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第二章 第三部 女神の国
18 女神の友達
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「ええ、そうです」
「でも、特別ってどうすれば」
「俺のお友達になってくれませんか?」
「お友だち?」
「そうです」
言われて小さなシャンタルが首を傾げて考える。
「お友だちは特別なんですか?」
「う~ん、どうでしょうね。本当は俺、友達がいないからよく分からないんです」
笑いながらアランはそう答えた。
「ルーク殿はお友だちなのでしょう?」
「ああ、ルークは仲間です」
「仲間?」
「ええ、そうです。仲間で家族かな。ベルは妹だから家族、そしてエリス様はなんだろうな」
「エリス様」こと先代シャンタルも仲間だが、今の設定ではそうは言えない。
「そうだ、恩人です」
「恩人?」
「ええ、三年前、命を助けてもらいました」
「え?」
「その話はしてませんでしたよね」
三度のお茶会の時、出会いの時の話はしなかった。
小さな主には「中の国の方はお国の事情でこちらに来られた」ことと、「ご主人と再会できる日まで宮に滞在なさる」ということだけを伝えていた。
「ええ」
「シャンタルには驚かれる話かも知れませんし、本当はこんなこと話すべきではないかも知れませんが、友達には話しておかないといけないと思います」
そう言ってアランは話し始めた。
「俺とベルはアルディナの神域の端の方にある村で生まれて育ちました。そして俺が10歳、ベルが7歳の時、いきなり戦が村にやってきて、そして両親と家を失いました」
「まあ……」
小さなシャンタルが驚いて両手を口に当てた。
「驚かせてすみません、大丈夫ですか?」
「え、ええ、少し驚いただけです。それでどうしたんですか?」
「はい」
アランはシャンタルの様子を見ながら少しずつ話す。
「それで、俺の上に兄がいたんです。5歳上でしっかりした強い人でした。行くあてもなかったので3人であちこち放浪をして、そのうちに兄が傭兵になって俺たちを養ってくれてたんですが、その兄が戦で亡くなってしまった」
「なんてこと……」
シャンタルが胸の前に手を合わせると、唇を自分の手に当てて目を閉じた。
「ありがとうございます」
アランも目を閉じて頭を下げ、礼意を表す。
「それで、その後で俺も兄のように傭兵になったんですが、何しろ腕がなくて。それで大ケガをして死にそうになったんですが、ベルがエリス様とルークに助けを求めてくれて、それで助かったんです」
「そうだったんですね」
言われてシャンタルもエリス様がお医者様だったという話を思い出した。
「それから今まで一緒にいる仲間になりましたが、だから、友達ではないんですよ」
「そうなんですね」
シャンタルも納得をしたようだ。
「だからシャンタル、俺の友達になってくれませんか?」
「アランのお友だち」
「ええ、いやですか?」
「いやではないんですが、お友だちって、どうすればいいんでしょう」
「そうですね、俺もいないんでよく分かりませんが、船長、どうすりゃいいです?」
「おいおい、厄介な問題を押し付けてきたな」
ディレンの答えに場がほぐれて笑いが生まれた。
「そうだな、話をすればいいんじゃないか?」
「お話ですか? こうしてお食事会やお茶会でお話をしているのはお友だちとは違うんですか?」
「そうだなあ、こういう会がなくても話せるのがお友だちじゃないですかね」
「会がなくても?」
「ええ、そうです」
ディレンが続ける。
「いつ会っても、何年も会わなくても、次会ったら昨日もさっきも会ったみたいに話ができる、それが友達な気がしますね」
「会っても会わなくても」
「ええ、そうです」
「ああ、なるほど」
アランも納得したように頷く。
「お話しましょうって会や場を作らなくても、いつでも話ができる。家族とは違うけど家族みたいな他人、ってとこかな」
「まあ、そんな感じでいいかもな」
「家族みたいな他人……」
シャンタルが復唱する。
「まあ、それが正しいかどうか分からないけど、そうだなあ……うん、じゃあ、俺はこの宮にいる限り、もしも宮を出たとしても、いつでもシャンタルに会ったらいつも会ってるみたいに話をします。そして、シャンタルが困ったら、できる限りの力になります。そう約束するってのでだめですか?」
「いつでもお話しできて、いつでも力になってくれる?」
「ええ、そうです」
「じゃあ、わたくしはどうすればいいの? アランの力になれることがあるのかしら」
「シャンタルはそのままでいいんですよ」
アランがにっこりと笑って続ける。
「俺はシャンタルが笑って話しかけてくれたらそれで元気になれる。仲良くしてくれたらそれで幸せです。その上で、もしもシャンタルが助けてやろうって思えることがあったら、その時には力を貸して下さい。それでどうです?」
「笑いかけて、元気にして、助けられたら助ける?」
「ええ、そうです。どうですか?」
「それだったらできる気がします」
シャンタルがうれしそうに満面の笑みになる。
「じゃあ、友達になってくれますか?」
「はい、よろこんで!」
「本当なら握手したいけど、男はシャンタルに触れないんですよね?」
尋ねられ、ルギはいきなりシャンタルを抱き上げたある男を脳裏に浮かべながら答えた。
「そうだ、選ばれし者以外が聖なる神に触れることは許されない」
「でも、特別ってどうすれば」
「俺のお友達になってくれませんか?」
「お友だち?」
「そうです」
言われて小さなシャンタルが首を傾げて考える。
「お友だちは特別なんですか?」
「う~ん、どうでしょうね。本当は俺、友達がいないからよく分からないんです」
笑いながらアランはそう答えた。
「ルーク殿はお友だちなのでしょう?」
「ああ、ルークは仲間です」
「仲間?」
「ええ、そうです。仲間で家族かな。ベルは妹だから家族、そしてエリス様はなんだろうな」
「エリス様」こと先代シャンタルも仲間だが、今の設定ではそうは言えない。
「そうだ、恩人です」
「恩人?」
「ええ、三年前、命を助けてもらいました」
「え?」
「その話はしてませんでしたよね」
三度のお茶会の時、出会いの時の話はしなかった。
小さな主には「中の国の方はお国の事情でこちらに来られた」ことと、「ご主人と再会できる日まで宮に滞在なさる」ということだけを伝えていた。
「ええ」
「シャンタルには驚かれる話かも知れませんし、本当はこんなこと話すべきではないかも知れませんが、友達には話しておかないといけないと思います」
そう言ってアランは話し始めた。
「俺とベルはアルディナの神域の端の方にある村で生まれて育ちました。そして俺が10歳、ベルが7歳の時、いきなり戦が村にやってきて、そして両親と家を失いました」
「まあ……」
小さなシャンタルが驚いて両手を口に当てた。
「驚かせてすみません、大丈夫ですか?」
「え、ええ、少し驚いただけです。それでどうしたんですか?」
「はい」
アランはシャンタルの様子を見ながら少しずつ話す。
「それで、俺の上に兄がいたんです。5歳上でしっかりした強い人でした。行くあてもなかったので3人であちこち放浪をして、そのうちに兄が傭兵になって俺たちを養ってくれてたんですが、その兄が戦で亡くなってしまった」
「なんてこと……」
シャンタルが胸の前に手を合わせると、唇を自分の手に当てて目を閉じた。
「ありがとうございます」
アランも目を閉じて頭を下げ、礼意を表す。
「それで、その後で俺も兄のように傭兵になったんですが、何しろ腕がなくて。それで大ケガをして死にそうになったんですが、ベルがエリス様とルークに助けを求めてくれて、それで助かったんです」
「そうだったんですね」
言われてシャンタルもエリス様がお医者様だったという話を思い出した。
「それから今まで一緒にいる仲間になりましたが、だから、友達ではないんですよ」
「そうなんですね」
シャンタルも納得をしたようだ。
「だからシャンタル、俺の友達になってくれませんか?」
「アランのお友だち」
「ええ、いやですか?」
「いやではないんですが、お友だちって、どうすればいいんでしょう」
「そうですね、俺もいないんでよく分かりませんが、船長、どうすりゃいいです?」
「おいおい、厄介な問題を押し付けてきたな」
ディレンの答えに場がほぐれて笑いが生まれた。
「そうだな、話をすればいいんじゃないか?」
「お話ですか? こうしてお食事会やお茶会でお話をしているのはお友だちとは違うんですか?」
「そうだなあ、こういう会がなくても話せるのがお友だちじゃないですかね」
「会がなくても?」
「ええ、そうです」
ディレンが続ける。
「いつ会っても、何年も会わなくても、次会ったら昨日もさっきも会ったみたいに話ができる、それが友達な気がしますね」
「会っても会わなくても」
「ええ、そうです」
「ああ、なるほど」
アランも納得したように頷く。
「お話しましょうって会や場を作らなくても、いつでも話ができる。家族とは違うけど家族みたいな他人、ってとこかな」
「まあ、そんな感じでいいかもな」
「家族みたいな他人……」
シャンタルが復唱する。
「まあ、それが正しいかどうか分からないけど、そうだなあ……うん、じゃあ、俺はこの宮にいる限り、もしも宮を出たとしても、いつでもシャンタルに会ったらいつも会ってるみたいに話をします。そして、シャンタルが困ったら、できる限りの力になります。そう約束するってのでだめですか?」
「いつでもお話しできて、いつでも力になってくれる?」
「ええ、そうです」
「じゃあ、わたくしはどうすればいいの? アランの力になれることがあるのかしら」
「シャンタルはそのままでいいんですよ」
アランがにっこりと笑って続ける。
「俺はシャンタルが笑って話しかけてくれたらそれで元気になれる。仲良くしてくれたらそれで幸せです。その上で、もしもシャンタルが助けてやろうって思えることがあったら、その時には力を貸して下さい。それでどうです?」
「笑いかけて、元気にして、助けられたら助ける?」
「ええ、そうです。どうですか?」
「それだったらできる気がします」
シャンタルがうれしそうに満面の笑みになる。
「じゃあ、友達になってくれますか?」
「はい、よろこんで!」
「本当なら握手したいけど、男はシャンタルに触れないんですよね?」
尋ねられ、ルギはいきなりシャンタルを抱き上げたある男を脳裏に浮かべながら答えた。
「そうだ、選ばれし者以外が聖なる神に触れることは許されない」
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