BLはファンタジーだって神が言うから

はちみつ電車

文字の大きさ
上 下
29 / 81

佐藤 颯太の言うことには

しおりを挟む
 階段を下りると、颯太が俺のリュックを持って待ってくれていた。
「リュック置いてっちゃうから、待ってたんだよ、深月」
「あ、忘れてた。悪い。サンキュー」
 颯太からリュックを受け取り、右肩に掛ける。

「深月、颯太、また明日ー」
「うん! また明日ねっ、明翔!」
 右ひざを曲げて、かわいさ満点で颯太が大きく手を振る。
「おー、また明日ー……」
 学校の正門を出ると、俺たちと明翔は方向が違うからここでお別れだ。
 どこかぼんやりとしたまま笑顔の明翔に手を振る。

「なあ、颯太……俺は告られたんだろーか」
「だろーよ。良かったじゃねーか、深月。あんなカワイ子ちゃんに告られて」
「いやいやいや! 良くねえだろ! いくらかわいくたって男だぞ!」
「まあ、男を好きになる男もいるらしいからな。明翔顔も女っぽいが意外と心も女だったんだな」
「それともまた違う気がするんだけど」

 明翔、普通に彼女ほしいって言ってたし。パンチラ好きを公言してたし。
「あー、なんで俺なんだよー。いくら女子は明翔のキレイな顔を敬遠するっつったって、明翔が好きだって言ったら断る女子の方が少ないだろうに」
「明翔が好きになれる女子がいねえんじゃ、女子が断らなくたって好きだなんて軽々しく言うワケねえだろ。んな軽薄なもんじゃねーんだよ! 男ってのは!」

 柳は変なヤツだから明翔の告白に特に動じなかったのはなんとなく分かるけど、颯太まであっさり認めているのは意外だ。

「颯太、なんで明翔が俺を好きだなんて言ったのにそんなに落ち着いてんの。もっとうげーってなるもんじゃねえの」
「明翔が誰を好きになろうと明翔の自由だろ。明翔自身も分かんないって言ってたじゃねえか。いつどこで誰が誰をどうして好きになるのかなんて、本人にすら分かりゃしねえんだよ。神のみぞ知るだろーが」

 なるほど、颯太が矜持に反してちょこちょこ女子に惚れるのも神だけが知り得たことだったのか。

「颯太だったらどうする?」
「迷わず拒否る。俺がこの生涯で愛するのはただひとりの女だけと決めている」
 男前に人差し指を立てて笑っているが、俺は無理にこだわらない方がいいと思うんだが。

 家に帰り、ナア、と今日もかわいく出迎えてくれるデレを抱えて、キャットタワーの横のローテーブルの前に座る。今日のツンは、キャットタワーのてっぺんから下界を見下ろしつつお昼寝中である。
 今年の正月に学習机を処分し、デレが遊んでほしくなった時すぐに構えるように床に座って勉強するべく、お年玉でこのデスクを買った。小さめの本立てを置いて、教科書なんかを並べている。

 デスクの上のノートパソコンをかなり久々に開いてみた。
 ブラウザを立ち上げる。検索窓に、BLと入れてみる。ボーイズラブの略である。

 何か調べたいワケでもないのだが、俺には男が男を好きだと思う心理が分からない。それはやっぱり、友情じゃないのかと思ってしまう。
 そして、いくら顔がよく似てるからって、男の明翔に一条優が重なってドキッとする自分もよく分からない。
 今日なんかもう、明翔の表情の変わりようがかわいらしく見えて盛大にドキッとした。

 BLとはBoys Love(ボーイズラブ)の略称であり、男性同士の恋愛を描くジャンルである。
 知ってる。
 BL用語とかいろいろあるんだ。……へー。

 やっぱりイマイチ頭にすんなり入らねえな。
 ん? 「BLの考察~なぜ私はBLを愛してやまないのか」。
 ブログか。考察、いいね。今俺が求めている情報がここにあるかもしれない。
 俺は、超気軽にクリックした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ニケの宿

水無月
BL
危険地帯の山の中。数少ない安全エリアで宿を営む赤犬族の犬耳幼子は、吹雪の中で白い青年を拾う。それは滅んだはずの種族「人族」で。 しっかり者のわんことあまり役に立たない青年。それでも青年は幼子の孤独をゆるやかに埋めてくれた。 異なる種族同士の、共同生活。 ※過激な描写は控えていますがバトルシーンがあるので、怪我をする箇所はあります。  キャラクター紹介のページに挿絵を入れてあります。  苦手な方はご注意ください。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール

雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け 《あらすじ》 4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。 そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。 平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

僕の平凡生活が…

ポコタマ
BL
アンチ転校生によって日常が壊された主人公の話です 更新頻度はとても遅めです。誤字・脱字がある場合がございます。お気に入り、しおり、感想励みになります。

生意気な弟がいきなりキャラを変えてきて困っています!

あああ
BL
おれはには双子の弟がいる。 かわいいかわいい弟…だが、中学になると不良になってしまった。まぁ、それはいい。(泣き) けれど… 高校になると───もっとキャラが変わってしまった。それは─── 「もう、お兄ちゃん何してるの?死んじゃえ☆」 ブリッコキャラだった!!どういうこと!? 弟「──────ほんと、兄貴は可愛いよな。 ───────誰にも渡さねぇ。」 弟×兄、弟がヤンデレの物語です。 この作品はpixivにも記載されています。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

処理中です...