208 / 488
第三章 第四部 女神の秘密
1 二度目の召喚
しおりを挟む
「まあ、何もかもはっきりするまでは決めてしまわない方がいいな」
ディレンが二人の気持ちをなだめるようにそう言う。
「ええ、まあ、そうですね」
「はい、分かりました」
アランとミーヤもディレンの気持ちが分かってそう答える。
「けどなあ、なんにしてもあの光が何か言うまではなんも言えないってことになるな」
ディレンが話を変えるような、それでいて同じ問題であるような方向に話を向ける。
「こうなりゃ少しでも早く、もう一回あそこに呼んでもらいたいもんだ」
ディレンの言葉にアーダは一瞬ビクッとしたが、
「は、はい、今では私もそう思います。怖いですが、一人ではないですし、それよりはもっと色々知りたい、知った方が怖くないのではないかとも思っています」
それでもそう言う。
「今なら、もしもあそこに飛ばされても大丈夫な気がします」
「アーダ様……」
ミーヤがアーダを気遣ってその肩に触れた時、
「え!?」
ミーヤの胸元がほうっと温かくなった。
「これは……」
そしてふうわりと明るい光を放つのを見た。
「フェイ……」
あの青い小鳥が柔らかく、優しく、そして温かく光を放っている。
「あ!」
そうして空間が消滅した。
「これって」
「ああ、来たみたいだな」
比較的冷静なアランとディレンがそう言って状況を受け止める。
「呼ばれたみたいだな」
どこかから聞いたことのある声が聞こえた。
「トーヤか?」
「アランか」
またあの時のように空間がつながったようだ。
「リル大丈夫か!」
「あーこっちは大丈夫、おっかさんは強いのよ!」
ダルの呼びかけに答えたリルの明るい声にミーヤもホッとする。前回はダルと一緒だったが、今回は一人なだけに心配にもなるというものだ。
「ミーヤいるの?」
「ここよ、なに?」
「アベルが光ってるんだけど、そっちはフェイが光ってるの?」
「ええ」
「この子たちったら、小さいくせに本当に大きな顔をして光っているんだから、ねえ」
「リルったら」
こんな状況ながら思わずミーヤが吹き出す。
「ん、なに?」
「いえ、本当にリルは強いなと思って」
「ありがとう、でもミーヤには負けるわよ?」
「え、そんなことはないと思うのだけど」
「ま、今はそういう場合ではなさそうだから、また今度ね」
どこまでも自分のペースを崩さないリルである。
「こっちはこの間のメンツ揃ってんだが、そっちもか?」
「ああ、ダルさんが移動してこっち来たけど」
「そうか」
トーヤが人数を確認するのを待つようにして、また光が瞬いた。
『此度はみな落ち着いているようで、少しゆとりを持てるかも知れません。ですが、限られた時間であることは違いのないこと。トーヤ、マユリアには会ってきましたか?」
光がそうして話を始める。
「ああ、会ってきた」
『どう言っていました』
「どうしたいのか聞いたら、前に言った海の向こうを見てみたい気持ち、親元に帰りたい気持ち、それから、そのまま宮に残りたい気持ちがあるってよ。後宮に行きたいって気持ちはねえらしい。だから、交代が終わったら逃してやるって言ってきた」
何しろ時間がないと言われている。トーヤが一気にまとめてそう話をした。
『そのまま宮に残りたい、そう言ったのですね』
「ああ」
トーヤの報告に光が不安を含んだように瞬いた。
「こっちは言うことは言ったぞ、あんたからもなんか言いたいことあるんじゃねえのか? てか、こっちもまだまだ聞きたいことがあるが、とりあえず言いたいことあるんならとっとと言ってくれ、時間がねえってことだからな」
『分かりました』
光が静かに瞬く。
『まずは千年前のこと』
「そんな前の話からかよ、なんか前にトーヤにおんなじようなことやられた気がすんな」
その言葉にベルがそう言う声が混じり、
「だから時間ねえんだから話の腰折んなおまえは!」
「ごめん!」
と、兄が妹をどやしつけ、光が楽しそうに一瞬瞬き、また続ける。
『ほとんどの神々が神の世に戻り、わたくしのように一部の神が人の世に残って後、人の世の時は穏やかに流れていましたが、千年前、あることから世界が眠り、その流れが止まることとなりました』
「世界が眠るか、なんかそういうの千年前の託宣にあったな」
『そうです』
光が悲しみを帯びたように瞬く。
『眠った世界では時も眠り、流れぬ川のように淀むしかない。それでも千年という時間の中ならば、まださほどの影響はありませんでした。わたくしが止めたいのはもう一度世界が眠ること。もう一度千年の眠りにつけば、この世界はどうなってしまうのか、神の身とても予想もできぬことなのです』
マユリアもそういやそういうこと言ってたな、あの時は眠りたかったら眠らせてやれと言ったが、とてもそれで終わることではなさそうだと、トーヤは心の中で思った。
『八年前、一度はトーヤがそれを、世界が眠ることを妨げてくれました。それにはとても感謝をしています。ですが、それだけで終わることではないのです。まだ続いているのです』
「そんで、今度は一体何をやらせようってんだ? いっつも思うんだがな、あんたら、すげえまどろっこしいんだよ。マユリアもラーラ様もああだこうだと七面倒くさい持って回った言い方してた。時間ないんだろ? とっととやれってこと話せよ、なあ」
ディレンが二人の気持ちをなだめるようにそう言う。
「ええ、まあ、そうですね」
「はい、分かりました」
アランとミーヤもディレンの気持ちが分かってそう答える。
「けどなあ、なんにしてもあの光が何か言うまではなんも言えないってことになるな」
ディレンが話を変えるような、それでいて同じ問題であるような方向に話を向ける。
「こうなりゃ少しでも早く、もう一回あそこに呼んでもらいたいもんだ」
ディレンの言葉にアーダは一瞬ビクッとしたが、
「は、はい、今では私もそう思います。怖いですが、一人ではないですし、それよりはもっと色々知りたい、知った方が怖くないのではないかとも思っています」
それでもそう言う。
「今なら、もしもあそこに飛ばされても大丈夫な気がします」
「アーダ様……」
ミーヤがアーダを気遣ってその肩に触れた時、
「え!?」
ミーヤの胸元がほうっと温かくなった。
「これは……」
そしてふうわりと明るい光を放つのを見た。
「フェイ……」
あの青い小鳥が柔らかく、優しく、そして温かく光を放っている。
「あ!」
そうして空間が消滅した。
「これって」
「ああ、来たみたいだな」
比較的冷静なアランとディレンがそう言って状況を受け止める。
「呼ばれたみたいだな」
どこかから聞いたことのある声が聞こえた。
「トーヤか?」
「アランか」
またあの時のように空間がつながったようだ。
「リル大丈夫か!」
「あーこっちは大丈夫、おっかさんは強いのよ!」
ダルの呼びかけに答えたリルの明るい声にミーヤもホッとする。前回はダルと一緒だったが、今回は一人なだけに心配にもなるというものだ。
「ミーヤいるの?」
「ここよ、なに?」
「アベルが光ってるんだけど、そっちはフェイが光ってるの?」
「ええ」
「この子たちったら、小さいくせに本当に大きな顔をして光っているんだから、ねえ」
「リルったら」
こんな状況ながら思わずミーヤが吹き出す。
「ん、なに?」
「いえ、本当にリルは強いなと思って」
「ありがとう、でもミーヤには負けるわよ?」
「え、そんなことはないと思うのだけど」
「ま、今はそういう場合ではなさそうだから、また今度ね」
どこまでも自分のペースを崩さないリルである。
「こっちはこの間のメンツ揃ってんだが、そっちもか?」
「ああ、ダルさんが移動してこっち来たけど」
「そうか」
トーヤが人数を確認するのを待つようにして、また光が瞬いた。
『此度はみな落ち着いているようで、少しゆとりを持てるかも知れません。ですが、限られた時間であることは違いのないこと。トーヤ、マユリアには会ってきましたか?」
光がそうして話を始める。
「ああ、会ってきた」
『どう言っていました』
「どうしたいのか聞いたら、前に言った海の向こうを見てみたい気持ち、親元に帰りたい気持ち、それから、そのまま宮に残りたい気持ちがあるってよ。後宮に行きたいって気持ちはねえらしい。だから、交代が終わったら逃してやるって言ってきた」
何しろ時間がないと言われている。トーヤが一気にまとめてそう話をした。
『そのまま宮に残りたい、そう言ったのですね』
「ああ」
トーヤの報告に光が不安を含んだように瞬いた。
「こっちは言うことは言ったぞ、あんたからもなんか言いたいことあるんじゃねえのか? てか、こっちもまだまだ聞きたいことがあるが、とりあえず言いたいことあるんならとっとと言ってくれ、時間がねえってことだからな」
『分かりました』
光が静かに瞬く。
『まずは千年前のこと』
「そんな前の話からかよ、なんか前にトーヤにおんなじようなことやられた気がすんな」
その言葉にベルがそう言う声が混じり、
「だから時間ねえんだから話の腰折んなおまえは!」
「ごめん!」
と、兄が妹をどやしつけ、光が楽しそうに一瞬瞬き、また続ける。
『ほとんどの神々が神の世に戻り、わたくしのように一部の神が人の世に残って後、人の世の時は穏やかに流れていましたが、千年前、あることから世界が眠り、その流れが止まることとなりました』
「世界が眠るか、なんかそういうの千年前の託宣にあったな」
『そうです』
光が悲しみを帯びたように瞬く。
『眠った世界では時も眠り、流れぬ川のように淀むしかない。それでも千年という時間の中ならば、まださほどの影響はありませんでした。わたくしが止めたいのはもう一度世界が眠ること。もう一度千年の眠りにつけば、この世界はどうなってしまうのか、神の身とても予想もできぬことなのです』
マユリアもそういやそういうこと言ってたな、あの時は眠りたかったら眠らせてやれと言ったが、とてもそれで終わることではなさそうだと、トーヤは心の中で思った。
『八年前、一度はトーヤがそれを、世界が眠ることを妨げてくれました。それにはとても感謝をしています。ですが、それだけで終わることではないのです。まだ続いているのです』
「そんで、今度は一体何をやらせようってんだ? いっつも思うんだがな、あんたら、すげえまどろっこしいんだよ。マユリアもラーラ様もああだこうだと七面倒くさい持って回った言い方してた。時間ないんだろ? とっととやれってこと話せよ、なあ」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【コミカライズ決定】婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です
灰銀猫
恋愛
両親と妹にはいない者として扱われながらも、王子の婚約者の肩書のお陰で何とか暮らしていたアレクシア。
顔だけの婚約者を実妹に奪われ、顔も性格も醜いと噂の辺境伯との結婚を命じられる。
辺境に追いやられ、婚約者からは白い結婚を打診されるも、婚約も結婚もこりごりと思っていたアレクシアには好都合で、しかも婚約者の義父は初恋の相手だった。
王都にいた時よりも好待遇で意外にも快適な日々を送る事に…でも、厄介事は向こうからやってきて…
婚約破棄物を書いてみたくなったので、書いてみました。
ありがちな内容ですが、よろしくお願いします。
設定は緩いしご都合主義です。難しく考えずにお読みいただけると嬉しいです。
他サイトでも掲載しています。
コミカライズ決定しました。申し訳ございませんが配信開始後は削除いたします。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる