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第二章:本当に愛してる者。

完全な首領の殺意、それすら見せない優しさも。

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約2週間後…

いつもと同じ様にと。
私はゼスと一緒に食事の広場へ。

そこに行くと私は首を傾げる。

すぐに気付いたのもあるけれど…
普段、交代制で動いてる人数よりも多かった。

「あぁ、ユアナ?
今日は場所を移動すっからなぁ?
前と同じかぁ?
だから食後は全員でと移動って事だ。」

それにとゼスが説明もしてくれた。
すぐに私は納得した。

確かに?
時々ゼスや皆と一緒に移動する際も?

私には場所が判らないけれど…
移動する時は皆が朝に集まる。

「そうなの?
でも移動の時は…
確かに全員が集まってたね!!」

私が笑いながら言うと…
ゼスも笑って私の頭を撫でて言う。

「そう言うこった。
だから食事したら移動すんだけなぁ?」

私も頷いて、いつもの場所にと座ると…
ゼスは座る前に皆へと大きく言った。

「おい、馬鹿共!!
全部にと…
既に準備済みだろうなぁ!?」

それにとも数人が言ってくる。

首領しゅりょう!!
勿論だぜぃ!?
俺らも判ってんし!?」

首領しゅりょう!!
準備も完璧だぞぉ!!
俺らも聞いてっかんなぁ!?」

首領しゅりょう!!
当たり前っしょ!?
あんなん余裕だってぇの!!」

ゼスは少しだけ笑って言った。

「よし!!
一応かぁ?
馬鹿共も理解してんなぁ!?
だが…
必ず『新たな』パターンも…
忘れんじゃねぇぞ!?
俺が!!
だかんなぁ…」

うん?

少しだけ…
ゼスの口調が変わった?

不思議に思って私が皆を見ると…
皆は何も言わずに頷くだけだった。

それからゼスも見るけれど…
いつもと同じ様に笑ってた。

そのまま私が見てると…

「ユアナ?
まずは飯だぞぉ!?
もっと体力!!
ユアナには一番かぁ?
重要だかんなぁ?」

微妙な顔で私は言われて咄嗟にと。
すぐに返事をする。

「はい!!
ちゃんと食べます!!」

そう言うとゼスも笑った。

でもゼスは目を閉じた。
それから右手を口元に当てると…
そのままで言う。

「そう…
ユアナの場合?
今後の為にかぁ?
尚更、体力は必須…」

不思議に思って私がゼスを見てると…
目を開けてからも頷きながら言う。

「多分なぁ…
ユアナは判ってねぇが?
俺も注意事項に決定なぁ…」

注意事項と?

少し私が首を傾げるけれど…

ゼスや皆も、いつもと何も変わらず。
それぞれが食事を始めたのに気付いた。

私も言われた様にと食べるのもある。

でも皆で移動するなら多分…
そう思って私は少し急いで食べた。

それから移動する時も同じだった。

ゼスが簡単に指示をするだけでと…
私も簡単に抱えて素早く移動する。

私は抱えられてるけれど…
次の隠れ家?

場所の事だけ考える。

今度も山とか?
どこも不思議な場所…

皆と一緒なのも嬉しい!!

それにゼスが居るなら…
やっぱり私は安心だと思う。

**************************

一方、ザザラ。

場所の特定も済ませていた。

地形も含め図面や計画も…
勿論、覚えていたのもある。

それでもザザラは再度…
周辺をと見渡して確認もする。

ここはウスロア国と帝国の境目にもなるが…
若干、特殊な場所でもあるからな。

荒野の様に広がっても見えるが…
一定の場所は地盤が緩く民家すらない。

国境の境目、その目安にもしてるが…
近くには大きくもない川すらある。

その川も天候によって氾濫も多い…

それもあって荒野でも常に川からの水でとだ。
岩や折れた木々、そして人が住まないからこそ…
勝手にと動植物すらも多い。

確認しながらザザラも考える。

だが、ここに罠をする場合…
簡単に考えられる場所は地盤の方だろうな。

既にウスロア国の軍。
約3200人の動員をしてる。

その場所にとザザラ自身も来て居た。

事前にと内偵させ続けてもいたが…
今ですら裏側の情報は一切ない。

だからこそ、ザザラはゼスを…
一切、過小評価すらしてなかった。

それにもとザザラは考えながら…
常に指示も含めて出す必要もあると判断した。

罠にとする場所の特定も予測をした。
所定の位置にと8箇所にと。

各部隊400人構成で指示も出した。
それぞれにと全ての配置も済んでいる。

警戒してる事もあるがな。
それでも…

この場所にザザラ自身が来た理由もあった。

予測するならば…
随時、変更指示を出さないと駄目だろう。
だが場合によって…
ゼスが出てくればユアナもだ!!

他は囮でも良いが…
ユアナだけは確実にと、この場でだ!!

裏側にと隠されてしまえば…
表側からは困難になり過ぎる!!

そんな中でも唯一、判らない事。
仕掛けてくる時刻でもあった。

交代制でと報告もさせてるが…
またザザラは目を閉じて考える。

確かに罠としては格好の場所…

もし時刻ならば…
明け方や奇襲すらも考えられるが…

だが、違う!!
そんな安易な策をする様な印象すら全くない。

それでも昼間に仕掛けたら…
この場所では利点すらも減るだろう?

あのゼスが何も考えてない筈もない。

目を開けたザザラは苛立ちが湧く。

「チッ。
これだけの頭脳ならば…
何かしらある筈だ。
だが、何を先にする気かだろう。」

簡単な仮眠のみにしており。
各部隊からも伝令も含め随時させてる。

その確認してる時。
急にだった。

慌てた様子で伝令役の兵が走って来た。

「ザザラ陛下!!
第7部隊がです!!
所定の場所で急に地面が崩壊したと!?
それで一気に全滅です!!」

驚きながらもザザラは瞬時に確認をと。

「第7部隊だと!?
そっちの地盤すら何も問題ない筈だぞ!?
状況の詳細を言え!!」

慌てながらも伝令役がだった。

「はい!!
ですが…
あれは意図的にと…
事前にしてあった完全な罠です!!
理由は不明ですが。
急にと地面が崩れ…
その落ちた兵達は…
全て落下先の下にあった槍でと!?」

すぐにザザラも判った。

「チッ。
つまり俺の配置場所を予測して…
事前に地盤の安定場所へと準備をか!!
ならば…
他の部隊に伝令を出す!!
パターン2へと各部隊を移動させろ!!」

また違う部隊の伝令役が走って来た。

「ザザラ陛下!!
第2部隊がです!!
所定の場所で…
なぜか急に川の水が流れを変えてと!?
全員が流されて…
全滅との事です!!」

すぐに確認をと…
それでもザザラは動揺すら隠せなかった。

「何だと!?
待て!?
しかも第2部隊だと!?
川すら真逆だぞ!?」

その伝令にとザザラは驚くだけでもある。
だが先に確認する事を優先して再度、怒鳴った。

「状況説明をしろ!!」

慌てながらも伝令役が言う。

「それが…
判らないのです!!
本当に真逆からで…
ですが…
あの勢いならば…
事前に堰き止めてた可能性が!?」

その状況だけは判った。

ザザラは信じられない感覚すらあったが。
でも、すぐに考える。

これは確実に罠だけを…

逆手にとか!?
明らかに、こちら側がだ!!
完全に読まれている!!

ならば…

「クソッ!!
各部隊、全ての状況をだ!!
すぐに伝令させろ!!
全てを変更させる!!」

そしてザザラが怒鳴った時。
もう更に信じられない状況を見た…

それは裏側だろう者達がと…
見渡す限りと埋め尽くす様にだった。

ザザラの居る第1部隊を囲う様に現われた。

その人数が…
余りにも、とんでもなかった。

どうにか、すぐにザザラも考える。

数えられないぐらいに居るのは判るが…

これは完全に包囲する形でとか!?
逃げ場すらもない程にだと!?

これだけの動員数など考えられんが…

だが…
なぜ誰も動かない!?

まさか…
狙いを俺一人にと絞ったのか!?

俺の場所すら特定して更に予測をだと!?

そんなザザラは意外な言葉を…
大きく叫ぶ様にと敵軍から聞いた。

「ウスロア国王のザザラ以外の始末だぁ!!」

「ウスロア国王ザザラだけには手を出すなぁ!!」

「ザザラ以外の始末を20分以内だぁ!!」

包囲する者達が一斉にと。
それぞれが武器を掲げたのも見た。

もうザザラは完全に困惑する。

俺だけを除くだと!?

だが…
そうなれば全滅しかない!!

「チッ。
第1部隊は各部隊とだ!!
合流して撤退するんだ!!」

それでも一斉に来る敵軍にと。
第1部隊も応戦しながら移動をとするが…

敵の数が多過ぎる事でと。
ザザラ以外の全てが攻撃の対象にされてた。

次々と倒れていくばかりだった…

**************************

私はゼスに抱えられて移動する。
その移動も皆が早い…

最初は驚いたけれど…
何度か移動して判った事もある。

こんなにも早過ぎる程で走る皆は…
全員が普通にと息すら乱れてない事にと。

ゼスが強いのは判る。

多分?
皆も強いのだろうと。

それぐらいは私にも判った。

でも急にだった。

「全員、止まれ!!」

ゼスが大きく言って私は驚く。

それから不思議に思ってゼスを見ると…
少し笑ってから私に言った。

「あぁ、悪りぃ!!
ユアナも驚かせたかぁ?
ここから先は今の時期だとなぁ…
川が危ねぇんだ。
だから先に確認かぁ?
そっから他の道に変更すっかを。
ちっと考えたが…
やっぱ皆にも安全な方が良いだろ?」

時期がと?
それで川がと?
その確認をと?

私は納得もして頷きながら笑って言う。

「そうだね!!
時期的にとなら…
いつも通りでもないのでしょう?
それなら皆の安全な道が良いね!!」

そう言うとゼスも笑って言う。

「まぁ…
でも一応かぁ?
俺が確認すっけど…
他だと遠回りになっちまう。
夜になる前に着きてぇし?」

遠回りにと。
夜になる前にと。

それでと…

「そうだね!!
ゼスが確認するの?
それが一番、安全だと思うよ!!」

笑って私が言うと…
でもゼスは微妙な顔で言ってくる。

「でもユアナにかぁ?
俺は危険な場所とかもなぁ…
見せたかねぇし?
少しの間だけで良いんだが…
ユアナ?
目を閉じて耳を塞いでくれるかぁ?
それに一度、降ろさねぇと…
俺も確認が出来ん。」

ふと私は思い出す。
確か前にも言われた時をだった。

ゼスは見せたくないと?

それに危険な場所なら…
私を抱えてたらゼスも…

「うん、判った…
ゼスも…
私は見ない様にもするけれど。
前にも…
似た様な事も言ってたよね?
それにゼスの方が危ないよ?」

少し私はゼスが心配になる。
でもゼスは笑って言った。

「俺なら余裕に決まってんだろ?
だからユアナはなぁ…
安心して待ってて良いぞぉ!!
何度も言ってるが…
俺は『首領しゅりょう』だって事だ!!
こんの馬鹿共より確実にとなぁ!!」

それにと私が頷くと…

ゼスは優しく私を降ろしてくる。
でも、すぐに今度はゼスの手が…
私の目を覆ってから声だけが聞こえた。

「よし!!
ユアナ?
そのまま動かずだぞぉ?
耳もなぁ?」

確認の為にと。
皆の為にと。

そんなゼスなら…
やっぱり私は信じられる!!

だから私は素直にと。
自分の手で耳を塞いだ…

**************************

一方、ゼス。

ユアナを抱えて移動しながらも…
僅かに考える。

これなら予定時間通りだな。
後はユアナだけだが…

普段から行動をしてる団員ならば…
俺が選んだ実力者のみ。

ウスロア国王の兵士程度…
実力だけなら相手にすらならねぇし?

他のコード達にも…
既に指示を出してるからなぁ。

この2週間で予測した場所に全部だ。
既に罠もある…

そして皆で移動してる時。
すぐに気付いた。

「全員、止まれ!!」

皆も止まったな。

だが…
ユアナは驚いた様子か?

こっから先は見せたかねぇし…
特にユアナにはなぁ…

少し笑って言葉を選ぶ。

それすらユアナは素直にと…
目を閉じて耳を塞いだ。

もう、こんなにもなぁ…
俺だけを必ず信じてる様子すらも…

どうしても俺にはユアナだけを。
こんなにも優しいユアナを俺は愛してる。

だからこそ…
そのユアナにだと!?

あんのクズ以下がぁ!!

絶対に俺は許せねぇ…

皆にと怒りだけ抑えて言う。

「判ってるな?
緊急パターン50と…
もう俺がだ…」

すぐに皆も頷いてからユアナをと…
守る体勢に移動したのを見る。

運んでた荷物の中から。
簡単に二つの剣を選んで…

すぐに俺も移動する。

合流地点パターン25の様子を見る。
既に殆ど全滅なのに確認も出来るな。

そのまま近付くと…
明らかにザザラが驚いた顔でだった。

「お前がゼスだな!?
指名手配の時に容姿は知ってるが…
まさか俺の行動すらも予測をか!?」

大きく息を吐き出した。
どうにか怒りを抑えながらも言う。

「あぁ、そうだが?
俺が『首領しゅりょう』のゼスだ。
んなこたぁ…
どうでも良い事だよなぁ?」

ザザラが俺を睨んでくるが…

「お前が居るならば…
ユアナもだろう!?
そのユアナを…」

「黙れぇ!!
こんのクズ以下がぁ!!
緊急パターン50だぁ!!」

遮る様に俺が大きく怒鳴る…
すぐに全員も下がった事も確認した。

それにと、またザザラは驚いた様子で剣を…

俺は気付いた。

だから構える前にと…
瞬時に動いて武器だけを先にと壊した。

少し見渡すと…

まだ僅かに生き残ってたか。
今は邪魔なだけに…

それから残ってた7人の首を…
俊足も使いながら一気に剣だけで充分。

瞬時に全員、簡単に切り落とす。

また、それからザザラを見ると…
すぐに顔色が変わった。

もう溢れ出す殺意すら抑えられねぇ…
俺はザザラだけに向いて言う。

「もうなぁ…
わざわざ俺がしたくてかぁ?
お前の足留めにと…
この場にすら全員じゃねぇぞぉ?
まぁ、一応かぁ?
約8500人以上は居るが…
ただ…
足留めしてぇからの動員数だ。
そんだけの事…」

言うとザザラが慌てながらと…

「ま、待て!?
俺の足留めにだけでか!?
そんな動員数など…」

周りは離れて居ても声は聞こえてる距離。

そんなザザラが周り見る様子にと…
俺はウンザリするが言う。

「あぁ…
勿論、逃がさねぇよ…
下らねぇ理由どころじゃねぇクズがぁ!!
お前がとユアナの名前すら…
俺には許せねぇだけだぁ!!
別に俺がしなくてもなぁ?
たかが国一つ。
んなもん簡単だが。
俺がと…
もう単純な理由…
俺が我慢すら出来ねぇってだけかぁ?
ここに居る裏側、全ても…
俺は動かせるがなぁ?
その皆すらユアナを守る事も判る。
だが…
クズ以下の?
お前ら如きが…
どんだけ、ずっと…
ユアナを傷付けてんだぁ!?
しかも…
クズ以下の理由すら…
ただの美貌だとぉ?
それでユアナを…
自分の所有物にとするだけかぁ!!」

僅かに動こうとしたのを見逃さず…
すぐにと俺も動く。

ザザラの靭帯だけを狙って切る。

「ぐぁ…」

倒れたが意識は正常っと。

もう、これで動けねぇ…

俺が見下してると…
どうにか焦りながらザザラがだった。

「ぐっぅ…
判った、俺は今後…
何もしないと誓う。
だから…」

更に怒りが湧き上がる。

「ふざけんじゃねぇ!!
こんのクズ以下がぁ!!
俺の情報を舐めんじゃねぇ!!
ウスロア国の内情すら充分…
知ってっかんなぁ!!
親すら簡単に殺して即位だぁ!?
それから、どんだけ殺してきたぁ!!」

怒鳴っても…
これだけの怒りを俺は抑えられない。

そのまま素早くザザラの…
両手のみを瞬時に切り落とす。

「ぐあぁっ!!
悪かった!!
だから頼む!?
せめて殺すなら…」

もう声すらかぁ?
煩いだけ…

簡単にと素早く、けれど的確にと。
声帯だけを狙って搔き切る。

「……っ」

また俺は息を吐き出してから言う。

「これで声も出ねぇよなぁ?
俺は愛してるユアナにと…
こんなん見せたかねぇし?
聞かせたくもねぇかんなぁ…
だから、これも単純かぁ?
既に俺の仲間が護衛も…
更にユアナには見せず…
聞こえない様にとなぁ?
してんだが…
クズ以下なら何も考えてねぇだろ?
自国の兵すら囮に使うぐれぇだ…
救い様もねぇクズ以下がと!!
あんなにも優しいユアナを…
更にとかぁ?
マジで怒りしか湧かねぇぞ…」

言ってから、すぐに両足首だけを。
瞬時に動いて切り落とす。

「…っ!!」

ザザラを見て予測する。

かなりの血だが…
出血量も問題ねぇな…

痛みで歪んだ顔をして僅かにと
俺を見てくるが…

それすらも、こんなクズ以下など…
どうでも良い…

俺は少しユアナを思い出しながら言う。

「おぃ、クズ以下。
お前だけじゃねぇが…
あんなユアナを洗脳して…
更にと傷付けるクズ共になぁ…
限界だ…
俺は許せねぇ…
判んねぇだろうがなぁ?
あのユアナがだぞ…
俺にと言った時だぁ。
『忘れかけてた夢』と。
『本当に愛した人を、私も愛したい』と。
『願ってた』と。
それだけで俺には…
充分過ぎる程、完全にだぁ!!
判るからこそ…
もう俺は許せねぇんだよ!!
あのユアナをとだぁ!?
ずっと苦しめ続けた事にと!!
そんなクズ共ばかりにとなぁ!!」

怒りで出血死しない様にと。
俺は皮膚だけを無数にと搔き切る。

「っっ…!?」

「まだ生きてるよなぁ?
それに見えて…
聞こえてるよなぁ!?
想像してみっかぁ?
あの美しいだけでもない…
優しいユアナがだぞぉ?
少し笑ってなぁ…
僅かに言う言葉でと…
泣いたが…
それすらも判らないと?
洗脳すらされてと?
だからこそ、ユアナはなぁ…
涙の理由すら判らない程にと!!
どんだけ耐え続けてたんだぁ!!」

地面に血だらけでと。
既に動けず…

声すら出せないザザラを俺は見下す。

僅かに涙を浮かべたが…
気付くからこそ、それすら怒りが湧き上がる。

「もう俺は我慢の限界…
その理由がだぁ。
ようやく判るってぇのかぁ?
だが…
その僅かな涙すらも…
違うよなぁ!?
ユアナにとじゃねぇだろうがぁ!!
今の痛みだけにと…
今の状態だけにと…
自分の事のみ!!
その苦痛にとだろうがぁ!?
どうしようもねぇクズ以下が…
あんなにも優しいユアナにだとぉ!?
俺だけを愛してると…
俺だけを信じると…
俺だけを安心する姿すらも…
その俺もユアナをと…
ユアナだけを愛してる俺もだぁ!!
俺が全てからユアナを守る事すら!!
当たり前な事だぁ!!」

ザザラの血の量でと。
もう時間もないか…

すぐに判断も出来る。
俺は最後にと怒鳴った。

「お前が死んでも誰も泣かねぇ!!
自業自得だぁ!!」

僅かに反応した瞬間にと…
俺はザザラの首を搔き切った。

死んだ事も判る。

だから確認すらしないまま…
簡単に剣の血だけを振り払う。

その場に居る皆すらも…
俺が怒る理由が判った様にとだった。

すぐにザザラを無視して動いた。

俺にと着替えや水なども渡してくる。

意味も判って血塗れになった服を。
身体も簡単に拭いてから皆を見て言う。

「はぁ…
悪りぃ…
どうしても俺すら我慢が無理なぁ?
他の後始末もかぁ?
ちっと面倒だろうが…
俺は先にユアナの移動があっから…
後で報告をくれなぁ?」

それにも皆は少しだけ笑ってから。
頭を下げるのを見た。

俺は仲間を見捨てるクズにはならねぇ…

皆すら理解してる様子にと。
少し怒りも下がった。

すぐにユアナの側にと戻る為に移動する。

それにとユアナの周りに居た皆も反応した。
でも気付いた様子で変化したのも見た。

それにと俺は笑って言う。

「よし!!
俺の怒りも多少かぁ?
どうにか下がったぞぉ?
悪りぃなぁ…
予定通りにと。
ユアナを連れてだなぁ!!」

すぐに皆も少し笑って動いた。

それからユアナを見ると…

目を閉じて…
耳を塞いでと…
どうにかと、してる様子に笑う。

俺は…

**************************

ゼスに言われた様と。
私は目を閉じて、耳を塞ぐ。

けれど…

私は後から気付いた。

ゼスに聞くのを忘れた!?
いつまで!?

でも…

すぐって言ってた?

でも…

すぐって、どれくらい!?

どうにか考えてる私をと。
急に抱き締めてくる感覚がした。

この感覚は…
ゼス!!

一応、そのままで私は言う。

「ゼスでしょう?
聞くの忘れてたの!?
すぐって…
でも…
どれくらいの!?」

それから動く気配もしたけれど。

耳を塞いでた私の手をと。
簡単に退かして…

ゼスの声を聞いた。

「ユアナ!!
もう良いぞぉ!!
目も大丈夫だかんなぁ!!」

そこで私は目を開けると…
嬉しそうに笑うゼスが目の前に居た。

それにと私は安心して…
少し笑って言う。

「やっぱりゼスで安心したよ。
その…
ゼスに言われた様にしてたけれど?
後から気付いたの。
すぐって…
どれくらい?」

ゼスは急に笑い出した。

「あはははは!!
確かに?
すぐ?
くっ。
あははははは!!
正確な時間でもねぇし?
それをと?
しかも後からと?
あはははは!!
もう笑う…
だが…
そりゃそうだなぁ!!
あはははは!!」

少し私は困惑する。

「ゼス?
何が…
えっと…」

そんな私をゼスは簡単に抱き上げる。
でも嬉しそうに笑って言った。

「すぐってのは…
今ぐらいかぁ?
正確な時間じゃねぇし?
先に俺も言えば良かったなぁ!!
だが、確認もしたぞぉ?
これなら問題なく移動もだ!!
夜になる前に着くかんなぁ?」

私はゼスが確認したのならと。
大丈夫だと思って笑って言う。

「良かったね!!
ゼスが判断したなら絶対だと判る!!
皆も安全なら嬉しい!!」

またゼスも嬉しそうに笑って言った。

「あぁ、勿論だぞぉ!!
ユアナも安心しろ!!
俺はもう…
そうなぁ!!
ユアナが笑うのが嬉しいぞ!!」

そう言ってからゼスも、皆も…
少し笑ってから移動を始めた。

そして夜になる前にと…
本当に新しい隠れ家?

その場所には来たけれど…
それにと、もう私は凄く驚いた。

これは…

えぇ!?

まさか…
村なの!?

古いのも判るけれど…
家が複数あるだけでもない。

大きめな建物もある。
更に広場も勿論ある。

周りを見渡すと…
山の崖ばかりが高くある!?

だったら…
ここは谷にも見えるのに!?

私が困惑してる時にゼスが笑って言った。

「あははは!!
ユアナ?
ここは廃村の一つだぞぉ。
更に災害があった際にと。
放棄された場所でもあるかぁ?
だが、修繕すれば充分だかんなぁ!!
使える上に一般民は無理な場所だし?
誰も気付かねぇよ!!」

廃村と?
災害でと?

それで修繕と?

私は納得して頷くけれど。
やっぱり驚いてしまう。

これだと…
普通の村人と変わらないの!?

どうしても私は困惑した…
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