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強めドジっ子18歳

すげえ酔ってねえ

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せっかく難波さんがオススメしてくれた芋焼酎。
私には甘みが感じられず、お湯割りだから薄く感じるけど、難波さんが教えてくれた香りはすごく好き。ちょっと焼き芋っぽい。

ふふ、とご機嫌に5杯目のお湯割りを飲んでいると、スマホがブルブルと震えている。

あ!
魁十から着信!

ここじゃ何だから、ちょっと軽く外行って風に当たりながら出よう。

立ち上がろうとして、足元がフラついてしまった。
持ち直したけど、難波さんが手をこちらへと向ける。

「大丈夫ですか?」
「大丈夫です、だいじょうふでしゅ。ちょっと電話出てきらす」

靴が多くて自分の靴を探すのは無理だと諦め、店内用のサンダルを借りて店外に出る。

「はい」
「姉ちゃん、母さんが帰りにコンビニでいいから食パン買ってきてって。買い忘れたらしくて」
「はぁーい」
「……すげえ酔ってねえ?」
「すげえ酔ってねえ」
「酔ってるだろ。何飲んだらそんなヘロヘロなしゃべりになんだよ」
「初めて芋じょうりゅう飲んだの。いい匂いだほ」

あー、夜風が気持ちいい。
あ、トイレ行きたくなってきた。お酒飲むとトイレが近くていけねえ。難波さんが隣だってのに何回もトイレ行くの恥ーずーかーしーいー。

「……迎えに行くから店の名前言え」
「いーよ。らいりょうぶ」
「全然大丈夫じゃねーだろうが。今から行くから、店の前……は危ないか。とにかく待ってろ」
「はあーい」
「それ以上飲むなよ。帰る準備して待ってろよ」
「はあーい」
「……紗夜。マジで」

魁十が真剣な声出すから、ちょっと酔いが醒めた気がする。
ヤバい、これ以上は弟を怒らせる。ピ――と脳内警告音を感じる。

「うん。分かった」
「すぐ行くから、待ってて」

うわあ、優しい声……うちの弟はずるい。

「うん! 待ってる!」
「帰る用意しとけよ」
「魁十」
「何」
「大好き」
「……うっせえ、酔っ払い」

直後、スマホからはツーツーしか音がしない。

何、最後の間?
もしかして照れちゃった?
もー、やっぱりうちの弟は世界一かわいい。かわいいしかない。

「遠山さん、二人でこのまま抜けない?」

真面目そうな仮面を被ったチャラ男、浜崎さんが肩に手を置いて顔を近付けるから、振り払う。
せっかく魁十がかわいかったのに台無し。

「弟が迎えに来てくれるので無理です」
「弟? んなわけないでしょ、なんだー彼氏いたんだ?」

どいつもこいつも、なぜ弟だと素直に認められない?

浜崎さんは無視してトイレに行ってから座敷に戻り、バッグを手に取る。

「ちょっと飲みすぎちゃったので、お先に失礼します」
「珍しく焼酎飲んでたもんね。大丈夫?」
「大丈夫です!」

魁十が迎えに来てくれるから~。

「僕もそろそろ帰ろうと思ってたんです。ご自宅まで送りましょうか」

親切にも難波さんが立ち上がる。
さすが難波さん、優しいー。そうだ、いつもお世話になってばかりだから、ご恩返しでも。

「弟が車で迎えに来てくれるんで、帰るんでしたらお送りします」
「弟さん?」
「はい」

難波さんの体がピタリと動きを止めた。
そんな難波さんのシャツの袖をチョイチョイと河合さんが引っ張る。

「まだポケモン203体しか教えてもらってないです。全部教えてくれるんじゃなかったんですか?」

プクーとほっぺたを膨らませる河合さんがかわいい。
大人っぽく見えるけど、やっぱり18歳だな。ポケモンとか。

「あー……遠山さん、お気を付けて。お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」

みなさんに一応あいさつだけして、店の外に出ると、ちょうどうちの車が目の前に止まった。
魁十が降りてくる。

「姉ちゃん、忘れもんない?」
「うん」
「フラフラじゃねえかよ。飲みすぎ」
「マジで弟なんだ?! うっわ、イケメン。引くわー」

浜崎さんが背後から抱きついてくる。
ほんっと、この人鬱陶しいな……。

浜崎さんの腕をはがしてくれた魁十がそのまま助手席のドアを開け、私の背中を押した。
転がるように乗り込む。

背もたれに体重を預けたら、ものっそい睡魔が襲い掛かってくる。

魁十……と、浜崎さん……。

「姉ちゃん、シートベルト」
「うん……」
「もー。いきなり寝んなよ。しょうがねえな」

呆れたような魁十の声。
耳心地の良い声に、即熟睡してしまった。
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