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佐藤 颯太の言うことには

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 階段を下りると、颯太が俺のリュックを持って待ってくれていた。
「リュック置いてっちゃうから、待ってたんだよ、深月」
「あ、忘れてた。悪い。サンキュー」
 颯太からリュックを受け取り、右肩に掛ける。

「深月、颯太、また明日ー」
「うん! また明日ねっ、明翔!」
 右ひざを曲げて、かわいさ満点で颯太が大きく手を振る。
「おー、また明日ー……」
 学校の正門を出ると、俺たちと明翔は方向が違うからここでお別れだ。
 どこかぼんやりとしたまま笑顔の明翔に手を振る。

「なあ、颯太……俺は告られたんだろーか」
「だろーよ。良かったじゃねーか、深月。あんなカワイ子ちゃんに告られて」
「いやいやいや! 良くねえだろ! いくらかわいくたって男だぞ!」
「まあ、男を好きになる男もいるらしいからな。明翔顔も女っぽいが意外と心も女だったんだな」
「それともまた違う気がするんだけど」

 明翔、普通に彼女ほしいって言ってたし。パンチラ好きを公言してたし。
「あー、なんで俺なんだよー。いくら女子は明翔のキレイな顔を敬遠するっつったって、明翔が好きだって言ったら断る女子の方が少ないだろうに」
「明翔が好きになれる女子がいねえんじゃ、女子が断らなくたって好きだなんて軽々しく言うワケねえだろ。んな軽薄なもんじゃねーんだよ! 男ってのは!」

 柳は変なヤツだから明翔の告白に特に動じなかったのはなんとなく分かるけど、颯太まであっさり認めているのは意外だ。

「颯太、なんで明翔が俺を好きだなんて言ったのにそんなに落ち着いてんの。もっとうげーってなるもんじゃねえの」
「明翔が誰を好きになろうと明翔の自由だろ。明翔自身も分かんないって言ってたじゃねえか。いつどこで誰が誰をどうして好きになるのかなんて、本人にすら分かりゃしねえんだよ。神のみぞ知るだろーが」

 なるほど、颯太が矜持に反してちょこちょこ女子に惚れるのも神だけが知り得たことだったのか。

「颯太だったらどうする?」
「迷わず拒否る。俺がこの生涯で愛するのはただひとりの女だけと決めている」
 男前に人差し指を立てて笑っているが、俺は無理にこだわらない方がいいと思うんだが。

 家に帰り、ナア、と今日もかわいく出迎えてくれるデレを抱えて、キャットタワーの横のローテーブルの前に座る。今日のツンは、キャットタワーのてっぺんから下界を見下ろしつつお昼寝中である。
 今年の正月に学習机を処分し、デレが遊んでほしくなった時すぐに構えるように床に座って勉強するべく、お年玉でこのデスクを買った。小さめの本立てを置いて、教科書なんかを並べている。

 デスクの上のノートパソコンをかなり久々に開いてみた。
 ブラウザを立ち上げる。検索窓に、BLと入れてみる。ボーイズラブの略である。

 何か調べたいワケでもないのだが、俺には男が男を好きだと思う心理が分からない。それはやっぱり、友情じゃないのかと思ってしまう。
 そして、いくら顔がよく似てるからって、男の明翔に一条優が重なってドキッとする自分もよく分からない。
 今日なんかもう、明翔の表情の変わりようがかわいらしく見えて盛大にドキッとした。

 BLとはBoys Love(ボーイズラブ)の略称であり、男性同士の恋愛を描くジャンルである。
 知ってる。
 BL用語とかいろいろあるんだ。……へー。

 やっぱりイマイチ頭にすんなり入らねえな。
 ん? 「BLの考察~なぜ私はBLを愛してやまないのか」。
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