

(ん?
まだ目が見えるようになるには早いだろうが。
なぜか、止まったな?)

「ねぇ、旅人さん。
『名前』は、何て言うの?」

「俺の名前か?
そんなものはないな。」

「えっ、ない!?」

魔王は、そんなミユキがした驚きの方が不思議な気分になる。

「そんなに驚く事だったか?」

(もう何百年も前だから…
忘れたな。
あったかも知れんが、呼ばれた事もない。
そもそも、魔族は人間とも違うから…
ないのが普通だ。
特に困る事もない。)

明らかに、またミユキの様子が変わった。
そのままミユキを観察はする。

どうやら何か考えている様子には見えた魔王でもあるが…
そんなミユキが言ってくる事が判らなかった。

「旅人さんは…
前に、いつ産まれた判らないって。
言ってたよね?」

魔王も思い出しながら簡単に答える。

「そうだな。
正解な日は判らない。
それに特に困ってもいない。」

「………」

「ミユキ?」

「それは、いつも…
『一人』だから?」

「そうだ。
誰も呼ばないから、知らないだけだが?
今までも特に困った事すらない。」

その瞬間だった。

ミユキが初めて声は出さず…
急に涙を零した。

魔王からしたら、なぜ泣くのか全く判らない。
特に何かした訳でもないからこそだった。

若干、動揺を隠す魔王でもある。

「旅人さん、そんなのは…
凄く寂しいよ。
ずっと『一人』で?
誰からも呼ばれないのは…
それは悲しい…」

「俺が、悲しい?
別に、悲しくはない、が…
なぜ、それで?
ミユキが泣くのだ?」

どうにか魔王が言っても…
ミユキは涙すら止めてなかった。

「だって、それは…
ずっと『一人』だからでしょ?
旅人さんが、『気付いてない』って事だから…」

(俺が『気付いてない』と?
だが、俺が悲しい時は、ないし?
一人が普通だ。
一人ならば誰も呼ばないのは…
当たり前だろう?
だが、なぜ?
ミユキが泣くのだ。)

「ねぇ、旅人さん。
私には凄く、旅人さんが『親切』にしてくれてる気がする。
それなのに…
本当は『優しい』のに…
でも『一人』だから、ずっと『気付いてない』んだよ。
『誰かと一緒』にならないと。
寂しさも、悲しさも、気付けないから…
これは『誰かが居る』から気付く事。
それに旅人さんが…
今まで、ずっと?
誰も居なかった事に私は悲しくなる。」

魔王は正直、それにと驚く。

(俺が『一人』だから?
『気付いてない』と?
そして『気付いてない』から…
『ミユキ』が泣いているのか?)

「俺は、確かに…
気付いてないかもしれないが。
ミユキが、泣く理由も、ない。」

どうにか言葉を探して言う魔王に…
ミユキは首を横に振って言ってくる。

「ねぇ、旅人さん。
もし、『名前がない』なら、私が…
私が『名前』を。
呼びたいから…
『一緒に考えよう』よ?
旅人さんは普段、何が好き?」

「まぁ…
俺の事は、好きに呼べば良いが?」

(ミユキが?
『俺の名前』を呼びたいと?
俺が、好きなもの…?)

ようやく涙を拭きながら、ミユキは言う。

「普段している事とかでも良いよ?
時々、良くしてる事。
何か、ない?」

「俺が?」

(時々、する事…?)

「夜に、月を。
見たりは、するか?」

「うん。
他には何か、ある?」

「たまに、水浴びぐらいしかないか?」

ミユキが笑うのを見た。
若干こちらの方を向き、俺にと話しを聞いてくる。

「髪や、瞳は何色?」

魔王からすれば、特に隠す必要もない事ばかりでもある。
だから、そのまま言うのだが…

「漆黒だ。」

そんなミユキが手を。
俺の側に近付けるようにする仕草をしたのに気付く。

(これは…
俺を?
探しているのか?)

そう思いながら手を、ミユキの側に近付けるとだった。
ミユキが俺の手を握り返してきた。

丸で確認するよう両手で俺の手を握ると言う。

「夜の月かぁ…
良ければ…
『夜光』って呼んで良い?」

「ヤコウ?」

「夜の、光って書いて、『夜光やこう』。
月のように空が、夜の色の中でも静かな光。
そういうのが、合う気がするから…
だから『夜光やこう』って呼んでも良い?」

(夜の、月の光か…
それが俺の?
『名前の意味』か?
まぁ…
好きに呼ばせて、問題もないか…)

「ミユキ、判った。
俺は、それで良い…」

その時に魔王も、ふと思った。

(俺の名前に、『意味がある』なら…
ならば、ミユキは?)

「なぁ?
ミユキの、意味は?」

若干、考える仕草をするミユキだったが…
俺の質問には、いつも答えはする。

「ん?
あぁ、恥ずかしいけれど。
美しい、白い雪って書くよ。
美しくは、自信がないけど…」

(恥ずかしそうに笑う顔は若干、赤いか?
でもミユキは、白いから…
判り易いか?)

無意識だが夜光は僅かに笑っていた。

(美しい、白い雪か…
なるほど。
案外、合ってるか?
面白いものだな。)

「あぁ、判った。
俺の名前は『それ』で良い。
好きに呼べば良いだろうからな。
美雪みゆき』は、まず何か食べていろ。
困った時は、呼べば良い。
俺は少し、やる事が出来た。」

(それが『俺の名前』か…
不思議な気分だ。
まぁ、でも?
悪い気分ではないのだから構わないのか?
だが、美雪の様子も含め…
これは『先に』だろう。
『気になる事』が出来たな。)

俺が行動をする前、美雪が言ってきた。

「うん、ありがとう、夜光!!」

初めての感覚でも取り敢えず、俺は美雪の頭を。
また若干、撫でてから外へ出た。

**************************

そして夜光は外に出ると呪文を僅かに唱えた。

魔力を使う際に必ずだが。
夜行の身体や顔に複数、青い幾何学文様が若干、浮かび上がる。

簡単に『使い魔』を何体も造った。

それらは、また『隠密』させる為、影のような『 靄もやの姿』だ。
闇魔法の一つでもあるが、意思すらなく、指示にしか従わない…

その『使い魔』は影に潜む事。
だから情報を集める際、便利だからこそでもあった。

(現状で俺もだが。
人間の国や、情報が判らない。
それでも…)

ここから一番近い国ならと。
その使い魔を、全て『ディガート帝国』へ放った。

(だが、美雪の件。
魔物すらも『知らない人間』が居るとは思えない。
勿論、それも気にはなるが…
あの時『かなり多い数の人間が動いた』事もだ。
知らない国、知らない事ばかり、そんな『人間』が居るのか?
考えられないとしても本当に居るか?
確認が先だろう?)

『魔の森』に一番、大きい国。
その『ディガート帝国』を調べれば判ると、判断した事からだった。
闇の使い魔ならば、隠密させる事で『魔力のある人間』すら気付かない。

そのまま夜光は、すぐ飛行して周囲に気配を集中させた。

(確かに俺の近くには居ない。
だが、やはり気配もするか。
離れては居るが、それでも…
せっかく、面白くなりそうなのにか?
邪魔は面倒にしかならない。
しばらく、退屈しないかもしれないからな。)

夜光は若干、口元だけだが笑う。
また、いつものように呟いた。

「俺の名前か…
『初めて』だろうな。
だが、面白い。
『美雪』か…」

(ずっと退屈な日々しかなかったが…
目が見えないからか?
それに不思議な『違和感』すら『美雪だけ』はある。
魔力すらない人間。
それでも、この『初めての感覚』は…
知らない上に判らないが。
今までと違うのか?
同じ漆黒の髪と瞳。
それもあるのだろうか?)

答えの出ない『感覚』がある。
夜光は、どう考えてもだった。

『そこ』が判らない。

ただ、気になるだけ…
それだけの事でもあった。
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