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高崎明翔の発熱
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夜の祭りに備え、まだ昼過ぎだが甚平を引き出し探して着てみる。
やや短くなってる気もするが、まあおかしくはない。
茶色い渋い柄の甚平を着ると、おっさんぽいな。あれ。去年気に入って買ったのに。俺1年でえらい老けたんか。
高校生らしい爽やかーな甚平買いに行くか?
でも、今週はかなり金がない。いっか、おっさんくさくっても。
いや、明翔にでも聞くか。
もし時間あったらうち来てくんない? とメッセージを送る。
いいよー! 今から行くねー!
と元気な返事が返ってくる。
キャットタワーのてっぺんからクールに見下ろすツンの下でデレと遊びながら待っていたら、ピーンポーンと鳴った。ハッと顔を上げたツンが優雅に宙を舞いながら静かに着地して玄関へと向かう。
すげえ! ロビーからのインターホンでなぜ明翔が来たと分かる?!
「ども!」
と現れた明翔にツンが飛びついた。
「ツンー。俺も会いたかったー。だろー。そうだろうと思ってたよ、ツンー」
「何ひとりで会話してんだよ」
「通じ合ってんだよ、俺らは。なあー、ツンー」
スリスリと頬を寄せる明翔のほっぺをツンがなめた。
「お! 本当にネコの舌ってザラザラしてるんだ!」
明翔が笑って俺を見上げる。
……元気そうに見えるけど。でも、こころなしか顔が赤い気もする。
明翔のおでこに手を当ててみると、明らかに熱い。
「明翔! 熱あるだろ!」
「え? なんで分かったの?」
「ツンは普段はツンだけど体調崩してる人間にだけはデレるんだよ! なんで言わねえんだよ!」
ちなみに、デレは掃除機をかけている時だけはツンツンになる。
「だって、そこまでしんどくないし。みんなで祭り行くの深月すっげー楽しみにしてたから俺も行きたいなって思って」
「祭りくらい今日じゃなくても、またどっかでやるよ! 大人しく今日は寝てろ!」
「ええー。大丈夫だって言ってるじゃん。俺も深月と祭り行くの楽しみにしてたのに」
もー、体力に自信があると体調不良を軽視しがちなんだよ! って俺も去年熱あるのに遊びに行って40度超えの高熱になっちゃって医者に言われた。
あんなしんどい思いを明翔にさせたくはない。なんとしても今日は休ませてやる!
「お……俺のことが好きなら、俺の言うことを聞け! ちゃんと寝てろ! 俺のベッド貸してやるから!」
ええーと明翔はまだ不満そうな顔をする。
「ずるーい。俺の恋心を利用して言うことを聞かせようとするとか」
「いびつな言い方をすんな!」
俺の部屋に明翔を連れて行き、ベッドに寝かせて体温計を取りに行く。
「38.9度もあるじゃん!」
「よーし、目指せ39度!」
「目指すな! 目標を下方修正しろ!」
こいつは、まったく……はあ、と辛そうな息を吐きながらもポジティブだなー。
柔らか氷枕を持って来て頭の下に入れると、気持ちいいーと笑う。
そりゃ39度近くも熱があったら冷たいのが気持ちいいだろ。
「昼メシは食えたの?」
「豚骨ラーメン食ったけど吐いた」
「めちゃくちゃ調子悪いんじゃん」
「すっげー脂っぽかったせいかと思ってた」
「明翔くん、それは体調不良のせいだよ。おかゆの作り方って知ってる? 風邪といえばかゆだろ」
「米から? ごはんから?」
「簡単な方」
明翔からおかゆの作り方を聞き、逐一メモを取った。
「じゃあ、寝てろ。俺かゆ作ってくる」
「寝付くまでいてよ。俺んち狭い部屋に4人もいるからいつも雑魚寝なんだよ。ひとりでベッドなんて寝れない」
「一条と雑魚寝とか、うらやましい!」
「うち泊まりに来ればいいじゃん」
「行けるか!」
しばらく様子を見る。スー、スーと軽い寝息が聞こえる。寝たっぽいな。
よし、かゆ作ろ。
立ち上がって部屋を出ようと歩き出そうとしたら、なんか違和感がして振り返った。明翔が甚平の裾を引っ張っている。
「眠り浅いな。やっぱりツンだな、明翔は」
「深月がそこにいてくれないと、眠れない」
熱のせいで潤んだ半目で、甘えたように言う。
盛大にドキッとした。何コレ、めちゃくちゃかわいい……。
「い……いっそのこと、俺にうつす?」
「それはやめとく。しんどいんだもん」
「やっぱりしんどいんじゃねーかよ。何が祭りだ、無理しやがって」
「だってー。深月と祭り行きたかったんだもん」
「う……だから、祭りは行こう。今日は寝よう。次の祭りを検索しよう」
「何かの標語みたいだね」
笑った明翔を見て、俳句のように思った。
超ヤバい、病気の明翔、超かわいい。
やや短くなってる気もするが、まあおかしくはない。
茶色い渋い柄の甚平を着ると、おっさんぽいな。あれ。去年気に入って買ったのに。俺1年でえらい老けたんか。
高校生らしい爽やかーな甚平買いに行くか?
でも、今週はかなり金がない。いっか、おっさんくさくっても。
いや、明翔にでも聞くか。
もし時間あったらうち来てくんない? とメッセージを送る。
いいよー! 今から行くねー!
と元気な返事が返ってくる。
キャットタワーのてっぺんからクールに見下ろすツンの下でデレと遊びながら待っていたら、ピーンポーンと鳴った。ハッと顔を上げたツンが優雅に宙を舞いながら静かに着地して玄関へと向かう。
すげえ! ロビーからのインターホンでなぜ明翔が来たと分かる?!
「ども!」
と現れた明翔にツンが飛びついた。
「ツンー。俺も会いたかったー。だろー。そうだろうと思ってたよ、ツンー」
「何ひとりで会話してんだよ」
「通じ合ってんだよ、俺らは。なあー、ツンー」
スリスリと頬を寄せる明翔のほっぺをツンがなめた。
「お! 本当にネコの舌ってザラザラしてるんだ!」
明翔が笑って俺を見上げる。
……元気そうに見えるけど。でも、こころなしか顔が赤い気もする。
明翔のおでこに手を当ててみると、明らかに熱い。
「明翔! 熱あるだろ!」
「え? なんで分かったの?」
「ツンは普段はツンだけど体調崩してる人間にだけはデレるんだよ! なんで言わねえんだよ!」
ちなみに、デレは掃除機をかけている時だけはツンツンになる。
「だって、そこまでしんどくないし。みんなで祭り行くの深月すっげー楽しみにしてたから俺も行きたいなって思って」
「祭りくらい今日じゃなくても、またどっかでやるよ! 大人しく今日は寝てろ!」
「ええー。大丈夫だって言ってるじゃん。俺も深月と祭り行くの楽しみにしてたのに」
もー、体力に自信があると体調不良を軽視しがちなんだよ! って俺も去年熱あるのに遊びに行って40度超えの高熱になっちゃって医者に言われた。
あんなしんどい思いを明翔にさせたくはない。なんとしても今日は休ませてやる!
「お……俺のことが好きなら、俺の言うことを聞け! ちゃんと寝てろ! 俺のベッド貸してやるから!」
ええーと明翔はまだ不満そうな顔をする。
「ずるーい。俺の恋心を利用して言うことを聞かせようとするとか」
「いびつな言い方をすんな!」
俺の部屋に明翔を連れて行き、ベッドに寝かせて体温計を取りに行く。
「38.9度もあるじゃん!」
「よーし、目指せ39度!」
「目指すな! 目標を下方修正しろ!」
こいつは、まったく……はあ、と辛そうな息を吐きながらもポジティブだなー。
柔らか氷枕を持って来て頭の下に入れると、気持ちいいーと笑う。
そりゃ39度近くも熱があったら冷たいのが気持ちいいだろ。
「昼メシは食えたの?」
「豚骨ラーメン食ったけど吐いた」
「めちゃくちゃ調子悪いんじゃん」
「すっげー脂っぽかったせいかと思ってた」
「明翔くん、それは体調不良のせいだよ。おかゆの作り方って知ってる? 風邪といえばかゆだろ」
「米から? ごはんから?」
「簡単な方」
明翔からおかゆの作り方を聞き、逐一メモを取った。
「じゃあ、寝てろ。俺かゆ作ってくる」
「寝付くまでいてよ。俺んち狭い部屋に4人もいるからいつも雑魚寝なんだよ。ひとりでベッドなんて寝れない」
「一条と雑魚寝とか、うらやましい!」
「うち泊まりに来ればいいじゃん」
「行けるか!」
しばらく様子を見る。スー、スーと軽い寝息が聞こえる。寝たっぽいな。
よし、かゆ作ろ。
立ち上がって部屋を出ようと歩き出そうとしたら、なんか違和感がして振り返った。明翔が甚平の裾を引っ張っている。
「眠り浅いな。やっぱりツンだな、明翔は」
「深月がそこにいてくれないと、眠れない」
熱のせいで潤んだ半目で、甘えたように言う。
盛大にドキッとした。何コレ、めちゃくちゃかわいい……。
「い……いっそのこと、俺にうつす?」
「それはやめとく。しんどいんだもん」
「やっぱりしんどいんじゃねーかよ。何が祭りだ、無理しやがって」
「だってー。深月と祭り行きたかったんだもん」
「う……だから、祭りは行こう。今日は寝よう。次の祭りを検索しよう」
「何かの標語みたいだね」
笑った明翔を見て、俳句のように思った。
超ヤバい、病気の明翔、超かわいい。
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