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第四章 第四部
7 親御様の秘密
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「そうね、トーヤの言う通りだと思うわ」
リルだ。
「私はもうとっくに覚悟を決めてたんだったわ」
「そういやそう言ってたな」
「そうよ、子どもたちの為ならなんでもする、私はそう決めたのよ」
リルが愛おしそうに自分の腹を撫でながらそう言った。
リルは今、4人目の子を自分の中で育んでいる。
「この子も手伝ってくれる、がんばれって言ってくれてるわ」
「リル……」
ミーヤが親友の顔を眩しそうに見てそう呟いた。
「さあ、話を進めてちょうだいな、ここにいる人は皆、もう覚悟は決めているはずよ」
「さすがおっかさんだ」
トーヤが愉快そうに笑った。
「異議のあるのはいるか?」
誰も何も言わなかった。
「じゃあ、話を続けてもらおうか。って、なんだったっけか? ああ、そうだ、シャンタルがなんで今の姿なのかってことだったが、それはまた先のこと、そうなったんだな」
「マユリアとシャンタルで全ての力を引続ぐ、そんなこと言ってたぞ」
トーヤにアランが続ける。
『マユリアがその神の身を人の世に降ろし、それがラーラという人となった、と言いました』
「ああ聞いた」
『それはなぜだと思いますか』
「なぜ?」
言われてトーヤが首をひねっていると、横からベルが答えた。
「次に生まれるシャンタルが見つからなかったからだろ」
『その通りです』
光がベルに答える。
『なぜ見つからなかったのか、それが先ほど話したこととも繋がっています』
「さっきのこと?」
『千年前に世界が止まったということです』
「ああ、新しいことが生まれなくなるっていうあれ、って、そうか!」
ベルがひらめいた、とばかりに大きな声を出す。
「つまり、次のシャンタルも生まれなくなってたんだ!」
『その通りです』
「なるほど納得だ!」
「うるせえな、おまえは。もうちょい小さい声でも聞こえるだろうが」
トーヤが耳を押さえて顔をしかめた。
「けどおかげで分かった。そういうことか。それでマユリアが自分の体を使えって言ったわけなんだな」
『その通りです』
「それが、女神様の体を使って、なんとか無事にその時の次代様、ラーラ様が生まれた」
『その通りです』
「そんで次の親御様も見つかって、マユリアたちも無事に生まれた」
『その通りです』
「まだよちよち歩きの神聖な夫婦になる予定のちびの姿が見えたって言ってたよな」
『穢れない二名の姿、後に神の親となる一組の夫婦になる者の姿です』
「そうそう、それ」
「でもラーラ様の時は、親の姿が見えなかったって言ってなかった?」
「え?」
トーヤがベルを振り返った。
「言ってただろ、親が見当たらなくて、そんでマユリア、えっと女神様の方な、そのマユリアが自分の体を使ってくれって言ったって」
「そう、だったな」
トーヤも思い出した。
「そうだ、マユリアの体を生むために、それにふさわしい母親を選んだ、あんたはそう言ってた」
『その通りです』
光が少し悲しげに震えた。
『仮にも神の身を宿すということ、それを可能とする母を探すにはやはり色々な条件を必要としたのです』
「そうだ、そう言ってた。けど次はまず親御様が見つかった、そうだな?」
『その通りです』
「その2つの違いはなんだ? マユリアが体を使えって言って、それでラーラ様が生まれることが決まったから、それにふさわしい親御様を探した。けどマユリアの時はまず親御様が見つかった。それもまだおむつが取れたかどうか分からんような、そんなちびが」
大事なことに思えた。
「なあ、何が違うんだ?」
『マユリアが、その身を人にと申し出て来てくれたのは、次のシャンタルの親になるはずの者が見えなかったからです』
「うん、それは分かった」
『つまり、それは、すでにその前にシャンタルの親になるはずの者が生まれて来なくなっていた、ということなのです』
「な!」
『ラーラの先代の親御様、それが最後の親御様であった、ということです』
つまり、終焉はすで始まっていたということだ。
『以前は何組もの親御様の候補がいたのです。そして、その時、その時代に一番合うであろう者をその中から選んでいました。それが、次第に減り、とうとうラーラの先代の時には一組だけになっていました』
「この間もそう言ってたな、確かに……ってことは、最後の親御様が生まれたのはいつ頃なんだ?」
「ラーラ様のご先代は貴族のご令嬢で、今は48歳になられてご実家の離宮でお暮らしだそうです」
ミーヤがトーヤにそう伝える。
「今48歳の母親ってと、今はいくつぐらいだ」
「貴族の方々は結婚がお早いことが多いわ」
リルがトーヤにそう伝えた。
「13から結婚できるってことだったよな。最短で結婚して子ども生んでるとしたら61か。ということは、一番短く見積もっても、もうその頃には親御様が生まれなくなってた……」
『その通りです』
「それが、世界が止まるということなのか……」
『ですが、もしも世界が止まらなくとも、やがては同じことが起こっていたでしょう。千年前の出来事は、それを早めただけのこと。そしてそれは私がこの神域を閉じたから起こったことなのです』
光が悲しげにそう言った。
リルだ。
「私はもうとっくに覚悟を決めてたんだったわ」
「そういやそう言ってたな」
「そうよ、子どもたちの為ならなんでもする、私はそう決めたのよ」
リルが愛おしそうに自分の腹を撫でながらそう言った。
リルは今、4人目の子を自分の中で育んでいる。
「この子も手伝ってくれる、がんばれって言ってくれてるわ」
「リル……」
ミーヤが親友の顔を眩しそうに見てそう呟いた。
「さあ、話を進めてちょうだいな、ここにいる人は皆、もう覚悟は決めているはずよ」
「さすがおっかさんだ」
トーヤが愉快そうに笑った。
「異議のあるのはいるか?」
誰も何も言わなかった。
「じゃあ、話を続けてもらおうか。って、なんだったっけか? ああ、そうだ、シャンタルがなんで今の姿なのかってことだったが、それはまた先のこと、そうなったんだな」
「マユリアとシャンタルで全ての力を引続ぐ、そんなこと言ってたぞ」
トーヤにアランが続ける。
『マユリアがその神の身を人の世に降ろし、それがラーラという人となった、と言いました』
「ああ聞いた」
『それはなぜだと思いますか』
「なぜ?」
言われてトーヤが首をひねっていると、横からベルが答えた。
「次に生まれるシャンタルが見つからなかったからだろ」
『その通りです』
光がベルに答える。
『なぜ見つからなかったのか、それが先ほど話したこととも繋がっています』
「さっきのこと?」
『千年前に世界が止まったということです』
「ああ、新しいことが生まれなくなるっていうあれ、って、そうか!」
ベルがひらめいた、とばかりに大きな声を出す。
「つまり、次のシャンタルも生まれなくなってたんだ!」
『その通りです』
「なるほど納得だ!」
「うるせえな、おまえは。もうちょい小さい声でも聞こえるだろうが」
トーヤが耳を押さえて顔をしかめた。
「けどおかげで分かった。そういうことか。それでマユリアが自分の体を使えって言ったわけなんだな」
『その通りです』
「それが、女神様の体を使って、なんとか無事にその時の次代様、ラーラ様が生まれた」
『その通りです』
「そんで次の親御様も見つかって、マユリアたちも無事に生まれた」
『その通りです』
「まだよちよち歩きの神聖な夫婦になる予定のちびの姿が見えたって言ってたよな」
『穢れない二名の姿、後に神の親となる一組の夫婦になる者の姿です』
「そうそう、それ」
「でもラーラ様の時は、親の姿が見えなかったって言ってなかった?」
「え?」
トーヤがベルを振り返った。
「言ってただろ、親が見当たらなくて、そんでマユリア、えっと女神様の方な、そのマユリアが自分の体を使ってくれって言ったって」
「そう、だったな」
トーヤも思い出した。
「そうだ、マユリアの体を生むために、それにふさわしい母親を選んだ、あんたはそう言ってた」
『その通りです』
光が少し悲しげに震えた。
『仮にも神の身を宿すということ、それを可能とする母を探すにはやはり色々な条件を必要としたのです』
「そうだ、そう言ってた。けど次はまず親御様が見つかった、そうだな?」
『その通りです』
「その2つの違いはなんだ? マユリアが体を使えって言って、それでラーラ様が生まれることが決まったから、それにふさわしい親御様を探した。けどマユリアの時はまず親御様が見つかった。それもまだおむつが取れたかどうか分からんような、そんなちびが」
大事なことに思えた。
「なあ、何が違うんだ?」
『マユリアが、その身を人にと申し出て来てくれたのは、次のシャンタルの親になるはずの者が見えなかったからです』
「うん、それは分かった」
『つまり、それは、すでにその前にシャンタルの親になるはずの者が生まれて来なくなっていた、ということなのです』
「な!」
『ラーラの先代の親御様、それが最後の親御様であった、ということです』
つまり、終焉はすで始まっていたということだ。
『以前は何組もの親御様の候補がいたのです。そして、その時、その時代に一番合うであろう者をその中から選んでいました。それが、次第に減り、とうとうラーラの先代の時には一組だけになっていました』
「この間もそう言ってたな、確かに……ってことは、最後の親御様が生まれたのはいつ頃なんだ?」
「ラーラ様のご先代は貴族のご令嬢で、今は48歳になられてご実家の離宮でお暮らしだそうです」
ミーヤがトーヤにそう伝える。
「今48歳の母親ってと、今はいくつぐらいだ」
「貴族の方々は結婚がお早いことが多いわ」
リルがトーヤにそう伝えた。
「13から結婚できるってことだったよな。最短で結婚して子ども生んでるとしたら61か。ということは、一番短く見積もっても、もうその頃には親御様が生まれなくなってた……」
『その通りです』
「それが、世界が止まるということなのか……」
『ですが、もしも世界が止まらなくとも、やがては同じことが起こっていたでしょう。千年前の出来事は、それを早めただけのこと。そしてそれは私がこの神域を閉じたから起こったことなのです』
光が悲しげにそう言った。
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