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シュウと柊
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清水くんの家は、本当に物が少ない。テレビとブルーレイディスクプレーヤーの脇にノートパソコンがあるだけだ。
6畳くらいのワンルームで、家具もテレビ台と丸いローテーブル、そしてシングルサイズのベッド。これだけだ。クローゼットっぽい扉があるから、服はあそこに収まっているんだろう。家電も目につくのは冷蔵庫とエアコンくらいじゃないかしら。
物が多くて足の踏み場もない私の家とは真逆ね。自分の部屋はもう片付ける気にもなれないけど、この部屋なら掃除する気にもなれそうだわ。
「清水ってミニマリストなの?」
「ミニマ……? 何だよ、それ」
「物を持たない主義の人よ」
「主義じゃねーよ。単に金使いたくないだけ」
「かなり貯め込んでんじゃねーの、これ。冷蔵庫にちくわしかねーんだけど」
人の家の冷蔵庫を勝手に開けるなんて、高橋は本当に高橋ね。
「ちくわ4本も入って39円なんすよ」
「ちくわ1袋で腹いっぱいになんねーだろ。お前もっとちゃんと食わねえと病気になるぞ。俺が飯作りに来てやろうか?」
片橋くんは本当にいい子ね。でもその役目、私に譲ってもらえないものかしら。私料理なら得意なんだけど。
こんなに何もない中、彼女の写真なんてなさそうね。
「ほんっとうに何もない部屋ねー。テレビ観るしかないじゃん。まあ、とりあえずテレビでも付けて飲もうよ。せっかくたくさん買ってきたんだしー」
「あれ? リモコンは?」
「あ、極力テレビ付けないためにあそこに置いてんの。電気代かかるじゃん、テレビ付けると」
と天井を指差した。天井にガムテープでリモコンらしき物が貼り付けられている。
「テレビ観れないじゃん!」
「待機電力かかるの嫌だからコンセント抜いてるしね」
「なんでテレビ買ったの?! お前、ここまで来ると守銭奴だよ!」
「実家の自分の部屋で使ってたやつを何も考えないで持って来たんですけど、ほんと邪魔」
「邪魔なくらいなら売ればいいじゃん」
「あ、そうですね。思い付かなかった。売ろ」
「お金貯めて、どうするの?」
清水くん、何か夢でもあるのかしら?
「えーと……親に恩返し」
へえ、素敵な理由ね。ここまでして親に恩返ししたいだなんて。大事に育てられてきたのね、そんなに感謝するくらい。
4人で丸いテーブルを囲んでそれぞれビールやチューハイを飲みつつ買って来たお菓子や枝豆なんかをつまむ。
「あ、ねえ、卒アルないの? 清水の高校時代見てみたーい」
あ、卒アル! 卒業アルバムなら、清水くんと高校の同級生だった彼女の写真が絶対にある! すごいわ、今日のさくらは冴えまくっているわ。
「えー、俺ほとんど変わってねーよー」
「いいから! 持って来てよ!」
渋々清水くんがキッチンの扉を開けて卒アルを出してくる。
「どこに入れてんだよ!」
「いや、料理しないから。空っぽにしておくのも何だし」
清水くんがさくらに卒アルを手渡す。
「何組だったの?」
「2組」
さくらがページをめくる。2組のページで、清水くんの顔を探す。
「いた!」
見付けた清水くんの顔を指差した。本当にほとんど変わってない。けど、ちょっとあどけないかも。かわいいー。
「かわいいじゃん、清水」
「すげー真面目そうだな、この写真見ると」
「まあ普通に真面目な生徒でしたよ、俺」
「どこの高校?」
とさくらがページを閉じて表紙を確認する。
「え! 清水、神山手高校出てるの?!」
「知ってるの? さくら」
「すっごい偏差値高い高校だよ! 神山手出て高卒で働いてるの? なんで?」
「えーと……早く働いて一人前になりたかったんだよ」
「立派だなー、清水」
あら、卒アル閉じられちゃったんだけど……あの、さくら、卒アル……話をしているさくらの手からそっと清水くんの卒アルを抜き取って手に持つ。
ページをめくってみるけど、彼女の顔も名前も分からないのにこの中のどの顔が彼女なのか分かりようもないか。
6畳くらいのワンルームで、家具もテレビ台と丸いローテーブル、そしてシングルサイズのベッド。これだけだ。クローゼットっぽい扉があるから、服はあそこに収まっているんだろう。家電も目につくのは冷蔵庫とエアコンくらいじゃないかしら。
物が多くて足の踏み場もない私の家とは真逆ね。自分の部屋はもう片付ける気にもなれないけど、この部屋なら掃除する気にもなれそうだわ。
「清水ってミニマリストなの?」
「ミニマ……? 何だよ、それ」
「物を持たない主義の人よ」
「主義じゃねーよ。単に金使いたくないだけ」
「かなり貯め込んでんじゃねーの、これ。冷蔵庫にちくわしかねーんだけど」
人の家の冷蔵庫を勝手に開けるなんて、高橋は本当に高橋ね。
「ちくわ4本も入って39円なんすよ」
「ちくわ1袋で腹いっぱいになんねーだろ。お前もっとちゃんと食わねえと病気になるぞ。俺が飯作りに来てやろうか?」
片橋くんは本当にいい子ね。でもその役目、私に譲ってもらえないものかしら。私料理なら得意なんだけど。
こんなに何もない中、彼女の写真なんてなさそうね。
「ほんっとうに何もない部屋ねー。テレビ観るしかないじゃん。まあ、とりあえずテレビでも付けて飲もうよ。せっかくたくさん買ってきたんだしー」
「あれ? リモコンは?」
「あ、極力テレビ付けないためにあそこに置いてんの。電気代かかるじゃん、テレビ付けると」
と天井を指差した。天井にガムテープでリモコンらしき物が貼り付けられている。
「テレビ観れないじゃん!」
「待機電力かかるの嫌だからコンセント抜いてるしね」
「なんでテレビ買ったの?! お前、ここまで来ると守銭奴だよ!」
「実家の自分の部屋で使ってたやつを何も考えないで持って来たんですけど、ほんと邪魔」
「邪魔なくらいなら売ればいいじゃん」
「あ、そうですね。思い付かなかった。売ろ」
「お金貯めて、どうするの?」
清水くん、何か夢でもあるのかしら?
「えーと……親に恩返し」
へえ、素敵な理由ね。ここまでして親に恩返ししたいだなんて。大事に育てられてきたのね、そんなに感謝するくらい。
4人で丸いテーブルを囲んでそれぞれビールやチューハイを飲みつつ買って来たお菓子や枝豆なんかをつまむ。
「あ、ねえ、卒アルないの? 清水の高校時代見てみたーい」
あ、卒アル! 卒業アルバムなら、清水くんと高校の同級生だった彼女の写真が絶対にある! すごいわ、今日のさくらは冴えまくっているわ。
「えー、俺ほとんど変わってねーよー」
「いいから! 持って来てよ!」
渋々清水くんがキッチンの扉を開けて卒アルを出してくる。
「どこに入れてんだよ!」
「いや、料理しないから。空っぽにしておくのも何だし」
清水くんがさくらに卒アルを手渡す。
「何組だったの?」
「2組」
さくらがページをめくる。2組のページで、清水くんの顔を探す。
「いた!」
見付けた清水くんの顔を指差した。本当にほとんど変わってない。けど、ちょっとあどけないかも。かわいいー。
「かわいいじゃん、清水」
「すげー真面目そうだな、この写真見ると」
「まあ普通に真面目な生徒でしたよ、俺」
「どこの高校?」
とさくらがページを閉じて表紙を確認する。
「え! 清水、神山手高校出てるの?!」
「知ってるの? さくら」
「すっごい偏差値高い高校だよ! 神山手出て高卒で働いてるの? なんで?」
「えーと……早く働いて一人前になりたかったんだよ」
「立派だなー、清水」
あら、卒アル閉じられちゃったんだけど……あの、さくら、卒アル……話をしているさくらの手からそっと清水くんの卒アルを抜き取って手に持つ。
ページをめくってみるけど、彼女の顔も名前も分からないのにこの中のどの顔が彼女なのか分かりようもないか。
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