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第一章 第二節 カースへ
17 女の勘
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「カースでダルをうまいこと話に乗せて、それでカースと行き来すること、武器をな、模擬刀でもいいから手に入れること、それから抜け道を知ること、そういう算段をつけて、そうして宮に戻った。結構充実したカース行きになった」
トーヤは帰り道での馬車の中での会話は一切話さず、それだけを3人に語った。
「なんか、おかしいな……」
「何がだ?」
「なんで帰り道の話したこととか話さねえんだよ」
ベルが怪訝な顔で言い出した。
「なんでって、特に話すこともねえからだろうがよ」
「そうかなあ……」
なお一層顔をしかめてベルが続ける。
「トーヤのことだからさ、帰り道、馬車の中で2人になったら絶対ミーヤさんにも仕掛けるって」
「仕掛けって、何をだよ、おまえ」
「ダルにやったようなことだろ? ミーヤさんを都合よく動かせるような、なんかそういうこと仕掛けたはずだぜ? だって宮に戻ったらまたルギに付きまとわれるかも知れねえのによ」
「特にそんなことはしてねえな。そんな必要ないように感じたし、疲れてもいたしな」
「あ、あれか、やろうとして失敗したか?」
トーヤは心の内を見透かされたような気がしてドキリとし、同時にベルの鋭さにも舌を巻いた。これが女の勘ってやつなのか?
「そうなんだな?」
「何言ってんだよおまえ」
「なんで失敗したかってと、トーヤがミーヤさんを好きんなったからだよ、な」
「な、何言って、おまえ!」
ストレート過ぎる言葉にトーヤが飛び上がった。
「やっぱりな……」
ベルがにや~っと笑う。
「好みだもんなーそういうの、純真でまっすぐで、そんでかわいいタ・イ・プ」
「お、おまえなあ……」
何か言い返そうと思うが言葉が出ない。
「ってかさ、逆かも知れねえな」
「何がだよ」
「おれさ、ずっとそういうのがトーヤのタイプなんだなと思ってたが違ったかもな。ミーヤさんがそういうのだから似たようなタイプを好きに見えたんだ、違うか?」
「お、おま……」
もう絶句するしかない。
「しかし、よかったな」
「何がだよ!」
「だって、トーヤ君にやっと訪れた初恋だろ? トーヤにもそういうのちゃんとあったんだ、よかったよかった。いやあ、初心だねえ」
「は、はつ、って……おま、俺、その頃17だぞ? もうすぐ18って頃だ、そんなはずねえだろうが! 女なんかな、よりどりみどり……」
「うーん、そんじゃ何人目だった?」
「はああああ?」
ベルはここぞとばかりに続ける。
「そういうのはなかっただろ?だって、それまでトーヤの周りって多分娼婦のお姉さんとかそういう人しかいなかったから、そういう目で見られなかったはずだぜ? 恋とかそういうのの前にやーらしい目で見ることしかなかっただろ」
もうなんも言えねえ……そんな感じでトーヤは天を仰ぐ。まさか、自分がこれほどまでにベルに言い負かされる日が来るとは……
「まあいいや。もう真夜中だしな、こっちはトーヤの恋バナ延々聞かされるほど暇じゃねえんだよ、とっとと先続けてくれる?」
「お、おま、おまえがな、そもそも……」
「やめとけってトーヤ」
アランが気の毒そうにトーヤの肩を叩く。
「そもそもこいつだってガキでも女だ、女にこの手の話で口で勝とうってのがそもそも間違ってるんだよ……」
「肝に命じとく……」
男二人ががっくりとお互いを慰めるのを精霊のようなシャンタルが声を殺して肩だけで笑った。
トーヤは帰り道での馬車の中での会話は一切話さず、それだけを3人に語った。
「なんか、おかしいな……」
「何がだ?」
「なんで帰り道の話したこととか話さねえんだよ」
ベルが怪訝な顔で言い出した。
「なんでって、特に話すこともねえからだろうがよ」
「そうかなあ……」
なお一層顔をしかめてベルが続ける。
「トーヤのことだからさ、帰り道、馬車の中で2人になったら絶対ミーヤさんにも仕掛けるって」
「仕掛けって、何をだよ、おまえ」
「ダルにやったようなことだろ? ミーヤさんを都合よく動かせるような、なんかそういうこと仕掛けたはずだぜ? だって宮に戻ったらまたルギに付きまとわれるかも知れねえのによ」
「特にそんなことはしてねえな。そんな必要ないように感じたし、疲れてもいたしな」
「あ、あれか、やろうとして失敗したか?」
トーヤは心の内を見透かされたような気がしてドキリとし、同時にベルの鋭さにも舌を巻いた。これが女の勘ってやつなのか?
「そうなんだな?」
「何言ってんだよおまえ」
「なんで失敗したかってと、トーヤがミーヤさんを好きんなったからだよ、な」
「な、何言って、おまえ!」
ストレート過ぎる言葉にトーヤが飛び上がった。
「やっぱりな……」
ベルがにや~っと笑う。
「好みだもんなーそういうの、純真でまっすぐで、そんでかわいいタ・イ・プ」
「お、おまえなあ……」
何か言い返そうと思うが言葉が出ない。
「ってかさ、逆かも知れねえな」
「何がだよ」
「おれさ、ずっとそういうのがトーヤのタイプなんだなと思ってたが違ったかもな。ミーヤさんがそういうのだから似たようなタイプを好きに見えたんだ、違うか?」
「お、おま……」
もう絶句するしかない。
「しかし、よかったな」
「何がだよ!」
「だって、トーヤ君にやっと訪れた初恋だろ? トーヤにもそういうのちゃんとあったんだ、よかったよかった。いやあ、初心だねえ」
「は、はつ、って……おま、俺、その頃17だぞ? もうすぐ18って頃だ、そんなはずねえだろうが! 女なんかな、よりどりみどり……」
「うーん、そんじゃ何人目だった?」
「はああああ?」
ベルはここぞとばかりに続ける。
「そういうのはなかっただろ?だって、それまでトーヤの周りって多分娼婦のお姉さんとかそういう人しかいなかったから、そういう目で見られなかったはずだぜ? 恋とかそういうのの前にやーらしい目で見ることしかなかっただろ」
もうなんも言えねえ……そんな感じでトーヤは天を仰ぐ。まさか、自分がこれほどまでにベルに言い負かされる日が来るとは……
「まあいいや。もう真夜中だしな、こっちはトーヤの恋バナ延々聞かされるほど暇じゃねえんだよ、とっとと先続けてくれる?」
「お、おま、おまえがな、そもそも……」
「やめとけってトーヤ」
アランが気の毒そうにトーヤの肩を叩く。
「そもそもこいつだってガキでも女だ、女にこの手の話で口で勝とうってのがそもそも間違ってるんだよ……」
「肝に命じとく……」
男二人ががっくりとお互いを慰めるのを精霊のようなシャンタルが声を殺して肩だけで笑った。
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