BLはファンタジーだって神が言うから

はちみつ電車

文字の大きさ
上 下
31 / 81

神の御言葉

しおりを挟む
 ネットという広大な海原で見付けた恋愛マスター。敬意を示して、神と呼ばせていただこう。
 迷える子羊に、どうかご助言を。

「男に好きだって言い出す男の気持ちが分かりません。」
 はっ。無意識にコメント欄に書き込んでいた。あ、俺、ネットは検索専門で書き込みなんか初めてした。だいたい、キーボードの打ち込みがたどたどしすぎる。

 俺、今BLブログにコメントした! え、これ俺がBLに興味ある人だと思われる?!
 ネットの書き込みは慎重にって、道徳で情報モラルだとかネットリテラシーだとか習ったのに、無意識に書き込むとは……。

 慌てて、ブラウザの×を押してパソコンを閉じる。
 閉じたらセーフ? 閉じても書き込みは消えない? どっち?

 パソコンはなんか敷居が高い気がしてスマホから例のブログを探してみる。あ、あった。スマホでも見やすい。

 もうコメントに返信されてる!
 早えよ、さすが神!

「あなたは心から人を好きになったことがないのでしょう。
 人を愛するスタートラインに立った彼の気持ちが分からないのは当然。
 彼が男だから愛せないと思うなら、あなたはこの世のすべての女性を愛せるんですか?」

 なんであれだけの文章で男に告られた男の書き込みだって理解できんの?!
 すごすぎる! やっぱりこの人、神なんだ!
 思い切って、この人になら……どうせ、俺がどこの誰かも知らない、リアルで繋がりようのない人物だ。

「初恋の責任なんて取れません。どうしたらいいですか」
 抽象的すぎるかな……。
 でも、ネットには個人情報を書き込んではいけませんって電話会社の人が言ってたし。気軽な書き込みが恐ろしい結果になる動画見せられたし。

 お、もう返信が……

色眼鏡いろめがねなく彼の思いをそのまま受け取るだけでいいんです。
 受け入れろとは言いません。それはあなたが決めることだから。
 彼の真摯な思いがあなたに届くことを願っています。」

 ……色眼鏡? って何?
 コピペして検索してみる。

「いろめがね。先入観にとらわれた物の見方。 偏見。」

 あー……偏見は強い言葉だと思うけど、あるなあ。色眼鏡……。
 俺の明翔に対する色眼鏡はふたつある気がする。

 ひとつは、当然ながら明翔が男だということ。俺は、ライクは男ラブは女が好きだった。逆にライクで女を好きになったことはないかも。

 だから、明翔が言ったように俺は明翔に対してリアクションがおかしくなってしまう。

 もうひとつの色眼鏡がそうさせる。
 明翔の顔が一条優にそっくりだということ。一条優にそっくりな明翔は、俺には女に見えてしまう。
 頭では男だって理解してるのに。

 ずっと会いたくて、でも会えなかった一条優に、言えなかった思いを伝えたい一条優に、なぜか明翔は似すぎてる。

 ふたつの色眼鏡が、俺に明翔を他の人とは違い、変に見せる。
 明翔は間違いなく男なのに、俺には明翔を男か女かで分けられなくしてしまうんだ。

 でも、そんな色眼鏡を外したら。

 去年はつまんなくてまともに参加すらしなかった体育大会が、今日はめちゃくちゃ楽しかった。高校入って、今日が一番楽しかった。たぶん、明翔がいたからだ。
 明翔に好きだって言われて、めちゃくちゃびっくりした。でも、まず思ったのは男じゃんだった。色眼鏡なしの明翔は、黒岩くんに好きだって言われて、うれしいって言ってたのに。
 ……俺も、色眼鏡なしでもう1回明翔に言ってほしいかも……。

 俺のことを好きになるだけでいいよ、って照れて赤くなりながら笑った明翔は、めっちゃくちゃかわいかった。

 明翔はいつも元気で明るくて、でもたまーに怖いこと言い出すからなんかほっとけなくて、学校行事も全力でがんばってて、一緒にいてすごく楽しい。

 そうか……色眼鏡なしに見る明翔は、俺も好きなんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール

雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け 《あらすじ》 4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。 そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。 平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。

ニケの宿

水無月
BL
危険地帯の山の中。数少ない安全エリアで宿を営む赤犬族の犬耳幼子は、吹雪の中で白い青年を拾う。それは滅んだはずの種族「人族」で。 しっかり者のわんことあまり役に立たない青年。それでも青年は幼子の孤独をゆるやかに埋めてくれた。 異なる種族同士の、共同生活。 ※過激な描写は控えていますがバトルシーンがあるので、怪我をする箇所はあります。  キャラクター紹介のページに挿絵を入れてあります。  苦手な方はご注意ください。

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが

なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です 酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります 攻 井之上 勇気 まだまだ若手のサラリーマン 元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい でも翌朝には完全に記憶がない 受 牧野・ハロルド・エリス 天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司 金髪ロング、勇気より背が高い 勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん ユウキにオヨメサンにしてもらいたい 同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます

処理中です...