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佐藤颯太の神?対応

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颯太とカイルがヘビのぬいぐるみを首に巻いてテテッと走ってくる。
颯太がピンクヘビ、カイルは水色ヘビ。

「よくそんな長いもんを射撃で落としたな」
「全然当たらなくてガッカリしてたらお店の人がくれた!」
「1年生に恵んでもらってんじゃねーよ」
「キャー!」

きゃあ?

叫び声のした方を見ると、さっきステージで歌っていたアイドル3人組のひとりが金髪で悪そうなヤンキー風の男に腕をつかまれている。
あ、あれは胸の大きなセンターさんじゃないか。

「ファンに対してキャーはないでしょうよー」
「僕たちは善良なただのファンでーす」

男は2人組か。アイドルに絡んでない方の見事な青に髪を染めてる男は、腕まくりしてタトゥーを見せつつ周りにファンをアピールしている。
ファンだって言えば何でも許されるわけじゃねーぞ、コラ。

颯太が漢の顔つきになって2人組へと近付いていく。
颯太は体は小さいがヤンキー一家で幼少期からもまれた生粋のヤンキーである。

「え、あのチビッ子止めに入る気? ヤバくね?」
「大丈夫だからいらんことしないで見てて」

ご安心あれ、タカトゥー。
心配しなくても、たった2人が颯太の3人の兄ひとりの姉の凶暴さを上回ってくることはあるまい。

「手を離せ。嫌がってるだろ」
「あ?」

振り返って颯太の姿を見た金髪が笑った。

「なーに、チビがいきがってんだよ。ケガしたくなかったら引っ込んでろ」
「俺も学校でケガさせて停学は避けたい。何もしないうちに手を離せ」
「こんなチビにケガなんかさせられるわけ――ぐわぁっ」

颯太が金髪の腕をひねると、たまらずアイドルから手が離れ体をねじる。
あんな小物の1匹や2匹、颯太にとっては赤子の手をひねるようなものだ。

「やめろ! 調子乗ってんじゃねーぞ!」

モーションが大きい。
青髪が拳を下ろした時にはすでに懐に入り込んだ颯太が腹にパンチ済みだ。

「ぐほうっ」
「ヤバい、コイツヤバい。行くぞ!」

青髪はまだやりたそうだが、体が動かないらしい。
金髪が青髪を引きずるように連れて行く。あの金髪、見た目によらず賢いな。自分の身がかわいいならば、颯太とやり合おうなんて考えちゃいけない。

「ありがとうございます!」

センターさんが颯太をギュッと抱きしめる。
15センチくらいありそうなヒールのブーツを履いていて、大きな胸にちょうど颯太の顔が埋まる。

「クッソ羨ましい!」
「え、颯太何されてんの」
「明翔!」
「いやー、あのチビッ子すげえな。マジで強いんだ。ヤンキーからアイドルを助けて、感謝の抱擁中」
「なるほど」

明翔が店番終わったってことは……振り返ると、案の定一条もいる。
すげえな、どっかで能面売ってた? ってくらい無の表情。

アイドルたちが颯太に手を振り去って行く。
解放された颯太がハアッと息を吐いた。

「どうだった? どうだった?」
「すっげーぷよんぷよんで苦しくない。あれなら胸もいいかも」
「羨ましい!」

いいなー、颯太ばっかり!
颯太ばっかり人助けしてて俺は何もしてないからだけど。

「へえ、ショタも胸ある方がいいんだ」
「へえ、深月胸に埋まるの羨ましいんだ」

同じような顔のいとこ同士が揃って能面顔になってしまった。
抑揚のない声、そしてこの顔、完全にすねてる! ダブルですねすね入った!

「いや、羨ましいけど、別に羨ましくねえよ? 俺胸より足派だし」
「ふーん。聞いてないことまで勝手にしゃべらないで」
「え、嘘、ごめん」
「俺ジュース買いに行くからついて来ないでね」
「はい……」

明翔と一条が並んで雑踏へと消えていく。
うわあ……地獄。

「颯太、どうするよ。この間になんか美味そうなもんでも買っとく?!」
「なに慌ててんだ、深月」
「なんで颯太は落ち着いてんだ! 一条も思いっきりすねてんじゃん!」
「かっわいいよな。見た? あの無の表情」
「それが怖いんじゃん!」
「あんな無表情できるとか、表情筋死んでる。かわいい~」

コイツ惚れたと認めたら全肯定か。
楽しそうにニコニコ笑っている颯太はほっといて、とりあえず手あたり次第に食いもんを買い漁って行く。

「明翔!」

人の波の間に明翔を見つけ、いの一番に駆け寄る。

「明翔、これ食わねえ?」
「え……こんなにいっぱい、俺ひとりで食っていいの?」
「いいよ、いいよ! 文化祭くらい堅苦しいの抜きに食おうや!」
「うん! ありがとう、深月!」

良かった、あっさり明翔の機嫌が直ってくれた。
安心してふと見ると、一条が嬉しそうに食ってる明翔を見て、颯太を見た。

ニコニコしてる颯太と目が合うと、一条は無から不満の顔になった。

「ショタは何もないのか」

あーあ。だから何か買うかって誘ってやったのに。長引いたら厄介だぞ。

「お! 今度は怒った! いろんな一条の顔が見れて楽しい!」

颯太は無邪気に笑っているが、火に油を注いだようだ。
そりゃそうだ、すねてる時に楽しまれたんじゃムカつく。

「ボク帰る。当番も終わったしもう文化祭に用はない」
「あ、待って」

クルリと背を向けた一条の裾をつかんで颯太が引きとめる。

「行かないで。俺、一条と文化祭回りたいと思って何もまだ見てないんだよ」

いや、そう言ってたくせに銃見たらすっかり忘れてカイルと射撃やったの脳から抜け落ちてんのかな。
首にピンクのヘビいるんだけど。

一条がフッと男前に笑った。

「分かったよ」

颯太の頭をなで、そっと抱きしめる。
どういう心情かサッパリ分からん。

タカトゥーが笑って颯太と一条を指差す。

「あっちも無事に仲直りできたみたいだな」
「まー、めでたしめでたしってな」
「やっぱ恋愛はめんどくさいわ」

そう言い残し、他クラスの女子と共にタカトゥーが人混みに消えていく。

あいつ……やっぱ何かあったんかな。
話さねえくせに匂わせやがって、めんどくさいのはお前だ。
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