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ふたり
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「どうして、家でまで素でいないの?」
「一緒に暮らす以上は、茉悠さんに不愉快な思いはさせたくない。俺に求められるのは主人に従順な犬の面なのはよく分かってる」
「不愉快?」
私は清水くんのちょうどいい俺様具合が好みなのに、せっかく素で俺様らしいのに、どうしてわざわざワンコでいたいのか全く分からないわ。
「私は何が不愉快なの?」
「……え?」
「私は清水くんを不愉快だと思ったことなんて1度もないわよ? 私は何が不愉快なの?」
「だって、みんな……あ、尾崎だって、俺が素を出したらすぐイヤな顔するし」
ああ、さくら。清水くんはかわいいのがデフォルトだからか、お酒飲んだら清水のくせにかわいくないって聞いたことあるわ。
「不思議よねえ。私もどうしてさくらがイヤがるのか分からないのよね」
「本当にイヤじゃないの? 茉悠さんは」
「私はイヤじゃないわよ」
「そうなんだ……俺、家でこのままでいても大丈夫?」
「自分の家なのに素でいない方がおかしいよ」
驚いた様子だったのが、うれしそうな笑顔になった。
ピンポーンとインターホンが鳴る。
「あ、引取りに来たかな。俺が出る。茉悠さんは待ってて」
と浄水器を持って清水くんが玄関へ行く。何か押し問答してるみたい。
戻って来た清水くんに
「何か言ってたの?」
と聞いた。
「分割払いの書類持って来てたけど、契約成立してもないのにクーリングオフにもならねえわ。何言ってやがんだ、全く」
……よく分からないけど、清水くんの言い分が通ったみたいね。かわいい顔で荒っぽい言葉遣いをされるとより一層強い違和感を感じるわ。本当にどちらも素なんだ。
「そうだ茉悠さん、ミーティングを始めます」
「急に会社みたい」
丸いテーブルに向かい合って座る。
「会社の話なんだけど、引っ越したからには住所変更を届け出ないとダメでしょ」
「ああ。めんどくさいからいいんじゃない?」
その届の処理をするのは私だ。自分で自分の仕事を増やしてしまう。
「いや、規則は守ろうよ。社内規定ガン無視だよね、総務なのに。それで、会社側に金の話をする訳にも副業してたことを言う訳にもいかないでしょ」
「言わないでほしい」
「だよね。かと言って同じ家に住んでることを隠すのは難しいと思う。何気ない話から絶対にバレると思うんだよね」
「そうね、さくら鋭いし」
「茉悠さん普通に言っちゃいそうだし」
言っちゃうかもしれないわね、たしかに。
「バレるより、先に言ってしまった方がいいと思うんだよ」
「先に? 私が清水くんの家に引っ越したって?」
「そう。付き合い始めて、同棲を始めたことにする」
「付き合い?!」
付き合うの? 私と清水くんが?
ないと思ってた。清水くんと付き合うことなんてないと思ってた。
まさか、清水くんと付き合うことになるとは思わなかったわ。
「一緒に暮らす以上は、茉悠さんに不愉快な思いはさせたくない。俺に求められるのは主人に従順な犬の面なのはよく分かってる」
「不愉快?」
私は清水くんのちょうどいい俺様具合が好みなのに、せっかく素で俺様らしいのに、どうしてわざわざワンコでいたいのか全く分からないわ。
「私は何が不愉快なの?」
「……え?」
「私は清水くんを不愉快だと思ったことなんて1度もないわよ? 私は何が不愉快なの?」
「だって、みんな……あ、尾崎だって、俺が素を出したらすぐイヤな顔するし」
ああ、さくら。清水くんはかわいいのがデフォルトだからか、お酒飲んだら清水のくせにかわいくないって聞いたことあるわ。
「不思議よねえ。私もどうしてさくらがイヤがるのか分からないのよね」
「本当にイヤじゃないの? 茉悠さんは」
「私はイヤじゃないわよ」
「そうなんだ……俺、家でこのままでいても大丈夫?」
「自分の家なのに素でいない方がおかしいよ」
驚いた様子だったのが、うれしそうな笑顔になった。
ピンポーンとインターホンが鳴る。
「あ、引取りに来たかな。俺が出る。茉悠さんは待ってて」
と浄水器を持って清水くんが玄関へ行く。何か押し問答してるみたい。
戻って来た清水くんに
「何か言ってたの?」
と聞いた。
「分割払いの書類持って来てたけど、契約成立してもないのにクーリングオフにもならねえわ。何言ってやがんだ、全く」
……よく分からないけど、清水くんの言い分が通ったみたいね。かわいい顔で荒っぽい言葉遣いをされるとより一層強い違和感を感じるわ。本当にどちらも素なんだ。
「そうだ茉悠さん、ミーティングを始めます」
「急に会社みたい」
丸いテーブルに向かい合って座る。
「会社の話なんだけど、引っ越したからには住所変更を届け出ないとダメでしょ」
「ああ。めんどくさいからいいんじゃない?」
その届の処理をするのは私だ。自分で自分の仕事を増やしてしまう。
「いや、規則は守ろうよ。社内規定ガン無視だよね、総務なのに。それで、会社側に金の話をする訳にも副業してたことを言う訳にもいかないでしょ」
「言わないでほしい」
「だよね。かと言って同じ家に住んでることを隠すのは難しいと思う。何気ない話から絶対にバレると思うんだよね」
「そうね、さくら鋭いし」
「茉悠さん普通に言っちゃいそうだし」
言っちゃうかもしれないわね、たしかに。
「バレるより、先に言ってしまった方がいいと思うんだよ」
「先に? 私が清水くんの家に引っ越したって?」
「そう。付き合い始めて、同棲を始めたことにする」
「付き合い?!」
付き合うの? 私と清水くんが?
ないと思ってた。清水くんと付き合うことなんてないと思ってた。
まさか、清水くんと付き合うことになるとは思わなかったわ。
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