BLはファンタジーだって神が言うから

はちみつ電車

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クラスの中の一条優

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 5歳からBLにハマってたんなら、小学校の入学式で俺が見た一条優はすでに立派な腐女子だったってことか……。
 なんだよ、それえ……。

「一条がこんなヤツだったなんて……」
 ボソッとつぶやきが漏れると、明翔がこっちを見たのを感じた。
「深月、優のこと知ってたの?」
「え……あー、知ってたって言うか、小学校が同じだったから」
「それは知ってる。俺、優の小学校の運動会に応援に行って深月にハンカチ貸したから」
「あ、そっか」

 俺はボーっとしゃべってたけど、ふと見ると明翔はえらく真剣な表情をしていてハッとした。

「明翔?」
「優は深月のこと知らないみたいだけど。小学校の話しないの? 優と何かあった?」
「いやー、マジで俺のこと知らないと思うし、何もなかったから何の話もしようがないってゆーか」
 俺が一方的に好きだっただけってゆーか。俺のこと知らないって言うより、俺の存在に気付いてなかったんだろうな。だって俺、マジで見てるだけで何のアプローチもしなかった。

「ふーん。優は深月のことなんか知らないけど、深月は優のことを覚えてたんだ。ふーん」
「え、何その言い方。なんか機嫌悪い?」
「別に」

 チャイムが鳴って、明翔は前を向いて座った。その次の時間は体育だから休み時間に着替える間も、明翔は前の席のヤツとしゃべってて後ろを振り向かなかった。

「早くバスケ終わんないかなあ。俺バスケが一番苦手なんだよねっ」
「ちびっ子にはバスケ不利だもんねえ」
「やめてよ明翔。俺スリーポイント得意だから負かせてやるからね、カワイ子ちゃん」
「カワイ子ちゃんやめろ」
「こんなに小さいのにスリーポイント決めるなんて、カッコいいね、佐藤くん。昔っから佐藤くんって運動神経良かったの? 呂久村くん」
「え……あ、ああ、そうだな。まー俺ほどじゃねえけどな」
 あはははは、と柳も颯太も笑ってるけど、明翔はニコリともしない。

 体育が始まりチーム分けされると、明翔と颯太は同じチームだ。
「これじゃ颯太、明翔のこと負かせられないな」
 明翔に笑って言うと、無視してこれまた同じチームの黒岩くんに
「あ! 黒岩くん!」
 と声をかける。

「はい! あ、高崎くん!」
 うれしそうに笑った黒岩くんの肩にうでを引っかけ密着してる……。

 なんだよ。何なんだよ。俺のことは無視して、見せつけるみたいに……。

 体育が終わって教室で着替えていても、明翔はこちらを向かない。何なんだよ、だから。

 チャイムが鳴って女子が入って来る。一条はすっかり女子に囲まれている。すげーな。
 その中にモブ女生徒ゆりもいた。
「転校初日にえらい人気者だな、一条」
「だって優くん、運動神経抜群だし、超優しいしカッコいいんだもん」
「優くん? 一条も男だと思って欲しいみたいなことは言ってたけど、それにしても完全に男として見てない?」
「普通に男子でも優くんくらいの身長の子いるし、顔が高崎くんとそっくりだから男子にしか見えないのよね」
「うんうん。ただのイケメンだと思っちゃうよね」
 隣にいた女子生徒もうなずいている。

 ああ、先に一条と出会ってる俺には明翔の顔が女子に見えるけど、みんなには明翔の顔が男だってインプットされてるのか。
 てことは、あれ普通に女子にモテてるだけじゃね? もしかして、小学校の時もモテてたんだろうか。

 放課後も、一条は女子に囲まれてあれこれ質問攻めである。
「じゃあねー、また明日!」
 やっと女子たちが帰って行くと、ふう、と一条が息をついた。さすがにお疲れさん。

「ずいぶんと僕の取り巻きが一条くんに取られちゃったな」
「彼女たちには悪いけど、ボク男にしか興味ないんだよね」
 柳と一条の会話が聞こえる。ので見ると、男ふたりでしゃべってるように見える。
 
 なんだろう。女子としてすごく正しいことを言ってるのに、この違和感。

「それにしても、この学校はまるで男が声をかけて来ないな。こんなことは初めてだ」
「ああ、それなら、明翔と同じ顔だからこのクラスの連中には一条のことが男にしか見えないらしい」
不思議そうな一条に教えてやると、大きな目を一層大きく開いた。

「ボクは、このクラスにまさに男として存在しているってワケか。素晴らしい……くふふ」
 一条が口をゆがめて笑っている。
 え……何、コイツ、こわーい。
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