54 / 65
2022年 9月
ななちゃんのおかわり
しおりを挟む
ななちゃんは幼稚園に通う4歳です。
幼稚園で習って今は5まで数えられるようになりました。
時々遊びに行くママのお母さんのおうちには、おじいちゃん、おばあちゃん、それからママの弟のかずおおじさんが住んでいます。
「おじいちゃんと、おばあちゃんと、おじちゃんで3」
「そうそうよくできました」
「ななちゃんと、ママとパパで3」
「そうそう、合わせていくつかな?」
「えっと、3と3は……」
これはまだ分かっていません。
遊びに行くといつもおばあちゃんがおいしいおまんじゅうを出してくれます。
「はいどうぞ」
きれいな箱に入ったおいしいおまんじゅう。
ななちゃんはこのおまんじゅうが大好きです。
でもね……
「ななちゃんはまだ小さいからママとはんぶんこ、はい」
ママがそう言っておまんじゅうを半分にしてくれるのがちょっと不満です。
「いつ食べてもおいしいわね。最近はおいしい和菓子屋さんが少なくなって、だから帰ってきたらこれが楽しみなの」
ママはそう言うけど、
「でも今ダイエット中だからななちゃんと半分でちょうどいいかな」
って、いつもママとはんぶんこ。
それからしばらくして、ななちゃんはもっと数を数えられるようになりました。
「ママとパパとおじちゃんとおじいちゃんとおばあちゃんとななちゃんで6!」
「あら、よくできたわね」
そしていつものおまんじゅうの箱を見たら、
「5つ……」
5つは6より一つ少ない数。
一人一つには足りません。
「さあ召し上がれ」
いつものようにななちゃんはママとはんぶんこ。
いつものように食べたけど、なんだかちょっと悲しくなって、食べながらおまんじゅうもちょっとしょっとしょっぱくなってきました。
「あれ、ななちゃんどうしたの?」
おじちゃんが気がついて聞いてくれたら、もう悲しくて悲しくて、
「ななちゃんもおまんじゅう1つ食べたいの」
そう言ってから、わんわんと泣き出してしまいました。
「あらあ、そうだったの」
おばあちゃんが困ったような、悲しいようなそんな顔になってしまいます。
「残ってたらあげたんだけどなあ」
おじいちゃんもそう言ってくれましたが、残念ながら食べ終わってました。
「今度はちゃんとななちゃんも1つ食べられるようにしようね」
おばあちゃんがそう言ってくれて、やっとななちゃんは泣き止みました。
それからしばらくして、またおばあちゃんのおうちに行ったら、
「はい、ななちゃんこれ」
おばあちゃんが出してくれたのは、いつもより大きな箱にはいったおまんじゅうでした。
「あれ、いつもより大きい!」
「そうよ、いくつあるでしょう?」
「えっと、えっとね」
ななちゃんは今、自分の名前と同じ7まで数えられるようになりました。
「いーち、にー、さーん、しー、ごー」
前はここまでしかなかったおまんじゅう、今日は大きな箱で、
「ろーく! おばあちゃん、みんな1つずつ食べられるむっつあるよ!」
「うん、よかったね」
「それでまだ残ってる、えっと、ななー!」
ななちゃんは大喜び。
だって、6人に7つあるっていうことは……
「ねえ、おばあちゃん」
「なに?」
「今日、おまんじゅうおかわりできる? 7つの食べてもいい?」
「あらあら」
今まで半分しか食べられなかったおまんじゅう、おかわりしていいかどうか、おばあちゃんには分かりません。
「ママがいいって言ったらね」
「うん、聞いてくる!」
急いでななちゃんはママに聞きに行きました。
「うーん、そうねえ、ちゃんと晩ご飯も食べられるなら」
「おかわりしていいの!」
「ご飯も食べられるなら、よ」
「うんわかった! おかわりできるっ! おかわりできるっ!」
ななちゃんはそう言ってぴょんぴょんと飛び跳ねました。
そしていつものお茶の時間。
「ななちゃん、みんなにおまんじゅう配ってくれる?」
「うん、わかった!」
ななちゃんにはちゃんと数が数えられます。
みんなに1つずつ配って、
「ななちゃんの!」
今日はななちゃんの前にもママの前にも一つずつ。
「いただきます!」
ななちゃんは初めておまんじゅうを1つ全部一人で食べられてとっても幸せです。
「おばあちゃん、おかわりしていい?」
「はい、どうぞ」
急いでおまんじゅうの箱に急ぎます。
ふたを開けたらまだおまんじゅうがある。
「ななちゃんのななー!」
そう言ってななちゃんはおまんじゅうをつまんで口に。
「おかわりおいしー!」
待ちきれず、台所のテーブルでおかわりを食べてるななちゃんを、みんなは笑って見ていました。
「僕もおかわりもらおうかな」
かずおおじさんがそう言ってテーブルに来て、
「あれ、ないよ? おかわりないよ?」
10個入りのはずのおまんじゅうの箱をのぞくと中はからっぽ。
「ななちゃん、もしかしておかわりって……」
「うん、ななちゃんのななー!」
ななちゃんは数をまだ7までしか数えられません、だから、
「7が1つ、7が2つ、7が3つ」
7を3回おかわりして、4つも食べてしまいました。
そしてやっぱり、晩ご飯、大好物のハンバーグを食べられなくなり、しかもお腹を壊してママに叱られてしまいましたが、おいしいおいしいおまんじゅう、ななちゃんはとっても幸せでした。
早く10まで数えられるようになろうね。
そしてお腹を壊さないようにしないとね。
幼稚園で習って今は5まで数えられるようになりました。
時々遊びに行くママのお母さんのおうちには、おじいちゃん、おばあちゃん、それからママの弟のかずおおじさんが住んでいます。
「おじいちゃんと、おばあちゃんと、おじちゃんで3」
「そうそうよくできました」
「ななちゃんと、ママとパパで3」
「そうそう、合わせていくつかな?」
「えっと、3と3は……」
これはまだ分かっていません。
遊びに行くといつもおばあちゃんがおいしいおまんじゅうを出してくれます。
「はいどうぞ」
きれいな箱に入ったおいしいおまんじゅう。
ななちゃんはこのおまんじゅうが大好きです。
でもね……
「ななちゃんはまだ小さいからママとはんぶんこ、はい」
ママがそう言っておまんじゅうを半分にしてくれるのがちょっと不満です。
「いつ食べてもおいしいわね。最近はおいしい和菓子屋さんが少なくなって、だから帰ってきたらこれが楽しみなの」
ママはそう言うけど、
「でも今ダイエット中だからななちゃんと半分でちょうどいいかな」
って、いつもママとはんぶんこ。
それからしばらくして、ななちゃんはもっと数を数えられるようになりました。
「ママとパパとおじちゃんとおじいちゃんとおばあちゃんとななちゃんで6!」
「あら、よくできたわね」
そしていつものおまんじゅうの箱を見たら、
「5つ……」
5つは6より一つ少ない数。
一人一つには足りません。
「さあ召し上がれ」
いつものようにななちゃんはママとはんぶんこ。
いつものように食べたけど、なんだかちょっと悲しくなって、食べながらおまんじゅうもちょっとしょっとしょっぱくなってきました。
「あれ、ななちゃんどうしたの?」
おじちゃんが気がついて聞いてくれたら、もう悲しくて悲しくて、
「ななちゃんもおまんじゅう1つ食べたいの」
そう言ってから、わんわんと泣き出してしまいました。
「あらあ、そうだったの」
おばあちゃんが困ったような、悲しいようなそんな顔になってしまいます。
「残ってたらあげたんだけどなあ」
おじいちゃんもそう言ってくれましたが、残念ながら食べ終わってました。
「今度はちゃんとななちゃんも1つ食べられるようにしようね」
おばあちゃんがそう言ってくれて、やっとななちゃんは泣き止みました。
それからしばらくして、またおばあちゃんのおうちに行ったら、
「はい、ななちゃんこれ」
おばあちゃんが出してくれたのは、いつもより大きな箱にはいったおまんじゅうでした。
「あれ、いつもより大きい!」
「そうよ、いくつあるでしょう?」
「えっと、えっとね」
ななちゃんは今、自分の名前と同じ7まで数えられるようになりました。
「いーち、にー、さーん、しー、ごー」
前はここまでしかなかったおまんじゅう、今日は大きな箱で、
「ろーく! おばあちゃん、みんな1つずつ食べられるむっつあるよ!」
「うん、よかったね」
「それでまだ残ってる、えっと、ななー!」
ななちゃんは大喜び。
だって、6人に7つあるっていうことは……
「ねえ、おばあちゃん」
「なに?」
「今日、おまんじゅうおかわりできる? 7つの食べてもいい?」
「あらあら」
今まで半分しか食べられなかったおまんじゅう、おかわりしていいかどうか、おばあちゃんには分かりません。
「ママがいいって言ったらね」
「うん、聞いてくる!」
急いでななちゃんはママに聞きに行きました。
「うーん、そうねえ、ちゃんと晩ご飯も食べられるなら」
「おかわりしていいの!」
「ご飯も食べられるなら、よ」
「うんわかった! おかわりできるっ! おかわりできるっ!」
ななちゃんはそう言ってぴょんぴょんと飛び跳ねました。
そしていつものお茶の時間。
「ななちゃん、みんなにおまんじゅう配ってくれる?」
「うん、わかった!」
ななちゃんにはちゃんと数が数えられます。
みんなに1つずつ配って、
「ななちゃんの!」
今日はななちゃんの前にもママの前にも一つずつ。
「いただきます!」
ななちゃんは初めておまんじゅうを1つ全部一人で食べられてとっても幸せです。
「おばあちゃん、おかわりしていい?」
「はい、どうぞ」
急いでおまんじゅうの箱に急ぎます。
ふたを開けたらまだおまんじゅうがある。
「ななちゃんのななー!」
そう言ってななちゃんはおまんじゅうをつまんで口に。
「おかわりおいしー!」
待ちきれず、台所のテーブルでおかわりを食べてるななちゃんを、みんなは笑って見ていました。
「僕もおかわりもらおうかな」
かずおおじさんがそう言ってテーブルに来て、
「あれ、ないよ? おかわりないよ?」
10個入りのはずのおまんじゅうの箱をのぞくと中はからっぽ。
「ななちゃん、もしかしておかわりって……」
「うん、ななちゃんのななー!」
ななちゃんは数をまだ7までしか数えられません、だから、
「7が1つ、7が2つ、7が3つ」
7を3回おかわりして、4つも食べてしまいました。
そしてやっぱり、晩ご飯、大好物のハンバーグを食べられなくなり、しかもお腹を壊してママに叱られてしまいましたが、おいしいおいしいおまんじゅう、ななちゃんはとっても幸せでした。
早く10まで数えられるようになろうね。
そしてお腹を壊さないようにしないとね。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

流星の徒花
柴野日向
ライト文芸
若葉町に住む中学生の雨宮翔太は、通い詰めている食堂で転校生の榎本凛と出会った。
明るい少女に対し初めは興味を持たない翔太だったが、互いに重い運命を背負っていることを知り、次第に惹かれ合っていく。
残酷な境遇に抗いつつ懸命に咲き続ける徒花が、いつしか流星となるまでの物語。
恋と呼べなくても
Cahier
ライト文芸
高校三年の春をむかえた直(ナオ)は、男子学生にキスをされ発作をおこしてしまう。彼女を助けたのは、教育実習生の真(マコト)だった。直は、真に強い恋心を抱いて追いかけるが…… 地味で真面目な彼の本当の姿は、銀髪で冷徹な口調をふるうまるで別人だった。
イチゴ
高本 顕杜
ライト文芸
イチゴが落ちていく――、そのイチゴだけは!!
イチゴ農家の陽一が丹精込めて育てていたイチゴの株。その株のイチゴが落ちていってしまう――。必至で手を伸ばしキャッチしようとするも、そこへあるのモノが割りこんできて……。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
すべてが叶う黒猫の鈴
雪町子
ライト文芸
その黒猫の首輪には鈴がついている。
魔法の鈴だ。
何一つ不自由のない生活をおくる黒猫が、いじめられっこの少女『彩』と出会ったその日から、運命の歯車はくるくると回りだす。
――『ない』ものを『ある』ことにはできないし、『ある』ものも『ない』ことにはできないんだよ。
すべてが叶う鈴とひきかえに、『特別』をなくした黒猫の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる