親友彼氏―親友と付き合う俺らの話。

はちみつ電車

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柳龍二の理想の彼氏

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商店街を歩く男子高校生の群れ。

金髪でイケメン王子と評される柳、明るいアッシュグレーの髪色で中性的な美形の明翔、顔は明翔そっくりながら黒髪短髪でパッと見明翔より男っぽい一条、小さいながらこのメンバーにも関わらず堂々とした颯太、高身長イケメンのタカトゥー、金髪碧眼かわいい海外の子供みたいなカイル、背が高いだけの凡顔の俺、に囲まれている黒髪小柄なもやしっ子、そう、黒岩くん。

「黒岩くん、半分が当たりの駄菓子屋なんて本当にあんの?」
「らしいよ。妹の小学校で話題になってるって聞いた」
「当たり続けたら永遠に食える!」
「ほどほどで小学生に譲ろうな、明翔」

駄菓子屋が見えたと言うのに、柳が細い路地へと入って行く。

見ると、柄が悪いと悪名高い下山手高校の制服を着た3人の男子高校生が隠れもしないでタバコを吸っている。

「君たち、お酒とタバコはハタチになってからだ」
「あ? 聖天坂高校か。良い子がこんなとこで何してんだ」
「良い子か? めっちゃ金髪だけど」

リーダー格らしいガタイのいい赤い髪の男が立ち上がり、茶髪の男は柳に驚いている。
うん、今の聖天坂高校で金髪なんて柳くらいなものだ。
指導は年2回とゆるいのだが、真面目な生徒が多い。

「すぐにタバコを消しなさい」
「教師か保護者のつもりかよ」

ヤンキーらしく、煙を柳の顔へと吐き出す。
さすがに柳が顔をしかめた。

「くさっ」
「ははっ。良い子ちゃんはタバコの匂いも知らねえのな」
「口臭は虫歯が原因になっていることもある。歯科を受診すると治るかもしれない」
「誰の口が臭いってんだ!」

仲間に爆笑され、真っ赤になった赤い髪の男が柳に腹パンをかます。

まったく柳は、余計なことを言うから……。

「柳!」

颯太が駆け出し、柳がやられたお返しに飛び蹴りを捧げると、声もなく赤い髪の男が倒れた。
デカい俺とタカトゥーもずずいと前へ出る。

「何この軍団」
「聖天坂高校にもやべぇヤツはいたんだ」

誰がヤバいヤツじゃい。

悪いと有名な高校のヤンキーたちが良い子の我らを恐れて逃げて行く様は愉快である。

「柳くん! 大丈夫?!」
「黒岩くん……まあまあ痛いかな。でも大丈夫」
「柳くんの正義感は素晴らしいと思うけど、他校のヤンキーにまで注意するのは危ないよ」

正義感なんて良く言い過ぎ。単に、この学級委員長は見境がない。
ヤンキーは見て見ぬふりをするのが正解だというのに、わざわざ殴られに行くようなものだ。

「高校生としてあるべき姿を求めることは必要だと僕は思う。同じ高校生なのに、他校だからと見て見ぬふりはできない」
「柳くん……今回は相手が素手だから良かったけど、もしもナイフでも持ってたら」

無駄だ、黒岩くん。
そいつ頭ちょ――固いんだから。

「柳は真面目だなー。俺、他校どころか聖高生がタバコ吸ってても別に気にならんから注意しようなんて思わねえもん」
「それが普通だよ、明翔」
「呂久村だったら1本くれよとかって混ざってそう」
「混ざんねえよ」

マジでタカトゥーは俺を何だと思ってるんだ。
そして、そのセリフそっくりそのままお返しするわ。

「柳。注意するなとは言わねえ。だが、ひとりで行くな」
「佐藤くん」
「俺がお前を守ってやるから、俺を連れて行け」

颯太はまた柳が惚れそうな男前なことを。
柳のキラキラと颯太を見つめる視線に黒岩くんが気付く。

へえ、明らかにムッとしてたのに、何も言わず駄菓子屋に入る。
見た目に違わずムッツリタイプか、黒岩くん。

「懐かしい。僕、このペペロンチーノ好きだったんだ」
「お前セレブか。これ駄菓子屋のお菓子の中で一番高くねえ?」

狭い駄菓子屋へ高校生軍団の入場に小学生たちが端っこに固まる。
大丈夫、お兄ちゃんたちはどちらかと言うとキッズの味方。

「へえ、柳くんこれが好きなんだ」
「うん」

柳がペペロンチーノへと手を伸ばすと、黒岩くんが箱ごとかっさらった。

「僕がこれ買い占める。お金が足りないからお金は柳くんが払って」

言うだけ言って、黒岩くんは店主であろうおばあちゃんの元へと向かう。
え、あのメガネ本物の黒岩くん?

「思いっきりすねてんじゃん。すね方がかわいくねえ~」

明翔とは大違い。
ケンカに巻き込まれたら面倒だ。柳と距離を置こう。

と思ったら、柳に学ランの裾をつかまれている。

「何」
「聞いた? あの黒岩くんが僕におねだりを……」
「あれ、おねだりって言うの?」

俺たちも懐かしの駄菓子を買って店の外で食べていると、柳が大量のペペロンチーノが入った袋を黒岩くんへと差し出した。
てか、買ってもらうくせに先に店から出てるとか俺無理。

「何これ、お湯がないと食べられないの? 僕今すぐ食べたいのに」
「黒岩くん、何が食べたいの?」
「甘辛いイカのやつ」
「分かった!」

柳が駄菓子屋に舞い戻ったと思ったらすぐに飛び出してきた。
今度は甘イカ三郎を大人買いしている。こら、かわいい小学生が泣いちゃうだろーが。

「こんな固かったっけ? 食べる気失くした」
「食べやすいように僕が細かく裂いてあげるよ。これならどう?」
「食べてあげてもいい」

モグモグしていた黒岩くんが顔を上げた。

「喉乾いた」

柳が光の速さのダッシュを見せ、黒岩くんにおしるこを渡す。

「辛い物食べてるのに甘いおしるこなんて欲しいわけないでしょ。ばーか。うんこ」
「ご、ごめん。カレースープがいいかな」

引っ張られるんじゃない。
さすがに柳が不憫になってきた。

「柳、甘やかしすぎ。ビシッと言ってやることも大事だよ」
「何を?」

柳がびっくりするくらいの笑顔で振り向いた。

「なんでそんな嬉しそうなん?」
「だって、人に気を使ってばかりで逆らうことなどない無害通り越して存在感ゼロな黒岩くんが僕にわがまま放題に暴言を吐いたんだよ。嬉しいじゃないか。黒岩くん、一緒においで。好きなの選んで」

柳が黒岩くんを自販機へと連れて行く。
残された我らポカーンである。

「そう言えば、前に柳、黒岩くんに言葉責めされたいって言ってたね」
「あれ言葉責めにもなってねえと思うんだけど」
「小学生男子が言いそうなワガママだったねっ」

明翔の順応性が高すぎる。もう笑顔でうめえ棒を食べ終える。

「アタリだ! もう1本もらってくる!」

今の全財産はたいてうめえ棒3本買ってあげたくなる笑顔で明翔が駄菓子屋に消える。

「ボクはあんなのは嫌だな。パートナーとは対等であるべきだとボクは思う」

俺は明翔を見てたけど、一条と颯太はまだ柳たちを見ていた。

「一条、かわいい弟キャラが好きなんじゃないのっ?」
「好きだけど、パートナーに弟キャラは求めてない」
「そうだったのか!!」
「あ、ボクもアタリだ。もう1本もらってこよう」

颯太の中でガラガラと価値観が崩壊したのが目に見えるようだ。
いや、普通に考えてそうだろーよ。

「颯太、カイル見てどう思う」
「めちゃくちゃかわいい」
「彼氏にしたいと思うか?」
「思わねえ。飼いたい」
「そういうことだよ」
「そういうことか! でも、今さら急なキャラ変更もできねえし、俺はどうすれば……!」

颯太が膝から崩れ落ちた。
一条の旦那になるにはまだまだ道は険しそうだな、颯太。がんばれ。
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