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思春期が終わり

噂話

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「定時で仕事終わらせるから、ごはん行こう?」
「ごめんなさい。今日私がごはん作る当番だから」
「今日も? 魁十くんも作れるでしょ? 大学生だし」
「それが、男児厨房に入るな的な家なものだから」
「時代錯誤だなあ」

うちの家に晩ごはんを作る当番制度などない。
だけど、魁十がそういう家もありそうじゃない? と細かに語ったから、それが実在してることにした。

こんな引き伸ばしなんて意味がないのは分かってる。
だけど、難波大輝と別れたいなんて言ったら、会社での私の立場くらい簡単になくなりそう。

魁十は今借金しても大学院卒業したら俺が稼ぐから仕事辞めてもいいって言ってくれたけど、姉として弟に負担はかけたくない。

パパがいなくなって、専業主婦だったママの稼ぎが今の遠山家の柱。
パパに代わって稼ぎたい気持ちはありがたいけど、魁十は魁十の夢があって大学院を目指してるんだから貫いてほしい。

だったら、このまま……このまま、ヌルッと難波大輝の彼女のままでいた方がいいのかな……。



いつもギリギリ出勤だけど、今日は早い。
魁十がゴネずにほっぺチューしてくれるからかしら。

机に水筒を置いて、パソコンの電源を入れ、引き出しからメモ用紙とシャーペン、シャチハタを出す。

「わー、きっつ」
「浜崎の話マジだったんだなー」

総務の大輝くん浜崎さんと仲のいい柏木さん横田さんが盛り上がってる。

「俺姉ちゃんいるから近親相姦なんか吐きそう」
「姉ちゃんが遠山さんならどうよ」
「巨乳でも姉に興奮するって考えらんねえ。弟変態じゃん」

……弟?

立ち上がり、柏木さんの席へとおもむく。
私に気付いた二人はギョッとした。

「もう来てたんすか?! いっつもギリなのに」
「何の話してたんですか。遠山って言ってましたよね。弟が何だって言うんですか」

二人は目を泳がせながら合わせると、開き直ったように笑った。

「難波が言ってたんすよ。遠山さんと弟は近親相姦だって」
「浜崎も遠山さんが弟とキスしてるの見たって言ってたし」
「弟ヤバいっすね」

大輝くんが――

ひどい。
そんな嘘を言いふらすなんて……

私に腹が立つなら私の悪口を言えばいい。

だけど。

――弟ヤバいっすね。

弟を……魁十を侮辱しないで――
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