56 / 81
仕掛けられたイベント
しおりを挟む
明翔は逃げる素振りはない。いよいよ俺も覚悟を決めた。
「優!」
明翔の声とカーテンがシャッと開けられる音にびっくりして振り返った。鬼の形相の明翔が立っている。
「え? 明翔?!」
びっくりして明翔の頭に添えていた手がベッドを思いっきり叩いてしまった。手に明翔の髪の毛がびっしり絡みついている。
「うわ! なんっじゃこれ!」
パニックになって手をブンブン振り回すと、真上にポーンと飛んだ。
「……え……ヅラ?」
ベッドに起き上がった一条が明翔の髪と同じ色のヅラに手を伸ばす。
「ウィッグだよ。ソウルメイトに明翔の写真を10カットくらい送って作ってもらったんだ」
「なんで俺のコスプレグッズなんか作ってんだよ! 深月と何してたんだ、そのヅラ被って!」
一条だったの?! あの一条が俺とチューしようとしてたのかよ?! てか、相手が一条だったんなら明翔のフリしてない普通の一条がいいわ!
「さっさと勝負の決着をつけようと思ってね」
「入れ替わりとか古典的なマネして!」
「呂久村、明翔にはあんなに優しい声であんなに優しい笑顔を見せるんだね」
「えっ?!」
ニヤリと笑う一条に、俺と明翔が同時に戸惑いの声を上げてしまった。いらんこと言うな、一条!
俺は単に、明翔がダークサイドに行ってしまわないように優しくしただけだ!
「あんなにって何? どんな笑顔したの? 深月。俺、分かんないんだけど」
「いや、あの、普通だよ!」
「あんまり優しい笑顔するものだから、ボクついつい」
「ついつい?!」
一条がまたウィッグを被ると、本当によく明翔に似ている。
「だいたい、ヅラ被ったくらいで俺か優か分かんねえのかよ」
あからさまに明翔の機嫌が悪くなる。
「ずっと何か違う、とは思ってたけど、まさか本当に別人だなんて思わねえじゃん。一条ずっと布団で顔隠してたし」
「隠さなくてもバレないだろうと思ってたけど、声バレを防ぐためにも一応ね」
「明翔と一条はよく似てるけど、まったく同じ顔ではないからな。見分けはつくよ」
「え?」
よく似た顔のいとこ同士がよく似た髪型で同じように驚いて俺を見る。もはや異次元空間に迷い込んだ錯覚を覚える。
「本当に見分けられるの? 深月」
「うん。そんなびっくりするか? 別人なんだから当然だろ。お前たちだっていくらふたごでも自分の母ちゃん見分けられるだろ」
明翔と一条が顔を見合わせる。
「そうだな、頭見たら一発で分かる」
「ボクのママは白髪染めてるけど、亜衣ちゃんはそのままだもんね」
「君らは自分の母親と叔母を白髪で見分けてるのか」
「顔はマジでそっくりなんだもん」
明翔が一条の頭からウィッグを取り上げた。
「これは俺が没収する。2度と作るなよ!」
「せっかくのソウルメイトの力作なのに! なんで明翔ここに来たの?」
「西郷が教室に俺がいるのを見てめちゃくちゃびっくりして保健室がどうこう言いだしたからだよ」
「ちょうど保健室の前にいたから頼んだけど、彼をメッセンジャーにしたのが失敗だったか」
「何がしたかったんだ、一条は」
「ボクの望みはただひとつ。ボクの理想のBLをこの目で見ることだよ。攻めを優しい笑顔で見つめる受け、そして最後は自分でキメようと男気を見せる受け、いただきました!」
「イベントだったの?!」
これが、神の言ってたファンタジーなイベント?!
楽しめねえ! こんなもん、楽しめねえよ!
「最後はキメようって何? 深月、何をキメようとしたの?」
「頼むから聞くな、明翔!」
「ボクが教えてあげようか?」
「教えるな、一条!」
てか、マジでキスしなくて良かった……。危ねえ。一条が賭けの勝負に勝つところだった。
「優!」
明翔の声とカーテンがシャッと開けられる音にびっくりして振り返った。鬼の形相の明翔が立っている。
「え? 明翔?!」
びっくりして明翔の頭に添えていた手がベッドを思いっきり叩いてしまった。手に明翔の髪の毛がびっしり絡みついている。
「うわ! なんっじゃこれ!」
パニックになって手をブンブン振り回すと、真上にポーンと飛んだ。
「……え……ヅラ?」
ベッドに起き上がった一条が明翔の髪と同じ色のヅラに手を伸ばす。
「ウィッグだよ。ソウルメイトに明翔の写真を10カットくらい送って作ってもらったんだ」
「なんで俺のコスプレグッズなんか作ってんだよ! 深月と何してたんだ、そのヅラ被って!」
一条だったの?! あの一条が俺とチューしようとしてたのかよ?! てか、相手が一条だったんなら明翔のフリしてない普通の一条がいいわ!
「さっさと勝負の決着をつけようと思ってね」
「入れ替わりとか古典的なマネして!」
「呂久村、明翔にはあんなに優しい声であんなに優しい笑顔を見せるんだね」
「えっ?!」
ニヤリと笑う一条に、俺と明翔が同時に戸惑いの声を上げてしまった。いらんこと言うな、一条!
俺は単に、明翔がダークサイドに行ってしまわないように優しくしただけだ!
「あんなにって何? どんな笑顔したの? 深月。俺、分かんないんだけど」
「いや、あの、普通だよ!」
「あんまり優しい笑顔するものだから、ボクついつい」
「ついつい?!」
一条がまたウィッグを被ると、本当によく明翔に似ている。
「だいたい、ヅラ被ったくらいで俺か優か分かんねえのかよ」
あからさまに明翔の機嫌が悪くなる。
「ずっと何か違う、とは思ってたけど、まさか本当に別人だなんて思わねえじゃん。一条ずっと布団で顔隠してたし」
「隠さなくてもバレないだろうと思ってたけど、声バレを防ぐためにも一応ね」
「明翔と一条はよく似てるけど、まったく同じ顔ではないからな。見分けはつくよ」
「え?」
よく似た顔のいとこ同士がよく似た髪型で同じように驚いて俺を見る。もはや異次元空間に迷い込んだ錯覚を覚える。
「本当に見分けられるの? 深月」
「うん。そんなびっくりするか? 別人なんだから当然だろ。お前たちだっていくらふたごでも自分の母ちゃん見分けられるだろ」
明翔と一条が顔を見合わせる。
「そうだな、頭見たら一発で分かる」
「ボクのママは白髪染めてるけど、亜衣ちゃんはそのままだもんね」
「君らは自分の母親と叔母を白髪で見分けてるのか」
「顔はマジでそっくりなんだもん」
明翔が一条の頭からウィッグを取り上げた。
「これは俺が没収する。2度と作るなよ!」
「せっかくのソウルメイトの力作なのに! なんで明翔ここに来たの?」
「西郷が教室に俺がいるのを見てめちゃくちゃびっくりして保健室がどうこう言いだしたからだよ」
「ちょうど保健室の前にいたから頼んだけど、彼をメッセンジャーにしたのが失敗だったか」
「何がしたかったんだ、一条は」
「ボクの望みはただひとつ。ボクの理想のBLをこの目で見ることだよ。攻めを優しい笑顔で見つめる受け、そして最後は自分でキメようと男気を見せる受け、いただきました!」
「イベントだったの?!」
これが、神の言ってたファンタジーなイベント?!
楽しめねえ! こんなもん、楽しめねえよ!
「最後はキメようって何? 深月、何をキメようとしたの?」
「頼むから聞くな、明翔!」
「ボクが教えてあげようか?」
「教えるな、一条!」
てか、マジでキスしなくて良かった……。危ねえ。一条が賭けの勝負に勝つところだった。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる