色んなことが、ふと、気になって

小椋夏己

文字の大きさ
上 下
29 / 597
2021年  9月

一人称の小説

しおりを挟む
 前回、「最近三人称の小説が読めない人が増えているらしい」と書きました。
 それで今回は「一人称の小説」の話です。
  
「三人称の小説を読めない人がどうして一人称の小説なら読めるんだろう?」

 ふと、そう思って、ちょっと考えてみることにしました。



 言われてみれば確かに「一人称の小説」は多い気がします。



「私は○○をどうしました」



「俺はいきなりのことに○○させられた」



 こういう書き方、その行動をしている本人が解説しているのが「一人称の小説」ですね。
 ざっと見てみても、割と多いと思います。全部とか大部分とかの印象はないですが。

 もしかしたら、感情移入しやすいんですかね? 
 自分が主人公の気持ちになりきって読めるとか、世界に没入できるとか、そういう感じなのかな?

 それと、色々と読んでいて思ったんですが、口調が砕けてるのが多かった気もします。



「○○したい!」

 と、主人公は言った。



 「三人称」だとそう書くところを、



「俺は○○したい!」



 「一人称」だと一言でそう言い切ってしまう。そうすると、なんとなく自分がそうしたいと思っているような、そんな感じになるようにも思います。
 

 それから、コスプレ的要素もあるのかな、とも思いました。
 コスプレというか、キャラになりきり? なんにしてもそんな感じかな、と。

 今、結構多いのが「悪役令嬢」とか「転生」「婚約破棄」「ざまあ」に、他なんだろう? そうそう「追放された」とかもありますね。

 それで、たとえば「悪役令嬢」だったら、



「おーほほほほ、あたくしは○○伯爵令嬢よ! ひざまずいて足をおなめ!」

 あたしは✕✕にそう言ってやったの、すごく気持ちがよかったわ!



 みたいな部分、これを「三人称」で書いていくと、ちょっと印象が変わります。



「おーほほほほ、あたくしは○○伯爵令嬢よ! ひざまずいて足をおなめ!」

 ○○伯爵令嬢は✕✕にそう言い放った。とても気持ちがよさそうな顔をしていた。



 そう書くと、「ああそうなんだ」となってしまうのかも知れない。



 「三人称の小説」が「行間を読む」楽しさなのだとしたら、「一人称の小説」は「なりきる」とか「動画的」なのかな?

 でも、今の若い人が特にそれを好むから、というのだけが理由ではないと思います。

 たとえば、夏目漱石の「吾輩は猫である」だって猫の視点から、猫という主人公が「一人称」で話す形で書かれていますしね。時代関係なく、単にその作品のスタイル、と私はとらえていました。

 いや、面白いな。
 今回のことで「○人称」のこと、ちょっと考えてみようかなと思うきっかけになりました。
 また思いついたことがあったら書いてみるかも知れませんが、今のところはこういう結論ということで。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クエスチョントーク

流音あい
大衆娯楽
『クエスチョントーク』というラジオ番組に呼ばれた人たちが、トークテーマとして出されるお題について話します。 「このラジオは、毎回呼ばれたゲストさん達にテーマに沿って話してもらうトーク番組です」 「真剣に聴くもよし、何も考えずに聞くもよし。何気ない会話に何を見出すかはあなた次第」 「このラジオの周波数に合わせちゃったあなたは、今もこれからもきっとハッピー」 「深く考えたり、気楽に楽しんだり、しっかり自分で生き方を決めていきましょう」 トークテーマが違うだけなのでどこからでも読めます。会話形式です。

一行日記 2025年3月

犬束
エッセイ・ノンフィクション
・新人賞用の小説の執筆。 ・『失われた時を求めて』を読む。 ・一日一行でも、美しい事柄について書く、仕合せな気分になるように。

過去を超えて、今を生きるために

たかなり
エッセイ・ノンフィクション
失敗は終わりではなく、次の挑戦へのスタート地点です。人生の航海において、嵐や困難は避けられませんが、それらはむしろ、目的地へと導く道しるべとなります。過去の後悔に囚われるのではなく、今を生き、やりたいことに挑戦する勇気が必要です。 挑戦とは、転ぶことを恐れずに立ち上がり続けることです。未来を予測しようと固執するよりも、今日を大切に生きることで、本当の幸福が手に入るでしょう。そして、仕事も遊びも本気で取り組むことで、人生は豊かになり、心からの達成感を味わうことができます。

島猫たちのエピソード2025

BIRD
エッセイ・ノンフィクション
「Cat nursery Larimar 」は、ひとりでは生きられない仔猫を預かり、保護者&お世話ボランティア達が協力して育てて里親の元へ送り出す「仔猫の保育所」です。 石垣島は野良猫がとても多い島。 2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。 「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。 でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。 もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。 本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。 スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。

そんじょそこいらのたぬ記

月澄狸
エッセイ・ノンフィクション
雑記(?)です。おまけに過去のマンガも載せていきます。

男女について考える(ほとんど憶測と偏見とヒステリー)

月澄狸
エッセイ・ノンフィクション
 私は生物学も心理学も学んでいない、ただの学のない女だ。ついでに恋愛経験もない、さらには友達もいない。告白されたこともないし当然したこともない。そんなわけでこの連載は、浅い知識と経験から「なんとなく思ったこと」を感情的に書き連ねるだけのものになる。読んでも何の学びもなく、不快になるだけなのでご注意を。(※LGBTQについては分からないので、基本的に古い価値観オンリーで書きます。)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...