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檻の中で
この馬鹿を許さない
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電車の座席で車窓から流れる景色を眺めながらそんなことを考えていたら、しんみりした気分になってしまった。
こういう時は、かわいい魁十を見て元気をチャージ!
魁十がバイトしているレンタルショップはガラス張り。
薄いスモークと大きく貼られた店名シールや営業時間なんかの文字や数字で見づらくはあるものの、働く魁十が見える。
けれど、店をのぞくまでもなく、魁十が店の前に立っていた。
「大輝くん! 何やってるの?!」
ビックリした。
魁十の腕に大輝くんがしがみついている。
「紗夜! コイツ邪魔!」
「嫌がらせしたら許さないって言ったのに!」
余程すごい顔をしてしまったのか、背の高い大輝くんが私の勢いにひるむ。
「嫌がらせなんかしてないよ。僕はこの店の会員になりたいから説明を聞いてるだけで」
「同じ質問を何回もしに来るのはもはや立派な嫌がらせです。迷惑」
「魁十くんとお話できるのが嬉しくてつい何度も来てしまうんだよ。分かって」
「分かってたまるか! 二度と来るな!」
一喝した魁十が店に戻って行くのについて行こうとする大輝くんの腕を必死に引っ張る。
「ほんとに何やってるの?! 魁十があんなに怒るなんて珍しい」
「魁十くんは普段あまり怒らないんだ?」
「基本クールな子なんで。たまにひどいからかい方してきたりはするけど」
「例えば?」
「なんでそんなこと聞くの」
「魁十くんをもっと知りたくて」
キラキラとした目で笑顔を見せる大輝くんが美しい。
この見た目だけの汚らわしいケダモノが魁十を知りたい、だと?
「なんで急に魁十に興味持ってるんですか。私の弟ですよ」
「魁十くんのかわいい顔で冷たく睨まれながら嫌いじゃないって言われた時、人生で感じたことのないドキッとした衝撃が背骨を貫いた」
「……え? なんて?」
店のガラスにへばりつき、懸命に魁十の姿を追う大輝くんに、自分でも驚くくらいの変な声が出た。
「綺麗だって言われて、落雷に遭ったかのように体中が喜びで痺れた」
「綺麗だなんて魁十は言ってない。捏造しないで。魁十は綺麗な馬鹿って言ったの。馬鹿って」
「好きって言われた瞬間、血液全部が沸騰したみたいに熱くなった」
いちいち比喩表現してくるのもムカつく。
この馬鹿いい加減にしろよ。
「魁十は馬鹿にして好きって言ったの。好意なんか微塵もないから。勘違いしないで」
「ああー……魁十くん、かわいいー……」
魁十をかわいいって言われて鳥肌が立ったのは初めてだ。
こんな人の皮を被った獣がかわいい魁十をかわいいだなんて、許せない!
こういう時は、かわいい魁十を見て元気をチャージ!
魁十がバイトしているレンタルショップはガラス張り。
薄いスモークと大きく貼られた店名シールや営業時間なんかの文字や数字で見づらくはあるものの、働く魁十が見える。
けれど、店をのぞくまでもなく、魁十が店の前に立っていた。
「大輝くん! 何やってるの?!」
ビックリした。
魁十の腕に大輝くんがしがみついている。
「紗夜! コイツ邪魔!」
「嫌がらせしたら許さないって言ったのに!」
余程すごい顔をしてしまったのか、背の高い大輝くんが私の勢いにひるむ。
「嫌がらせなんかしてないよ。僕はこの店の会員になりたいから説明を聞いてるだけで」
「同じ質問を何回もしに来るのはもはや立派な嫌がらせです。迷惑」
「魁十くんとお話できるのが嬉しくてつい何度も来てしまうんだよ。分かって」
「分かってたまるか! 二度と来るな!」
一喝した魁十が店に戻って行くのについて行こうとする大輝くんの腕を必死に引っ張る。
「ほんとに何やってるの?! 魁十があんなに怒るなんて珍しい」
「魁十くんは普段あまり怒らないんだ?」
「基本クールな子なんで。たまにひどいからかい方してきたりはするけど」
「例えば?」
「なんでそんなこと聞くの」
「魁十くんをもっと知りたくて」
キラキラとした目で笑顔を見せる大輝くんが美しい。
この見た目だけの汚らわしいケダモノが魁十を知りたい、だと?
「なんで急に魁十に興味持ってるんですか。私の弟ですよ」
「魁十くんのかわいい顔で冷たく睨まれながら嫌いじゃないって言われた時、人生で感じたことのないドキッとした衝撃が背骨を貫いた」
「……え? なんて?」
店のガラスにへばりつき、懸命に魁十の姿を追う大輝くんに、自分でも驚くくらいの変な声が出た。
「綺麗だって言われて、落雷に遭ったかのように体中が喜びで痺れた」
「綺麗だなんて魁十は言ってない。捏造しないで。魁十は綺麗な馬鹿って言ったの。馬鹿って」
「好きって言われた瞬間、血液全部が沸騰したみたいに熱くなった」
いちいち比喩表現してくるのもムカつく。
この馬鹿いい加減にしろよ。
「魁十は馬鹿にして好きって言ったの。好意なんか微塵もないから。勘違いしないで」
「ああー……魁十くん、かわいいー……」
魁十をかわいいって言われて鳥肌が立ったのは初めてだ。
こんな人の皮を被った獣がかわいい魁十をかわいいだなんて、許せない!
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