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たのしい誕生日

ここは楽園

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車のハンドルを握る魁十が全然こちらを見ない。
怒ってる怒ってる.......かわいい。
ムスッとゆがんだ口元でもうちの弟はかわいい。

「ねえ、お姉様。デートで遅くなったから迎えに来いやって、俺のこと何だと思ってんの?」
「来いやなんて言ってないよ。来れる? って聞いただけ!」
「なんで彼氏が送んねーんだよ」
「大輝くん、サプライズでホテルの部屋取ってくれてたの。お金もったいないから大輝くんだけでも泊まってって私が言ったんだよ」

魁十がやっと私の顔を見る。
横顔も綺麗だけど、斜め45度の流し目、ヤバい。

「それ、姉ちゃんも一緒にってつもりだったんじゃねえの?」
「うん。二人でお泊まりの予定だったみたい。だけど、誤解しないで。大輝くんは体目当てなんかじゃないよ。純粋に私の誕生日を祝おうとしてくれただけ」
「それ、本人が言ったの?」
「うん。私飲みすぎて、誕生日に便乗してお泊まりしようとしてるんじゃないかって言っちゃって」

ぶわっはは! と魁十が大きな声で笑うからビックリしてしまった。
さっきまで怒ってたのに?

「ごめんね。今度こういうことがあってもカイに迷惑かけないから」
「迷惑じゃないよ。困ったらまず俺に連絡しろっていつも言ってるだろ」
「うん。ありがとう」
「帰ってきて大正解。母さん、張り切って変なメガネかけて帽子被って待ってるよ」
「変なメガネ? 鼻付いてるやつ?」
「そうそう」
「なぜ娘の誕生日祝うのにそんなふざけたアイテムを」
「本人大真面目なんだから言ってやるな」

ママって、本人は至って真面目なんだけどなんかズレてるんだよね。
仕事はちゃんとできてるのか心配になっちゃう。

赤信号で車が止まると、空は曇ってるのに満月の光を倍増させたかのような輝きに満ち満ちて魁十が笑った。

「紗夜。誕生日おめでとう」
「ありがとう! めちゃくちゃ嬉しい! カイ、今日もかわいいよ!」
「そりゃどーも」

お泊まりせずに帰ってきて良かった~。
ホテルのどんな豪華な部屋より、魁十がいる今ココが楽園。
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