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呂久村深月の完敗
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「俺、呂久村深月。同じクラスなのにほとんどしゃべったことないよね。君、名前は?」
「出口さつきです」
「いい名前だね。妹がいそうで」
俺の合コンイメージはこんな感じ。
チャラい男が女子を質問責めして、いちいち褒めてお持ち帰りに持って行くイメージ。
颯太ほどではないが俺も合コンにいいイメージはない。
お下げ髪の小柄な名前すら今しがた知ったモブ女生徒がうつむきがちにチラチラとこちらを上目遣いしながら答える。
いかにも男慣れしてない純真培養っぽいな。これは俺がリードせねば。
「さつきって呼んでいい?」
「はい」
「さつき、この中でどれが一番好き? 俺は梅干しかな」
今日の日替わりセットは高野豆腐の煮物とししゃもがメインおかず。
俺はどちらも好きではない。
「私はたくわんですね」
「ははは、たくわんは沢庵と書くからたくあんと呼ぶのが正しいという説があるよ」
「そうなんですか」
あ、話終わった。
えーと……。
「ぷっ」
見ると、明翔が口元を隠しているが笑ってるのはもろ分かり。
「お、おしゃれな服だね。赤いリボンがかわいいよ」
「みんなと同じセーラー服ですけど」
「さつきが着るとまるで名門私立のセーラー服のようだよ。ははは」
「あーっはっはっは!」
隠す気もなく明翔が腹を抱えて笑っている。
う……改まると、何しゃべったらいいのか分かんなくなっちゃったんだよなあ。
口いっぱいに高野豆腐を入れてひとまず物理的にしゃべれない状況を作り、女の敵はどう攻めているのか様子をうかがう。
「優ちゃん、髪伸ばさないの? ベリーショートがすっげ似合ってるけど」
「まあ、少しくらいは伸ばそうかとも思ってる」
「うわ、短いからかな。俺より全然髪綺麗じゃん。俺の髪固くってさあ」
「ほんとだ。見た目は柔らかそうなのに」
「パーマの力!」
「へえ、天然ぽくてすごく自然だ」
すげえ。女の敵すげえ!
タカトゥーはめちゃくちゃ自然に一条の髪に触れ、自分の髪も触らせる。
「さつき、髪綺麗だね。あ、枝毛。1本が2本になってお得だね」
「ぶわーっははは!」
明翔の爆笑に心が折れた。
もういい! 俺一生合コンなんかしない!
ガーッと米をかき込み、みそ汁を飲む。
あ、梅干しよりみそ汁のが美味い。
「ふふっ。必死なところ悪いけど、私彼氏いるから」
「え?」
俺の隣の女がガラッと雰囲気を変えて足を組み、お下げをほどいてファサッと髪を払う。
「私の彼氏、こんな自称進学校じゃなく、れっきとした進学校に通ってるの。悪いけど、聖天坂高校程度で私を落とせると思わないことね」
誰、これ。
なんで俺こんなほとんど知らない女に高飛車にフラれてんの。
ゆりを見ると、あからさまにしまった! って顔をしている。
「さつきにシュミレーションだって言うの忘れてた!」
「おい。まさか俺が本気で口説いたと思われてんじゃねえだろうな」
ゆりが首をこくこくと肯定しながら「ごめんごめん」と両手を合わせる。
冗談じゃねえ! 本気にされてつきまとわれても迷惑だが、一蹴されるとめっちゃ腹立つ!
「へえ……その彼氏って身長どれくらい?」
「身長しか取り柄がないものねえ。私の彼は160センチくらいだけど、偏差値は72あるの」
「偏差値は聞いてねえんだよ。どんな顔してんの」
「メキシコサンショウウオにクリソツ」
「ウーパールーパーじゃねえか。よくドヤれたな」
「第一志望校は稲應大学よ」
「だから、聞いてない。どうせなら東大とか言っとけや」
「射程距離ではあるらしいのよ。本当か冗談かはともかく」
「どっちでもない、ただの見栄だろ」
頭は良くても低身長のウーパールーパーなのに、さつきのあごは全然下がらない。
「あなたは見栄張ってもせいぜいワーチ止まりでしょ!」
「なめんな! 俺はこの学校でも成績最下位層だ! 大学受験なんかはなから頭にねえ!」
さつきを上回るドヤリを見せつける。俺の勝ちだ!
と思ったら、さつきはふう、と息を吐きやれやれ、と両手を広げた。
「こんな自称進学校で最下位層な男に私は釣り合わないわ」
ドヤリ勝負じゃなかった!
くそう、俺は運動しか取り柄がねえ、奇跡的にこの学校に合格した凡才。
俺の完敗だ……!
「あはは! フラれちゃったあー。元気出して、深月!」
ガックリとうなだれる俺の頭を楽しそうに明翔がなでる。
「嬉しそうだな、おい」
「うん! 深月に女口説くなんてできないと思ってた!」
……焚きつけておきながら、コイツはもう……。
このどうでもいい女にフラれたイライラを俺はどうしたらいい?!
「ゆり、オススメの漫画教えて」
「オッケー、任せて! ネットで最近見つけた総受けの王道がもう尊くて」
「俺BL漫画とは言ってねえんだけど」
「あ! ちっ、違うの! 言い間違えた! 少年が海賊王を目指す漫画を最近見つけて」
「それ最近見つけるようなヤツは全然漫画読まねえよ」
焦ったゆりがトレーをひっくり返してみそ汁が飛び散る。
「ごっ、ごめん! 布巾布巾!」
「それ雑巾!」
慌てふためくゆりに溜飲が下がる。ありがとう、隠れBL大好きさん。
気が済んだから、ハンカチを出してササッと拭いてやる。
「いいよ、深月! 深月のハンカチが汚れちゃう!」
「これは大事なハンカチじゃないからいいよ。お前おもしろいな」
「えっ、おもっ……おもっ?!」
さてと、このハンカチをこのままポッケに入れるわけにはいかない。
とっくに食い終わってるし、水で流してくっか。
「出口さつきです」
「いい名前だね。妹がいそうで」
俺の合コンイメージはこんな感じ。
チャラい男が女子を質問責めして、いちいち褒めてお持ち帰りに持って行くイメージ。
颯太ほどではないが俺も合コンにいいイメージはない。
お下げ髪の小柄な名前すら今しがた知ったモブ女生徒がうつむきがちにチラチラとこちらを上目遣いしながら答える。
いかにも男慣れしてない純真培養っぽいな。これは俺がリードせねば。
「さつきって呼んでいい?」
「はい」
「さつき、この中でどれが一番好き? 俺は梅干しかな」
今日の日替わりセットは高野豆腐の煮物とししゃもがメインおかず。
俺はどちらも好きではない。
「私はたくわんですね」
「ははは、たくわんは沢庵と書くからたくあんと呼ぶのが正しいという説があるよ」
「そうなんですか」
あ、話終わった。
えーと……。
「ぷっ」
見ると、明翔が口元を隠しているが笑ってるのはもろ分かり。
「お、おしゃれな服だね。赤いリボンがかわいいよ」
「みんなと同じセーラー服ですけど」
「さつきが着るとまるで名門私立のセーラー服のようだよ。ははは」
「あーっはっはっは!」
隠す気もなく明翔が腹を抱えて笑っている。
う……改まると、何しゃべったらいいのか分かんなくなっちゃったんだよなあ。
口いっぱいに高野豆腐を入れてひとまず物理的にしゃべれない状況を作り、女の敵はどう攻めているのか様子をうかがう。
「優ちゃん、髪伸ばさないの? ベリーショートがすっげ似合ってるけど」
「まあ、少しくらいは伸ばそうかとも思ってる」
「うわ、短いからかな。俺より全然髪綺麗じゃん。俺の髪固くってさあ」
「ほんとだ。見た目は柔らかそうなのに」
「パーマの力!」
「へえ、天然ぽくてすごく自然だ」
すげえ。女の敵すげえ!
タカトゥーはめちゃくちゃ自然に一条の髪に触れ、自分の髪も触らせる。
「さつき、髪綺麗だね。あ、枝毛。1本が2本になってお得だね」
「ぶわーっははは!」
明翔の爆笑に心が折れた。
もういい! 俺一生合コンなんかしない!
ガーッと米をかき込み、みそ汁を飲む。
あ、梅干しよりみそ汁のが美味い。
「ふふっ。必死なところ悪いけど、私彼氏いるから」
「え?」
俺の隣の女がガラッと雰囲気を変えて足を組み、お下げをほどいてファサッと髪を払う。
「私の彼氏、こんな自称進学校じゃなく、れっきとした進学校に通ってるの。悪いけど、聖天坂高校程度で私を落とせると思わないことね」
誰、これ。
なんで俺こんなほとんど知らない女に高飛車にフラれてんの。
ゆりを見ると、あからさまにしまった! って顔をしている。
「さつきにシュミレーションだって言うの忘れてた!」
「おい。まさか俺が本気で口説いたと思われてんじゃねえだろうな」
ゆりが首をこくこくと肯定しながら「ごめんごめん」と両手を合わせる。
冗談じゃねえ! 本気にされてつきまとわれても迷惑だが、一蹴されるとめっちゃ腹立つ!
「へえ……その彼氏って身長どれくらい?」
「身長しか取り柄がないものねえ。私の彼は160センチくらいだけど、偏差値は72あるの」
「偏差値は聞いてねえんだよ。どんな顔してんの」
「メキシコサンショウウオにクリソツ」
「ウーパールーパーじゃねえか。よくドヤれたな」
「第一志望校は稲應大学よ」
「だから、聞いてない。どうせなら東大とか言っとけや」
「射程距離ではあるらしいのよ。本当か冗談かはともかく」
「どっちでもない、ただの見栄だろ」
頭は良くても低身長のウーパールーパーなのに、さつきのあごは全然下がらない。
「あなたは見栄張ってもせいぜいワーチ止まりでしょ!」
「なめんな! 俺はこの学校でも成績最下位層だ! 大学受験なんかはなから頭にねえ!」
さつきを上回るドヤリを見せつける。俺の勝ちだ!
と思ったら、さつきはふう、と息を吐きやれやれ、と両手を広げた。
「こんな自称進学校で最下位層な男に私は釣り合わないわ」
ドヤリ勝負じゃなかった!
くそう、俺は運動しか取り柄がねえ、奇跡的にこの学校に合格した凡才。
俺の完敗だ……!
「あはは! フラれちゃったあー。元気出して、深月!」
ガックリとうなだれる俺の頭を楽しそうに明翔がなでる。
「嬉しそうだな、おい」
「うん! 深月に女口説くなんてできないと思ってた!」
……焚きつけておきながら、コイツはもう……。
このどうでもいい女にフラれたイライラを俺はどうしたらいい?!
「ゆり、オススメの漫画教えて」
「オッケー、任せて! ネットで最近見つけた総受けの王道がもう尊くて」
「俺BL漫画とは言ってねえんだけど」
「あ! ちっ、違うの! 言い間違えた! 少年が海賊王を目指す漫画を最近見つけて」
「それ最近見つけるようなヤツは全然漫画読まねえよ」
焦ったゆりがトレーをひっくり返してみそ汁が飛び散る。
「ごっ、ごめん! 布巾布巾!」
「それ雑巾!」
慌てふためくゆりに溜飲が下がる。ありがとう、隠れBL大好きさん。
気が済んだから、ハンカチを出してササッと拭いてやる。
「いいよ、深月! 深月のハンカチが汚れちゃう!」
「これは大事なハンカチじゃないからいいよ。お前おもしろいな」
「えっ、おもっ……おもっ?!」
さてと、このハンカチをこのままポッケに入れるわけにはいかない。
とっくに食い終わってるし、水で流してくっか。
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