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第五章 第二部
22 守る力
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アランが応急手当を済ませてすぐ、侍医と衛士を連れたミーヤが戻ってきた。
「あ、おかえりなさい」
アランがまだ痛みのせいで肩で息をする男たちのそばで座り、ミーヤたちを出迎えた。
「え、あら?」
ミーヤもなんとなく雰囲気が違うことに気がついたようだ。
侍医が座って男たちの様子を見て、
「きれいにはまってます。あなたが?」
と、アランに聞き、アランがそうだと頷いた。
「これは、そのへんの医者よりよっぽど腕がいい」
侍医がそう驚くほどの腕前らしい。
「とりあえず、何があったのか教えてもらいたいのですが」
と、一人だけ無事そうなヌオリに衛士が聞くのだが、聞かれても何をどう説明していいのかヌオリにも分からない。
「君は見てたんですよね、何があったんだね?」
「いえ……」
聞かれてもミーヤにも分からない。
アランは一部始終を見ていたが、もちろん説明するわけにはいかない。
「私は最初の状態を診てないのでなんとも言えないんだが、脱臼をしてた、でいいんですよね?」
「え、あ、はい」
「どういう感じでした?」
「えっと、どういう、とは?」
「いや、何か普通とは違うとか」
「ああ」
侍医は単純に治療する前の状態を聞いているようだった。
「いやあ、痛がってるのでとにかくはめないとと思って、思わずやったことなんで。特に変わったことはなかったと思いますが」
「そうですか」
侍医はアランの説明で一応納得したようだ。
「とにかく、後は固定をして冷やしましょう。ええと、医務室に来られますか? それとも部屋をお借りしても?」
「あ、ああ、室内で頼む」
ヌオリの言葉を受け、侍医が2人の男を客室内へ運ぶように言い、衛士たちが手を貸して連れて入った。
「あの、俺はもういいですかね?」
アランが衛士たちに尋ねると、
「また後ほど話を伺いに参りますので、よろしくお願いいたします」
とのことであった。
そうしている間にヌオリたちの部屋の担当の侍女がやってきて、侍医と共に男たちの世話のために部屋へと入っていった。
ヌオリは薄気味悪そうにミーヤを見ながらも、何も言わずに自分も部屋へと入っていった。
廊下に残されたのはミーヤとアランの2人だ。
「とりあえず、部屋に入りましょうか」
「え、ええ……」
ミーヤも困惑した顔のままアランと一緒に部屋へ入った。
応接には誰もいない。この騒ぎで誰が来るか分からないので、念のために奥へ隠れたのだろうとミーヤは思った。
「実はあれ、シャンタルの仕業です」
「ええっ!」
ミーヤが喉から心臓が飛び出しそうなほど驚いた。
「あの、あれって、あの、あの方たちがいきなりあんな風になったのが、ですか?」
「ええ、そうなんです」
アランがどう説明したものかと、少し困ったように笑い顔になる。
「あの、それって一体何が……」
「うーん」
アランは少し考えながら、こう説明をすることにした。
「シャンタルは多少の魔法が使えます。一応魔法って言っていいと思うんですが、本当のところはよく分かりません。もしかしたら神様の力ってやつかも知れないし、そばで見てきた俺らにも、それが何かは分からないんです」
「ええと……」
そう聞いてもミーヤはまだ何をどう受け止めればいいのか混乱しているようだ。
「ええとですね、つまり、あいつの力は何か分からないけど、怖かったり悪かったりする力じゃないってことなんです。魔法にも色々あって、その力で敵を攻撃したりするやつもいますがあいつのはちょっとそういうのとは違うんで、そのへん分かってやってほしいんです」
ミーヤはアランが言わんとすることがなんとなく分かった気がした。
「つまり、シャンタルがあの方たちを傷つけようとして、何かをしたというわけではない、そういうことですか?」
「ああ、そうそう、そういう感じです」
「分かりました」
ミーヤはそう聞いてホッとしたようだ。
やはりミーヤはこの宮の侍女なのだ。たとえ自分を助けるためだとしても、仮にもシャンタルがその力で人を傷つける、などということは受け入れられないのだろう。
「あの、では、あれはなぜ?」
「シャンタルが言うにはですね、あれはミーヤさんを守ろうとしたためだそうです」
「私を守るため?」
「はい、今までもそうでした。あいつが使えるのは、まず人を癒やす力です」
「それは、八年目にダルから聞きました」
そう、あの洞窟で初めてシャンタルが自分から何かをやろうとしたことが、トーヤの傷を癒やすことだった。
「らしいですね。なので、戦場でも主に、傷ついた人を助けてました」
「素晴らしい力です」
ミーヤはうれしそうにそう言った。
「ええ、まあ限界はありますが。俺もそのおかげで助かりました。それでですね、もう一つのが今回の誰かを守る力です。いつもそうやって自分とベルのことを戦場で守ってました」
ミーヤは静かにアランの説明を聞いている。
「シャンタルが言うには、誰かを守る力をその人の周りに張り巡らせるんだそうです。そして、誰かが悪いことをする目的でその中に入ってきたら、その人がやろうとしたことと同じだけのことがその人に返るらしいですよ」
「同じことがその人に返る……」
ミーヤは一生懸命その説明を理解しようとするが、やはりあまりよく分からないようだ。
「あ、おかえりなさい」
アランがまだ痛みのせいで肩で息をする男たちのそばで座り、ミーヤたちを出迎えた。
「え、あら?」
ミーヤもなんとなく雰囲気が違うことに気がついたようだ。
侍医が座って男たちの様子を見て、
「きれいにはまってます。あなたが?」
と、アランに聞き、アランがそうだと頷いた。
「これは、そのへんの医者よりよっぽど腕がいい」
侍医がそう驚くほどの腕前らしい。
「とりあえず、何があったのか教えてもらいたいのですが」
と、一人だけ無事そうなヌオリに衛士が聞くのだが、聞かれても何をどう説明していいのかヌオリにも分からない。
「君は見てたんですよね、何があったんだね?」
「いえ……」
聞かれてもミーヤにも分からない。
アランは一部始終を見ていたが、もちろん説明するわけにはいかない。
「私は最初の状態を診てないのでなんとも言えないんだが、脱臼をしてた、でいいんですよね?」
「え、あ、はい」
「どういう感じでした?」
「えっと、どういう、とは?」
「いや、何か普通とは違うとか」
「ああ」
侍医は単純に治療する前の状態を聞いているようだった。
「いやあ、痛がってるのでとにかくはめないとと思って、思わずやったことなんで。特に変わったことはなかったと思いますが」
「そうですか」
侍医はアランの説明で一応納得したようだ。
「とにかく、後は固定をして冷やしましょう。ええと、医務室に来られますか? それとも部屋をお借りしても?」
「あ、ああ、室内で頼む」
ヌオリの言葉を受け、侍医が2人の男を客室内へ運ぶように言い、衛士たちが手を貸して連れて入った。
「あの、俺はもういいですかね?」
アランが衛士たちに尋ねると、
「また後ほど話を伺いに参りますので、よろしくお願いいたします」
とのことであった。
そうしている間にヌオリたちの部屋の担当の侍女がやってきて、侍医と共に男たちの世話のために部屋へと入っていった。
ヌオリは薄気味悪そうにミーヤを見ながらも、何も言わずに自分も部屋へと入っていった。
廊下に残されたのはミーヤとアランの2人だ。
「とりあえず、部屋に入りましょうか」
「え、ええ……」
ミーヤも困惑した顔のままアランと一緒に部屋へ入った。
応接には誰もいない。この騒ぎで誰が来るか分からないので、念のために奥へ隠れたのだろうとミーヤは思った。
「実はあれ、シャンタルの仕業です」
「ええっ!」
ミーヤが喉から心臓が飛び出しそうなほど驚いた。
「あの、あれって、あの、あの方たちがいきなりあんな風になったのが、ですか?」
「ええ、そうなんです」
アランがどう説明したものかと、少し困ったように笑い顔になる。
「あの、それって一体何が……」
「うーん」
アランは少し考えながら、こう説明をすることにした。
「シャンタルは多少の魔法が使えます。一応魔法って言っていいと思うんですが、本当のところはよく分かりません。もしかしたら神様の力ってやつかも知れないし、そばで見てきた俺らにも、それが何かは分からないんです」
「ええと……」
そう聞いてもミーヤはまだ何をどう受け止めればいいのか混乱しているようだ。
「ええとですね、つまり、あいつの力は何か分からないけど、怖かったり悪かったりする力じゃないってことなんです。魔法にも色々あって、その力で敵を攻撃したりするやつもいますがあいつのはちょっとそういうのとは違うんで、そのへん分かってやってほしいんです」
ミーヤはアランが言わんとすることがなんとなく分かった気がした。
「つまり、シャンタルがあの方たちを傷つけようとして、何かをしたというわけではない、そういうことですか?」
「ああ、そうそう、そういう感じです」
「分かりました」
ミーヤはそう聞いてホッとしたようだ。
やはりミーヤはこの宮の侍女なのだ。たとえ自分を助けるためだとしても、仮にもシャンタルがその力で人を傷つける、などということは受け入れられないのだろう。
「あの、では、あれはなぜ?」
「シャンタルが言うにはですね、あれはミーヤさんを守ろうとしたためだそうです」
「私を守るため?」
「はい、今までもそうでした。あいつが使えるのは、まず人を癒やす力です」
「それは、八年目にダルから聞きました」
そう、あの洞窟で初めてシャンタルが自分から何かをやろうとしたことが、トーヤの傷を癒やすことだった。
「らしいですね。なので、戦場でも主に、傷ついた人を助けてました」
「素晴らしい力です」
ミーヤはうれしそうにそう言った。
「ええ、まあ限界はありますが。俺もそのおかげで助かりました。それでですね、もう一つのが今回の誰かを守る力です。いつもそうやって自分とベルのことを戦場で守ってました」
ミーヤは静かにアランの説明を聞いている。
「シャンタルが言うには、誰かを守る力をその人の周りに張り巡らせるんだそうです。そして、誰かが悪いことをする目的でその中に入ってきたら、その人がやろうとしたことと同じだけのことがその人に返るらしいですよ」
「同じことがその人に返る……」
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