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幸せの連鎖
めんどくさい私たち
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あはは! と魁十が楽しそうに笑う。満足。
その笑顔に私、大満足。
「結婚が量産されてんじゃん」
「そうなの。触発されて浜崎さんまでマッチングアプリ登録してたけど、あの人だけは絶対結婚できないと思う」
ていうか、あれだけ女友達いるのに誰ひとり結婚はしたくないんだと驚き。
「いいなあ~。俺も強引に結婚しちゃおうかな」
リビングのセンターテーブルでみかんの皮をむいていたら、背中にピッタリのしかかってきた魁十の顔がめちゃくちゃ近い。
二人羽織みたいに皮むきを邪魔してくる。
いや、これは違う。ドキドキして手つきがおぼつかなくなった私を手伝ってくれている。
「そっ……卒業してからってママと約束したじゃない」
「おろそかになんかしねえよ。絶対勉強のモチベにもなるのに」
「私たちの場合ずっと一緒に暮らしてきたから、籍入れても入れなくても変わらなくない?」
「気持ちの問題。俺が家族を支えるんだって気合い入るじゃん。自覚はないけど、学生だからって甘えとかあると思うし」
「大学院まで行く人は甘えなんてないよ」
魁十がバイトも辞めずに合格できたのは、誰よりも自分に厳しく毎日コツコツ勉強し続けたから。
ずっと魁十のがんばりを見てきた私は知ってる。
「勉強なんてやりゃ誰でもできるんだよ」
「できる人だからそう思うんだよ。私、高校卒業もギリギリだったもん」
「紗夜は勉強しなかったじゃん」
「私思うの。自主的に勉強できるってだけでもう、勉強の才能があるんだよ」
「目指すもんがあるかどうかにもよるわな。はい、あーん」
みかんを1粒、私の口に入れる魁十の指が触れた。
「あ……ありがとう。おいしい」
「なあ、なんでそんな感じ? 前だったら大好きとか言いながらテンション高く抱きついてきてたじゃん」
「え?」
「俺、正直にゆって、やっと紗夜とイチャイチャできると思ってたのに」
前だったら……たしかに。
魁十の指が唇に触れたことなんて気にならなくて、魁十が食べさせてくれたのが嬉しくてはしゃぐ自分がたやすく想像できる。
だけど、今の私も嬉しいんだけど、カーッと熱くなっちゃって胸が激しくドキドキしちゃってはしゃげない。
「気持ちの問題だよ。弟としか思ってなかった時は何も考えないで好きとか言えたけど、今はなんか……」
「好きじゃねえの?」
「好きだから言えない。弟には好きって言って冷たくされてもかわいいって思ってた。だけど今は、カイにちょっとでもめんどくさいって思われたら悲しくなりそう」
はあ~と、すでにめんどくさそうなため息をつかれてしまった。
「その発言がめんどくせえ」
「だよね! ごめん!」
「紗夜に好きって言われたら嬉しいに決まってるでしょ?」
盛大に心臓が跳ね踊った。
魁十は申し訳なさそうに沈んだ声を出す。
「俺がめんどくさい態度してたせいだよね。反省してる。自分でもガキだったなって思う」
「う……うん……」
いや、ほんとは反省なんてしなくていいと思ってる。
態度悪くたって十分かわいくて、楽しませてもらってたもの。
「ねえ、これからもいっぱい好きって言ってくれる?」
「言う! めっちゃくちゃ言う!」
「俺は恥ずかしいから言わないけど」
「えっ……」
ショックで言葉が出ない。
体ごと浮きそうなくらい浮かれてた自分が悲しい。
「好きだよ」
……聞き間違い?
かもしれないのに、勝手に浮かれる心臓どうにかしてほしい。
「恥ずかしいのに言っちゃう」
魁十の腕の中で体をねじり、顔を見上げるとバチッと目が合った。
「ビビったあ! こっち見んなよ!」
なるほど、彼は私に見られない前提だからこそ言っちゃったわけですね。
真っ赤になって焦る魁十はこの世のかわいいの全て。かわいいの集合体。かわいいの完成形。かわいいの権化。
「カイ! 今日もカッコいいよ! 大好き!」
「やかましいわ」
ポスッと魁十が私を抱きしめた瞬間、ピーンポーンとインターホンが鳴る。
その笑顔に私、大満足。
「結婚が量産されてんじゃん」
「そうなの。触発されて浜崎さんまでマッチングアプリ登録してたけど、あの人だけは絶対結婚できないと思う」
ていうか、あれだけ女友達いるのに誰ひとり結婚はしたくないんだと驚き。
「いいなあ~。俺も強引に結婚しちゃおうかな」
リビングのセンターテーブルでみかんの皮をむいていたら、背中にピッタリのしかかってきた魁十の顔がめちゃくちゃ近い。
二人羽織みたいに皮むきを邪魔してくる。
いや、これは違う。ドキドキして手つきがおぼつかなくなった私を手伝ってくれている。
「そっ……卒業してからってママと約束したじゃない」
「おろそかになんかしねえよ。絶対勉強のモチベにもなるのに」
「私たちの場合ずっと一緒に暮らしてきたから、籍入れても入れなくても変わらなくない?」
「気持ちの問題。俺が家族を支えるんだって気合い入るじゃん。自覚はないけど、学生だからって甘えとかあると思うし」
「大学院まで行く人は甘えなんてないよ」
魁十がバイトも辞めずに合格できたのは、誰よりも自分に厳しく毎日コツコツ勉強し続けたから。
ずっと魁十のがんばりを見てきた私は知ってる。
「勉強なんてやりゃ誰でもできるんだよ」
「できる人だからそう思うんだよ。私、高校卒業もギリギリだったもん」
「紗夜は勉強しなかったじゃん」
「私思うの。自主的に勉強できるってだけでもう、勉強の才能があるんだよ」
「目指すもんがあるかどうかにもよるわな。はい、あーん」
みかんを1粒、私の口に入れる魁十の指が触れた。
「あ……ありがとう。おいしい」
「なあ、なんでそんな感じ? 前だったら大好きとか言いながらテンション高く抱きついてきてたじゃん」
「え?」
「俺、正直にゆって、やっと紗夜とイチャイチャできると思ってたのに」
前だったら……たしかに。
魁十の指が唇に触れたことなんて気にならなくて、魁十が食べさせてくれたのが嬉しくてはしゃぐ自分がたやすく想像できる。
だけど、今の私も嬉しいんだけど、カーッと熱くなっちゃって胸が激しくドキドキしちゃってはしゃげない。
「気持ちの問題だよ。弟としか思ってなかった時は何も考えないで好きとか言えたけど、今はなんか……」
「好きじゃねえの?」
「好きだから言えない。弟には好きって言って冷たくされてもかわいいって思ってた。だけど今は、カイにちょっとでもめんどくさいって思われたら悲しくなりそう」
はあ~と、すでにめんどくさそうなため息をつかれてしまった。
「その発言がめんどくせえ」
「だよね! ごめん!」
「紗夜に好きって言われたら嬉しいに決まってるでしょ?」
盛大に心臓が跳ね踊った。
魁十は申し訳なさそうに沈んだ声を出す。
「俺がめんどくさい態度してたせいだよね。反省してる。自分でもガキだったなって思う」
「う……うん……」
いや、ほんとは反省なんてしなくていいと思ってる。
態度悪くたって十分かわいくて、楽しませてもらってたもの。
「ねえ、これからもいっぱい好きって言ってくれる?」
「言う! めっちゃくちゃ言う!」
「俺は恥ずかしいから言わないけど」
「えっ……」
ショックで言葉が出ない。
体ごと浮きそうなくらい浮かれてた自分が悲しい。
「好きだよ」
……聞き間違い?
かもしれないのに、勝手に浮かれる心臓どうにかしてほしい。
「恥ずかしいのに言っちゃう」
魁十の腕の中で体をねじり、顔を見上げるとバチッと目が合った。
「ビビったあ! こっち見んなよ!」
なるほど、彼は私に見られない前提だからこそ言っちゃったわけですね。
真っ赤になって焦る魁十はこの世のかわいいの全て。かわいいの集合体。かわいいの完成形。かわいいの権化。
「カイ! 今日もカッコいいよ! 大好き!」
「やかましいわ」
ポスッと魁十が私を抱きしめた瞬間、ピーンポーンとインターホンが鳴る。
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