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シャンタルと青い小鳥
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「へえ、それでミーヤがこの子を」
シャンタルが懐かしそうにそう言う。
「そうなんだよ、うん、かわいいよなこの子」
ベルの手の上には青いガラスでできた小さな小鳥が乗っていた。
「久しぶりだね、私のことを覚えているのかな」
シャンタルがそう言って小鳥の頭をそっと撫でる。
「私も抱っこしてみていいかな?」
「もちろんです」
「ありがとう。さあ、おいで」
シャンタルがそう言ってベルの手から小鳥を受け取る。
「私の初めてのお友達、あの時は本当にありがとう」
そう言いながらもう一度そっと頭を撫でた。
その様子を、ベルはじいーっと食い入るように見つめていたが、
「なんもおこらねえな」
そう言って、それでもまだ視線を外さずじっと見つめ続ける。
「何もって何?」
「ん、だってさ、前にシャンタルが抱っこした時には光ったんだろ?」
「ああ、そうだったね」
シャンタルが頑なにトーヤに心を開こうとしなかった時に、この青い小鳥がフェイの心を伝えてくれて、それが今に繋がっているのだ。
「なあなあ、今はなんか言ってる? また光らない?」
「うーん、どうだろうねえ」
シャンタルはそっと右耳を寄せてからうんうんと頷き、
「何も言わないねえ」
「なんだよそれ! なんか言ったのかと思うじゃねえかよ!」
と、ベルに突っ込まれて楽しそうにコロコロと笑っていた。
「驚きました」
その様子にミーヤが目を丸くして驚く。
「冗談を、おっしゃるんですね」
そう聞いてまたシャンタルがコロコロと笑う。
「うん、言うよ、ベルといるとね、どうしても冗談を言うようになってしまうんだよ」
「なんだよなんだよそれ、おれのせいかよ!」
そう言いながらベルも楽しそうに笑っている。
「本当に仲がよろしいんですね」
「うん、私たちはね、ダチなんだよ」
「そうそう、ダチなの」
「ねー」
「なー」
二人で首を傾げ合ってそう言う様子に、ミーヤがまた驚く。
シャンタルが初めて青い小鳥と会った時、その時にはまだ10歳の子どもであった。
そしてその特殊な生い立ちから、やっと人と話をできるようになったばかりの頃であったので、その子どもがここまで成長していることにミーヤは本当に驚いたのだ。
「本当に、成長されたんですね」
少し目が潤んでいる。
「うん、私はミーヤとキリエに子どもにしてもらって、その後はトーヤ、それからベルとアランにも育ててもらってるんだと思うよ。ベルは私のお姉さんみたいな感じかな」
「え、お姉さんって、おれのが年下じゃん」
「うん、でもね、私は10歳になるまでずっと生まれたばかりの赤子のようなものだったからね。だから人になったのはベルの方が先だからお姉さんでいいと思うよ」
「え~なんか変な感じー!」
そう言う二人を見てまたミーヤが笑う。
「あれっ、なんか光った?」
シャンタルがコロコロと笑うと、それに合わせて青い小鳥が光ったように見えた。
それは多分、シャンタルの体の揺れに合わせて光が当たっただけなのだろうけど、本当に小鳥が笑ったように見えた。
「笑ってる」
「うん、そうだね、笑ってるね」
「ええ、笑ってますね」
ミーヤは心が温まるのを感じた。
あの時、ギリギリの状況でこの子がシャンタルを助けてくれた。そして今、そのシャンタルが戻ってきて自分をふんわりと抱きしめ、幸せそうに笑っているのがきっとうれしいのだ。
「フェイ……」
思わずその名が口から出た。
「ねえねえ、ミーヤさん」
「はい?」
「きっとトーヤもフェイに会いたいと思うんだけど、今のトーヤに見せるのもなんか変だよな?」
「それは、そうかも知れません」
今、トーヤはトーヤであってトーヤではない。「ルーク」という仮の名でこの宮に滞在している。
「だったらみんなに会わせてあげたらいいんじゃない?」
「え?」
「フェイを、トーヤだけじゃなく、ダルにもリルにもディレンにもそれからアーダにも会わせてあげればいいと思うよ」
「あ、そうか、それいいよな! 兄貴も忘れずに、だ」
シャンタルの言葉にベルが手を打って喜んだ。
「この子ももっとお友達がいたら楽しいよな。うん、おれもみんなに会わせてあげたい。いいよね、ミーヤさん」
「ええ」
ミーヤはさらに心が柔らかくなるのを感じた。
「なんと優しいのでしょう、お二人とも。ええ、きっとフェイも喜びます」
「そうか、そんじゃ応接にみんなを呼べばいいよな」
今、アーダはダルの部屋に世話係として行っている。そちらにいる男4人を奥様の部屋へ呼び、奥様の侍従部屋にいるリルにも応接へ来てもらえばいい。
「じゃあさ、奥様とおれはそっち行ってリルも呼んどくから、ミーヤさん、おっさんたちを呼んできてもらえますか?」
「ええ、行ってきます」
「うん、その間ちゃんとフェイは私が預かっているからね。よろしく頼みます」
「はい、よろしくお願いいたします」
ミーヤはニッコリと笑ってそう言うと、シャンタルの手のひらの上でキラキラと笑っている青い小鳥に、
「フェイ、すぐにトーヤも呼んできます、待っててくださいね」
そう言って優しくその頭を撫でた。
「あ、でも今変なかっこしてるからフェイ、分かるかなあ」
ミーヤの手の下でくすぐったそうに揺れている小鳥にベルがそう言い、ますます光がキラキラと広がった気がした。
シャンタルが懐かしそうにそう言う。
「そうなんだよ、うん、かわいいよなこの子」
ベルの手の上には青いガラスでできた小さな小鳥が乗っていた。
「久しぶりだね、私のことを覚えているのかな」
シャンタルがそう言って小鳥の頭をそっと撫でる。
「私も抱っこしてみていいかな?」
「もちろんです」
「ありがとう。さあ、おいで」
シャンタルがそう言ってベルの手から小鳥を受け取る。
「私の初めてのお友達、あの時は本当にありがとう」
そう言いながらもう一度そっと頭を撫でた。
その様子を、ベルはじいーっと食い入るように見つめていたが、
「なんもおこらねえな」
そう言って、それでもまだ視線を外さずじっと見つめ続ける。
「何もって何?」
「ん、だってさ、前にシャンタルが抱っこした時には光ったんだろ?」
「ああ、そうだったね」
シャンタルが頑なにトーヤに心を開こうとしなかった時に、この青い小鳥がフェイの心を伝えてくれて、それが今に繋がっているのだ。
「なあなあ、今はなんか言ってる? また光らない?」
「うーん、どうだろうねえ」
シャンタルはそっと右耳を寄せてからうんうんと頷き、
「何も言わないねえ」
「なんだよそれ! なんか言ったのかと思うじゃねえかよ!」
と、ベルに突っ込まれて楽しそうにコロコロと笑っていた。
「驚きました」
その様子にミーヤが目を丸くして驚く。
「冗談を、おっしゃるんですね」
そう聞いてまたシャンタルがコロコロと笑う。
「うん、言うよ、ベルといるとね、どうしても冗談を言うようになってしまうんだよ」
「なんだよなんだよそれ、おれのせいかよ!」
そう言いながらベルも楽しそうに笑っている。
「本当に仲がよろしいんですね」
「うん、私たちはね、ダチなんだよ」
「そうそう、ダチなの」
「ねー」
「なー」
二人で首を傾げ合ってそう言う様子に、ミーヤがまた驚く。
シャンタルが初めて青い小鳥と会った時、その時にはまだ10歳の子どもであった。
そしてその特殊な生い立ちから、やっと人と話をできるようになったばかりの頃であったので、その子どもがここまで成長していることにミーヤは本当に驚いたのだ。
「本当に、成長されたんですね」
少し目が潤んでいる。
「うん、私はミーヤとキリエに子どもにしてもらって、その後はトーヤ、それからベルとアランにも育ててもらってるんだと思うよ。ベルは私のお姉さんみたいな感じかな」
「え、お姉さんって、おれのが年下じゃん」
「うん、でもね、私は10歳になるまでずっと生まれたばかりの赤子のようなものだったからね。だから人になったのはベルの方が先だからお姉さんでいいと思うよ」
「え~なんか変な感じー!」
そう言う二人を見てまたミーヤが笑う。
「あれっ、なんか光った?」
シャンタルがコロコロと笑うと、それに合わせて青い小鳥が光ったように見えた。
それは多分、シャンタルの体の揺れに合わせて光が当たっただけなのだろうけど、本当に小鳥が笑ったように見えた。
「笑ってる」
「うん、そうだね、笑ってるね」
「ええ、笑ってますね」
ミーヤは心が温まるのを感じた。
あの時、ギリギリの状況でこの子がシャンタルを助けてくれた。そして今、そのシャンタルが戻ってきて自分をふんわりと抱きしめ、幸せそうに笑っているのがきっとうれしいのだ。
「フェイ……」
思わずその名が口から出た。
「ねえねえ、ミーヤさん」
「はい?」
「きっとトーヤもフェイに会いたいと思うんだけど、今のトーヤに見せるのもなんか変だよな?」
「それは、そうかも知れません」
今、トーヤはトーヤであってトーヤではない。「ルーク」という仮の名でこの宮に滞在している。
「だったらみんなに会わせてあげたらいいんじゃない?」
「え?」
「フェイを、トーヤだけじゃなく、ダルにもリルにもディレンにもそれからアーダにも会わせてあげればいいと思うよ」
「あ、そうか、それいいよな! 兄貴も忘れずに、だ」
シャンタルの言葉にベルが手を打って喜んだ。
「この子ももっとお友達がいたら楽しいよな。うん、おれもみんなに会わせてあげたい。いいよね、ミーヤさん」
「ええ」
ミーヤはさらに心が柔らかくなるのを感じた。
「なんと優しいのでしょう、お二人とも。ええ、きっとフェイも喜びます」
「そうか、そんじゃ応接にみんなを呼べばいいよな」
今、アーダはダルの部屋に世話係として行っている。そちらにいる男4人を奥様の部屋へ呼び、奥様の侍従部屋にいるリルにも応接へ来てもらえばいい。
「じゃあさ、奥様とおれはそっち行ってリルも呼んどくから、ミーヤさん、おっさんたちを呼んできてもらえますか?」
「ええ、行ってきます」
「うん、その間ちゃんとフェイは私が預かっているからね。よろしく頼みます」
「はい、よろしくお願いいたします」
ミーヤはニッコリと笑ってそう言うと、シャンタルの手のひらの上でキラキラと笑っている青い小鳥に、
「フェイ、すぐにトーヤも呼んできます、待っててくださいね」
そう言って優しくその頭を撫でた。
「あ、でも今変なかっこしてるからフェイ、分かるかなあ」
ミーヤの手の下でくすぐったそうに揺れている小鳥にベルがそう言い、ますます光がキラキラと広がった気がした。
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