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第三章 第一節 神から人へ
18 触れる
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シャンタルはパンを持ったままの左手をテーブルの上に乗せている。
食べるのに時間だけはかかっているが、まだカップに半分のジュースとほんの少しのパンを食べただけ、空腹を満たすには足りない量だ。
「今度はそうですね……」
ふと思い付いたようにミーヤが動いた。
手頃な大きさのパンを取るとナイフで切れ目を入れ、そこに茹でた鳥の肉と茹でた卵、それからタレで和えた野菜を少しばかりはさむ。
「これは、初めてフェイを連れてカースに行った時に料理人が外でも食べられるようにと作ってくれたパンなんです。フェイはこれを両手に持って楽しそうにおいしそうに食べていたんですよ」
そうシャンタルに話しかけると左手に持っているパンを皿に置き、さっきしたように両手で遠足のパンを持たせる。
さっき一度甘いパンを食べているからやり方が分かったのだろう。何もしなくてもパンの端っこを少しかじりとり咀嚼した。ほんの少しばかりのパンと肉と野菜が口に入った。
シャンタルが少しだけパンを口から離した。思っていた味と違ったので驚いたのだろうか。
「この世の中には色んな味があるのです、シャンタルは、これから先、もっともっと色んなおいしいものを食べていかれるのですよ。もっとどうぞ、おいしいでしょう?」
口に合ったらしくゆっくりゆっくりと噛んで味わっている。肉が入ったことで甘いパンより回数を多く噛んでから飲み込む。
「そうです、お上手です。おいしいですか?」
ミーヤが興奮したように言うとまた口を開ける。
「こうしてご自分で……」
少しだけ力を入れて手を押して放す。そのままの形でシャンタルが自分一人で口にパンを押し付けて噛み切り、何回か噛んで飲み込んだ。
「もう一度です」
少し力を入れて手を押すと、自分で口に運んで噛み切り、噛んで、飲み込む。
「そうですそうです、お上手です」
「シャンタル……」
その様子を見ていてキリエが涙ぐんだ。
そうして何回か遠足のパンを食べていたが止まってしまった。
「どうなさったのでしょう……」
止まったまま軽く口を開ける。
「あ、もしかしたら……」
パンを持った両手を降ろさせ、パンを皿に置いてからジュースの入ったカップを持たせる。
思った通り、自分で口元へ運んで飲んだ!
「ご自分で……」
ミーヤも涙ぐむ。
コクコクと何回か飲んでまたはあっと満足した顔をする。
ミーヤもキリエもこの顔を見るためだけにこの時間を過ごしているのだと思えた。
シャンタルがカップを持った手を下げると、また口を開けた。
「どちらでしょうね」
さっき食べた2種類のパン、どちらかを欲しがっているのだろうとは思うが、どちらかは分からない。
「それではいっそ……」
ミーヤがシャンタルの手を取り、何種類かの並んだパンの上に乗せる。
「ご自分で好きなのをお選び下さい」
シャンタルは自分の手の下にあるいくつものパンに戸惑っているようであったが、その感触には覚えがあり、さらにおいしく味わえたのを理解したのか怖がることはなかった。
「これはさっきのとは違って木の実を練り込んであるようですよ。こちらは少しパサッとした感触ですが噛むと口の中でほどけるようでおいしいです。そしてこっちは外が固くて中に何か入っているようです」
説明しながら次々とパンを触らせていく。
シャンタルはミーヤに手を移動されるとそこでそのパンをしばらく触っていたが、何回か触れて移動してを繰り返しているうちに一つのパンに興味を引いたようだった。
「これですね。これはパイですね。少し食べにくいですが食べてみますか?」
同じように持たせると自分で口に運び、同じようにして噛み切るとしばらく噛んでから飲み込んだ。
「そう、お上手です!」
ミーヤが手を叩いて喜んだ。
パイにはクリームが挟まれていたらしく、何回か噛むとクリームが飛び出して手についた。
「お顔にもついていますよ」
ミーヤが笑いながらシャンタルの口の横についたクリームを指ですくい取ると、
「お行儀が悪いですが、こうして……」
と、シャンタルの口に入れた。
甘いクリームをじっくりと味わうと、それがそのパイにも挟まれてると理解したのか自分で噛み切り手や口にクリームが付くのも気にしないように一生懸命に食べる。パイの欠片がテーブルの上に散らばり、クリームもあちらこちらに飛び散ったがシャンタルは夢中で食べているようだった。
「やはり子どもは甘いものが好き……あ、失礼いたしました」
そう言っている相手が誰かを思い出したように、急いで謝る姿を見てキリエが笑う。
「おまえも私から見れば十分に子どもなのですけどね」
「はい……」
2人で笑い合う。
そうしてパイの後はまた遠足のパンを少し、さらに甘い果物も食べてシャンタルは満足したように手を離した。
「食べていただけましたね」
「ええ……」
「よかったです」
「テーブルの上はぐちゃぐちゃになってしまいましたけどね」
そう言ってまた笑い合った。
食事を下げるために部屋に入って来たさっきの侍女2人がテーブルの上の惨状と、同じように着物が食べ物だらけになっているシャンタルを見て驚いていたが、笑い合う2人を見ると何も言わずに片付けて下がっていった。
食べるのに時間だけはかかっているが、まだカップに半分のジュースとほんの少しのパンを食べただけ、空腹を満たすには足りない量だ。
「今度はそうですね……」
ふと思い付いたようにミーヤが動いた。
手頃な大きさのパンを取るとナイフで切れ目を入れ、そこに茹でた鳥の肉と茹でた卵、それからタレで和えた野菜を少しばかりはさむ。
「これは、初めてフェイを連れてカースに行った時に料理人が外でも食べられるようにと作ってくれたパンなんです。フェイはこれを両手に持って楽しそうにおいしそうに食べていたんですよ」
そうシャンタルに話しかけると左手に持っているパンを皿に置き、さっきしたように両手で遠足のパンを持たせる。
さっき一度甘いパンを食べているからやり方が分かったのだろう。何もしなくてもパンの端っこを少しかじりとり咀嚼した。ほんの少しばかりのパンと肉と野菜が口に入った。
シャンタルが少しだけパンを口から離した。思っていた味と違ったので驚いたのだろうか。
「この世の中には色んな味があるのです、シャンタルは、これから先、もっともっと色んなおいしいものを食べていかれるのですよ。もっとどうぞ、おいしいでしょう?」
口に合ったらしくゆっくりゆっくりと噛んで味わっている。肉が入ったことで甘いパンより回数を多く噛んでから飲み込む。
「そうです、お上手です。おいしいですか?」
ミーヤが興奮したように言うとまた口を開ける。
「こうしてご自分で……」
少しだけ力を入れて手を押して放す。そのままの形でシャンタルが自分一人で口にパンを押し付けて噛み切り、何回か噛んで飲み込んだ。
「もう一度です」
少し力を入れて手を押すと、自分で口に運んで噛み切り、噛んで、飲み込む。
「そうですそうです、お上手です」
「シャンタル……」
その様子を見ていてキリエが涙ぐんだ。
そうして何回か遠足のパンを食べていたが止まってしまった。
「どうなさったのでしょう……」
止まったまま軽く口を開ける。
「あ、もしかしたら……」
パンを持った両手を降ろさせ、パンを皿に置いてからジュースの入ったカップを持たせる。
思った通り、自分で口元へ運んで飲んだ!
「ご自分で……」
ミーヤも涙ぐむ。
コクコクと何回か飲んでまたはあっと満足した顔をする。
ミーヤもキリエもこの顔を見るためだけにこの時間を過ごしているのだと思えた。
シャンタルがカップを持った手を下げると、また口を開けた。
「どちらでしょうね」
さっき食べた2種類のパン、どちらかを欲しがっているのだろうとは思うが、どちらかは分からない。
「それではいっそ……」
ミーヤがシャンタルの手を取り、何種類かの並んだパンの上に乗せる。
「ご自分で好きなのをお選び下さい」
シャンタルは自分の手の下にあるいくつものパンに戸惑っているようであったが、その感触には覚えがあり、さらにおいしく味わえたのを理解したのか怖がることはなかった。
「これはさっきのとは違って木の実を練り込んであるようですよ。こちらは少しパサッとした感触ですが噛むと口の中でほどけるようでおいしいです。そしてこっちは外が固くて中に何か入っているようです」
説明しながら次々とパンを触らせていく。
シャンタルはミーヤに手を移動されるとそこでそのパンをしばらく触っていたが、何回か触れて移動してを繰り返しているうちに一つのパンに興味を引いたようだった。
「これですね。これはパイですね。少し食べにくいですが食べてみますか?」
同じように持たせると自分で口に運び、同じようにして噛み切るとしばらく噛んでから飲み込んだ。
「そう、お上手です!」
ミーヤが手を叩いて喜んだ。
パイにはクリームが挟まれていたらしく、何回か噛むとクリームが飛び出して手についた。
「お顔にもついていますよ」
ミーヤが笑いながらシャンタルの口の横についたクリームを指ですくい取ると、
「お行儀が悪いですが、こうして……」
と、シャンタルの口に入れた。
甘いクリームをじっくりと味わうと、それがそのパイにも挟まれてると理解したのか自分で噛み切り手や口にクリームが付くのも気にしないように一生懸命に食べる。パイの欠片がテーブルの上に散らばり、クリームもあちらこちらに飛び散ったがシャンタルは夢中で食べているようだった。
「やはり子どもは甘いものが好き……あ、失礼いたしました」
そう言っている相手が誰かを思い出したように、急いで謝る姿を見てキリエが笑う。
「おまえも私から見れば十分に子どもなのですけどね」
「はい……」
2人で笑い合う。
そうしてパイの後はまた遠足のパンを少し、さらに甘い果物も食べてシャンタルは満足したように手を離した。
「食べていただけましたね」
「ええ……」
「よかったです」
「テーブルの上はぐちゃぐちゃになってしまいましたけどね」
そう言ってまた笑い合った。
食事を下げるために部屋に入って来たさっきの侍女2人がテーブルの上の惨状と、同じように着物が食べ物だらけになっているシャンタルを見て驚いていたが、笑い合う2人を見ると何も言わずに片付けて下がっていった。
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