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第三章 第ニ部 助け手の秘密
16 呼ばれた者たち
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「なんだよなんだよそれ! えっ!」
ベルがトーヤに再び駆け寄ろうとしたその時、それまでカースの村長宅の中央の居間だったはずの空間が消滅しました。
「ちょおー! なんだよこれー!」
驚きのあまり声も出ないのか、ダルの家族は何も言えず固まっているような中、ベルの声だけが響き渡る。
「どこだよここお!」
トーヤにはそこがどこだか分かった。
あの時と同じようにみなの全身が光に包まれている。
そして共鳴の時と同じ感覚。
「トーヤあ!」
ベルが誰に聞くともなくトーヤなら分かるのではないか、そう思って名を呼ぶ。
「なんだ……」
「なんだじゃねえよ! なんだよこれ! なんだよこれ!」
「どう言やあ、いいのかな」
トーヤにもどう説明していいものかよくは分からない。
「ってことは、知ってんだな? これが何か、ここがどこか、トーヤ知ってんだよな?」
「ああ」
「なんなんだよ!」
「って言われてもな、なんつーていいもんか」
「なんでもいいからよ、とにかくなんか言ってくれよ!」
「おまえ、無茶苦茶言うよな」
「なんでもいいから、って、あ、兄貴!」
「え?」
立ち上がっていたベルがどこかを見てそう叫ぶ。
そしてそれに答えた声、確かにアランの声だった。
「おまえ、何やってんだ」
アランがいつものように冷静にそう聞く。
「さすがアラン」
こんな状況にいつものように冷静なアラン。ついトーヤはいつものようにそう言って笑ってしまった。
「笑ってんじゃねえよおっさん!」
「おっさんじゃねえって」
「そういうのいいから」
いつものやり取り、いつものアラン隊長。
「おかしいね、こんな感じなのにいつもの通りって」
シャンタルもいつものようにそう言って、まるで何事もなかったようにクスクスと笑った。
「ちょ、おまえも笑ってんじゃねえよ! ええっ! なんなんだよこれえ!」
ベルがそうして一人騒ぎ立てる中、トーヤは黙ってある人を見ていた。
アランの隣に立つオレンジの衣装の人を。
そしてその人もじっとトーヤを見ていた。
「まあちょっと落ち着け」
その人の姿を見たおかげか、トーヤは少し落ち着いたのを感じていた。
「他に誰がいんだ? そっちはアランと、そんでディレン、ミーヤと、それからアーダさんとハリオさんか」
「はい、そうです!」
ハリオがガチガチに固まった声で反射のようにそう答えた。
と、
「あのー」
また違う場所から聞いたことのある声が話しかけてくる。
「こっちにもいるんだけど……」
「って、そっちはリルか」
「そう、それとダル」
「うん、俺もいる」
「そりゃ上等だ」
トーヤがそう言って楽しそうに声をあげて笑った。
「笑ってんじゃねえよ! 一体なんなんだよこれ!」
「ちょい待て、ちょっと聞いてみる。おい」
トーヤがどこかの誰かに向かって話しかけた。
「これがあんたが言ってた『共に聞く者』って面子か? これで揃ったってんなら続きの話、してくれんだろ、ええ?」
トーヤの声に応えるように空気が震えた。そうみなが感じた。
「トーヤ、誰と話してんだよ……」
「神様だよ」
「はあ?」
「まあなんにしても、みんな揃って連れてこいって言うんじゃなく、こうして集めてくれて手間が省けたってもんだ。なあ!」
トーヤが最後に大きくそう言うと、また空気が震えた。
「こっちは俺とじいさん、ばあさん、おふくろさんにおやじさん、それからダリオの兄貴とベルにシャンタル。これで全部揃ったってことなんだよな? それでいいんだよな?」
『ええ、そうです』
その声と同時に光がクルクルと回るようにきらめき、それを見てそれを聞いた者たちが息を飲む。
「ト、ト、ト、トーヤあ……」
「いってえな、そんながっしりつかむなって」
「だ、だって」
へたりこんでトーヤの腕をきつく掴んだベルの手が震えている。
八年前の不思議な話をベルはトーヤから聞いた。
だが聞いただけだ、何も経験はしていない。
それはアランも同じこと。
兄と妹がここにきて、初めて不思議な物語を本当に知ったのだ。
ダルの家族は言うまでもない。
アーダとハリオはそれこそ何が何やらの放心状態である。
ディレンは経験こそしていないが、シャンタルの姿に神を見たこと、今までの人生経験から、おぼろに「何か」を感じ、どこかで何かを覚悟していたようだ。ごく平静にこの事態を受け止めている。
かろうじて経験しているのがダル。「聖なる湖」で不思議な柱がトーヤとシャンタルを吹き飛ばすのを、ルギと共に実際に目にしている。
リルは託宣によってシャンタルに救われ、元からの性格もあってか一応落ち着いてはいるが、八年前の、あのいきなり何もかもを聞かされた時と似たような感覚を感じていた。
そしてミーヤは……
「トーヤ」
「なんだ」
「フェイが、いきなり光ったと思ったらこうなっていました」
「そうか」
手の中で光る青い小鳥をじっと見つめ、そうトーヤに伝えた。
「あ、青い小鳥!」
急いで声を出したのはリルだ。
「こっちもダルとアベルの青い小鳥を見てたの! 今見たら光ってるわ」
「そうか」
ふうむとトーヤが何かを少し考えて、
「ってことは、俺がもらったこの石と、2つの青い小鳥のおかげでこうなってるってことかな?」
どこかにそう尋ねると、そうだと言うようにまた空間が優しく揺れた。
ベルがトーヤに再び駆け寄ろうとしたその時、それまでカースの村長宅の中央の居間だったはずの空間が消滅しました。
「ちょおー! なんだよこれー!」
驚きのあまり声も出ないのか、ダルの家族は何も言えず固まっているような中、ベルの声だけが響き渡る。
「どこだよここお!」
トーヤにはそこがどこだか分かった。
あの時と同じようにみなの全身が光に包まれている。
そして共鳴の時と同じ感覚。
「トーヤあ!」
ベルが誰に聞くともなくトーヤなら分かるのではないか、そう思って名を呼ぶ。
「なんだ……」
「なんだじゃねえよ! なんだよこれ! なんだよこれ!」
「どう言やあ、いいのかな」
トーヤにもどう説明していいものかよくは分からない。
「ってことは、知ってんだな? これが何か、ここがどこか、トーヤ知ってんだよな?」
「ああ」
「なんなんだよ!」
「って言われてもな、なんつーていいもんか」
「なんでもいいからよ、とにかくなんか言ってくれよ!」
「おまえ、無茶苦茶言うよな」
「なんでもいいから、って、あ、兄貴!」
「え?」
立ち上がっていたベルがどこかを見てそう叫ぶ。
そしてそれに答えた声、確かにアランの声だった。
「おまえ、何やってんだ」
アランがいつものように冷静にそう聞く。
「さすがアラン」
こんな状況にいつものように冷静なアラン。ついトーヤはいつものようにそう言って笑ってしまった。
「笑ってんじゃねえよおっさん!」
「おっさんじゃねえって」
「そういうのいいから」
いつものやり取り、いつものアラン隊長。
「おかしいね、こんな感じなのにいつもの通りって」
シャンタルもいつものようにそう言って、まるで何事もなかったようにクスクスと笑った。
「ちょ、おまえも笑ってんじゃねえよ! ええっ! なんなんだよこれえ!」
ベルがそうして一人騒ぎ立てる中、トーヤは黙ってある人を見ていた。
アランの隣に立つオレンジの衣装の人を。
そしてその人もじっとトーヤを見ていた。
「まあちょっと落ち着け」
その人の姿を見たおかげか、トーヤは少し落ち着いたのを感じていた。
「他に誰がいんだ? そっちはアランと、そんでディレン、ミーヤと、それからアーダさんとハリオさんか」
「はい、そうです!」
ハリオがガチガチに固まった声で反射のようにそう答えた。
と、
「あのー」
また違う場所から聞いたことのある声が話しかけてくる。
「こっちにもいるんだけど……」
「って、そっちはリルか」
「そう、それとダル」
「うん、俺もいる」
「そりゃ上等だ」
トーヤがそう言って楽しそうに声をあげて笑った。
「笑ってんじゃねえよ! 一体なんなんだよこれ!」
「ちょい待て、ちょっと聞いてみる。おい」
トーヤがどこかの誰かに向かって話しかけた。
「これがあんたが言ってた『共に聞く者』って面子か? これで揃ったってんなら続きの話、してくれんだろ、ええ?」
トーヤの声に応えるように空気が震えた。そうみなが感じた。
「トーヤ、誰と話してんだよ……」
「神様だよ」
「はあ?」
「まあなんにしても、みんな揃って連れてこいって言うんじゃなく、こうして集めてくれて手間が省けたってもんだ。なあ!」
トーヤが最後に大きくそう言うと、また空気が震えた。
「こっちは俺とじいさん、ばあさん、おふくろさんにおやじさん、それからダリオの兄貴とベルにシャンタル。これで全部揃ったってことなんだよな? それでいいんだよな?」
『ええ、そうです』
その声と同時に光がクルクルと回るようにきらめき、それを見てそれを聞いた者たちが息を飲む。
「ト、ト、ト、トーヤあ……」
「いってえな、そんながっしりつかむなって」
「だ、だって」
へたりこんでトーヤの腕をきつく掴んだベルの手が震えている。
八年前の不思議な話をベルはトーヤから聞いた。
だが聞いただけだ、何も経験はしていない。
それはアランも同じこと。
兄と妹がここにきて、初めて不思議な物語を本当に知ったのだ。
ダルの家族は言うまでもない。
アーダとハリオはそれこそ何が何やらの放心状態である。
ディレンは経験こそしていないが、シャンタルの姿に神を見たこと、今までの人生経験から、おぼろに「何か」を感じ、どこかで何かを覚悟していたようだ。ごく平静にこの事態を受け止めている。
かろうじて経験しているのがダル。「聖なる湖」で不思議な柱がトーヤとシャンタルを吹き飛ばすのを、ルギと共に実際に目にしている。
リルは託宣によってシャンタルに救われ、元からの性格もあってか一応落ち着いてはいるが、八年前の、あのいきなり何もかもを聞かされた時と似たような感覚を感じていた。
そしてミーヤは……
「トーヤ」
「なんだ」
「フェイが、いきなり光ったと思ったらこうなっていました」
「そうか」
手の中で光る青い小鳥をじっと見つめ、そうトーヤに伝えた。
「あ、青い小鳥!」
急いで声を出したのはリルだ。
「こっちもダルとアベルの青い小鳥を見てたの! 今見たら光ってるわ」
「そうか」
ふうむとトーヤが何かを少し考えて、
「ってことは、俺がもらったこの石と、2つの青い小鳥のおかげでこうなってるってことかな?」
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