色んなことが、ふと、気になって

小椋夏己

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2023年  7月

おにぎりを握る手

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 前回、おにぎりをふわっと握るかどうか、みたいに書いたんですが、今回はその握る手段? です。

 私が小さい頃、自治会やこども会などのイベントで、みんなで寄ってたくさんのおにぎりを作って配る、みたいなことがありました。
 あ、おにぎりじゃなくても餅つきなんかもそういう感じですか。次々に付き上がったのをちぎって丸めて、どんどん配るという感じ。

 ドラマでは何かあった時の炊き出しのシーンなんかにもあると思います。時代劇でも大きなおにぎりを作って配ってというシーンは、決して珍しいシーンではないと思います。

 そういう時、みんな素手でしたよね。着物だったら袖をはしょって、おかみさんたちがどんどん握っていたりします。

 ですが、今は料理をする時、ドラマは別として、みなさん手袋をしてらっしゃいます。これは今の時代んなるより前からな気がしますが、やっぱり衛生状態を気にするなら当然と思います。

 私もすぐに食べる時以外はラップで握ってます。父親にお弁当を置いていく時とか、時間が経ってから食べるのが分かっている時には、素手で握るということはしませんでした。だって、どうやって食べるかよく分からなかったですから。もしも、ちょっと傷んでても平気で食べそうで、怖かったのでかなり神経質になってたと思います。そういうことって、一度やりだしたらもうやめられないんですよね。

 それで思い出すのは、中学3年の時の夏のことです。

 母の一番上の姉、伯母が病で死の床にありました。両親が病院に行って、呼んだらすぐに来るようにとのことで、妹と2人で家で待ってたんですが、なんだかふと思いついたんです。

「病院にいる人におにぎり持っていこう」

 もしかしたら炊いたのかも分かりませんが、そのあたりは覚えてないものの、ご飯が結構たくさんあったので、それを妹と2人で握って、卵焼きと、もしかしたらソーセージも焼いたかも知れない。準備ができて、後は詰めて持っていくだけとなった時、病院の母から電話がありました。

「おばちゃんが危ないからすぐに来なさい!」

 それで、

「おにぎり作ってて」

 と言ったら、

「そんなんええからすぐに来なさい!」

 ということで、妹と、帰ってきたら食べたらいいか、とそのまま置いて病院に駆けつけました。

 その夜、伯母は亡くなり、そのまま家には帰らないことになりました。確か、子供たちは大伯母の料亭に泊まったんだったかなあ。よく覚えてないんですが、とにかくおにぎりとおかずは置いたままでした。
 そして翌日だったか、両親が色々な準備のために一度家に戻ったら、全部腐ってたそうです。

「せっかく作ってくれたのにかわいそうなことした」
  
 と、謝ってくれたんですが、こっちこそ、そこまで作っておいたらなんとか持っていく知恵があったらよかったんですよね。病院で、みんなお腹空かせてましたし。

 後々、母が何回もそのことを言ってた気がします。
 
 そんな風に、おにぎりも時間が経ったら痛むのは当然なんですが、外に持っていくにしても保冷剤入れたり色々して、昔より状態はいいはずなのに、今はラップを使わないで作って持っていくということはできなくなりました。

 本当は素手で心をこめて握ったおにぎりがおいしいんじゃないかなと思いつつ、今ではそういう機会はすっかり減ってしまったのは、ちょっとだけさびしい気がします。
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