上 下
36 / 86
たのしい誕生日

さすがは大輝くん

しおりを挟む
現在、我が社の5S活動はラスト、しつけ=整理整頓清潔清掃が維持できているかのチェック段階に入っている。

「はい、システム開発部オーケーです」
「また来週チェックに伺いますのでご協力よろしくお願いします」

システムの部屋を出ながら、総務の5S担当大輝くん、チェック担当河合さん他とお疲れ様でしたー、と声を掛け合う。

「難波さん、3つめに内覧したお部屋に決めました」
「あそこ良かったですよね。家賃は安いのに部屋広いしトイレバス別ですし。ただベランダが北向きなのがね」
「でもよく考えたら私、乾燥まで洗濯機で済ませるからベランダどこ向きでもいいなって気付いたんです」
「じゃあ悩む必要なかったじゃない。即決できる物件だったよ」

えへへ、と河合さんが恥ずかしそうに笑う。
何やらドジっ子やってんな。

「河合さん、住所不定無職から住所が安定するんですか?」
「無職ではないです。はい、難波さんが不動産屋の訪問から付き添ってくださって、無事に決まりました」

ニッコリ笑う河合さんに、ホッとする。
私が大輝くんと付き合ってると知って、大きなショックを受けていた。
でも、さすがは大輝くん。人たらしパワーですっかり河合さんは立ち直ってるみたい。

「面倒見がいいですね」
「若い女の子1人じゃ舐められる恐れもありますからね。男が同行した方がいいかと思いまして」

さすがは大輝くん2。優しい。
こういう、自分の時間を削ってでも人を助けたい気持ちみたいなものを持ってるところが好き。

「カップルの会話にはとても見えないですねえ」
「プライベートではお互いタメだけど、職場は誰が聞いてるか分からないからね」
「公私の区別がついてるお付き合いっていいなって思います。憧れちゃう」

ニコッと笑いかけてくる。
河合さん、やっぱり好みの顔。メイク濃いけどかわいい。

「では、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした。また来週お願いします」

総務の部屋の前で二人と別れる。
経営本部は総務と部屋が一緒。

会社で大輝くんとしゃべるのはすごく気が楽。
デートの時は二人っきりだからかなあ。ハラハラドキドキしながらしゃべってる感覚がして、楽しいけど疲れる。

でも大丈夫。
我が家には癒しの権化、かわいいかわいい魁十がいる。
デートから帰るといつも魁十を抱きしめ、即引きはがされる。
しおりを挟む

処理中です...