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別キャラ難波さん

目撃

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魁十が助手席に腕を回してスムーズに駐車する。
屋上の駐車場。昨夜の雨でホコリが落ちたのか、爽やかに晴れ渡った青空。

真剣な眼差しの魁十の横顔が美しい。これもう芸術だと思う。
長いまつ毛がまさにキラキラ日差しを反射して――

「うざい。ジロジロ見んな」
「今日もカッコ良いよ!」
「知ってる。はしゃぐな」

魁十とショッピングなんて何年振りだろ。
幸せすぎる~。

「カイ、何買うの?」
「決めてない。別に今日買わなくてもいいし」
「え。もし今日決まらなかったらママの誕生日まで毎週探したりする?」
「かも」

よし、探してるフリして誕生日ギリギリまで引っ張ろう。
魁十と毎週お出かけとか、絶対行きたいでしょ。

「トイレ行ってくる」
「大丈夫? おなか痛い?」
「トイレ行くだけで心配すんな。過保護か」

魁十がトイレに行ってる間、上の階でやってる映画情報を眺める。
へえ、買い物は来週するとして、今日は映画見ようかなあ。

「がっははは!」
「バカじゃん、だっせえ」

ガラの悪い声が聞こえて振り返る。
目が点になるとはこのことかってくらい、目が乾燥するまで凝視してしまった。

黒革のパンツにデニムジャケットを羽織った男性と連れ立って歩く、ダメージデニムに黒シャツなんだけど袖に鮮やかな赤いバラがリアルに描かれている背が高くて目立つ男性。

あれ……ただのヤンキーにしか見えないけど、あの顔は難波さん?!

いつもは自然に下ろしている前髪がセンター分けされている。
あれはあれでワイルドでカッコいい。アリ寄りのアリ。アリしかない。

デニムジャケットの人が隣の女性の肩を抱く。
難波さんの隣にも、金髪、ショートパンツ、ロングブーツのザ・ギャルな女性がいる。

うわあ、怖……。
陰キャには強すぎる陽キャ。もう強キャ。

とっさに映画の大きな看板の陰に隠れた。
見つかったら、双方気まずいと思う。難波さんもキャラ違いすぎるし、見られたくないだろう。

陽キャたちは大声で笑いながら去って行く。

何あれ、ヤンキーカップルのダブルデート?
でも、浜崎さんは難波さん彼女いないって言ってたし……ただの友達?

何にしろ、私はあんな人たちとしゃべれないな……。

「何してんの」
「ぴぎゃああああああ」
「うるせっ」

振り返ると耳を押さえて顔をしかめた魁十がいる。

「カイかぁ……。死ぬかと思った」
「なんで隠れてんの」
「すごいヤンキーたちが歩いてたから」
「だからって隠れなくてもいいだろうに」

魁十が笑った。
やばあ……。
隠れてみて良かった。

「ねえ、今日は映画見ない?」
「何だよそれ。予定変更しすぎ……見るか」

中学生の頃に、二人そろってドハマりした映画が時を経て感動の完結。
感動するような映画じゃなかっただけに、どう終わるのか興味ある。

久しぶりに映画館のシートに座る。
中2の時、私の人生最初で最後の彼氏と映画見た以来かも……。
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