親友彼氏―親友と付き合う俺らの話。

はちみつ電車

文字の大きさ
49 / 51

高崎明翔、サイドB

しおりを挟む
薄暗い防火扉の前で、明翔が苦々しい中に悔しさを滲ませながらうつむいている。
俺は焦っていた。このまま放っておいたら、明翔は自分で自分の人生を終わらせようとしてしまうかもしれない。

「俺がイヤなら、深月が俺から離れてよ。俺からは離れらんないから」

そう言って、階段を駆け下りて行く明翔の背中が遠ざかって行く。

待ってくれ、明翔!
ちゃんと話してくれよ!

パッと目を開く。
心臓がバクバクしてるのがハッキリ分かって、理解した。夢か。

一学期、母親の交際相手から虐待を受けていた一条が転校してきて、俺の初恋の相手が一条だってバレた頃の明翔は今思えば明らかに精神が不安定だった。
明翔をかわいがってくれた父ちゃんとじいちゃんが立て続けに亡くなって、残った家族は自分よりも双子の妹を優先するのが染みついた母親のみ。

そんな母親そっくりな自分とそっくりな一条優。
そして、俺は一条を顔だけで好きになった。

幼い頃から一条と何でも分け合わされ、母親までも奪われたと感じていた明翔はあの頃、俺も一条に奪われる、と自暴自棄になってたんだと思う。

あの頃はワケ分からんかった明翔の気持ちが今なら手に取るように分かる。
そして、なぜ今こんな夢を見たのかも。


「今年の明翔の誕生日は平日だから、昨日パパさんの墓参りに行ってきたんだ。墓地の近くに和菓子屋があるんだけど、安倍川もちが名物だからお土産」
「あ……りがとう」
「明翔の誕生日と優ちゃんのパパの墓参りに何の関係があんの?」

一条は無神経だし、タカトゥーは明翔のパパが亡くなった経緯を聞いてないらしい。
後者については不謹慎ながらちょっとだけ嬉しい。明翔、俺にしか話してないんだ……。

「何だっていいじゃん! 食えよ、タカトゥー! さすが名物ってだけあって、超美味い! なあ、明翔!」

俺が勧めるまでもなく、明翔は無表情で無心に安倍川もちを食っている。
食え食え、今日は食事制限なんてナシだ!


放課後、俺の家に入った明翔はいつものように「来い!」と両手を広げる。
バワッと2匹の猫が宙を舞い、明翔にくっつく。

「マジかわいいなあ、君ら。なんで俺は猫に生まれなかったんだろ。俺も猫が良かった。猫は車なんか運転しないじゃん? てか、そもそもバースデーケーキなんてイベントないじゃん?」

お……おう……。
学校でこらえてた分、二人きりになると負のオーラが凄まじい。

誕生日が近付くにつれ、明翔の不安定っぷりが日に日に加速してる。
なのに、学校ではいつも通り明るく振舞ってるのが見ててキュンとさせやがる。
俺にだけは、どんどん本音を暴露ってほしい。

「俺のパパ、俺の誕生日ケーキを取りに車乗ってって事故に巻き込まれたの。誕プレ、事故死」
「き……キッツいなあ……」
「……ごめん。こんな話聞かされる方もキツいよね。ねえ、俺の誕生日に何か考えてる?」
「んー」

パッと明るい顔で明翔が振り向く。

「考えてるけど、明翔が行きたい所とかしたいことあったら教えて」
「パパとじいちゃんのいる所でキャッチボールしたい」
「お……俺と公園でキャッチボールしようか」
「深月、野球ド下手じゃん。物足りない」
「分かった、今日から毎日キャッチボールの練習する」

よし、明日早速野球部に仮入部だ。

「あ、ごめん、また俺……」
「気にすんな。我慢しなくていい、思ってること全部俺にぶつけて。どんな小さい不安でも不満でも何でもいい。パッションだ、明翔。明翔のパッションぶつけて来い。カモン!」

頼むからひとりで考え込んでスッポリ暗い方に落ち込まないでくれ。

俺の熱さが逆効果だったのか、明翔はスンとした顔で薄っすらと不気味に笑みを浮かべる。

「それってめんどくさくない? 俺めんどくさいよね。たぶん4月にも俺こんなんなるよ。だってじいちゃん死んだの俺の中学の入学式の日の朝だもん。起こしに行ったら冷たくなってたんだもん」
「め……めんどくさくなんかない。思ってること全部吐き出してくれていいから」

マジめんどくさくなんかないけど、怖い怖い怖い怖い。
頼むから明翔がそっちに行こうとしたら死んでも止めてくれ、じいちゃん、パパ。

「こんなんと付き合ってても楽しくないでしょ。別れてあげようか」

おおう、ネガティブ炸裂、見事に闇堕ちしとんな。
明翔の無表情は珍しい。美形が際立つ。

「別れたくなんかねえくせに」
「……別に」

知ってんだよ。
明翔は突然別れを突きつけられるのを恐れるあまり、その時が来る前に終わらせようとする。

「俺は別れないよ。言ってたじゃん。明翔は俺から離れられない」
「……覚えてない」
「パパもじいちゃんも、今もずっと明翔のそばにいたかっただろうな。パパとじいちゃんと俺と、明翔の前に3人揃いたかったよ。俺も」

明翔の顔がくしゃくしゃになる。
でも、明翔は泣かない。

「俺は泣くなとは言わない。泣きたい時には、泣いていいんだよ。パパもじいちゃんも、今の明翔なら泣いたっていじめられたりしないって笑ってるよ」

ギュッと抱きついてくる明翔の力がいつもより強い。
まだ我慢してるのか、泣き慣れてないせいなのか。

「俺はやたら重くて一方的で愛し方も分かんねえ頼りない彼氏だけど、だからこそ明翔と一緒に見つけていけたらって思ってる」

明翔が頭をブンブン振って否定してる。
一緒に見つける気なんかねえよじゃないよな。

明翔の頭は小さいから、手のひらに軽く収まってしまう。

「大丈夫だよ。いつもの天真爛漫で明るい明翔も、落ちてる明翔も全部好き。俺は明翔の全部を知りたいんだから、不安な気持ちも全部教えて」

きっと明翔の不安は俺なんかじゃ埋められない。俺にできることなんて少なすぎる。

明翔のためにできることがあるなら、泣き疲れた明翔が寝ちゃうまで抱きしめることくらい、喜んで引き受ける。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

悪の策士のうまくいかなかった計画

迷路を跳ぶ狐
BL
いつか必ず返り咲く。それだけを目標に、俺はこの学園に戻ってきた。過去に、破壊と使役の魔法を研究したとして、退学になったこの学園に。 今こそ、復活の時だ。俺を切り捨てた者たちに目に物見せ、研究所を再興する。 そのために、王子と伯爵の息子を利用することを考えた俺は、長く温めた策を決行し、学園に潜り込んだ。 これから俺を陥れた連中を、騙して嵌めて蹂躙するっ! ……はず、だった……のに?? 王子は跪き、俺に向かって言った。 「あなたの破壊の魔法をどうか教えてください。教えるまでこの部屋から出しません」と。 そして、伯爵の息子は俺の手をとって言った。 「ずっと好きだった」と。 …………どうなってるんだ?

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...