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誕生日プレゼント

王道

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左手は頬杖をつきつつ、右手を伸ばして人差し指で私の唇を突きながら微笑む魁十のバックに広大な銀河群が見える。
かわいすぎる……。

「プレゼントに何が欲しいって言ったか覚えてる?」
「……覚えてる」
「紗夜。もらっていい?」

カア~ッと顔面が熱くなる。
案外ストレートに聞くのね。

「……い……いいよ」

キャー恥ずかしい!
魁十の顔が見れずに目をそらすと、唇から指の感触がなくなりガタッと魁十が立ち上がった。

……来る……魁十が、来る!

両手で顔を隠して耐える。
魁十がダイニングテーブルの椅子に座る私のすぐそばへと近付いてきた。

「紗夜」
「……はい……」

見ると、魁十がガチ王子様のようにひざまずいて両手で小さな箱を開いている。
白いテカテカした布の中にあるのは……指輪?

「紗夜が欲しい。俺と結婚してください」
「欲しいって……そっち?!」
「どっちだと思ってたの」

いや、別に、どっちってこともないんだけど。
焦る私をおもしろがるように魁十が笑う。

「ビックリしたー……超王道なことするんだね」
「いろいろと俺たちイレギュラーだからさ。プロポーズくらいは王道にベタでいきたくて」

……プロポーズ……。

あ、そうだ、返事しなきゃ!
魁十の気が変わらないうちに! 取り消されてしまう前に!

ひざまずく魁十の前に正座して、丁寧に頭を下げた。

「ふ、ふつつかものですが、よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします。末永く」

魁十の手が私の左手薬指に指輪を通す。
入らなかったら気まず……。
指輪のサプライズって難しいよね。私自身も指のサイズなんて知らないし。

「すごい、ピッタリ」
「何度も紗夜の指に絆創膏巻いてきてるからね」

華奢なリングがはまった指は違和感がすごい。
1粒のダイヤモンドっぽい石が綺麗に輝いている。

「一応保険で大輝にも見てもらったんだけど、このサイズで間違いないって自信満々だった」
「大輝くんが? 指輪なんてもらったことないのに」
「紗夜が絆創膏してた時に指触ったから分かるって」
「人たらしってそんな特殊能力があるんだ」

魁十の指が私の手に絡んできて、ドキッとする。
あったかい手。

魁十の唇も温かくて、長いキスに頭がボーっとしてしまいそう。

思わず魁十の背中に腕を回したら、ギュッと私の体も締め付けられた。

「愛してる」

魁十にもダイレクトに伝わったんじゃないかってくらい、心臓が跳ねる。

「私も……」

魁十の目がジッと見つめてくるから、そらせずにしばし睨み合い。
いつもの魁十とは違う視線にドキドキが加速してしまう。

「……かわいすぎてヤバい」

え……それ、こっちのセリフ。
ジトッとした目で下唇を噛んでても全知全能超えるかわいさ。

「紗夜……怖い?」

言われてみると、大輝くんに抱きしめられたりキスされるといつも体がこわばって緊張してた。
そっか、私怖くて……。

自分でも気付いてなかったのに、心配してくれてたんだ……嬉しい。

大好き。

「ううん。カイなら怖くない」
「やっば。ヤバいヤバい」
「語彙力JK」

魁十が賢いことはよく知ってる。
なのに、それ何演出なの。

焦ってる魁十に笑ってしまう。

油断してたら、真っ赤なかわいすぎるお顔からは想像できないほどの力で抱きしめられた。

「ごめん、マジでむり。ヤバい」
「どうして謝るの?」
「好きだから大事にしたいのに、我慢できないかもしんない」

かわいい……。
うちの彼氏、言うことかわいすぎてヤバい。
やだ、私の方が無理。

「我慢しなくていいよ」

瞬時に待てから解放されたかのように魁十の唇に覆われる。

普段はクールな魁十の野生のオオカミみたいな目を見たら、どれだけ大事に思ってくれてるかよく分かった。

隙だらけの私には、きっとチャンスが何度もあった。
魁十もオオカミ。
だけど、ワンチャンあっても唇噛んで耐えられるオオカミ。
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