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2022年 6月
くわぃだん
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タイトル通り、怪談のようなそうじゃないかも知れないお話です。
怖くはないと思います、多分……
――――――――――――――――――――――――――――――――――
それは私が小学生の時のことでした。
うちは両親と私、それと弟の4人家族。
当時は団地の3階の2DKに住んでいました。
ご近所には同じ年頃の子供もいたのですが、小学校に入ってからは段々と塾や習い事などに行く子が増えて時間が合わなくなり、遊ぶ回数は少なくなっていました。
その日はまだ幼稚園だった弟の音楽教室に母がついていったため、私は一人で家で留守番をして、家でマンガ本を読むことにしました。
読んでいたのは「怖いマンガ」です。
私は「怖い話」が好きなのです。
当時は夏になるとテレビでよく怖い話などをやっていて、私も怖いのにそれを見たがりました。
「もう、またそんな怖いの見る。夜中にトイレに行けなくなっても知らないよ」
よく母にそう言われましたが、当時の家はそんなに広くなくて、夜にトイレに行くのにもそんなに怖い状況にはなりませんでした。
「平気だもーん」
そう言って、新聞のテレビ覧でわざわざそういう番組を見つけては、その時間にテレビの前にいそいそと待機です。
幼稚園の弟は時に、
「怖い~」
と言って泣くこともあり、そうなるとさすがに母も、
「ともやが泣くから消すよ!」
そう言ってテレビを切られ、続きが見たかった私は弟を憎たらしく思ったりもしたものです。
でも今日は一人で留守番。
残念ながらテレビではそういうのやってないけど、一人でゆっくり怖いマンガが読める。
弟のともやは怖いくせに、私がそういう本を開くと横からひょいっとのぞき、
「怖い~」
そう言って泣くので、そんな時も母に、
「もう、そんな本ばっかり読むのやめなさい」
と叱られるのです。
「怖ければのぞかなければいいのに!」
そうは言っても弟がわんわん泣くのはうっとおしいし、それでも読み続けるとまたさらに怒られるので、しぶしぶ本を閉じることも多かったので、
「ともやもいないし、借りたマンガがゆっくり読める」
そう思って私はワクワクと本を開くと、
「ひゃ~怖い~」
そう言いながらケラケラ笑い、時間を忘れて読みふけっていた初夏の午後でした。
3階にある我が家は風通しもよく、その日はたまたま気温がそう高い日でもなかったので、家の北と南にある窓を開け放すと、それだけで十分涼しく、心地よく過ごせていました。
そもそもどうして怖い話が好きかと言いますと、ロマンがあるからです。
昔から人は怖い怖いと言いながらも怖い話を好む傾向があるようですが、あれやこれやの手法でリアリティをもたせ、後の世にまで残る怖い話など本当に文学、芸術だと思います。
「どうせこんなの全部作り話なんだから」
そう思いながらも、
「本当にあったらどうしよう」
そう思う気持ちが楽しいのです。
そうして午後の時間が過ぎていき、気がつけば少し陽が陰ってきていました。
「お母さんたち遅いなあ」
少しお腹が空いてきたと思いながら、薄暗くなってもまだ怖いマンガを読んでいました。
そしてその物語の最高潮、パラリとページをめくると、なんだか分からない恐ろしい顔が3つ、主人公の背後にある壁にぼおっと浮かび上がっているのを見て、思わず肩を縮めてしまっていました。
本当に怖い絵でした。
今思い出してもゾッとする迫力のある恐ろしい顔の絵。
心の中では怖いなあと思いながらも、
「よく見たら笑えるし~」
と、無理やり笑い飛ばそうとしたその時、
「ばささ、ばささ、ばさばさ」
そんな音が背後でしたのです。
(え、なに)
「ばささ、ばささ、ばさばさ」
左のこめかみ付近から一筋つうっと流れたのは、暑い時にかく汗ではありませんでした。
「ばささ、ばささ、ばさばさ」
部屋には私一人、まだ誰も帰ってきていない。
「お、おかあさん?」
おそるおそる聞くけど返事はない。
「ばささ、ばささ、ばさばさ」
ただただその音を繰り返すだけ。
部屋の中が急に暗くなったのは、日が陰ってきたからだけではないような……
振り向きたいけど振り向けない。
もしも、後ろにあの顔があったら。
私は両手に本を持ったまま、すっかり固まってしまいました。
心臓が早鐘を打つように激しく音を立てています。
(どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう)
ただただそう繰り返し、
(おかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん)
心の中で呼び続けていました。
と、
「あれ、あれれ」
やっと気がつきました。
振り向きました。
「な、なんだあ~」
私の背後にはカレンダーが吊ってあり、さっきつけた扇風機が首を振るたびに、
「ばささ、ばささ、ばさばさ」
そう音を立ててカレンダーがめくれていたのでした。
「よかったあ……」
もう泣きそうになりながら、急いでマンガをとじ、まだ時間は早かったけど急いで電気をつけました。
それから間もなく母と弟が帰宅し、どれほどホッとしたことか。
何があったか聞いてみれば、
「なんだしょうもない」
そう思うでしょうが、正体が分かるまでは本当に怖かったのです。
本当にただの風だけだったと思いますか?
私が振り向いていないその時、もしかしたらあの顔が、後ろからこっちを見ていたかも知れない。
そう思うと振り向くのが怖いです。
あの時はたまたま姿を隠してくれたけど、今度は見せてやろう、そう思わないとも限りません。
ほら、あなたの後ろでも……
怖くはないと思います、多分……
――――――――――――――――――――――――――――――――――
それは私が小学生の時のことでした。
うちは両親と私、それと弟の4人家族。
当時は団地の3階の2DKに住んでいました。
ご近所には同じ年頃の子供もいたのですが、小学校に入ってからは段々と塾や習い事などに行く子が増えて時間が合わなくなり、遊ぶ回数は少なくなっていました。
その日はまだ幼稚園だった弟の音楽教室に母がついていったため、私は一人で家で留守番をして、家でマンガ本を読むことにしました。
読んでいたのは「怖いマンガ」です。
私は「怖い話」が好きなのです。
当時は夏になるとテレビでよく怖い話などをやっていて、私も怖いのにそれを見たがりました。
「もう、またそんな怖いの見る。夜中にトイレに行けなくなっても知らないよ」
よく母にそう言われましたが、当時の家はそんなに広くなくて、夜にトイレに行くのにもそんなに怖い状況にはなりませんでした。
「平気だもーん」
そう言って、新聞のテレビ覧でわざわざそういう番組を見つけては、その時間にテレビの前にいそいそと待機です。
幼稚園の弟は時に、
「怖い~」
と言って泣くこともあり、そうなるとさすがに母も、
「ともやが泣くから消すよ!」
そう言ってテレビを切られ、続きが見たかった私は弟を憎たらしく思ったりもしたものです。
でも今日は一人で留守番。
残念ながらテレビではそういうのやってないけど、一人でゆっくり怖いマンガが読める。
弟のともやは怖いくせに、私がそういう本を開くと横からひょいっとのぞき、
「怖い~」
そう言って泣くので、そんな時も母に、
「もう、そんな本ばっかり読むのやめなさい」
と叱られるのです。
「怖ければのぞかなければいいのに!」
そうは言っても弟がわんわん泣くのはうっとおしいし、それでも読み続けるとまたさらに怒られるので、しぶしぶ本を閉じることも多かったので、
「ともやもいないし、借りたマンガがゆっくり読める」
そう思って私はワクワクと本を開くと、
「ひゃ~怖い~」
そう言いながらケラケラ笑い、時間を忘れて読みふけっていた初夏の午後でした。
3階にある我が家は風通しもよく、その日はたまたま気温がそう高い日でもなかったので、家の北と南にある窓を開け放すと、それだけで十分涼しく、心地よく過ごせていました。
そもそもどうして怖い話が好きかと言いますと、ロマンがあるからです。
昔から人は怖い怖いと言いながらも怖い話を好む傾向があるようですが、あれやこれやの手法でリアリティをもたせ、後の世にまで残る怖い話など本当に文学、芸術だと思います。
「どうせこんなの全部作り話なんだから」
そう思いながらも、
「本当にあったらどうしよう」
そう思う気持ちが楽しいのです。
そうして午後の時間が過ぎていき、気がつけば少し陽が陰ってきていました。
「お母さんたち遅いなあ」
少しお腹が空いてきたと思いながら、薄暗くなってもまだ怖いマンガを読んでいました。
そしてその物語の最高潮、パラリとページをめくると、なんだか分からない恐ろしい顔が3つ、主人公の背後にある壁にぼおっと浮かび上がっているのを見て、思わず肩を縮めてしまっていました。
本当に怖い絵でした。
今思い出してもゾッとする迫力のある恐ろしい顔の絵。
心の中では怖いなあと思いながらも、
「よく見たら笑えるし~」
と、無理やり笑い飛ばそうとしたその時、
「ばささ、ばささ、ばさばさ」
そんな音が背後でしたのです。
(え、なに)
「ばささ、ばささ、ばさばさ」
左のこめかみ付近から一筋つうっと流れたのは、暑い時にかく汗ではありませんでした。
「ばささ、ばささ、ばさばさ」
部屋には私一人、まだ誰も帰ってきていない。
「お、おかあさん?」
おそるおそる聞くけど返事はない。
「ばささ、ばささ、ばさばさ」
ただただその音を繰り返すだけ。
部屋の中が急に暗くなったのは、日が陰ってきたからだけではないような……
振り向きたいけど振り向けない。
もしも、後ろにあの顔があったら。
私は両手に本を持ったまま、すっかり固まってしまいました。
心臓が早鐘を打つように激しく音を立てています。
(どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう)
ただただそう繰り返し、
(おかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん)
心の中で呼び続けていました。
と、
「あれ、あれれ」
やっと気がつきました。
振り向きました。
「な、なんだあ~」
私の背後にはカレンダーが吊ってあり、さっきつけた扇風機が首を振るたびに、
「ばささ、ばささ、ばさばさ」
そう音を立ててカレンダーがめくれていたのでした。
「よかったあ……」
もう泣きそうになりながら、急いでマンガをとじ、まだ時間は早かったけど急いで電気をつけました。
それから間もなく母と弟が帰宅し、どれほどホッとしたことか。
何があったか聞いてみれば、
「なんだしょうもない」
そう思うでしょうが、正体が分かるまでは本当に怖かったのです。
本当にただの風だけだったと思いますか?
私が振り向いていないその時、もしかしたらあの顔が、後ろからこっちを見ていたかも知れない。
そう思うと振り向くのが怖いです。
あの時はたまたま姿を隠してくれたけど、今度は見せてやろう、そう思わないとも限りません。
ほら、あなたの後ろでも……
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