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第三章:言葉が判らなくて感じる想いを。

初めて知る事のみ、でも考える事は一つのみ。

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まさか、今日放課後練習なんてものがあるなんて知らなかった。
他のクラスの学級委員長達にはきちんと兄弟学級の学級委員長から連絡が来ていたみたいだ。

白川くんが、三年三組の学級委員長はクセが強いって言ってたけど・・・
めんどくさがりやなのか、忘れっぽいのか。
それとも、意地が悪い?

とりあえず、真面目な性格が良い人ではないことは確か。
なんか、また苦労しそうだな、私。
ため息をつきながら席を立つ。
心の準備もしていないのに放課後はやってきてしまった。

あれ・・・?
いつものことだからと気にしないようにしていたけど、なんか、いつも以上に視線が突き刺さる。
主に女子からの憎々しげな視線。

え、私、なんかした?
思い返すけど、特にこれといった心当たりもない。
内心首を傾げつつ、教室を出ようとドアに向かった。

その瞬間、私はとても感動的なものを目撃してしまった。
なんと、私を除いたクラス全員の女子が実に見事な集団行動をしたのだ。

このクラスになってから早一月。
どんなに呼びかけてもまともに集団行動をしてくれなかったあの女子達が!
とても息の揃った行動をしていて、私はとても感動した。
たとえ、それが私の周りを囲むように立ち、腕を組みながら一斉に私を睨むという行動であっても、だ。

「何かご用でしょうか。」

なかなか口を開いてくれないので、こちらから用を尋ねることにした。
すると真ん中にいる気の強そうなクラスメートが腹立たしいと言わんばかりに顔をゆがめた。
記憶が確かなら、彼女はこのクラスの女子のリーダー格で、西園寺 姫璃(さいおんじ ひめり)という名前だ。

「いくらあのお方と二人きりになれるからと言って、調子に乗らないでくださるかしら。」

言葉こそ丁寧だが、表情からも、声色からも、明らかに怒っていると分かる。
西園寺さんの言葉を皮切りに、取り巻きの令嬢が罵声を浴びせてくる。

「大体生意気ですわ、ソウ様と隣の席だなんて!」

ソウ、くんは人気なんだ・・・
当たり前か、かっこいいもんね。
双子、らしいけど私なんかよりずっと顔立ちが綺麗で、ちょっと羨ましい。
・・・嫌われてるけど。

「聖様とは毎日のように親しげに視線を交わして!」

痛い!
何かを投げつけられる。
その正体は高級そうなペンだった。
こんな高級そうなペン、投げちゃうんだ・・・
さすがお金持ち。
かなり力強く投げたみたいで、直撃した頭がヒリヒリ痛む。

えっと、聖様って藤沢先生のことだよね?
親しげに視線を交わすって、もしかして恒例のホームルームの時の静かなにらみ合いのこと言ってる?
あれのどこが親しげなんでしょうか・・・?

「リュウ様やカイ様からもお声をかけられて!」

そのうち一方は実の兄だけどね。

「司様とも親しげに話して!」

紫月先輩とも約束通り、すれ違えば挨拶を交わしたりしている。

「春馬様にも気に入られているからって、調子にのるんじゃありませんわよ!」

春馬様って、萌黄くんのことだよね。
廊下ですれ違う度、からまれてることでしょうか。
私は迷惑してるんだけど・・・

どれもこれも、適当な言いがかり。
そろそろ物を投げつけながら罵声を浴びせるのをやめてほしい。

三年三組の学級委員長がどんな人であれ、遅れていくのはマナー違反だ。
ハアッと大きくため息をつくと、周りのお嬢方は一瞬ひるんだ。
そして、ひるんだ自分を取り繕うようにまた口を開きかける。

言葉が飛び出る前に、私は周囲を威圧した。
なぜか分からないけど、前世から私は人を威圧するのが得意だ。

けど、今までそれが役にたったことがない。
そもそも、使う機会がなかった。
でも、この学校では必要になるかもしれない。

「だから何ですか。くだらないことで私の時間をとらないで下さい。」

自分のものとは思えない、冷淡な声が響いた。

「なっ!」

西園寺 姫璃がワナワナ震えながら声を発した。
もちろん、怒りによる震えではない。

恐怖によるものだ。
別に能力者としての力を使っているわけではない。
けれど、周囲を威圧しようと思ったらどんな人でも恐怖に震え、動けなくなるのだ。
意味をなさない声とはいえ、声を発せただけでも西園寺 姫璃は度胸があると認めよう。

でも、それだけ。

「他に言いたいことがないなら、失礼しますね。」

一礼して、私は歩き出した。
私を取り囲んでいたお嬢様方は、私が一歩踏み出すとザザザッと道をあけた。

本当はこの威圧の力、好きじゃない。
無理矢理人に言うこと聞かせているみたいで。

でも、この学校のように、プライドが高すぎる人の巣窟においてはこの力を活用した方がよさそうだ。
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