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第二章 第一節 再びカースへ
18 神馬
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ミーヤが一番に、次にフェイ、トーヤが続けて立ち上がる。ルギは最初から立ったままでそばにいた。
「神殿からのお使い、なんでしょう……」
「神殿ってのはシャンタル宮の中にあるけどちょっと宮とは役割が違うんだ」
トーヤが説明する。
「シャンタル宮ってのはでっかいでっかい宮殿でな、その中に神殿ってのもある。宮はいわばシャンタルやマユリアが生活する場所だ。まあ色々仕事する場所もあるけどな。謁見の間ってのもその一つだ。そんで神殿ってのはカースの海神神殿もそうだが、そこでシャンタルをお祀りしたりご祈祷したり、そんなことをやってる。生き神のシャンタルを世話するのが宮なら、その本体をお祀りして祭祀を司るのが神殿だ」
「へえ、ややこしいな」
「前の宮の一部ってか、くっついてるってか、なんかそんな所にある。生き神が何しようとそこはそこで神様を祀ってるわけだが、どうしても目の前に生きてござる神様には負けてるように見えたな。民はみんな生きたシャンタルを見たがるもんだ」
「そりゃそうだな、ご利益あるかどうか分かんねえ、いるかどうかも分かんねえ神様より、にっこり笑って手振ってくれる方にありがたがるな」
「そういうわけだ。まあその神殿もマユリアの管轄下にあるから一緒と言えば一緒だが、そこで働いてるのは大部分がおっさんだしな。どうしてもちびやべっぴんさんの方に流れるのはしゃあねえだろ」
「トーヤに会いに来たヤギみたいなおっさんもその神官なんだな」
「そうだ」
「そうか、それで王様の近くの人代表の大臣と、神殿代表のヤギ、そんで宮代表のキリエのおばはんが最初に来たんだな?」
「そういうこった」
その神殿からのお使いが一頭の馬を連れてやってきた。
「マユリアから御下賜の馬です。ダル殿に」
ダルが今まで見た中で一番大きな口をあんぐりと開けた。
使者が言うことには、
「今日の朝、突然マユリアが神殿の馬房に来られてこれから行き来が増えて必要になるだろうから、とこの馬を選んでカースまで届けるようにと言われた」
とのことだった。
使者はそれだけを言うと馬を置いて帰ってしまい、残された者たちはとまどうばかりであった。
「なんかそれって……」
「な、気色悪いタイミングだろ?」
「うん」
アランが言いたいことをトーヤが先取るように言った。
「ダルが俺を洞窟に案内し、そして俺が出ていかないと決めたこのタイミングで馬だ。ダルが宮と何回も往復するようになると言わんばかりにな」
「ぞっとしねえな……」
「ああ。まあもう慣れたけどな」
なんにしてもマユリアの命である、誰も断ることもできず、使者もそんなことは思いもしない。
かくして立派な馬がダルのものとなった。
シャンタル神殿で神馬を務めていた馬だけあって立派な馬であった。あまり詳しくはないトーヤが見ても普通の馬とは違うと分かるぐらいの。
漁から戻ったダルの父親も兄たちも、他の漁師たちも驚きながら大層な名誉なことだと誰もがみんな喜んだが、ただ1人ダルだけは、トーヤの本心を知るだけになんとも複雑な顔をしていた。
「神殿からのお使い、なんでしょう……」
「神殿ってのはシャンタル宮の中にあるけどちょっと宮とは役割が違うんだ」
トーヤが説明する。
「シャンタル宮ってのはでっかいでっかい宮殿でな、その中に神殿ってのもある。宮はいわばシャンタルやマユリアが生活する場所だ。まあ色々仕事する場所もあるけどな。謁見の間ってのもその一つだ。そんで神殿ってのはカースの海神神殿もそうだが、そこでシャンタルをお祀りしたりご祈祷したり、そんなことをやってる。生き神のシャンタルを世話するのが宮なら、その本体をお祀りして祭祀を司るのが神殿だ」
「へえ、ややこしいな」
「前の宮の一部ってか、くっついてるってか、なんかそんな所にある。生き神が何しようとそこはそこで神様を祀ってるわけだが、どうしても目の前に生きてござる神様には負けてるように見えたな。民はみんな生きたシャンタルを見たがるもんだ」
「そりゃそうだな、ご利益あるかどうか分かんねえ、いるかどうかも分かんねえ神様より、にっこり笑って手振ってくれる方にありがたがるな」
「そういうわけだ。まあその神殿もマユリアの管轄下にあるから一緒と言えば一緒だが、そこで働いてるのは大部分がおっさんだしな。どうしてもちびやべっぴんさんの方に流れるのはしゃあねえだろ」
「トーヤに会いに来たヤギみたいなおっさんもその神官なんだな」
「そうだ」
「そうか、それで王様の近くの人代表の大臣と、神殿代表のヤギ、そんで宮代表のキリエのおばはんが最初に来たんだな?」
「そういうこった」
その神殿からのお使いが一頭の馬を連れてやってきた。
「マユリアから御下賜の馬です。ダル殿に」
ダルが今まで見た中で一番大きな口をあんぐりと開けた。
使者が言うことには、
「今日の朝、突然マユリアが神殿の馬房に来られてこれから行き来が増えて必要になるだろうから、とこの馬を選んでカースまで届けるようにと言われた」
とのことだった。
使者はそれだけを言うと馬を置いて帰ってしまい、残された者たちはとまどうばかりであった。
「なんかそれって……」
「な、気色悪いタイミングだろ?」
「うん」
アランが言いたいことをトーヤが先取るように言った。
「ダルが俺を洞窟に案内し、そして俺が出ていかないと決めたこのタイミングで馬だ。ダルが宮と何回も往復するようになると言わんばかりにな」
「ぞっとしねえな……」
「ああ。まあもう慣れたけどな」
なんにしてもマユリアの命である、誰も断ることもできず、使者もそんなことは思いもしない。
かくして立派な馬がダルのものとなった。
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